国会質問

質問日:2017年 6月 2日 第193国会 厚生労働委員会

化学物質過敏症について

化学物質過敏症対策を
高橋氏「歯科治療困難抱える」

 日本共産党の高橋千鶴子議員は2日の衆院厚生労働委員会で、化学物質過敏症について、実態把握と、早急な対応を求めました。
 化学物質過敏症とは、微量の化学物質に反応し、重い症状では、仕事や家事に支障をきたします。高橋氏は、松山市のホームページなどでは専門病院の紹介や相談窓口を明記していると紹介し、国もやるべきと主張。塩崎恭久厚労相は「関係省庁と連携したい」と答えました。
 高橋氏は、化学物質過敏症の子どもの人数を質問。滝本寛審議官は、「正確な人数を把握するのは困難で、調査も予定していない。子どもの症状に応じて個別に対応する」と答弁しました。高橋氏は文科省が2012年に出した手引書をもとに、教科書の天日干しなどの具体的対応もされているとして、実態把握は可能だと提案しました。
 高橋氏は同症の患者が、特に歯科治療で困難を抱えていると紹介。「患者に悪影響のない歯科材料がなく、病院側も手だてがない。治療をあきらめた患者もいる」と説明し、パッチテスト(物質を皮膚に付け、反応を調べる方法)や負担の少ない歯科材料を使う工夫の必要性を主張しました。厚労省の神田裕二医政局長は、「関係学会や団体と連携し現状把握に努め
る」と述べました。
(しんぶん赤旗2017年6月7日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、一般質疑ということで、化学物質過敏症について質問したいと思います。
 厚生労働委員会で取り上げるのは初めてですけれども、二月二十二日の予算委員会第六分科会で、環境大臣、厚労省、内閣府などに質問をいたしました。そのときの厚労省の答弁は、化学物質過敏症は病態が不明で診断基準も確立されていないということで、全国に専門外来がどのくらいあるのかという質問に対しても、調べていないという、ちょっと残念なものでありました。ただ、個々の要求については、前進的な答弁があったかなと思っております。
 そこで、資料の一枚目を見ていただきたいと思うんですが、これは、一九九七年の八月に、まだ厚生省の時代ですね、厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班が発行したパンフレット、「化学物質過敏症 思いのほか身近な環境問題」の抜粋であります。本体は結構おどろおどろしい色を使っていますので、ちょっと見やすい部分をとったわけですけれども。同年の三月に研究報告書が出されておりまして、北里大学の石川哲名誉教授が化学物質過敏症の診断基準をここで公表したということが周知の事実ではないかなと思っております。
 それで、原因物質を見ていただきたいと思いますが、家の周りにたくさんのものがありまして、洗浄剤、漂白剤、芳香剤、食品添加物、シロアリ駆除剤、除草剤、殺虫剤、さまざま、こういう形で、身近なところにあるんだよということを指摘して、これらが本当に微量であっても原因物質となって変調を来すということが言われてきたと思っております。
 また、二〇〇九年に、化学物質過敏症は、診療保険請求の際の、傷病名マスターというんだそうですけれども、病名としても認められていると承知をしています。それなのに、現状が極めて厳しいと思います。
 二月の質問のときには、患者の会のアンケートも示して、病気が理解されないために病院をたらい回しにされたり精神疾患の扱いをされるという苦しい声を紹介しました。
 その質問を見た方から次々と、全国各地から陳情が来ています。
 病院に行っても、CSだと言っても認知がなく大概の先生は専門外だとスルーされる。保健所に相談に行ってCSについて伺った、でも、そんなことは聞いたことがないと目の前に患者がいるのにそう言われるというんです。しかも、せっかく資料も持っていったんだけれども見てさえくれなかった。あるいは、発作が出て救急車を呼んだんだけれどもどこにも運ぶ病院がないと断られた方もいるわけです。こういうことを、みんな、苦しい思いをしている人がたくさんいらっしゃるわけなんです。
 そこで伺いますが、大臣は化学物質過敏症についてどのような認識をされているでしょうか。また、今紹介したような、二十年たってもまだ専門外来もわかりませんなどといった対応でよいのでしょうか。
○塩崎国務大臣 二月の衆議院の予算委員会の分科会でお取り上げをいただいて、厚労省から答弁を申し上げた、余り御満足をいただかなかったというふうに報告を受けております。
 かつて、シックハウス症候群なんという言葉でも言われていたことにもつながる、いわゆる化学物質過敏症について、先ほど引用していただきましたが、病態あるいは発症メカニズムが未解明な部分が多くて、医学的になかなか確立された定義とか診断基準が存在していないというふうな認識でおるわけでございます。
 御指摘の、例えば専門外来といっても、ある特定の疾患に対して専門的な相談や治療を行う外来のことであるわけでしょうから、そうなると、化学物質過敏症というのは、先ほど引用していただいたように、病態が不明な点が多く、診断基準も確立されていないということになりますと、化学物質過敏症について、専門外来の数を把握するということはなかなか困難であり、今確たることを申し上げることがなかなか難しいという状況でございます。
○高橋(千)委員 名誉のために申し上げますが、大臣、今、御満足いただけなかったようだとおっしゃいました。
 無理を言って馬場政務官に出席をしていただいたんですけれども、そのときに、私が質問したのは、精神疾患扱いをされて投薬されている、これが、必ずしも薬が合っていない場合も多いし、また、そのことによって悪化することもあるんじゃないかということを質問したのに対して、政務官が、「議員御指摘のとおり、患者の状況によって向精神薬の処方が適切な場合もあれば、適切でない場合もあるというふうに考えます。」こう答えていただいたのは、私、とてもよかったと思っています。
 それから、「化学物質過敏症は病態もさまざまであることから、より一層、患者の病状や病態を適切に確認して治療に当たる環境が実現できるよう目指してまいりたいと存じます。」こう言った。私、これは大変前向きな答弁だと思うんです。
 今、わからないから、専門外来を決められないからと言ったら、一歩も前に進まないんです。だから、前に進めようという努力を、決意を大臣が持っているのかということをまず伺いたかった。幾ら何でも、政務官がお答えしたことを、それよりも大臣は後ろ向きですということはあり得ないと思うんですが、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕
○塩崎国務大臣 馬場政務官と私も同じ考えでございます。
○高橋(千)委員 資料の最後のページを見ていただきたいと思うんですね。これは茨城県のホームページなんですけれども、茨城県化学物質過敏症対策連絡会事務局が担当課の一覧を載せています。
 県のホームページというのは全部の県にあるわけではなくて極めて限られているんですけれども、これを見ていただくと、住宅ですとか学校ですとか家庭用品、それぞれ、関係する法律がこれである、制度がこれである、それで基準はここを見るとわかる、担当課を明示して、相談窓口は保健所へ行きなさい、こういう連絡先が書いてある、このこと自体が、私、すごく大事だと思うんです。
 国は、関係する省庁をまとめて、そこを見れば、いろいろなことがあるんだけれども、一覧がぱっと出てくる、まずそのくらいやってほしいなと思うんです。
 そして、資料を一枚前に戻っていただきたいんですが、自治体のホームページ、どこかいいところがないかなということで、大臣のお地元の松山市がとても親切なホームページをつくっているので紹介をさせていただきます。
 「「シックハウス症候群」とは」と書いてあって、その次に「「化学物質過敏症」とは」ということで、
  建材や内装などから放出される化学物質だけでなく、家庭用品などの日用品に広く含まれる多種多様の化学物質にも敏感に反応して、様々な症状があらわれる方がいます。
  一度ある程度の量の化学物質にさらされるか、あるいは低濃度の化学物質であっても長期間さらされて、いったん過敏状態になると、それ以降は、ほんのわずかな量の物質にも過敏に反応するようになります。
  個人差が非常に大きく、原因物質や発症の仕組み等、まだまだ未解明な部分が多いとされています。
未解明な部分が多いけれども、少量でもなるよということや、長期間でなるよということをきちんと書いて、症状は目や鼻や頭痛やさまざまなことを書いて、そして、大事だなと思うのは、医療機関の情報を書いています。やはり、国立病院機構高知病院、福岡病院、それから、関西ろうさい病院ということで尼崎の病院を紹介して、窓口はいずれも保健所である、電話番号も書いてある。こういうふうに、少なくともたどり着くというふうにしなければならないと思うんですね。
 患者らが求めているのは、化学物質過敏症委員会のような対策委員会が欲しいということなんです。まず、窓口をつくっていただきたい、そして、こうやって大臣の御地元で病院を紹介しているように、整理をするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 御指摘の化学物質過敏症について、先ほど来申し上げているように、医学的に確立された定義や診断基準が一つとして存在をしているということではなくて、今お示しをいただいた茨城や、あるいはこの松山もそうですけれども、いろいろなものがあり得るということが書かれているわけでございます。
 そういう意味では、化学物質過敏症ではないかというときにワンストップで相談できるようなそういう窓口があって、なおかつ、一定程度の、この茨城などを見ますと、原因と推定されるような物質についても書かれているわけでありまして、そういう意味で、自分はそうではないかと思う方々にとっては、病院に、医療機関にかかりやすいようにしておくということは大変大事だろうと思います。
 私どもとしては、やはり、研究によって疾病概念というものを整理する、そして患者の状況を、それぞれジャンル分けができるんだろうと思いますけれども、詳細に把握するということをまずしっかりやって、さらに、必要に応じて関係省庁と情報の共有を図りながら、疾病概念の確立などに向けて研究を支援するということをやっていかなければならないと思います。
 いろいろなものがあり得るわけでございますので、関係する省庁、環境省はもとより国交省やその他関係するところと連携をしっかりやっていくということで、それではないかと疑われる方々にとって、一つは病院に導きやすくするようにすることと、何よりも、病院にとってもプラスになる研究をサポートしていくことだというふうに思います。
○高橋(千)委員 少し前向きに、ありがとうございます。
 四月の末に、国立病院機構盛岡病院の化学物質過敏症・環境アレルギー外来、こういうふうに表示しています、訪問をしました。専門医の水城まさみ先生、本業は呼吸器内科でありまして、診察も病棟対応も、つまり、こればかりやっているわけじゃなくて、さまざまな仕事をしていらっしゃいます。
 そうした中、新患の予約が殺到しているわけですが、三カ月待ちだということなんですね。電話の先で、三カ月待ちですよと言われると、途端に泣いてしまう、とった電話そのまま、延々と電話口で療養相談のようになってしまう。やっとたどり着いたのに、まだ待ってくれと言われるわけですね。
 そして、今受診している方も、三カ月に一回通っているんです。福島だったり、岡山だったり、北海道だったり、秋田だったり。福島の方は、医大がありますけれども、呼吸器内科でどこも悪くないと言われ、転々として神経内科に行き、盛岡病院にたどり着くんですけれども、診断してもらって初めて病名がやっとわかった。わかった、それだけでも、まだ治ってないんですけれども、どれだけ患者さんにとって大きな意味があるかなというふうに思うんですね。
 アンケート方式の問診票を使い、これはもう確立したものでありますけれども、治療のポイントは、解毒と原因物質の除外、そして周囲の協力であります。家族が、結局、芳香剤をずっと使っているとかでは意味がないわけでありまして、ワックスがけをせず、空気清浄機を置き、アースを使って、電磁波対策ですけれども、それだけでもかなり違う、でもすごく特別なことをやっているわけではないということを改めて思ったわけです。
 資料の二枚目には、水城先生が建築ジャーナルの五月号に寄せたレポートの中の資料であります。建築専門誌ですので、主にそこにかかわる、シックハウスなどにかかわる分野なんですけれども、見ていただくとわかるように、自宅の新築や転居、リフォームなどをきっかけに、今まで何の症状もなかった方が化学物質に反応している、発症しているというのが特徴であります。それから、その他のところに、職場での受動喫煙というのが四名もいらっしゃるので、受動喫煙もれっきとした化学物質の反応であるということを、これはぜひ御承知いただきたいと思います。
 それで、シックハウス症候群からCSになり、また電磁波の影響もかなりあるという指摘がされています。厚労省の直轄でもある国立病院機構でこのような貴重なデータを積み上げている、ここをぜひ参考にしていただきたいと思います。
 さて、そうした意味で話を進めていきますが、化学物質と労災はどのような考え方で整理されているでしょうか、また、どのくらい認定されているでしょうか。
○山越政府参考人 労災保険制度におきましては、補償の対象となる具体的な化学物質の名称と当該化学物質にさらされる業務によって生じます疾病を省令などで明らかにしているところでございます。
 化学物質による疾病として労災の請求があった場合でございますけれども、まず、その労働者が使用していた化学物質を特定すること、そして、その事業場での化学物質の使用状況あるいは作業環境の調査を行います。そして、労働者に生じた症状等を確認いたしまして、業務上の疾病であると認められる場合には労災認定をすることとしております。
 平成二十七年度において、がんを除く化学物質等による疾病として労災認定をした事案は百九十二件でございます。
○高橋(千)委員 今、一年分しかお話ししてくれなかったわけですね。
 三年間の数字をいただいていますが、二〇一三年から見て、二百十八件、翌年が二百二十八件、そして二〇一五年が百九十二件ということで、コンスタントに二百件前後の労災があるということ、化学物質の病名ではなく、暴露によって認められているということがあったと思います。
 資料の三枚目に、厚労省が新規化学物質の有害性の調査をどのように扱っているのかというのを表にしておきました。
 新規の届け出があった物質について、名称等を公表するということと、学識経験者の意見を聞いて必要な対策を事業者に対して措置を、例えば換気ですとかマスクですとか、さまざまなことをやっているということで、化学物質にもいろいろ危険度というのがあって、ピラミッドの形をしていますけれども、届け出物質が年間一千物質以上、累計で約二万八千物質になっているということでは、かなりの化学物質にかかわって労働者が仕事をしているということだと思います。
 また、大臣告示によって、官報に告示がされますけれども、例えば、アンモニアであると皮膚障害ですとか、塩酸であると皮膚障害、前眼部障害というように、症状というのが一定こんなものがあるよということを告示されています。
 ですから、そういう化学物質とどんな症状があるのかということがまず厚労省として告示をしていること、同時に、そのことを参考にして労災も毎年二百件程度の認定をされていること、もちろんたどり着いていない人もいるんですけれども、そういう積み上がった知見を、先ほど来化学物質過敏症の診断はまだ確立していないということが言われておりますけれども、やはりそこは共有して知見を生かすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○山越政府参考人 お答えをいたします。
 先ほども御答弁をいたしましたように、労災補償でございますけれども、今先生もおっしゃいました省令あるいは告示にその病名とかあるいはその疾病が記載をされているわけでございまして、労災認定に当たりましては、そういった物質が使われているかどうか、そういった症状があるかどうか、そしてその間の因果関係があるかどうかということを調べまして、認定をしているところでございます。
 そうしたことで、引き続き労災認定を的確に行っていきたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 ですから、的確に行って、その知見を、やはり、全体の治療方法を見つける、あるいは診断を確立していくという点に生かすべきだ、同じ厚生労働行政ですからということを提案しています。これは通告していませんでしたので、大臣にもぜひ聞いていただいて、生かしていただきたいと思います。
 では、次に文科省に質問いたします。
 まず、化学物質過敏症の子供が一体学校にどのくらいいるのか、わかっていたら教えていただきたいし、わかっていなければ調査をすべきではないかということです。それから、子供たちの学習が可能になるためにどのような対応をしているのか、教えてください。
○瀧本政府参考人 お答えいたします。
 いわゆる化学物質過敏症の調査につきましては、医療機関の診察を受けている子供がいる一方、医療機関の診察を受けずに罹患している子供もいるため、正確な人数を把握することは極めて困難であることから、調査の実施については予定をしてございません。
 他方、さまざまな症状に苦しんでいる子供たちに対して、個別の対応策を講じることで学習機会を確保することは極めて重要なことと考えております。
 このため、文部科学省におきましては、化学物質過敏症の子供たちへの対応等につきまして解説をする参考資料を作成し、その中において、具体的な対応方法を示しているところでございますが、例えば、換気設備の常時運転や積極的な換気による化学物質の放散、あるいは、教科書の天日干しをするための教科書の早期提供、さらには、化学物質を放散する可能性の少ない備品等の購入や教室等の変更あるいは保健室での休養など原因物質の発生場所からの回避、さらには、症状によりやむを得ず指定された学校への通学が困難な場合には保護者の申し立てによる学校の変更などを示しているところでございます。
 これらを参考にしまして、化学物質過敏症の子供が在籍する学校におきましては、当該子供の症状に応じ個別に対応しているものと認識をしているところでございます。
 文科省としましては、今後とも、さまざまな機会を通じまして、化学物質過敏症の子供への対応が促進されるよう、指導に努めてまいります。
 以上です。
○高橋(千)委員 予定していないという断定的な答弁は極めて残念だと思います。ぜひやっていただきたいと思うんですね。
 実態がわかっていないのに、個別に対応してくださいと。どうしているかがよくわからないわけですよね。病院でさえも、うちは専門外だといってスルーされる状態なのに、学校で十分な対応ができているのかということをやはり指摘をしなければならないと思うんですね。
 それで、資料の四枚目に、今紹介された中にあったと思うんですが、文科省が出している「健康的な学習環境を維持管理するために 学校における化学物質による健康障害に関する参考資料」というパンフレット、これは平成二十四年の一月に出されたものであります。この中の第四章、「いわゆる「化学物質過敏症」を有する児童生徒等に対する個別対応の基本的な考え方」というタイトルがついています。
 最初の三行のところをちょっと読みますけれども、「極微量の化学物質に反応するいわゆる「化学物質過敏症」を有する児童生徒等の学習環境を確保するためには、その重症度によっては児童生徒等及びその保護者や担任教員等の個人レベルでは対応に困難な場合があり、学校全体や教育委員会等の組織だった連携が必要になること」。個人レベルでは困難だと認めている、組織立った連携が必要だとおっしゃっている。これはすごく大事なことだと思うんです。だけれども、実態はわかっていない、任せている。これは非常に、極めておかしなことだと思うんですね。
 さっき、教科書の天日干しの話がありました。ちょっとめくっていただいて、資料の六枚目に、びっくりしたんですけれども、一般社団法人教科書協会が対応本作成依頼書というのをつくっているんですね。右側に、どんな対応本があるかというと、消臭紙カバーですとか天日干しですとか全ページコピーですとか。ただし、やるのは全部学校か家庭ですということなんですけれども。ただ、天日干しには一カ月かかるので早目に出しますよという意味で、希望をとっているんですね。そして、左側に、その対応が必要なのは何という生徒なのか、何年生で、発症年齢がいつで、どんな状況なのかというのを書くようになっております。
 なるほどなと思った、こういうことを文科省はやっているんだなと思ったんですが、そこではたと気がついたんですが、こうやって個人の情報を集めているわけですよね。そうすると、文科省は実態はわからないんだけれども、教科書協会は何人いるかを知っているということになりませんか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 いわゆる化学物質過敏症につきましては、さまざまな原因があろうかと思いますが、教科書協会が行っているものについては、教科書の例えばインクですとか接着剤ですとか、そうしたものによるものと思われることから個別の対応を望まれている方に対して、早期にお渡しをしたりとか特別なカバーをという形をとっておりますので、いわゆる化学物質過敏症全体、教科書によらないものも含めて全体としてどれぐらいの数になるかということについては、私どもとしては把握をしていないところでございます。
 以上です。
○高橋(千)委員 今、教科書によらないとおっしゃいましたね。だったら、天日干しの教科書を必要とする子供がどのくらいいるのかわかっているんですか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 大変恐縮でございますが、御通告いただいておりませんでしたので、教科書協会でこの調査により把握した数字については、現在、手元に資料はございません。大変申しわけございません。
○高橋(千)委員 結局、ないということじゃないですか。
 私は、全部わかってないんだから、そもそも化学物質過敏症というのをまだ厚労省があの程度の答弁しかしないわけですから、文科省に全部、医者じゃないのに答えろと言っているわけじゃありません。だけれども、保護者が訴えていることに対して、なぜつかまないのかと言っているんです。まして、教科書だけは把握しているんですから、教科書協会に聞けばいいだけの話じゃありませんか。そのくらいやるとお答えいただけますか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 教科書協会でこの調査で把握している数字については、別途確認をさせていただきたいと思います。
 なお、先ほど、冒頭申し上げましたとおり、一人一人の子供たちのさまざまな症状に対して個別対応していただくための参考資料ということでお配りをしており、そうした取り組みが個々の学校では行われて、子供たちの学習の場を確保するよう努めているということについては御理解をいただけたらと思います。
    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕
○高橋(千)委員 そこで、資料の七枚目を見ていただきたいと思うんです。これは、アレルギー疾患のある生徒個人について、何にアレルギーがあるのか、学校生活上の留意点、緊急連絡先、医療機関などをカード化した学校生活管理指導表というものであります。先ほど来お話ししているように、個々の生徒の対応をするんだとおっしゃっているので、これがまさにそうなんですね。個々の生徒の対応なんです。
 古屋副大臣が何度もアレルギーの問題、熱心に発言をされまして、平成二十六年、全会一致でアレルギー対策基本法をここで議員立法で成立させたわけですよね。
 詳細に書いてあるので皆さんも見ていただければとは思うんですが、こういうことを今やっているんだ。だとすれば、私は、現場の負担を新たにふやすというのは大変だなと心配したんですけれども、アレルギーについてこういう仕組みがあるんです。だったら、とりあえず今わかっていること、教科書のにおいはだめなんだ、あるいは音楽室や図工室だけは行くと非常につらそうにするんだとか、わかることはあるんですよ。そういうのを書き込むことで個人の状況を把握するということを仕組みに乗せていくことは可能なんじゃないですか。それはむしろ教員の負担も結果として減ると思うんですが、いかがでしょうか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、学校におけるアレルギー対策においては、学校生活管理指導表を活用しまして、アレルギー疾患を有し、配慮、管理が必要な生徒の把握、あるいは、個々の児童生徒の病の型、症状等に応じた校内での支援方策の策定や、医療機関、保護者など緊急体制の確認等を行いながら、教職員全員の共通理解のもとに適切な対策を講じるように運用をされているところでございます。
 なお、化学物質過敏症につきましては、その症状が多彩であることあるいは原因が特定できていないために、一概にアレルギー疾患と同様の詳細な管理指導表をもって対応することは困難ではないかと考えておりますが、一方で、保護者等が記入をいたします保健調査票というのがございますが、この保健調査票を活用するなどによりまして、学校、保護者、学校医あるいは主治医等と個々の症状について共通理解を持って対応することは重要なことと考えております。
 以上であります。
○高橋(千)委員 保健調査票という形で、こんなことを訴えているとか、こういうことを気をつけるという形でやるだけでもかなり違いがあるのではないかと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。
 それで、改めて伺いたいんですけれども、先ほど私が読んだところ、資料の四に戻るんですけれども、物すごいたくさん、いわゆるという言葉がついているんです。今お答えいただいたときに、いわゆる、ついてなかったんですよね。だけれども、タイトルにもついているし、本文中にも必ず「いわゆる「化学物質過敏症」」という言葉になっております。そもそも、かぎ括弧をつけている時点でいいんじゃないのかと思うんですよね。患者らは、いわゆると言われることがとてもつらいとおっしゃっています。
 先ほど来説明しているように、レセプトデータの傷病名にもなっているわけなんですから、これはもうそろそろ、五年もたったことだし、見直しをして、削除すべきではないでしょうか。
○瀧本政府参考人 御指摘いただきました子供たちの学習環境を確保するための参考資料につきましては、第一章の冒頭のところにおきまして、一応定義を置きながら、そこでの考え方の整理として、この中では、「いわゆる「化学物質過敏症」」というということで整理をさせていただいたものであります。
 さまざまな症状、原因等々があり、不明な中で、これを今の時点で外すのが適当かどうかということについては、そのことの是非を含めて検討させていただきたいと思います。
 以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 やはり、これは厚労省の姿勢も問われていると思いますので、ぜひ一緒に、いわゆるを取っていくことでお願いしたいなと思うんですね。
 やはり、背景に何があるかなと思ったときに、この文科省の参考資料は平成二十四年の一月に出されているんですけれども、きのう説明を伺いましたら、平成十六年三月の完成を目途に専門委員会で検討を始めたというんですね。何でそれが八年間たつまで出なかったんだろうと。当時は、シックハウスですとかシックスクールなどが大きな問題となっていた、そういう中で、かなり精力的に議論を始めたと思っているんですけれども、今となっては、では、一体当時の委員は誰ですかと聞いてもわかりませんと言われたし、一片の資料も出てこなかったんです。
 何が、何かと聞いたらいいんでしょうか、あったんでしょうか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 この参考資料を作成するに当たっての御質問でございますが、十六年の一月一日に日本学校保健会というところに参考資料の作成委員会を設置しました。しかしながら、先ほどもお答えさせていただいているとおり、原因等が必ずしも明らかになっていない中で、専門家の委員の方々の御議論の中でも、参考資料として学校現場に確たるものとして提供できるような形では想定していたスピード感ではまとめることができなかったために完成がおくれたものと理解をしております。
 以上であります。
○高橋(千)委員 でも、それだったら、資料も何もないはずないんですよね。
 私は、ずっとこの病気に苦しんできた方が一番事情を知っているだろうと思って、聞いてみたら、ありました。シックハウス症候群に関する調査研究協力者会議、平成十四年八月五日に第一回がやられています。
 その中で、やはり、「小児のMCS」、多種の場合の化学物質過敏症ですが、「まだ三例しかなく、日本の小児アレルギーの分野でも化学物質過敏症については客観的に病気であると判断する手法を得ていない。疫学調査、実態調査をどれだけ精度の高いプロトコールを作ってやれるかがポイント」だなということで、かなり消極的な意見が出ています。
 でも同時に、保護者にアレルギーがあると症状が出てくる場合があるねとか、厚労省のシックハウス症候群の基準を下回っているけれども症状が出ている生徒がいるとか、実際どのくらいいるんだろうという議論があるわけですね。
 それから、保護者の方からこういった事例があるという話は伺っているが全国調査を行ったことはない、この調査研究の中で児童生徒の実態を把握したいと考えているという議論があって、部会が立ち上がったんですよね。測定部会と調査部会、二つ。それも、全会一致と書かれています。
 なのに、どうしていまだに調査しないという答えなんですか。
○瀧本政府参考人 お答えいたします。
 先ほど来申し上げているとおり、文部科学省としては、さまざまな症状に苦しんでおられる子供たちの学習の機会をいかに確保していくかというところを最重要な課題と考えておりまして、そのための対策を講じる、ないしは、そのためのヒントとなるような対応策等については、さまざまな機会に周知をしたり、こうした参考資料の形で提供しているところでございます。
 一方、調査を仮に行うとなれば、その調査対象の定義を決めていく必要がございますが、残念ながら、まだ医学的な面も含めて原因等がはっきりしない中で、どこまでを含めてどこまでを含めなくていいのか。このいわゆる化学物質過敏症については、専門家の方々でも、現在でもなおさまざまな意見があるものと理解をしておりますので、調査について直ちに行うという段階にはなく、具体に、さまざまな症状で苦しんでいる子供たちに対する支援を優先して行いたいということでございます。
 なお、先ほど、いわゆるをつけなかったではないかという御指摘ございましたが、本日の答弁の冒頭につけさせていただいたものですから、その後のものについては意識的にはつけておりませんでした。御理解をいただければと思います。
○高橋(千)委員 まさかそこで、正直驚きましたけれども。
 時間がなくなってまいりまして、用意した質問がちょっとやり切れない状態なわけなんです。
 それで、ぜひ紹介しておきたいなと思っています。このいわゆるがなぜ取れないかといったときに、やはり、九七年に診断基準ができたはずなのに、専門外来を掲げて頑張ってくれている先生方もいるのに、いまだそれが共有されていないという実態があるからだと思います。
 それで、二〇〇八年、平成二十年で少し古いんですけれども、雑誌「臨床環境医学」第一号に、化学物質過敏症看護相談室の設置効果に関する臨床という論文があります。これは、三重大学医学部看護学科のチームの発表です。CS患者、四人の研究協力者に、看護の介入によって、いずれもQOLが改善されたという発表です。
 いずれも、四人、女性です。三人はリフォーム後のアパートの入居がきっかけ、もう一人は、せっかくの新築住宅、建て売りだった、入った途端に症状が出ちゃった、そういうことなんですね。四人に共通することは、理解者がいないことへの不満なんです。
 それで、まず理解をするところから始めた。面談、電話、メールなどで看護師がよく話を聞いて、例えば部屋の化学物質の濃度をはかったり、受診先が見つかっていない人もいたので専門病院の看護師さんを紹介したり、症状改善のための衣食住の指導をする、そういうことをやって、四カ月ですとか六カ月の中で、これまで不良だった人が良好になったり、やや良好という形で、QOLが改善したということがなっているんですね。
 この論文で指摘をされていることは、はっと思ったんですが、看護系大学で用いられる教科書には、SHS、シックハウス症候群や、CS、化学物質過敏症に関する患者支援の必要性が掲載されているということです。
 看護職が患者の悩みを聞き取り、専門外来を紹介するなどの役割が期待される。どうでしょうか。
○福島政府参考人 お答えいたします。
 看護基礎教育におきましてはさまざまな教科書が用いられておりますけれども、例えば、基礎看護学のテキストにシックハウス症候群あるいは化学物質過敏症の概要について記載があったり、あるいは、成人看護学のテキストにそういうシックハウス症候群患者の看護についての記載がされているというものもございます。
 これらで紹介されているシックハウス症候群あるいはいわゆる化学物質過敏症、そういう方かどうかに限らず、医療現場においては、まず看護職を初めとする医療従事者が患者さんの悩みを聞き取って、そして適切に医療につなげていく、こういうことは重要なことでございますので、これは病態に限らず、そういうことができるように私どももしていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 やはり、お医者さんが、仮に専門医じゃない、わからないにしても、まずその悩みを聞く、どういう状況なのかを看護の段階で聞いていくということが大事なんだという指摘があったんだと思います。ぜひそうしていただきたい。それだけでも気持ちが相当和らぐ。
 当事者団体から強く要望されているのは、やはり、診断されていないことの悩みだけでなく、ほかの病気のときに病院にかかることができないということなんですね。それで、特に悩んでいるのは歯医者さんの治療。歯医者さんの治療はどうしても、さっきとてもいい話があったんですが、ただ、反応するものがほとんどであります。もっと工夫をして、例えばパッチテストをするなどして、負担を和らげる材料を使うなど努力してほしいと言っているし、そういうお医者さんもいますよという紹介をしていますので、少し研究していただけるでしょうか。
○神田政府参考人 歯科における化学物質過敏症等の対応についてのお尋ねでございますけれども、特に歯科治療に使用される歯科材料等に関するものにつきましては、例えば金属アレルギーがあるような方については金銀パラジウムではなくてレジンですとかほかの材料を使うというような対応がされておりまして、患者の状況に応じて歯科医師が適切に使用しているものと考えておりますけれども、先ほどから御指摘ございますように、現在、歯科材料を使用する場合等、患者の視点からのただいまの御指摘を含めまして、どういった点に問題があるのかといったようなことについて十分把握できておりませんので、今後、関係学会や関係団体と連携して現状把握に努めていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 よろしくお願いします。
 いろいろ述べてきましたが、大臣、最初におっしゃってくださったように、まずは総合的な窓口ということで、厚労省がリーダーシップを果たしていただきたいと思います。
 終わります。

 

――資料――

2017年6月2日衆院厚生労働委員会提出資料

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