日本共産党の高橋ちづ子議員は、15日の衆院災害対策特別委員会で災害障害見舞金の支給要件緩和を求めました。
災害による障害に対し障害1級に準じて250万円を支給する同制度の適用は、東日本大震災の被災3県で28人にとどまっています。
高橋氏は、阪神・淡路大震災で脳の障害になった娘を持つ母親らが、「11年間、自分だけで障害に向き合ってきた」と声をあげたことや、兵庫県と神戸市が2010年に初めて調査を行ったことを指摘。労災保険なら年金や医療給付などのメニューがあるのに、災害障害見舞金と災害弔慰金の両制度は死亡か重度の障害という段階しかないとして、「実態を調査し、広く支援が届く仕組みを検討すべきだ」と迫りました。
中川正春防災相は、「どれだけ(現行制度が)機能しているか検証していきたい」と答えました。
高橋氏は、同弔慰金と見舞金には申請期限がなく、これからでも支給は増やせるとして周知徹底を要求。厚労省の西藤公司審議官は「市町村が認定した場合は支給される」と認めました。
また高橋氏は、長野県が豪雪・寒冷地に対応した仮設住宅の標準仕様の整備を提言していることに言及。東日本大震災で水道管凍結や寒さ対策など大幅な追加対策を要したことをあげ、「仮設の標準仕様を示すべきだ」と主張しました。津田弥太郎厚労政務官は「厳しい生活環境であることを考えて、しっかり取り組んでいきたい」と答えました。
(しんぶん赤旗 2012年3月16日より)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうはまず、災害弔慰金と災害障害見舞金制度について伺いたいと思います。
災害弔慰金の支給等に関する法律は、昭和四十八年に議員立法で成立し、災害救助法が適用されたなど自然災害によって死亡した場合、最大五百万円が支給されることになっております。また、昨年七月は、本委員会で、同居していてほかに遺族がいないなどの場合、兄弟姉妹にも遺族として受給できるという改正がされました。私はこのとき、ぜひ質問をしたかった。要するに、もう一つ、きょう取り上げる法改正をやっていただきたいという要望がございました。きょうはその機会をようやっといただいたわけでございます。
それで、三月二日現在で一万七千六百二十三件の災害弔慰金が支給をされておりますが、それに対して、災害障害見舞金は被災三県で二十八名にすぎません。負傷者は六千二十五名いるわけですけれども、災害障害見舞金二十八名というのはまだ少ないように思いますけれども、その理由をどのように考えているか伺います。
○西藤政府参考人 お答えいたします。
災害弔慰金の支給等に関する法律に基づく災害障害見舞金は、自然災害により精神または身体に著しい障害を受けた方に対して、お見舞いの趣旨で最高二百五十万円を支給する制度でございます。
この災害障害見舞金は、災害により負傷し、または疾病にかかり、治ったときまたはその症状が固定したときに、法律別表に掲げる程度の障害がある方に対して、市町村において支給するとされております。
まだ市町村において手続中のものなどがあると承知しておりますが、その支給対象者は、両目が失明した方、両方の上肢の用を全廃した方、両方の下肢の用を全廃した方など、法律別表に掲げる重度の障害を負った方を対象としているということでございます。
○高橋(千)委員 今は理由を伺ったんですけれども、それは、まだ早いから今後出てくるだろうという趣旨だけですか。
○西藤政府参考人 そういうものもございますし、障害を負った方全ての方を対象とするわけではなく、法律の別表に掲げる程度の、重度の障害の残った方を対象とするということもあると思います。
○高橋(千)委員 やはり、後段の方で、法律そのものに別表という形で、今読み上げた九項目なわけですね。これは障害一級に値するわけですけれども、明確に書かれているものですから、かなり厳しく限定されるものになってしまう。ここに大きな問題があるのではないか、もっと要件を緩和するべきではないかということが、内外から意見が寄せられているというところだと思うんですね。
それで、東日本大震災の被災三県では、要介護申請が震災後一・三倍にふえたといいます。避難先を転々とし、閉じこもることがふえて足腰が弱くなったり、周囲と会話がなくなって認知症症状が出るなど、避難所で暮らす高齢者の六割に歩行困難などの生活機能低下が起きていたとの調査結果もあります。
また、大震災一年目に当たっての毎日新聞の調査で、余震や新たな津波への不安、原発事故再発への不安を持つ方が七六%にも上り、また三割が心身の調子を崩していると答えています。自殺者も被災地はふえているなど、長引く避難生活の中で、心身状況が悪化するのは想像にかたくないと思います。こうした実態をしっかりと捉えて、柔軟に対応するべきではないかと思うんです。
そこで、まず確認をしたいんですけれども、お手元に資料を配りました。災害弔慰金と災害障害見舞金の支給状況、過去十年分を表にした資料であります。これは見ていただくとわかるんですが、同じ災害の名前が何度か出てくるところがございます。注目なのは、阪神・淡路大震災による災害弔慰金の支給は発災から七年後の平成十四年に一件ありますし、障害見舞金は六年後の平成十三年に一件あるわけです。これは、災害弔慰金と災害見舞金の申請に期限がないためであるということなんですね。
そうすると、これから先も、ほかの災害についても申請できる条件があるということを確認させていただきます。
○西藤政府参考人 災害弔慰金や災害障害見舞金の支給は、相当の時間を経て災害を原因として亡くなられた方の御遺族が新たに判明したり、また、負傷した方に係る障害認定がなされるといったことなども想定されます。
したがいまして、相当の時間を経てからこのような事例について、市町村が過去の災害が原因であると判断した場合は、災害弔慰金あるいは災害障害見舞金が支給されることになります。
○高橋(千)委員 まず、このことがとても大事かなと思いまして、これからでも、当然、時間がたってわかることもあるのだということで、まだ非常に認定件数が少ないんですけれども、可能性があるということをまず確認させていただきたいと思います。
あわせて、平成十八年の豪雪、これは十七年度というところと十八年度というところに二つ出てきます。足しますと、百十六名に弔慰金が支払われて、十一名に見舞金が出されております。これは本委員会で、私自身、雪おろし中の事故などによる死亡に対して災害弔慰金の支給ができるはずだということで質問をしたことがございました。亡くなった方が戻ってこないとはいえ、支えを失って途方に暮れる遺族をわずかでも励ますことができた、こういう声が寄せられたことであります。
それで、確認ですけれども、今冬の豪雪も、百二十一名が死亡し、先ほどの大臣の数字ですと、数字がふえていますので、重傷者が既に七百八十八名いるわけですね。当然、受給資格のある方には漏れなく渡してほしいと思っておりますが、この点について、対応方を伺います。
○西藤政府参考人 お答えいたします。
災害弔慰金の支給等に関する法律においては、自然災害により死亡した住民の遺族に対しては災害弔慰金が、また、災害により著しい障害を受けた方に対しては災害障害見舞金が支給できることになっております。
自然災害による死亡等であるか否かの判断は、法を踏まえ、支給の実施主体である市町村が行うこととなりますが、今冬の豪雪による災害に対しましても、私ども厚生労働省といたしましては、周知を図りますとともに、都道府県を通じて、市町村からの相談に十分応じてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 周知徹底をお願いしたいと思います。
そこで、阪神・淡路大震災では一万六百八十三名重傷者がいた。それに対して、まだ六十四名の災害障害見舞金の支給にとどまっております。震災後二年目の平成九年の四月に、毎日新聞が特集、「そして今―後遺症とともに」と題して震災障害者の問題を報道したのを皮切りに、新聞各紙が報道し、シンポジウムなどで震災障害者の問題が顕在化してきたと思います。
二〇〇六年一月の、震災で障害・後遺症を負った方と家族を支援する会が開催された様子を朝日新聞が報じています。神戸市須磨区の二十一歳の娘について語った女性が、震災当時小学校四年生だった娘は、今も当時の記憶が戻らない、自律神経失調症が進み、幼いときの記憶も失った、過食症と拒食症を繰り返し、リストカットに走ったこともあった、本当に疲れた、この女性自身が神経障害に悩まされている、こういう報道をしております。
また、震災でピアノの下敷きになって脳に障害を負った神戸市北区の二十五歳の娘さんを持つお母さんの言葉が紹介されております。きょう出会った人たちは、十一年間自分だけで障害と向き合ってきていた、やはり震災障害者はおられたんですねと述べています。
これは非常に重く受けとめました。自分だけで障害と向き合ってきていた、この問題に光が当たらず、本当に同じ立場の方たちと出会えずに苦しい思いをしてきたこと、また、行政の窓口に行っても、何の情報もまた支援も得られないで、この当事者同士の交流を待ち望んでいた、そういうことに、私たち国会自身も受けとめて、応えていかなければならないなと思ったわけです。
二〇一〇年、兵庫県と神戸市がようやく実態調査に踏み出し、少なくとも震災によって障害を負った方が三百二十八名と発表しました。身体障害者手帳に原因が震災と書かれていた人を数えたそうであります。調査やこうした集いに取り組んできた岩崎信彦神戸大学名誉教授らは、置き去りにされてきた震災重傷は障害者として、災害弔慰金法の改正を強く要請しています。
災害障害見舞金の要件については、昭和五十七年の局長通知、労働者災害補償保険法施行規則別表一に規定する一級の障害に準拠したものというふうに指定がされております。この要件を緩和すべきではないでしょうか。
○津田大臣政務官 高橋委員にお答えを申し上げます。
今委員申されたように、この災害弔慰金の支給等に関する法律は、議員立法で昭和四十八年に成立をいたしました。このときは死亡者のみに弔慰金が行くという制度でございまして、御案内のように、五十七年の改正によりまして、重度の方に対する見舞金という形で改正をされたわけでございます。
この災害障害見舞金につきましては、自然災害により死亡した場合に匹敵するような重度の障害を受けた方に対する見舞金として、市町村が支給をする制度であります。この支給要件は法律に明文で規定されており、技術的な判定方法は、通知により、労災制度の例によるというふうに示しているわけでございます。
したがいまして、この法律に規定されております災害障害見舞金の支給要件を緩和すべきではないかというお話でございますが、昭和五十七年に議員立法により制定されたという立法の経緯、さらには、障害を受けられたことに関する生活支援というのは一般の社会保障制度により対応しているというこの二点から考えますと、これは国会で幅広く御議論をいただいた上で、また御検討いただくものではないのかなというふうに考えております。
○高橋(千)委員 昭和五十七年ですから、やはり本当に重度ということが今の限定的な理由だったと思うんです。ですから、その規定があったがために、二十五歳、二十四歳、あるいは小学生のとき、そういう若い、これからの人生が一遍に変わってしまって、そして何の支援も受けられなかったという方たちが、ようやっと今、声を出し始めたということなわけですね。そこに本当に応えていくべきではないか。
議員立法だからとおっしゃいましたけれども、私は、これは当然委員会の皆さんにも呼びかけたいし、委員会の皆さんにも要望が来ていることなんですね。ただ、厚労省としても、よく実態を把握しながら、重度で線を引いたことが正しかったかどうかも含めて調査をしながら、議員立法であればそれに応えていくよ、また必要なことをやっていくということはお答えになっていただけますか。
○津田大臣政務官 国会で御審議をいただき、方向性を出していただいたならば、直ちにその方向に向かって努力をしてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 お願いします。
そこで、大臣に伺いたいと思います。例えば、東日本大震災に伴う労災保険の給付、支給決定件数が今三千四百六十三件です。そのうち、もう亡くなってしまった方、遺族給付は二千五十二件なんです。そうすると、その差は一千四百十一件、生きている方に対する労災が支給決定されています。これは、労災というのはメニューが幾つもありますよね、年金ですとか医療給付ですとか。ですから、さまざまなメニューがあるということ、すごくこれは大事だと思うんです。同じように、仕事があった方には労災があり、しかし、なかった方にはこれしかないわけです、本当に重度の人にしかない。
これは、同じように義援金でいきましても、今、住宅の損壊程度しか基準がないわけですよね、基準がないといいますか、配分委員会がそうしているわけなんですけれども。配分委員会が住宅の損壊にしているために、住宅が一部損壊程度であれば何の支援もないですし、何らかの傷害や病気になり長期に医療や介護を必要とされた方、こうした方に対しては義援金さえも対象とならないわけです。
ですから、こういういろいろな制度に思いっ切りすき間がある、この実態をちゃんと調査して、もっと広い被災者に手が届くようにすべきではないか。この点、大臣がぜひ受けていただきたいと思います。どうでしょうか。
○中川国務大臣 労災という前提の中で救済される人々、と同時に、働いているということでない形で災害を受けた、そして、それをどう救済していくかということだと思うんですが、基本的には、医療保険それから介護保険という一般的なセーフティーネットというベースがあるんだと思うんですね。それを前提にして、それにどうかさ上げするかという議論に恐らくなっていくんだろうというふうに思います。
今の制度の中では、自然災害の被災者に関する医療保険、介護保険の給付に関して、一部負担金の減免措置ということをやっておりまして、この措置がどれだけ生きているかということだと思います。さらに、これらの給付に加えて、被災者生活再建支援制度、これは、建物というか、トータルでいけば建物ですが、その以前のベースになる一時金というのはこの再建支援制度がかかってくると思いますし、それから、生活福祉資金、災害援護資金による貸付制度、こういう形で整っているんだというふうに思います。
これが、御指摘のようにどれだけ機能をしているか、現実対応になっているかということ、これについては引き続き検証をしていきたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 ぜひこれは検討いただきたいと思います。労災と比べたら額なども全然違いますから、メニューがなさ過ぎるんだと。医療費の負担免除をおっしゃいましたけれども、やっと延長して九月ですからね、全然そういう問題ではないんだと。長期になった方に対する支援がないじゃないかということを言いましたので、きょうは検討をお願いしますということです。
さて、もう一つきょうはテーマがございます。二月十三日に災対特で長野と新潟の豪雪調査に行ったときに、長野県の知事から、応急仮設住宅の仕様に関する提言が出されました。豪雪寒冷地等で発生した大規模災害時において、豪雪寒冷地等に対応した応急仮設住宅を速やかに建設することが可能となるように、各都道府県や市町村の意見を十分に反映した標準仕様の整備をやるべきだということで、積雪荷重に対応した建設地の構造や屋根つき外廊下及びスロープの設置、二重サッシ、床、壁、天井の断熱材の割り増し、給水設備の凍結防止など、十数項目の具体的な提案をしています。また、栄村は独自の特別仕様で建設した住宅があるということで、私たちも見てきたところです。
今回の大震災では、水道凍結や寒さ対策の不十分さが繰り返し指摘をされ、政府が後から追加対策をやったり国費を追加交付するということで、大きく膨らんだわけです。ですから、今回の教訓を踏まえて、これからも避けられない災害に備え、最低でもこれくらいはという標準仕様を示すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○津田大臣政務官 お答え申し上げます。
スピードを速くしなきゃいかぬ、早く仮設住宅をつくらなきゃいかぬ。一方で、質もよくしなけりゃいかぬ。スピードもグレードもということ、これは当然のことなんですが、なかなかそこが十分行き届いていない点は、我々も反省しなければいけないというふうに考えております。
既に、厚生労働副大臣を座長とするプロジェクトチームでアンケート調査を行いまして、その結果を踏まえて、バリアフリー対策や寒さ対策の追加工事等をこれまで行ってまいりました。
委員の御指摘のとおり、長野県におきましても、豪雪地帯であるということも鑑みて、標準仕様を見直していただきたいと。基本的に、標準仕様につきましての取り組みというのは、県とプレハブ協会さんとがどういう仕様にするかということをやられる。国は、ある面では、その金額的な標準を示しているという状況でございます。それは当然、あれもこれもということになれば、金額が高くなっていくわけでございまして、そこには一定の制限があるということはあるわけでございます。
しかし、そうはいっても、厳しい生活環境にあることを考えれば、この応急仮設住宅の仕様上の課題というのは、これはしっかり取り組んでいかなければならないことだというふうに認識をしておりますので、今後、私どももしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 私は、少なくとも最低基準という形で示すべきだと思うんです。ですから、岩手・宮城内陸地震までは畳が標準仕様であったんです。各県がやっていた、阪神のときも中越のときも。それなのに、今回、畳が入っていなくて、厚労省がわざわざ、アンケートで明らかになって、畳を入れるのにお金を出しましょうと。そういうのが、余りにも後手に回ったということになるんですね。それが経費の膨大にもなるわけですから、少なくとも、今回、プロジェクトチームが指摘をして後で措置された問題、そして長野県から上がってきたような豪雪仕様の問題、それはもう最低基準なんだ、その上に自治体の創意工夫もあっていいんだというくらいにしなければならないということを指摘して、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
もう一問あったんですが、あしたにしたいと思います。ありがとうございました。