――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
昨日は、社会保障と税の一体改革について一日議論がありました。我が党は、既にお話をしているように、社会保障の改悪とセットの消費税増税には反対であること、増税によらない財源確保について、既に二月七日に提言を発表しているところであります。
きょう取り上げたいのは、その前提となる考え方であります。
総理は、社会保障を持続可能で安心できるものにしなければならない、このことを繰り返し述べていると思うんですが、そもそも安心の社会保障を安定的につくる鍵の一つは、やはり雇用ではないでしょうか。社会保障の担い手という意味でも、また経済循環のための消費、購買力をふやすという意味でも、また安心して子供を産み育てられる環境づくりの土台としても、やはり雇用は大きな鍵だと思っておりますが、まずこの前提について、当然総理も共有できるのかと思いますが、認識を伺いたいと思います。
○野田内閣総理大臣 社会保障は、国民が相互に支え合う、そういう仕組みでありますけれども、これを持続可能なものにしていく上では、委員御指摘のとおり、雇用の確保ということが大変重要な課題だというふうに思っております。
このため、成長力の強化によって雇用の創出を図り、意欲ある全ての人、男性も女性も老いも若きも希望すれば働ける環境、いわゆる全員参加型社会の実現を図っていくことが大事だということと、加えて、働きがいのある人間らしい仕事の実現、ディーセントワークを図ること、こういうことを念頭に置きながらさまざまな施策を推進していきたいと考えております。
○高橋(千)委員 希望すれば誰でも働ける、また働きがいのある人間らしい働き方、これは本当に同じだと思うんですね。ただ、今はそうなっていないというところに大きな問題がある。
今、震災や円高なども大きな契機となっているわけですけれども、大手企業の工場が地方から撤退し、再編が進み、雇用にも大きな影響を与えています。
経済産業省の工場立地動向調査によれば、二〇一一年上期の工場立地件数は過去三番目に低い四百三件、面積にして四百十九ヘクタールにとどまっています。その数字が今ちょっとここには入っていないんですけれども、いかに下降しているかというのがグラフで明らかと思います。このスタートになっている九〇年、これが三千七百八十三件、四千六百十二ヘクタールですから、まさに十分の一に縮小しているということであります。
ただ、このデータは立地動向でありますので、撤退の状況が全くわかりません。撤退に伴う雇用変動というのが当然あるわけですが、それはどうなっているでしょうか。
○枝野国務大臣 工場の撤退そのものについての統計は把握をしておりませんが、経済的な事情等で一カ月の間に三十人以上の従業員の方を退職させざるを得なかった場合には、事業主が大量雇用変動届を提出することが義務づけられております。この集計結果によりますと、二〇一一年上期、一月から六月までの届け出事業所数は一千二百四十七事業所、離職者数は六万二千七百四十六人となっております。
○高橋(千)委員 私は今の数字はもちろん掌握をしております。もちろん全部ではないですけれども、一定の参考にはなるであろう、厚労省の所管でありますけれども。
ただ、問題は、工場立地に着目して、またこの間もやはり長く企業誘致型の経済対策というものをやられてきたし、今回も、震災からの復興に当たりまして、立地補助金ですとか、企業立地に重きを置いた対策ということは、復興計画の中で随分あるわけなんですね。だけれども、その影響について掌握している部署がない。そもそもそこに問題がないのかということが言いたいわけなんです。
二十日付の日経新聞によれば、同じ工場立地動向調査の中で、二〇一〇年に工場を全て移転させた件数、これは撤退ではなく移転ですけれども、百六十九件とあります。件数はさほどではないんですが、面積が二百三十五ヘクタールで、二〇〇〇年以降から見ると、唯一、二百ヘクタールを超えた。
つまり、工場の移転件数はそんなにふえてはいないけれども、大規模工場がふえたということなんですね。さっき言ったように、四百ヘクタールを超える新しい工場立地が進んだけれども、その半分以上のところが既に跡地になっている、こういう関係が見えてくるのではないか。これはかなり深刻な話ではないかと思うんですね。
撤退の動向についても、やはり系統的につかむべきではないでしょうか。自治体との事前協議、そういうルールをやはりつくるべきだと思うんですね。
尼崎市など、自治体で独自に条例を持っているところもありますけれども、独自でやると、そこは難しいからということになりかねないので、やはりオール・ジャパンでやらないといけない。そういうことをぜひ検討すべきではないかと思いますが、枝野大臣、もう一言いかがですか。
○枝野国務大臣 特に工場の撤退については、そのことが雇用に与える影響が大きいという観点から、先ほど御報告しました厚生労働省がとっております統計、そして、もちろんそのほかにも、事業団体、経済団体等の統計データやさまざまなヒアリング等を地方の経産局中心に行っておりまして、幅広く情報を収集しながら施策の展開を行っているところでございます。
今御指摘いただいた、その撤退の件数、面積等も同じように把握をするべきではないかということについては、持ち帰らせていただいて検討させていただきたいと思います。
○高橋(千)委員 ぜひ検討していただきたいと思います、後から取り上げる具体の話の中でもやはり関係があるなと思っていますので。
こうした中、家電業界が軒並み赤字決算、過去最大規模などと大変ショッキングな報道がされました。二〇一二年三月期決算が、パナソニック七千八百億円、シャープが二千九百億円、ソニー二千二百億円、NEC一千億円、これを足しただけでも一兆三千九百億円の大赤字となって、パナソニックだけでも、グループ全体で年間に二万七千人ものリストラに踏み出すと言っています。
もちろん、震災、円高、タイの洪水など要因はさまざまありますが、一様に強調されているのは、テレビの不振だということなんですね。もうプラズマテレビも薄型テレビも日本製ではなくなるのか。大変な危機であるわけです。
そこで、昨年の六月十四日、環境省、経済産業省、総務省が連名で「家電エコポイント制度の政策効果等について」を発表したわけです。これを読みますけれども、家電三品目について約二兆六千億円の販売押し上げだ、それから、予算額の約七倍に及ぶ経済波及効果、五兆円の呼び水だ、延べ三十二万人の雇用を維持、創出したと打ち上げたわけであります。予算は六千九百三十億円。
ここには書いてありませんけれども、半ば政府によって強制的に買わざるを得なかった地デジのおかげでテレビは目標を大きく上回り、一億一千百三十一万台です。売り尽くしたという感があるわけですね。日経ビジネスでインタビューに応じたシャープの片山幹雄社長は、「国内テレビ需要の激減が(業績悪化の)引き金だ。私は評論家ではないが、エコポイントなどで需要を先食いした結果、市場が予想以上に冷え込んだということだろう」と語っています。
税金でこんなに応援して、そのしまいには業界から、業績悪化の引き金がエコポイントだ、ここまで言われる。これはどういうことでしょうか。この総括、どうしているんですか。
○枝野国務大臣 家電のエコポイント制度については、もちろん景気対策という側面もありますが、一つには環境対策、それから地デジの普及というような目的がありました。これらについては一定の成果は上がっているというふうに私は思っております。
それから、もちろん、景気対策ということについては、こういったポイントによって需要を前倒しさせるという効果が生じますから、当然、こうした制度が終わったところで反動減が生じるということは、当初から予想されているところでございます。
ただ、なお、直近一カ月の販売実績では、冷蔵庫とエアコンの売り上げは対前年比で増加をしております。問題はテレビでございます。もちろん、その終わらせ方についても、反動減がスムーズにいくようにという対応をとっておりましたが、大きな反動減が出ております。
ただ、あえて申し上げれば、国内において相当程度買いかえが一気に進むということで、国内における需要が落ち込むということは、これは電機メーカーは当然織り込んでおいていただかなければいけないわけでありまして、むしろ、電機メーカーのこの間の業績悪化の原因は、国内で売れなかった、これはむしろ予想しておいていただいて当然のことでありまして、国際競争のところで、韓国等との競争の中で売れ行きが落ち込んでいる、このことこそが一番大きな原因だと私は思っております。
○高橋(千)委員 率直に言って、約七千億円の税金が無駄だと言われているような状態なわけですよね。それを、いやいや、メーカーが、そんなもの織り込み済みなのに業績悪化したと言うのは何事だみたいなことを言うというのは、それは織り込み済みだったら、政府がなぜこういう政策をするんですか。そして、よかったところだけ総括として発表して、半年後のこの二兆六千億円の半分以上が赤字だと言っていることに対して何の総括もないんですか。
これは国を挙げての政策ですので、総理に通告しております、どうぞ。
○枝野国務大臣 経済政策、経済対策というのは、短期的に激変を緩和させるためにやっていかなきゃならない政策と、中長期的に日本の経済が活力を維持する、あるいは活力を高めるためにやる政策と、両面あります。こうしたエコポイントのような需要の先食い政策というのは、まさに緊急避難的に、急激な悪化というようなものの影響を緩和するための政策であります。
現に、私のもとでも、自動車についてエコカーの補助金等の施策をスタートさせました。これについて、これで当然のことながら将来の需要を先食いすることになりますが、現下の円高という大変厳しい状況のもとで、ここを乗り切りませんと、例えば円高の状況が緩和をして輸出等についてある程度の採算が見込まれる状況に回復したとしても、それまでの間に空洞化が進んでしまうということで、まさにその間、国内の需要を前倒しすることによって激変緩和をしようという政策であります。当然のことながら、こういった家電エコポイント制度についても、導入時の担当ではございませんが、そうしたものであると思っております。
そうしたことの中で、なおかつ環境への効果と地デジ普及という一定の効果を上げたことと、それから、一定期間我が国の電機産業の急激な落ち込みということにブレーキをかけたということは、これはどの程度の評価をするのかということは別としても、その効果はあった。
ただ、問題は、そもそも構造的に、特にテレビなどの分野においては、韓国との競争に完成品部分のところでは勝てなくなっている、この原因と反省をすることこそが一番重要だと思っています。
○高橋(千)委員 そうしたことも含めてきちんとした総括をするべきでないか、いいことだけ言うなということを言っているんです。先食いだと認めていながら、エコカーに三千億円、百万台、また新たな予算をつけているわけですね。そうすると、やはり瞬間的に期間従業員をふやして、そしてまた一気にこれを解いていく、その繰り返しでいいのか。やはり持続的な対策をとるべきだ。家計の消費を温めることと、雇用の安定に向かうべきだということを指摘したかったんです。
具体の話に入りたいと思います。
秋田県に十五ある電子部品大手、TDK工場が、業績悪化を理由に閉鎖するなどして、県内九工場に再編されると発表されました。秋田県にかほ市が創業者の出身地でもあるわけです。一九四〇年の平沢工場新設以来、地域経済の中心となってきましたが、秋田県内約一千二百名の従業員の配置転換と協力会社の契約解除などが大きな問題となっています。
二十日、私、TDKの東京本社に地元議員とともに行ってまいりました。山形県のTDK遊佐工場は将来性が見込めないということで閉鎖をして、この業種は完全になくなるわけですけれども、その五十一人の従業員は鶴岡市などへ異動となります。秋田県内のグループ従業員については、基本的には同じ仕事が移転という形で、雇用の維持にはなるという説明だったわけです。ただ、さらなる再編がないとは言えないということ、確定できないということをお認めになりました。
また、協力企業が二十社あるわけですね。その中には一〇〇%TDKの仕事しかしていない会社も含まれておりますが、三社契約解除が既に取り沙汰されておりまして、全体として、協力企業とそこに張りつく下請、関連企業となると、一千人あるいは数千人の規模ではないのか、全体像は誰もわかっていないわけです。これも見えないリストラと言えないだろうか。
表面的には、TDKは、グループ社員は一人も切っていませんということになるかもしれません。ただ、関連企業という見えないリストラがやはり地域を冷え込ますことになる、そういう問題意識は総理にあるでしょうか。
○枝野国務大臣 まず、先ほどのお話ですが、私も、需要の前倒しになるような政策が非常にすばらしくて、万々歳だなんということは申し上げておりません。潜在的な需要をきちっと長期的に掘り起こしていく、そのために家計所得、可処分所得をふやしていくということが中長期的には本質だと私は思っています。
ただ、それには、効果が出るには時間がかかります。それまでの間に完全に空洞化をしてしまったり、今御指摘いただいたように、工場閉鎖などをしてしまって、それから例えば需要が沸き上がってきても、それでは日本の国内の空洞化という、つまり雇用が創出されるということに対する対応にならないわけですから、したがって、短期的な、止血的な効果として、需要の前倒しになるような施策についても、必要に応じてやらざるを得ないということを申し上げているわけであります。
そうした上で、今、個別具体的な事業者の名前もお出しになって御指摘をいただきましたが、一般論として申し上げて、世界的な産業構造の転換、特に新興諸国の成長のもと、なおかつ、円高などの厳しい事業環境があります。我が国の物づくり産業が、企業が、事業の選択と集中が不可避であるということは否定できない状況であろうというふうに思っています。逆に言うと、事業の選択と集中がなされなければ、企業全体が倒れてしまう、あるいは日本の産業そのものが倒れてしまうというような国際環境の中に我が国はあると言わざるを得ないと思っています。
ただ、そうした際において、そこに働いている皆さん、あるいは立地をしている地域に対する影響をどれぐらい小さくした中で、事業の選択と集中がなされていくのか。そしてもう一つは、それと同時並行して、同じ企業がやるかどうかは別としても、新しい産業分野、競争力のある産業分野をいかに育てていけるのかということが重要でありまして、先ほど、工場立地について、補助金などを出しながら、片方で閉鎖がたくさんあるではないかという御指摘がありました。閉鎖がある分を超えるような新規立地ができる、やはりこのことでないと、国際的な競争の中で成り立っていくことは難しいのではないだろうか。
御指摘の案件についても、地域の自治体等と連携をして、必要に応じて、雇用あるいは取引先企業への影響軽減に取り組んでまいりたいと思っております。
○小宮山国務大臣 今御指摘のありましたTDKの件について、厚生労働省で取り組んでいますので、そのお話をしたいと思います。
厚生労働省としましては、二月七日に秋田労働局に緊急雇用対策本部を置きまして、TDKなどに対して、雇用の維持ですとか再就職支援、これについて要請を行っています。また、離職を余儀なくされる方の再就職、雇用保険の受給、また賃金の支払いなどに関する相談窓口の設置などを行いまして、一人一人の方へのきめ細かい対応をしていきたいと思っています。
今後とも、雇用のセーフティーネットの充実整備、また機動的な雇用対策、労働基準法の遵守の徹底などによりまして、対策に万全を期していきたいと考えています。
○高橋(千)委員 そこはしっかりやっていただきたいと思うんですね、当たり前のことですので。
ただ、問題は、見えないということにどう取り組むのかということを言いたかったんです。地域が冷えているでしょうという認識さえも、先ほど大変長い答弁をされましたけれども、一言もございませんでした。
先ほどの枝野大臣の答弁は、昨年、経済産業委員会でしょうか予算委員会でしょうか、同じ答弁をされているのを見ております。その同じ答弁は、新興国の台頭ですとか円高ですとか、選択と集中、TDKの本社に行って聞いたことと全く同じです、全く同じ説明。でも、ただそれで、そこで、わかりました、やむを得ないですねと言ったら歯どめがきかなくなるよねということを私は本社に直接申し上げてきました。
そういうところがどこかに出てくるかということが、やはり政府に聞きたいところなんですね。そうでなければ、雇用が幾ら縮んでもやむを得ないということになっちゃうんだということが言いたいわけなんです。
総務省の人口移動報告によると、秋田県は、昨年の転入者と転出者をプラスマイナスで見ますと、出ていった方が二千六百九十人多いわけなんです。生産年齢人口、働き盛りの人口が全市町村で転出の方が多い、これは実は秋田県だけであります。横手市の経営企画課の職員が、「工場が相次いで閉鎖し、就職先が無いのが一番の理由。企業支援をしても効果が上がらない。もはや行政だけでは転出増は止められない」と述べています。これは二日付の読売新聞が報じています。
こういう、地域が本当に危機感を持っている。だから、先ほど労働局の話もありましたけれども、にかほ市と由利本荘市、県、商工会が連絡会をつくって、にかほ市だけで製造業百六十社あるわけなんですね、それを一社ずつ歩いて聞き取りをしています。あなたのところはTDKと取引はありますか、それがどのくらいあるのか、つまり、さっき言ったように、一〇〇%のところもあるけれども、五割のところもあるし、数%のところもある。そういうのを全部聞いていって初めて影響がわかる。これは二月の末に発表するということですけれども、そういう努力をしているんですね。
だけれども、地域の人は、決してTDKを正面からは責めないわけなんです。これは、やはり創業者の地であるという自負があって、三工場も閉鎖するということが大変な衝撃なんだけれども、でも、やむを得ないかな、会社も苦しんでいるんだろうということで、遠慮しているわけなんですね。そうすると、いつまでもお願いベースでしかないし、自分たちの足でつかむしかないんだと。
ここをもう一歩踏み出して、もっと企業が実態をつかんで、ちゃんと自治体に報告しますよ、努力をしますよというルールづくりに踏み込んでいくと、そこで初めてリストラの実態や地域経済にどれほどの影響があるのかというのが見えてくるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○枝野国務大臣 今のお話を聞いて、今の御趣旨は私は理解いたします。
個々の企業にとっては、これだけの国際的な厳しい競争の中で、事業の選択と集中はやむを得ないと私は思いますが、同時に、日本の国内でさまざまな公的なインフラ等を利用した中で企業活動をやっているわけですから、社会に与える影響等を最小限にして選択と集中をする責任はあるというふうに思っています。
そうした上では、例えば、工場が撤退等はやむを得ない、あるいは縮小がやむを得ない場合に、地域経済に与える影響等について事前に関係者で相談をしていただく、そのことのために情報把握をするというような枠組みというのがあれば、それだけあらかじめその個々の企業にとっても対応がしやすくなるのではないかと思いますので、今の点については検討させていただきたいと思います。
○高橋(千)委員 お願いいたします。
それで、集約した先の工場、マザー工場と呼ぶわけですけれども、県の本荘工場、本荘工業団地に建てた、敷地面積が二十五万平方メートル、建築面積が五万七千五百平方メートル、これはグループ最大規模です。TDK―MCC本荘工場に一千七百人を超える従業員が集められると言われています。
秋田魁新報の十日付によりますと、ある金融機関の幹部がこんなことを言っている。つまり、このマザー工場ですね、「業績が良ければ自前のラインを増やし、悪くなれば他工場の業務を集めるスペース。伸びしろであり、「避難場所」でもある」こういう表現をしている。「避難場所」という表現になかなか衝撃を受けたわけです。
TDKでは、円高で一円上がると二十億円の損失になります。これは工場再編で浮くコストをチャラにしてしまう。一円でチャラにしてしまう金額になるわけです。ただ、きょうの報道でもあるように、一ドル八十円台ということで、予測より少し円安傾向に持ち直したわけですよね。楽観はできないけれども変動はするということで、ゆとりある工場をつくっておいて、そのときの状況に応じて伸ばしたり縮めたりということ。
ただ、そこに人が伴うわけですよ、当然。当然、人が伴うわけですよ。それはもうしようがないという立場なのか、こういう状況なんだから、伸ばしたり縮んだりしたときに、人は雇ったり切ったり、その方がいいんだよ、やむを得ないんだよという立場なのか、厚労大臣。
○小宮山国務大臣 雇用を安定させるということは、経済をしっかりと立て直していく、それを保っていくためにもぜひ重要だと思いますので、雇用の安定ということについては、厚生労働省としては、最大限いろいろな努力をしていきたいと思っています。
○高橋(千)委員 最大限努力するとお答えになりました。それが具体的にどういう形でできるのかということにもっと知恵を出さないと、やむを得ないという立場ではないということはまず確認をしたわけですけれども、さっきから言っているように、私、三年前にもTDKに電話しているんですよ。そのときは、にかほ工場なんですが、本社の方針なので何とも言えません、自分たちには言えませんと。そして、協力企業が、例えば派遣社員ですとかいろいろな影響はあるだろう、でも実態はわかりませんと述べたわけなんです。そこからやはり入れていって、きちんとルールを守れる立場に立てるのかということを言っていただきたい。ここは指摘にとどめたいと思うんです。
やはり総理に、先ほどから指名をしているんですが、お答えになっていただけないので、どうしても一言聞きたいんです。
際限のないリストラと海外移転、これで企業は一定の体力強化を図ってきました。でも、これは雇用も地域経済も大穴があくことになるわけですね。今、海外生産比率がすごく高まっていて、三年後には五割くらいは海外だというところが、三割近い経営者が考えているといいます。でも、これは、先ほど枝野大臣の答弁の中にもありましたけれども、海外シフトが進む中で、日本企業が勝ち負けている企業、サムスンですとかそういう企業の技術も、支えているのはTDKだったり日本の技術だったりということになっている。あるいは、海外に進出した子会社が日本に逆輸入してきてデフレを進める、そういう環境になっているわけですよね。だから、やはり地域の経済を冷やさない、内需を温める方向にしていかなきゃならない。
総理はいつも、このままでは社会保障がみんなで支える騎馬戦型から肩車型になってしまうということをよくおっしゃいますよね。だけれども、その肩車を担ぐ人さえも、担ぐ力さえもなくなるようではまずい、そういう認識に立って頑張らなきゃいけないと思いますが、いかがですか。これは、総理、答えてください。
○野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、人口構成の激変の中で、二〇五〇年代には肩車の社会になるというお話をよくさせていただきます。そのときに、支える側の方が働く場がない、元気がない状況だったら社会保障は成り立たないという御指摘は、全くそのとおりだと思います。
今までの御議論があったように、いわゆる円高等の影響によって産業の空洞化が進むことによって地域経済が疲弊をし、そこから雇用が失われる、その懸念は間違いなくあると思います。そうならないようにするために、例えば立地補助金を五千億円に拡充するとか、あるいは中小企業に金融支援をするとか等々の取り組みをやってまいりました。やはり競争力を企業に持ってもらわなければいけないと思います。
一方で、雇用と両立しなければいけないと思います。企業が国内に残って投資やあるいは雇用にきちっとお金を使うような環境整備に全力を尽くしていきたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 そこで、一つ提案しますが、地域はもちろんただ黙って手をこまねいているわけではございません。十一日付の魁新報によれば、にかほ工業振興会の渡部幸悦会長がこんなことを言っています。TDKは太陽のような存在で、協力会社はヒマワリだ。どういう意味かなと思ったら、みんな太陽の方を向き、横の連携がなかったという指摘なんですね。製造業集積地といいながら、全国のほかの集積地と違うのがこの点だ、今こそ連携して、みんな同じ方向を向いているんじゃなくて、横の連携で新たな事業を展開していくべきだと語っています。
これは市に聞いてみたんですけれども、地域資源を生かした新規事業を起こしたいと考えている、近くに県立大学もあるわけですけれども、産学官あるいは地元金融機関共同でぜひ発展をさせたい、ここに応援をしてもらいたいし、いい取り組み方があったら情報もいただきたい、そういうことをおっしゃっていました。私は、すごく前向きな話だと思うんですね。こういう地元企業が本当に横で連携をし合って新たな展開をしようということに対して、大いに支援をしていくべきではないか。被災地向けのグループ補助とか税制優遇とか、いろいろなことをやってきましたが、やはりこういう冷え込んでいる地域経済を立て直す上でもぜひ知恵を出すべきだと思いますが、どうでしょうか。
○枝野国務大臣 御指摘のとおり、異なった分野の中小企業がお互いの経営資源等を持ち寄って連携する、これは、本当に潜在的な力はまだまだ日本の中小企業にはたくさんある、ただそれが生かされていない、それはこういった連携によって生かされていくことにつながっていくと思います。特に、新商品の開発等に取り組んでいただくことで、地域に新たな事業や雇用を創出していける。
経済産業省では、中小企業新事業活動促進法という法律を所管しております。異分野の中小企業が連携した新商品開発や販路開拓の取り組みを認定し、予算や融資などによる支援を実施するとともに、独立行政法人中小企業基盤整備機構が専門家によるきめ細かいアドバイス等を実施しているところでございます。また、新商品開発や販路開拓などの経営課題について、豊富な支援実績を有する相談員が中小企業支援機関での直接対応や専門家派遣を行う事業を実施しているところでございまして、今御提起のありましたにかほ市のケースなど、御相談があれば、こうした制度を十分使えるのではないかと思っております。
○高橋(千)委員 よろしくお願いします。
やはり地域の自主性をなるべく引き出しながら、そして使い勝手のよい形で応援をしていただきたい。ここは公的に約束をしていただきましたので、しっかりとお願いしたいと思います。
先ほど、私、見えないリストラという表現を使いましたけれども、もう一つ、見えない理由が、やはり派遣労働などの雇用契約状態があるわけです。TDKは、先ほど私、三年前に電話しましたという話をしましたけれども、二〇〇八年のリーマン・ショック以降のときに県内の派遣社員三百人の解雇をしております。グループ企業はそれで既に派遣社員が減っているわけですね。だけれども、協力企業や関連企業はまだよく実態が見えていないわけです。これはどこでも同じですけれども、直接雇用ではないわけですから、契約を解除します、下請契約を解除しますというと、下請企業が派遣契約を切るという、間接の上に間接という形になるから、本当に見えてこないわけですよね。
これがもともとから指摘をされていた労働者派遣法の問題点だと思いますが、これについて、小宮山大臣、いかがですか。
○小宮山国務大臣 確かに、おっしゃるように、派遣先と派遣元のそれぞれの責任が分かれていることなど、いろいろと派遣の働き方を安定的にしっかりと守るということには問題があるということはわかっております。
このため、事業主に対しましては、労働契約法などに基づく解雇に関するルールについて啓発指導をしたり、また、派遣元指針、派遣先指針に基づく派遣契約の中途解除に際してのルールの遵守を求めています。派遣元は、新たな就業機会の確保、休業等により雇用を維持する、それとともに休業手当の支払いなどの責任を果たすということ、また、派遣先は、休業等により生じた派遣元の賠償をする、こうしたことがちゃんと指針で決められていますので、こうしたことを守るようにということを求めています。
加えまして、今回の労働者派遣法の改正案では、現在指針で定めている派遣契約の中途解除のルールを労働者派遣法の法そのものに明確に位置づけることにしまして、そういう意味では、派遣労働者の保護に役立つというふうに考えています。
○高橋(千)委員 今、労働者派遣法の改正が労働者の保護に役立つ、そういう答弁がございました。
民主党政権が誕生した大きなきっかけの一つが、二〇〇八年のリーマン・ショック以降の派遣切りの嵐、これで、労働者派遣法の抜本改正、大きな期待が民主党に集まったんだと思うわけであります。しかし、現実に、まだ派遣法の改正は実現しておらないわけですね。何の進展もないというのが現実ではないかと思うんです。
最初の法案が出たとき、その時点で既に、総選挙のときに約束をした三党、いわゆる民主、社民、国民新党ですね、この案はほごにされて、新たな政府案というものが出されました。私たちは、それは非常に骨抜きだ、あるいは施行日が先送りだということで問題だと指摘しました。それでも、大臣がおっしゃったように、ある程度は労働者の保護の方にやはり一歩踏み出したものである、そう思っていたんです。問題は、その後のことであります。
自民党時代に比べれば派遣労働者の保護に向いていた法案、そのわずかな法案がずっと棚上げされていたのに、昨年の臨時国会最終盤で、猛反対していたはずの自民党や公明党と共同して修正案が出されてきた。まず、そのことが理解できないんですよ。なぜ三党が共同できるのかということが一つありますよね。
その中で、いわゆる核となる部分、製造業への派遣、登録型派遣の原則禁止という部分を全面削除してしまった。何にもない法案になっちゃった。これが突然不意打ちのように出てきて、厚労委員会でわずか三時間の審議で可決をされてしまったわけです。これは、私はもちろん抜本修正案を出して反対をいたしました。
ただ、これは、実は、昨年の国会は時間切れで廃案になったわけですね。でも、それは、時間切れというだけではなくて、やはり国民の世論が大きくあったからだと思うんですよ。それを何にも見ないで、今国会また、厚労委員会の冒頭で、来週にも採決を狙っているというんです。
私はこれまで繰り返し、せめて参考人として派遣切りの当事者を呼んで意見を聞いてほしいと訴えてきました。これは与党の中にも、それは当然だよね、必要だよねという声がありました。でも、全然そういう機会さえもなかったんです。それが今、まさか審議もしないで通してしまう、全く違うものを。こんなことが許されていいんでしょうか。
総理に聞きたいんです。マニフェストをこれだけ破るということにもう怖いものがないのかもしれませんが、民主党は政権交代のときに、行き過ぎた規制緩和、そう批判をして、労働者派遣法の抜本改正を掲げたんです。その旗はもうおろしたんですか。
○小宮山国務大臣 その抜本改正の法案を確かに出しましたけれども、その後、東日本大震災ですとか円高とか欧州危機など、いろいろ状況が変わった中で、民主、自民、公明三党で修正案が提出をされました。この修正案は、政府案に盛り込まれている労働者の保護規定の多く、例えば、日雇い派遣の原則禁止ですとか、労働契約申し込みみなし制度の創設、そのほか、離職した労働者の労働者派遣の受け入れ禁止、欠格事由の追加など、多くのものが維持されていますので、この法案の効果はあると思っております。
一歩前進ということで、ぜひ早期の成立に御協力をお願いしたいと思っています。
○中井委員長 質問はなしで、まとめてください。
○高橋(千)委員 もちろん一言で終わります。
こんな言い分は絶対に認められません。今さらになって、震災が理由だとか、そんなことは絶対に言ってはなりません。抜本改正は絶対許せないと、企業の論理ばかりがまかり通るようなやり方は認められないということを訴えて、終わりたいと思います。