消費税増税など社会保障と税の「一体改革」法案を審議する衆院社会保障・税特別委員会は4日、東日本大震災・原発事故の被災地・福島市と神戸市で地方公聴会を開きました。中小企業代表などから消費税増税に「やっていけない」などと批判が続出し、医療関係者から「社会保障も削減する改悪のオンパレード」との意見が出されました。福島市の公聴会では日本共産党の高橋ちづ子議員が質疑に立ちました。
福島県商工会連合会の轡田(くつわた)倉治会長は、増税により親会社からさらなるコストダウン要求がくると指摘。「今の状況で消費税を上げるのは絶対に反対だ。何とか生活と雇用を守りたい気持ちを察していただきたい」と述べました。
福島県民主医療機関連合会の齋藤和衛事務局長は、「一体改革」について「復興の妨げになるばかりか(地震・津波と原発事故に続く)第3の災害、政治災害とも言うべき事態だ」と批判しました。
福島県商工会議所連合会の瀬谷俊雄会長がただ一人、即時の増税に賛意を示しましたが、福島県白河市の鈴木和夫市長は「税の議論が消費税に偏重しすぎている。それ以外の税のあり方も議論すべきではないか。(消費税増税は)今この時期なのか」と疑問を呈しました。
高橋氏が被災者への影響を質問すると、南相馬市立総合病院の金澤幸夫院長は「一律に被災しているところに消費税を上げるのはどうなのかなというのは意見として当然出てくる」と答えました。
(しんぶん赤旗 2012年6月5日より)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
時間の関係で、多分全員にはお聞きすることができないと思いますが、御了承願いたいと思います。早速お願いをいたします。せっかく福島に来ましたので、実態を込めて伺いたいなと思っています。
瀬谷さんと轡田さんに同じ質問をさせていただきます。
五月に、この法案が審議入りするときに、私少し触れた問題なんですけれども、福島県内の事業所、まだ七割くらいが営業が再開できない、あるいは不能になっていると聞いております。また、再開したところも、売り上げが大幅ダウンをしていると。まさに、復興どころではないのだというお話が、そのとおりではないかなと思うんです。そこら辺の会員企業の実情と、その上で、こういう時期に消費税を上げるということがさらに景気を引き下げるということにもならないかなと思うのですが、ぜひ伺いたいと思います。
○轡田倉治君 まさしく、今先生がおっしゃるとおりです、回復状況はですね。福島県、浜、中、会津と、三つに地方が分かれておりまして、浜地方、要するに沿岸部が、震災とそれから原発と、両方の被害に遭っているわけです。
この中通り、会津地区については、もちろん東電の原発の被害もありますけれども、それよりも、その被害の中でも風評被害が非常に大きいということです。あと、その震災の被害が、実は中通りが一番ひどいんですよ。これは余り報道されないんですが。どうしても沿岸部の津波の方ばかり報道されちゃって、実際、私らもこの会の関係で向こうの方も行くんですが、震災は実は中通りがひどいんです。
向こうは、津波に遭ったところはもちろんひどいんですが、そういう状況で、もちろん相双の原発地区、これはもう商売を始めるどころの騒ぎじゃないですよ。どこに行っていいんだか、まだ居場所も決まらない状況です。果たして戻れるんだか戻れないんだかもわからない。どこに自分は定住していいんだかもわからない。
これは国にも責任があります。全然その案を出してくれないわけですから。我々はもういらいらして待っているわけです。向こうの地区の商工会長さんに、どうなっているんだと、我々がそういうふうに言われているわけです。ところが、幾らお願いしてもなかなか前に進まないというのが現状です。そんなことで、もう、今どうすればいいんだというのが先なんですね。景気が悪いとかいいとかの状況じゃないんです、今。
中通り、会津地区についても、今言われたように風評被害で、特に会津地区は観光ですから、お客さんがほとんど来ない。もうあすにも倒産しても不思議でないというのが現状なんですよ。だから、今先生が言われているような状況にはないということです。
以上です。
○瀬谷俊雄君 私は、本業は銀行なんですよ。銀行員。十七年間ここでトップをやっていましたから、県内の十の会議所がございますけれども、重立った取引先はほとんど熟知しております。そういう点からいいますと、先生いろいろ御心配いただいておりますけれども、大体七割方はもうもとへ戻ってきたと。私はこのように思っております。
もちろん、今轡田さんがおっしゃったように、風評被害というものは、特に観光面で直撃されておりまして、非常に厳しい状況なのでございます。
しかしながら、先ほどいろいろお話がございまして、この消費税の問題も、何といいますか、大企業の利益剰余金が積み上がったというようなお話をされておりますけれども、私に言わせますと、福島で今、私どもの会議所、一番最大の課題は雇用問題なんですよ、正規、非正規を含めまして。
そうすると、福島市をとりましても、ここで最大の一社当たりの雇用といえばキヤノンでございます。福島キヤノン、これは二千人でございます。それから、会津へ行きますと、富士通がピークは八千人おりました。それからパナソニックがある。相馬に石川島播磨がございます。三菱電機もある。
福島県というのは東北六県の中でも抜群の鉱工業生産を持っていますけれども、これを支えているのは、もちろん地場の中小零細企業さんもありますけれども、やはりこういう大企業が多いんですね。とすると、やはりそういうものの間に下請、一次があり二次があり三次がありということで、複合的な組織として県経済が成り立っているわけでございます。
私が一番懸念しております避難者については、転退出者は戻りつつありますし、きのう、おとといも夏祭りがありまして、私が実行委員長で盛大にやったわけでございますけれども、そういうことをやることによって、少しずつ風評被害を払拭しつつある。しかも、思った以上に子供さんが出てきた。
それから、町のタウン情報を見ますと、意外や意外、賠償金の問題があるのかもしれないけれども、今、貴金属が割合売れているんですね。えっ、宝飾店がそんなに売れているのかと、意外な驚きでございました。だから私は、まだまだ担税力はある、大丈夫だ、そういうことなんです。
もう一つ、せっかくの機会ですから、最大の課題は何かといったら、原発の問題です。
御承知のように、F1の一から四までは実質上廃炉でございますから。五、六は生きているんですね。F2は生きているんです。これを全部やめることによって、恐らく二万人ぐらいの雇用がすぽっと抜け落ちる。それの後をどうするかという問題が全然まだ目鼻が立っておりません。だから、それはそれで個別の問題として、これは政府のエネルギー政策といいますか、先生方にもお考えいただきたいんですけれども、それをどうするか。
このエネルギー問題に一つのめどをつけることと、それからもう一つ、返す刀で財政規律、プライマリーバランスは回復するんじゃないかという、糸口でもいいからちょっと見せないことには、日本の回復はないんじゃないかというのが私の状況認識でございます。
こんなものでよろしゅうございますか。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
たくさんの課題が出されまして、いっぱい議論をしたいところですが、次の方にも質問をしたいと思います。
原発をやめても雇用につながるということをちゃんと提案しておりますので、ぜひ後で議論をさせて……。ちょっと済みません、次の質問がありますので。
齋藤さんに質問をします。
先ほどちょっと田村委員からもあったんですけれども、実は一体改革なんだけれども、四経費のうちの半分が全く法案が出ておりません。医療や介護がどうなるか、実は大きな痛みが隠されているんではないかということが問題意識としてあるわけです。窓口負担の増加などがあるわけで、現場に行って実態を見ている立場から、ぜひ御意見をいただきたいと思います。
○齋藤和衞君 原発、震災がありまして、福島県の住民に対しては、医療の自己負担についてのいろいろな免除もございました。しかしながら、徐々にそれは取り払われてきているというのがあります。
入院の食事療養費は三月から、これはもう一律に負担が発生しておりますし、地震、津波の被災者で全壊、半壊の方は、国民健康保険の場合、九月末までは自己負担の軽減が図られましたけれども、これも九月で終わるとか、あるいは原発事故で避難している方は来年の三月まで延びたとはいえ、そこで打ち切られるとか、確かに一年ないし一年半ぐらい軽減策はとられましたけれども、この先続くであろう苦しい生活に対する救済が今のところまだ見えていないということです。
そういう中にありまして、福島県のいわゆる協会けんぽは、健康保険部分で九・四七から九・九六に上がりましたし、介護保険料も一・五一から一・五五に上がったというようなことで、これも以前から繰り返し上げられてきたこととはいえ、この一体改革の重要な中身になっているというふうには私は思っています。それが影響としてあります。
それから、今回、介護保険の報酬の改定等がありましたが、包括ケア、これは非常に名前としてはいいし趣旨はいいんですが、実際行われたことといいますと、訪問介護、ヘルパーの滞在時間が短くなるでありますとか、予防介護の制限がまた強まってきたとか、一体改革の今回の法律にはないんですけれども、政府の裁量で既にどんどん進められているというものがあることは申し上げたいというふうには思います。
今、十六万人の方は、いろいろな、さまざまな方がいらっしゃいますけれども、一番大きいのはやはり二重生活をしているということです。子供と母親だけが県外に行っているとか、あるいは県内でも比較的低線量の地域に移るということがあります。そして、仮設住宅に移っても、非常に狭いので、一家で生活していた方が二つに分かれるとか、若い子だけは普通の民間のアパートに行くとか、そういう二重生活をしている。そのことから、いろいろな意味で医療分野での負担にしわ寄せが行くということはあるかなというふうには思っております。その辺も、これは今回の一体改革とあわせて震災への対応として求めたいところでもございます。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
同様の趣旨で金澤さんにも質問したいと思うんですが、先ほど来、ちょっと経営者のようなことで増税に対してどうですかという質問があったと思うんですが、そうではなくて、本当に被災地のど真ん中で大変な苦労をされて被災者を励ましてきたその立場から、今、医療や介護がどうなっているのか、そのことの影響についてもし伺えればと思います。
○金澤幸夫君 僕らのところばかりじゃないと思いますけれども、やはり被災しているところに一律に消費税が行くのはどうなのかなというのは、当然意見としては出てくると思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
先ほどの医療体制とかありましたけれども、どうしても充実させようとすれば、その分増税ですよという議論になっては困るなということもあり、やはり今の、負担をこれ以上やらないという立場で頑張りたいなと思っています。
最後に一言、古渡さんに御質問いたしますけれども、子供の減少というのが未来の姿なんだという御指摘がありました。それは全くそのとおりだと思うんですが、ただ、それが新システムでなぜ解決するのかということではちょっと飛躍をしていましたので、アイデアが必要なんだと。数の議論だけでは、だったら三歳未満の義務づけは何でないのという議論になってしまうので、やはり中身で、本当に子供にとってよいものをやるためには何が必要なのかということで、もう一言伺いたいと思います。
○古渡一秀君 先生の今のお話、多分二つあると思うんです。
まず、私が出した資料の一ページを見ていただきたいんですけれども、資料一ページに、実は隣の白河市長さんの町も緑のチェックが入っているのがあります。一番右下をちょっと見ていただきたいんですけれども、今回、子供の避難が非常に少ない市町村が実はここの三つなんです。
私は、この現場の中で、実は何でこういうことなんだろうということをずっと考えて調査させていただいていました。これは、基本的に行政の対応です。行政が、市町村が子供の政策をきちっと、ある程度やっておられるという市町村は実は非常に離れにくかったのと、あともう一つは、ここに経済界の方、たくさんいますけれども、仕事があること、ワーク・ライフ・バランスがしっかりしていること。
もっと大事なのは、僕が一番注目していますのは本宮市なんですけれども、情報公開がきちっとしていること。これは、先ほど私が一番最初に言いましたように、市町村がきちっと責任を持つ、そこがここであれだけ明確に出るということが一つ。
もう一つ、子ども・子育て新システムの中で我々が一番丁寧にお話ししていますのは、子供の保育の質を担保しましょうよと。そのためには、どうしても財源が必要だと我々は思っております。特に保育士さん、幼稚園教諭の給与改善とか、たくさんいろいろな問題が含まれています。
ですので、そういう観点で、明確にお話しすればもっとたくさん、いっぱいあるんですけれども、端的に言えば、今改善しなかったらばまず無理でしょうと諦めたくないのが一つと、未来に向けて今が最後のチャンスかなと思っているのが、我々がぜひお願いしたいなと思っているところです。
以上です。