国会質問

質問日:2012年 3月 14日 第180国会 厚生労働委員会

雇用保険法一部改正案

 日本共産党の高橋ちづ子議員は14日の衆院厚生労働委員会で、被災地の再就職が困難な人に失業手当を60日間個別延長給付するなどの雇用保険法一部改正案について、「必要な措置」として賛成するとし、抜本的な対策を求めました。同委員会では同改正案が全会一致で可決されました。

 高橋氏は、求人と求職のミスマッチというが、被災者の事情をよく見るべきだとして、被災3県で6割の人が震災前より収入が減り、その4割近くが月額で20万円以上減ったとする調査を紹介。一家の働き手を失うか、夫婦とも失業して家計を支える仕事が必要な人も多く、「通勤に必要な手段がない」「保育所がいっぱいで子どもを預けられない」などの声を示して、安定した雇用の確保と就労支援を求めました。小宮山洋子厚労相は「おっしゃるとおり。政府全体として取り組む課題だ」と答えました。

 高橋氏は、被災地の中小企業から、技術訓練する場所がなく人材が流出するとの懸念の声があがっていることをあげ、「身近なところで職業訓練できる環境が必要」と指摘。高専や大学などの設備・教員を活用した中小企業の人材育成事業の拡充・延長を求め、「厚労省とモノづくりを担う経産省が連携し、公的職業訓練を充実させるべきだ」と強調しました。小宮山氏は「公的機関の関与は必要」と認め、「職業訓練もしっかり力を入れていきたい」と述べました。

(しんぶん赤旗 2012年3月15日より)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 二〇〇八年以降毎年、雇用保険法の改正を本委員会で行ってきました。悪化する雇用失業情勢を踏まえ、また派遣切りの問題などもあり、本当に雇用のセーフティーネットを広げなければということで議論を進めてきたかと思います。
 今回も、年齢や地域条件を考慮して、再就職が困難な場合に基本手当の給付日数を原則六十日分延長する個別延長給付制度を二年間延長するなど、必要な措置として賛成するものであります。
 しかし、依然として、失業者のうち雇用保険受給率は二割台にとどまっており、やはりつなぎ的な改正ではない抜本的な制度のあり方、これを議論しなければならないと思います。
 現在検討されている有期労働法制ですとかパート法の見直しなども、雇用の安定化へつながるものでなければならないし、最低賃金の底上げなど、こうした、本当に雇用のルールをしっかりとつくって安定した雇用をつくっていくということでの議論を引き続き行っていきたい。まず、このことを最初に述べておきたいと思います。
 それで、最初の質問は、震災に伴う失業手当の特例給付、この間も随分議論されておりましたけれども、まず、どの程度の被災者が利用したのかということと、給付が切れた人が既に出始めておりますけれども、そのうち現在も求職中の人はどのくらいいるのでしょうか。

○森山政府参考人 お答えいたします。
 被災された方々への失業給付の給付日数につきましては、震災特例等によりまして百二十日の延長のほか、被災三県の沿岸部等で、十月一日以降、広域延長給付として、さらに九十日の再延長ができることとしました。
 この広域延長給付の被災三県におきます受給者は、平成二十三年十月から平成二十四年一月までで一万二百十一人となってございます。
 また、この広域延長給付が二月十七日までに終了した方々、三千五百十人でございますけれども、そのうち、支給終了時点で就職をした方が九百二十一人、求職活動中の方が二千百六十三人となってございます。
 さらに、この一月中に支給終了し、未就職であった二千九十二人のうち、百五十六人がその後二週間で就職をされております。
 そういう状況でございます。

○高橋(千)委員 今、失業給付が既に切れ始めて、そのうち二千百六十三名がまだ仕事が見つかっていないというようなことがあったかと思います。またこれは段階的に出てきて、三月、四月ということで新たな数が出てくるということがあると思います。
 延長をしないのかという議論が随分されてきたわけなんですけれども、そのときに厚労省は、やはり復興段階では、被災された皆様のそれぞれの希望を実現するためにも、働くことで収入を得られるようにすることが大事であるということを述べて、被災者の失業給付のこれ以上の延長給付を行わないと言っているわけです。
 しかし、それはあくまでも仕事があってのことであって、建前は立派だけれども、現実に仕事がない、つけないという実態があるということをやはり見なければならないし、そのための対策をやはり切れ目なくやっていかなければならないと思うんですね。
 そこで、まず伺いたいのは、再就職が難しい理由として、求職者と求人のミスマッチがよく指摘されているわけです。その原因を厚労省としてはどのように考えているんでしょうか。

○小宮山国務大臣 これまでもハローワークを通じまして、昨年の四月から十二万人以上の就職に結びつけてきているわけですが、今委員も御指摘のように、先ほど古屋委員にもお答えをいたしましたけれども、やはり地元の主要な産業の復興が、その町の復興計画、市の復興計画がまだであるということから図られていない中で、安定的な雇用の求人が少ないということ、それからまた、建設業の求人が多いなど、特に女性の皆さんなどにはミスマッチがある、こういうことが、なかなかまだ結びついていない原因かと思います。
 これも繰り返しになりますけれども、「日本はひとつ」しごとプロジェクトで、最初は全てのものを仕事に結びつけるという復旧型のものをやってきました。そのことと、これから本当に地元の主な産業、それから、これからの新しい成長産業にもなるであろう福祉の関係、医療の関係、環境のことなどについても新しく仕事をつくろうということもやっていますけれども、全体の復興計画がまだしっかりできていない段階で、スタートをしていないということなどがございますが、何とか新しい仕事をつくり出し、一人一人に結びつけていく。
 特に、仕事に結びつきにくい高齢者、女性、障害をお持ちの方には、市町村のNPOなどにも委託できるようなモデル事業ということも活用して、そこは、精いっぱい仕事をつくり出し、結びつけるために、ハローワークも個別の対応などきめ細かにやっていくということだというふうに考えています。

○高橋(千)委員 後の方はこれから少し議論していきますので、ちょっと最初の認識のところですね。
 私、これ、すごくこだわっているんですけれども、やはり何十年もこのミスマッチという言葉は使われてきていて、新卒者の仕事がない問題とか、あるいは定着が非常に悪いということにミスマッチということがよく使われて、どちらかというと仕事をしたいという人が選んでいるみたいな、そういうことで言われることが多いわけですね。また、一部には、求人を出しても来ない企業が、失業手当があるからなのではないか、そういうことを言っていることも報道されていますよね。それを、企業の気持ちは大変よくわかるんですけれども、そうだと言ってはいけないのだということを、ちょっと認識を一致させたいなと思うんです。
 十一日付の朝日新聞に載った調査で、震災後それまでの仕事がどうなったかに対して、震災前と同じと答えた方たち、岩手県が一番多くて四七%、宮城県が三一%、福島県は一六%にとどまっている。福島県は特別な事情があるので低いのは当然だと思うんですが。そしてさらに、震災前に比べて収入がどうなったかというのでは、三県合わせると、減ったのが四七%、なくなったのが一三%。つまり、六割が、減ったか、なくなったか、どちらかであると。その六割の人に、月額で幾ら減ったかというのに対して、一番多かった月額で二十万以上減っているというのが四割に近い数字であることに非常に驚いたわけですね。
 これはやはり今回の災害の特徴にもなるのではないか。つまり、一家の働き手を失ってしまって、ですから、お母さん一人で家計を担わなければならない事情ですとか、夫婦二人でようやっと暮らしていたけれども、共稼ぎでやっていたけれども、二人とも仕事を失ったとか、そういう事情があるわけですね。ですから、仕事があるだけましじゃないかとか、短期でも、あるいは失業保険よりも低いくらいでもいいじゃないかということは決して言えない事情があるんだということをまず押さえなきゃいけないと思うんです。
 また、三月十日付の河北新報では、例えば石巻市で、希望と求人が合致しない理由を、いろいろ調査を報道しています。
 例えば、今の水産加工などの、女性が多くかかわってきたところの再開を待っているというところが四・九%であるわけですけれども、本格的に仕事探しができない、余りにも災害が大き過ぎて、まだそういう環境の立て直し自体ができていないことが一六%ある。それから、そもそも仮設住宅が遠過ぎて、通勤のためのバスがないとか、車がないとか、あるいは保育所が定員いっぱいで子供が預けられないために、そもそも働くことができないとか、そういうさまざまな事情があるんだと。
 ですから、ミスマッチと簡単に言っちゃうんですけれども、そういう事情を踏まえなければ、そしてそこに対応しなければいけないということを、まず少し大臣の認識を確認したいと思います。

○小宮山国務大臣 それは委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。ですから、ハローワークなどでの仕事をつくるということだけではなくて、保育所の問題とか、全体のことを、これは省庁の壁を超えて、政府全体として取り組まなければいけない課題だと思っています。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 そこで、少し具体的な事業の話を伺いたいと思うんですが、第三次補正で求職者支援訓練に対しての規模拡大を一定図っているけれども、どういうところで雇用を見込もうとしている、つまり、訓練はどのようなことをやろうとしているのか、お願いします。

○牧副大臣 具体的に申し上げれば、瓦れき処理などのための建設機械の運転に必要な技能や知識を習得する特別訓練コース、あるいは介護分野の訓練コースの設定に今取り組んでいるところであります。

○高橋(千)委員 今、もう少し詳しくそれをお話ししてもらいたかったんですけれども、大体どのくらい考えていますか、雇用の人数とか。

○牧副大臣 二十三年度補正予算で、求職者支援訓練で二万四千人の訓練定員を拡充、このうち、被災三県には六千人の訓練定員を配分、二十四年度予算案では、被災三県の訓練定員は、認定上限値、約三万五千人分を予定しております。
 他の道府県と比較して、新規求職者一人当たりで倍以上の訓練定員を確保する予定でございます。

○高橋(千)委員 その訓練の制度、昨年の四月に求職者支援制度の議論をここでしましたよね。言ってみれば、訓練自体が十分ない中で、民間に委託をするので不十分な中身になっていますよねということを指摘いたしました。例えば、エステですとかネイルですとか、そうしたものも訓練の一つに位置づけられていて、しかし、訓練を終えたけれども雇用に結びつかないものもあるわけでと、そういう指摘をしましたよね。あるいは、求人に教員も出しているというふうなことを言ってきた。
 それで、私は、もう少しこうした訓練制度、つまり、生活保護と雇用保険の間をつなぐ形というのはもっと必要なんだろうと。拡充していこうという立場は一緒なんですけれども、そこにもっと公が絡むべきではないかということを考えているんです。
 それで、きょうは経済産業省にも来ていただいているので、ちょっとその議論をしてからもう一度厚労省に伺いますけれども、経済産業省が平成十八年から二十一年度に実施した高専等活用中小企業人材育成事業や二十年度第二次補正で今年度末までとしたものづくり分野の人材育成・確保事業、これらはどのような効果があったでしょうか。端的にお願いします。

○中根大臣政務官 高橋先生にお答え申し上げます。
 経産省の施策についても御注目をいただきまして、ありがとうございます。
 先生御指摘の高専等活用中小企業人材育成事業は、中小企業ものづくり人材育成事業の一環として、三年間のモデル事業として、平成十八年から十八、十九、二十と行われ、二十一年度を成果普及に充てたということでございます。
 これは、その中の高専等活用中小企業人材育成事業ということでございますが、全国三十四地域において、高専等の設備や講師を活用した地域の中小企業若手技術者向けの講義、実習などを支援したということで、延べ約六千人が参加をし、改善等の意欲を持った人材の育成などにつながったと考えております。
 また、平成二十年度第二次補正予算で措置をした、これは基金事業で、全国中小企業団体中央会にその基金が置かれているものでありますが、ものづくり分野の人材育成・確保事業では、大学、企業等の設備、教員や企業技術者等の人材を活用した、地域中小企業のニーズを踏まえた座学、講義や現場実習を支援させていただきました。延べ約二百四十事業を実施、二万人を超える参加を得たところでございます。中小企業技術者のモチベーションの向上などにつながったと考えております。
 以上です。

○高橋(千)委員 前段にまず紹介した事業、これはパンフレットもできておりまして、二種類あるんですけれども、工業高校等実践教育導入事業というのもございまして、私がさっき言った公の問題で、やはり高等技術専門学校、これの資源を活用して、人材を活用して中小企業の若手の技術者を育てていこうというところに着目をしたわけであります。
 受講者の満足度という調査があって、平成十八年には七四・八%、それから十九年八一・一%、二十年八〇・六%ということで、満足度も非常に高い。いいなと思うんですが、これは終わってしまった事業であるということなんですね。
 後の方の、ものづくり分野の人材育成・確保事業も二万人ということがありましたし、これは私は、中小企業の技術そのものが、講師になることも含めて、中小企業団体が実施機関ですので、非常に大事なのではないか。
 先ほど来議論されている、被災地でそういう復興の事業を担う人がいないんだ、技術ができていないんだということで、そういう意味でのミスマッチも起きているわけですよね。そういう意味で、こうした事業が終わってしまうのはむしろ残念なのではないか。モデル事業としてやったのに、本事業がないそうなんですね。やはり、ここを拡張あるいは延長という形で考えるべきではないかと思いますが、もう一言お願いいたします。

○中根大臣政務官 ありがとうございます。
 ものづくり分野の人材育成・確保事業につきましては、これは先生御指摘のとおりでございますけれども、二十三年度までの基金として造成しており、東日本大震災後の技術人材の育成にも活用できることから、二十三年七月に公募を行わせていただきました。福島、岩手、宮城といった被災地五地域で約五百五十人の人材育成を含めて、全国で二十六事業を採択したところでございます。
 それで、これは二十三年度に終わってしまいますので、その代替のと言えるのか、そういう事業といたしまして、二十三年度の三次補正で十四・九億円を積ませていただきまして、これは、被災地におきましては、岩手県の中央会、宮城県、福島県の中小企業団体中央会も採択をさせていただいたところでございますけれども、地域の中小企業団体が地域の大学と連携して、学生と企業のマッチングから新入社員の採用、研修、定着までを一気通貫で行う取り組みを支援する事業を新たに実施いたしておるところでございます。
 こうした事業を通じて、被災地の方々を含めて、中小企業の物づくりや人材の確保、育成を支援してまいりたいと考えております。
 以上です。

○高橋(千)委員 代替できる事業があるのだというお話だったかと思うんですけれども、そこで、私がこういう質問をなぜしたのかというのは、高等技専の問題、これまでも、減ってきましたねということをいつも指摘して、やはり公的職業訓練の大事さということを主張してきました。
 例えば、気仙沼に行ったときに、復興事業の担い手となるべき事業主の方が、雇いたいんだけれども技術訓練をする場所がないのだ、それで、お隣の一関ですとか北上の職業訓練センターに行っていると。そうすると、それが流出につながってしまうわけですね。ですから、地元に定着するために、なるべく身近なところでそういう職業訓練がやはり必要なんだという立場でやっていただきたい。
 そこで、今、中小企業庁の政策もある、厚労省としても成長分野等人材育成事業などということも考えているわけですけれども、厚労省と経産省がもっと連携して、そして、定着するという立場での、公がやはりしっかりかかわる職業訓練、こうしたことをやっていく必要があると思いますが、大臣の。

○小宮山国務大臣 各省の連携という意味では、「日本はひとつ」しごとプロジェクトを各省連携してやっておりますので、そちらでの連携した取り組みということもあるかと思っています。
 おっしゃいましたように、やはり、日本の基幹産業の物づくり、これをしっかりと訓練する、その技能を訓練するためには、公的機関が関与する必要ということは、私もそういうふうに思います。
 このため、厚労省では、物づくり分野を中心に独立行政法人や都道府県が設置する公共職業能力開発施設、ここで公共職業訓練を実施していますが、被災地でもやはりこの部分にも力を入れる。言っていただいたような成長分野などについては、民間教育訓練機関等を活用するということもございますので、そこのところはそれぞれ役割が違いますので、おっしゃる公的機関での訓練ということにもしっかりと力を入れていきたいというふうに考えています。

○高橋(千)委員 成長分野だけが前に出ますと、復興のこれから長い事業の中で、必須分野といいましょうか、それこそ住宅にかかわるあらゆる技術ですとか、そういう地に足のついた事業もやはり重要なわけで、その担い手を育てて、そして定着させていくということもあわせて必要なわけですから、成長イコール規制緩和などにだけ重点が置かれないようにということも含めて、公的職業訓練の大事さということを指摘させていただきました。よろしくお願いしたいと思います。
 終わります。

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