――― 議事録 ――――
○高橋千鶴子 私は、日本共産党を代表し、児童手当法改正案に反対の討論を行います。(拍手)
二〇〇九年の政権交代直後、民主党が真っ先に実行したのは、生活保護世帯の母子加算の復活と、相対的貧困率の公表でした。子供の七人に一人が貧困という衝撃的な数字とともに、子ども手当は、貧困の連鎖を断ち切るカンフル剤として、また、先進国の中でも極端に少ない日本の子育て予算を大幅に拡充する第一歩として、期待されたと思います。
それがどうでしょうか。二〇一〇年最初に出された法案は、一年限りの時限立法であり、公約だった二万六千円の半額支給、全額国庫負担のはずが児童手当のスキームをかりて地方自治体にも従来どおりの費用負担を求める、継ぎはぎだらけのスタートを切りました。この二年間で四回の法改正を余儀なくされ、結局、一度もマニフェストに即した法案は出されませんでした。そして、子ども手当は名実ともに児童手当に戻り、あげく、増税だけが残ったのです。
国民への約束を投げ捨てた政権与党民主党の責任は極めて重く、子ども手当を政争の具にしてきた自民、公明両党の姿勢にも怒りを禁じ得ません。
まず第一に、手当と負担の関係です。
昨年、所得税の年少扶養控除が廃止されたことにより、約一割、年収八百万前後で三歳未満の世帯で実質手取り額が減少しました。ことし六月からは、さらに住民税の年少扶養控除も廃止されることから、その影響は大きく広がります。夫婦と子供一人の世帯、中学生を除く年収四百万から五百万円以上の世帯が手取り減になります。
子育てを応援するはずが、同じ子育て世帯を狙い撃ちにした増税で差し引き負担増とは、どんな言い逃れも許されるものではありません。
民主党は、これまで、控除は所得の高い人ほど有利だから、一律に子ども手当を支給するかわりに控除を廃止して再分配機能を高めると説明してきました。この控除から手当へという理念から見ても、全くつじつまが合わないものです。
次に、子育て支援策についてです。
日本共産党は、当初から、現金給付と保育所増設などの現物給付を車の両輪で進めるべきだと主張してきました。
年少扶養控除の廃止などによる地方増収分については、児童手当の地方負担増加分の相殺、子育て地方独自支援策は一般財源化など、子育て支援の現物給付拡充にはなっていないのです。さらに、税と社会保障の一体改革の中で充実策と位置づけている子ども・子育て新システムも、財源は消費税増税を見込んだものであり、公的保育の責任を曖昧にし、保育の市場化を進めるものであり、断じて認められません。
東日本大震災から一年以上がたちました。あしなが育英会の調査では、親を亡くした子供が、一千二百六世帯、二千五人にも上ります。福島の県内外に避難あるいは転出した少なくない子供たちが、親と離れて暮らしています。このようなときに、子ども手当をばらまきだと叫んで復興財源に回せという議論には承服できません。
また、目的規定に、「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という前置きが入りました。当たり前のことを、なぜ、書く必要があったのでしょうか。子育ては自己責任を強調したいのか、あるいは、家制度へのこだわりですか。全く国民不在の議論であったと言わなければなりません。
日本共産党は、子供が一人の人間として尊重されるという国連子どもの権利条約の精神の実現を目指し、子供の貧困の解消や公的保育の拡充など、安心して子供たちが成長できる施策の充実のために全力を挙げる決意を申し上げ、反対の討論といたします。(拍手)