国会質問

質問日:2012年 5月 24日 第180国会 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会

年金未納者からの無理な取り立てはやめよ

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。午前に引き続いて質問をさせていただきます。
 全日本民医連が毎年行っている国保の死亡事例調査が、ことし二月、六回目の調査として発表されました。「助かったはずの六十七人の「いのち」」このように題した調査であります。
 資料の一枚目に、数字を示した資料をつくっておきました。これは、最初に発表した〇五年から一年間の数字が二十九名だったのが、一一年は六十七名と二・三倍にもなっているわけです。ただし、これは民医連の病院、診療所などのケースの積み上げでありますので、当然、氷山の一角にすぎません。
 例えば、肺結核で亡くなった五十四歳の男性は、十日前から何も食べていないと言われました。無保険、無収入、所持金は千七百円で、週明けにも生活保護を申請する予定だったといいます。
 あるいは、急性心不全で亡くなった五十一歳の男性は、資格証明書でした。医療費が払えず、ライフラインもとめられ、ろうそくの差し入れをもらって暮らしていました。持病の治療も中断、入院も拒否し、自宅で死亡しているのが見つかりました。
 深刻な事例がたくさん報告されております。生活保護の対応など、多分課題は複数あると思うんです。ただ、最大の特徴は、この棒グラフの中に「無保険など」と書いておきましたけれども、無保険あるいは資格証明書、短期証など、正規の保険証のない方が約六割、こういう実態なんです。
 この問題は、私自身、国会でも繰り返し取り上げてきました。そのたびに、確かに滞納すれば保険証の返還を求められると条文上はあるんだけれども、特別な事情のある人にまでそこまではしないということは答弁されてきたことだと思うんです。なのに、なぜこうした事例が後を絶たないんでしょうか。小宮山大臣に、まず。

○小宮山国務大臣 被保険者資格証明書については、一年以上保険料を滞納している人に対しまして、事業の休廃止ですとか病気など保険料を納付することができない特別の事情がないこと、これをきちんと確認した上で、被保険者証の返還を求めて、交付をしているものです。
 この仕組みは、市町村が滞納者としっかり接触をする機会を持つ、保険料の減免ですとか分割納付も含めた納付相談をしたり、個々の事情にきめ細かに対応を行うために、こうした仕組みが必要だと考えています。
 運用に当たりましては、先ほど委員も言われた、特別な事情などにはちゃんと対応するなど、機械的にやるのではなくてきめ細かくやるようにということはそのように言っておりますので、特別の事情を適切に把握すること、それが必要だというふうには考えております。

○高橋(千)委員 そのきめ細かくが、なかなか現場ではなっていないわけですよね。
 例えば、短期証が一月とか短い期限ですと、毎月毎月行かなきゃいけない、そのたびに払えと言われても払えない、そういういろいろな事情がある中で、やはり対応が逆に厳しくなっているというのが特徴ではないかと指摘されているわけなんです。
 実は、この資料を見ていただくとわかりますように、一〇年は七十一名で、若干ですが死亡者が減っております。これは、民医連はこの間、全国に無料低額診療所をふやしてきており、これは国の方で審議会などを経てこの無料低額診療所の必要性が認識をされたということが契機になったわけですけれども、〇七年のときは六十でした。それが二〇一〇年は二百八、昨年は二百五十八と飛躍しているんですね。ですから、この無料低額診療所があって助かった命もあった、そういうこともぜひ御紹介しておきたいと思うんです。  ですから、政府には、無保険がなぜこう起きるのかという実態をぜひ掌握していただいて、保険料を払えないことで命を落とすなんて、そんなことはない政治を実現してほしいと思います。後の質問に加えて、ぜひ、このことで大臣の決意をお答えいただければありがたいと思います。
 それで、国保がやはり命に直結するということは論をまちません。そこで、実は、年金保険料が高くて払えない方でも、国保はやはり命に直結するということで払っているということが結構あるわけなんですね。その数字、過去二年間全く納めていない一号期間滞納者で、国保の保険料を完納している方、どのくらいいらっしゃいますか。

○小宮山国務大臣 初めに、先ほど、その前にもう一言答えてほしいということでしたが、委員がおっしゃるように、保険証がないことによって命を落とす、そういうことはないようには極力努めていきたいというふうに思います。
 そして、今の御質問ですけれども、平成二十年国民年金被保険者実態調査、この調査によりますと、国民年金の一号期間滞納者のうち、国民健康保険の保険料を完納している人の割合は五七・五%です。

○高橋(千)委員 今御報告いただいたように、五七・五%なんですね。丸々年金保険料を払えないけれども、しかし国保は、やはり病院にどうしても行かなきゃいけないからということで納めている、全月納めている方が六割近くいるというのが現状なんですね。  それで、やはり多くの方は、将来の年金は大事だとわかっている、わかっているけれども、とりあえず目の前の国保を払うのでもう精いっぱいというのが、本当に深刻な実態、現状なんだと思うんです。
 問題は、ここに政府が着目して、平成十九年の年金法の改正のときに、国民年金の保険料の滞納者に国保の短期保険証を出すという制裁ができるようにいたしました。
 私は、制度が違うんだからこんなことはやるべきではない、必死でとにかく保険料だけは払っているという人に、その人に保険証を出さないということでのやり方、これはやはりやるべきではないと思いますが、大臣の認識と、現実どうなっているか伺います。

○小宮山国務大臣 これは、今委員がおっしゃったように、平成十九年の国民年金事業等の運営改善のための国民年金法の一部を改正する法律、これによって制度化をされたもので、国民年金保険料を納付していない住民に対しまして、市町村が国保の短期被保険者証を発行できるようにしているということです。
 実際に国民年金が未納であることを理由に短期被保険者証を発行している実例については、承知をしていません。
 短期被保険者証の発行に限らず、国保と国民年金の連携によりまして、年金の未納者対策、これを図っていくということは重要な取り組みだと思います。ただ、おっしゃるように、制度が違うのにという御意見があることは承知をしています。

○高橋(千)委員 承知をしているということではあったけれども、やるべきではないということに対しては、やるというお答えなんですか。

○小宮山国務大臣 この短期被保険者証、これは、通常の被保険者証と比較して、さっきおっしゃったように、期間が短いので更新に行かなきゃいけないということはありますけれども、これによって受診を抑制しようとするものではないので、こういう形の法改正がされて制度化されているものでございますので、こういう形で今運用をしているということです。

○高橋(千)委員 非常に残念な答弁だと思います。最初におっしゃったように、保険証がないがために命を落とすようなことがあってはならないということをおっしゃいました。だからこそ、苦しい中でも納めている方に対して、やはり、では年金を払わない人は保険証そのものを取り上げるぞということになってはならないんです。
 ですから、最初にお答えいただいたように、無保険者の実態調査などもしていくということでありましたので、こことあわせて、本当に検討していただきたい、見直していただきたいということを重ねて指摘をしたいと思います。
 それで、年金保険料の問題なんですけれども、実はこんな相談がありました。
 国民年金を滞納している三十一歳の息子さんと同居している親御さんです。突然、父親の口座から四十万円差し押さえられました。息子は仕事をやめて五年間無職であり、確かに未納があります。ただ、親の口座は、当然複数あるわけでして、その中でも四十万引かれたというのは、そんなに金があるという意味ではなくて、固定資産税とか自動車税とか、ちょうど納期であるということがあって、支払いでまとめていたんですね。税金を支払うためにまとめていたところに狙い撃ちをされた。
 そもそも、何で親の口座がわかっているんですかということなんです。これ、一般論でいいですので、どういう仕組みになっていますか。

○小宮山国務大臣 今、一般論でいいということでございましたので、一般論として申し上げれば、保険料の納付義務は、被保険者本人のほか、世帯主にも課せられています。まずは、滞納者本人の財産調査を実施しまして、本人の財産が確認できなければ、住民票によって連帯納付義務者を確認してその財産調査を行っているということです。

○高橋(千)委員 要するに、財産調査といっても、普通はわからないわけですよ。そうすると、銀行に片っ端から電話をかけて、おたくには誰々さんの口座はありますかと聞いたりするのかしら。田舎だとそんなに幾つも銀行はありませんので、訪ねていくと、玄関に青森銀行とかいうカレンダーがあって、ああ、この人はきっとここに口座があるんだなみたいな、そういうことをやる。いや、安住大臣、笑っていますけれども、国税庁がそういう説明をしてくださいました。そういうことなんです。
 そういうことですね、大臣。

○小宮山国務大臣 それはもう、支払うべき方にお支払いいただくためにさまざまな努力をしているということはあるのだと思います。

○高橋(千)委員 そういうことまでするのかということが言いたいわけです。
 それで、国税徴収法に準じているわけですよね。国税通則法第四十六条には納税の猶予というものがありますし、滞納処分に関する猶予及び停止というものがありまして、百五十一条、その中には、「その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき。」要するに、身ぐるみ剥いでしまって、暮らしていけないということはさすがにしませんよということ。
 それから、「換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であるとき。」と規定をして、猶予または解除の規定を置いています。
 つまり、商売道具を取り上げてしまったら、商売ができないから、お金も入ってこない、そうしたら払うことができないじゃないか、そういう考え方がきちっとあるわけですね。
 こういうふうに、個別に事情をよく聞いて対応するということになっているはずなんです。現場ではさまざまな問題がありますが、その立場は、本来、年金保険料においても同じだということを確認します。

○小宮山国務大臣 これは年金保険料につきましても、今おっしゃったように、丁寧に対応をするということが必要だと思っていますし、そのようにやるべきだと思います。

○高橋(千)委員 そのようにやるべきだとおっしゃいました。  そこで、年金保険料がほかと違うのは、日本年金機構滞納処分等実施規程では、第九条において、「機構は、国税滞納処分の例による処分に関する要件を満たす保険料等について、毎月一定時期を定めて、厚生労働大臣に対して滞納処分等の認可の申請をしなければならない。」と書いています。
 つまり、滞納処分を行うかどうかは、厚労大臣、あなたの認可だということになります。ですから、先ほどのカレンダーの話じゃないけれども、四十万円丸々差し引くのがいいかどうかも含めて、大臣が認可をすることになっているわけです。
 そういうことについて、本当に適正にやられていると自信を持って言えますか。

○小宮山国務大臣 国民年金保険料の未納者に対しましては、その未納者の属性に応じたきめ細かな対応を実施しています。
 免除の対象となる低所得者に対する免除制度の周知とか勧奨の徹底、また戸別訪問を重視した保険料納付勧奨の徹底、負担能力がありながら納付しない高所得者への強制徴収の推進、このようなことをやっています。
 保険料の負担能力がありながら納付しない人に対しましては、まず第一には、本人に対して納付の督励を行いまして、たび重なる納付督励を経ても納付をされない場合には、本人と連帯納付義務者に対しまして、強制徴収の前提としての最終催告状、そして督促状を順次送付して、最終的に強制徴収に移行するということで、いきなり滞納処分を行うということはしておりません。
 そして、先ほど言われました厚生労働大臣の認可となっていることなんですけれども、この認可権限は地方厚生局長に委任をされているということもつけ加えて申し上げたいと思っています。

○高橋(千)委員 何か、地方に委任しているから、私が直接責任を持っているわけじゃないわと聞こえなくもないわけですけれども、世帯主に連帯納付義務がある、だからといって、二年分以上もまとめて取ることが本当にいいですか。支払える力があるのであれば、ちゃんとこれから定期的に納めてください、引きますよと言えばいいだけじゃないですか。それが小宮山さんの決断でできるんですと言っているんです。

○小宮山国務大臣 個別のことについて余り申し上げることはできませんけれども、それは、その方の生活とか状況、いろいろなことをしっかりと把握をした上で、ただ、苦しい中でも納めていらっしゃる方も一方でいらっしゃるわけですから、納めるだけのものがある人には、いろいろな手だてをとってでも納めていただくというのがやはり私たちの仕事だというふうに思っています。

○高橋(千)委員 非常に残念だったと思います。
 実は、先ほど説明した中で、大臣もお認めになった、きめ細かな対応、それから納付督励などを事前にやっておく、ちゃんと訪ねていったりしてやっていくということをおっしゃいました。
 ところが、強制処分はさすがに公権力の行使ですから正職員でなければできませんけれども、督励のところ、お電話をかけたり督促状を出したりするところは、今、年金機構は全部外部委託をしているわけですね。
 例えば、北海道、東北ブロックで見ると、たった二つの企業が独占しています。日立キャピタル債権回収・日立キャピタル共同企業体という、これで一つ。もう一つは、オリエントコーポレーション。二つしかありません。これは、西日本に行っても大体こういう傾向なわけですね。そうすると、債権回収会社とクレジット会社から電話が来たり督促状が来て、みんなびっくりする。
 こういう中で、本当に今言ったようなきめ細かな対応ができるんですかということを指摘しなければならないと思います。
 それで、最後の質問、岡田副総理に伺いたいと思うんですが、四月二十七日に歳入庁についての中間報告が出ました。まだ課題の整理の段階ですので、社会保険料が税になっちゃうのだろうかとか、徴収も給付も一本化するのか、あるいは連携でやるのかとか、一番肝心のところがわからない状態であります。
 ただ、論点の整理を見ていますと、納税者あるいは被保険者の資産、所得などの情報が一元化されるということは、多分そうなんだろうな。そうすると、情報の共有というのは情報の流出と裏腹でもあるということで非常に慎重でなければなりません。
 最初に紹介したように、国保は必死で払っているけれども年金を払えない方たち、何かもう絶対許されなくなるのかな、個人の資産が丸裸になって、引き去りするなんてことは当たり前になっていくのかな。
 これは、実は野党時代の民主党さんが、社保庁より国税庁が信頼されている、国税庁のノウハウで収納率もアップすると盛んにおっしゃっていたんです。歳入庁で十兆円の税収増と主張している党もありますけれども、要するに問答無用の取り立てが強まるという意味ではないでしょうか。大臣のお考えを。

○中野委員長 岡田担当大臣、一分以内でお答えください。

○岡田国務大臣 我々、十兆円ということは申し上げておりません。そのことを申し上げた上で、今、中間的な取りまとめをしたところで、これから論点をきちんと一つ一つ吟味をして、最終結論を得たいというふうに考えております。
 そういう中で、おっしゃるように、やはり国税庁の税を徴収する力、そういったものを何とか国民年金の方にも活用できないか、そういう根本的な発想があることは事実でございます。
 ただし、今でも国民年金について強制徴収という制度はありますから、やはり、払うべきもの、本来払うことが可能にもかかわらず払っていない人、そういう人についてはきちっと払っていただくことが制度の安定のために必要なことではないかというふうに思っております。
 いろいろな事情があるということは、それはきちっと勘案して、いろいろな免除制度、軽減措置などを御利用いただくということではないかと思います。

○高橋(千)委員 時間になりましたので、徴収というところだけがクローズアップされては、先ほど来議論しているきめ細かな対応というのができないであろうと、もっと話したいことがありますが、次の機会でまたやりたいと思います。
 ありがとうございました。

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