産後ケアなど求める
高橋氏、児童福祉法改正案で
衆院厚生労働委員会は5月31日、児童福祉法・児童虐待防止法改正案を全会一致で可決しました。日本共産党の高橋千鶴子議員が質疑に立ちました。
同案は、家庭裁判所が、児童相談所の教育プログラムを受けるよう保護者に直接勧告します。原則2カ月の一時保護の延長も、司法の承認が必要となります。虐待から児童を保護するため、児童福祉法28条に基づく申し立てによる家庭裁判所の審判で保護者の合意なく親子分離できる制度がありますが、一時保護は強い権限の行使であり、司法の関与が課題となっていました。
高橋氏は、昨年9月の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」の第12次報告で、44人の死亡事例のうち、0歳が27人、うち0カ月が55・6%も占めると指摘。厚労省の吉田一生雇用均等児童家庭局長は「予期しない妊娠、若年の妊娠、支援の必要な妊婦が増大している」と答弁しました。高橋氏は助産師による産後ケアなど母子の愛着形成が有効だとして、母子保健のすきまない取り組みを求めました。
また親権裁判での家裁調査官による子どもの意思確認について、「子どもの本心を引き出す技術は、経験を積んでこそのものであり、調査も慎重でなければならない」と支援体制の充実を要求。村田斉志最高裁家庭局長は、発達段階に応じた聴取も工夫しており、「今後必要な体制の整備を考えていく」と答えました。
(しんぶん赤旗2017年6月6日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
十九日の本委員会で、私、医療法の質疑ではありましたけれども、助産師と医師の連携について取り上げました。最後のところが、本当は問いだったんですけれども、言い切りになったので、きょうは続きからやってみたいなと思います。産後ケアに助産師の活用が児童虐待防止にもつながるのではないか、そういう提起だったと思います。
それで、まず伺いたいのは、昨年九月の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」第十二次報告、先ほど来議論になっておりまして、実態からは少ないんじゃないかということもございますが、そうはいっても、心中以外の四十四人の死亡事例のうち、ゼロ歳が二十七人、六一・四%、しかも月齢ゼロカ月が五五・六%と圧倒的に多いという、まずその要因をどう考えているのか、お伺いいたします。
〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕
○吉田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の虐待による子供の死亡事例、この第十二次報告でございますけれども、ゼロ歳児の死亡事例がこの年、例年以上に高い割合を占めておりました。背景ということでございますが、検証していただいた議論などを踏まえますと、予期しない妊娠あるいは若年の妊娠など、特に支援が必要な妊婦さんが増大しているということが考えられるのではないかというふうに受けとめております。
それは、データといたしましては、ゼロ歳児の死亡事例が、十二次において、今引用いただきましたように六一・四だったんですが、その前の年、十一次では四四・四%だったとか、あるいは予期しない妊娠が、ちょっと逆になりますが、十一次で二二・二で、十二次だと五四・五に上がっている。あるいは、若年の妊娠ケースが、十一次では一六・七だったものが、十二次では二〇・五%に上がっているというデータも先ほど申し上げたような評価の後ろにございます。
一方で、妊娠届の提出がなくて母子健康手帳が未交付であるケースというものもございますし、妊婦健診が未受診というケースも全体としてふえているということから、特に支援が必要な妊婦さんにつきましては、市町村で状況を把握することができずに、母子ともに危険な状態にありながら、なかなか支援が行き届かない場合があるということも言われております。
こういう状況を踏まえまして、私ども、昨年の児童福祉法の改正では、支援を要する妊婦等に日ごろから接する機会の多い医療機関ですとか学校等が支援を要する妊婦等を把握した場合には、その情報を市町村に提供するよう努めるということを規定として入れさせていただきました。
引き続き、この支援を要するような妊婦等に適切な支援が行われるようなことを取り組んで、今回の十二次報告でもあらわれたようなゼロ歳児の死亡について、適切に対応させていただきたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 例年以上に高くなっているということ、また、望まない妊娠が五四・五%、母子手帳の未発行が二九・五%ということで、極めて深刻な事態だと思います。まずそこから手当てをしていくということが非常に求められていると思うんですけれども、昨年六月の母子保健法改正で、虐待の予防及び早期発見に資するとして、母子保健の役割が明記されました。また、児童福祉法の改正においても、特定妊婦も要支援に位置づけられました。
それで、前回の続きというところなんですけれども、助産師は、助産院として接するときはもちろんですけれども、産科医院に勤務する場合でも、妊娠期から出産後も相談に乗り、また妊産婦に安心感を与えられる、あるいは、産後ケアを通して、心身の癒やしだけでなく健全な親子関係にもつながるということが言われております。産後うつや孤独の子育てからお母さんを守ることが虐待防止にもつながると思うんですけれども、まず、この点で、大臣、認識を共有できるか伺います。
○塩崎国務大臣 助産師の役割についての御指摘をいただきました。
家族から十分な支援が受けられない方がふえているという指摘がある中で、安心して出産、子育てができる支援体制を構築するというのが、我々にとってもこれは大事な政策課題だと思っております。
このため、子育て世代包括支援センターあるいは産後ケア事業などによりまして、妊娠期から出産後にかけての相談支援に今努めつつあるわけでございまして、このような妊産婦などに対する支援を行っていく上で、助産師の皆さん方の出産、育児等に関する幅広い専門的な知見は大変重要であるというふうに考えておりますので、行政ともっとしっかりと連携を図りながら、大いに活躍していただければというふうに期待をさせていただいております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
それで、資料の一枚目を見ていただきたいと思うんですけれども、妊娠、出産、子育てと現行のサービス、支援ということで、下はこの間の母子保健と子育て支援の変遷ということの資料なんですが、この資料は大阪府立母子保健総合医療センター長の佐藤拓代氏によるものなんですけれども、政府の新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の委員でもあるかと思います。大変わかりやすいかなと思うんですよね。
下の方にあるんですけれども、母子保健のところを見ますと、二五%ほどの低い新生児訪問率、四カ月健診までサービスがない、つまり、生まれてから四カ月健診にたどり着くまでの間にエアポケットがあるというところからスタートをして、全戸訪問事業があったり、そして今の産後ケアなどがあったりということで、包括支援センターというような全体的な発展をしてきたという図になっております。
それから、上のところなんですけれども、これは、妊娠から始まって、妊娠の届け出、母子健康手帳交付、妊婦健診、訪問、出産、産婦訪問ということで、右側に率が書いてあるわけですよね。
これはどういうふうに見るかといいますと、例えば、乳幼児健診受診率は九〇%以上と大変高い。ですが、支援を要する親子に対する家庭訪問は、出生数当たりの妊婦訪問率が二・七%でしかない。つまり、この図の黒いところが、言ってみればすき間なんですね。率が一〇〇%じゃないので、すき間が出ている。だんだんだんだん、すき間が結構あるということになるわけなんです。これをアウトリーチによって埋めていくことが、やはり虐待予防にとっても極めて重要ではないかという指摘を佐藤さんはされているわけであります。
それで、実は、大分前の話なんですけれども、母子手帳はとったらしい、だけれども、出生届を出していない、そして健診にも来ないし、おかしいねというところから、いろいろな機関が訪問したりして、既に手おくれだったケースがありました。私の地元ですけれども、押し入れの中で赤ちゃんの白骨化した遺体が見つかったということでありました。実家に戻るから出生届を出すのがおくれたなどと言いわけをし続けて、結局一年以上放置されたということでありました。
それで、母子手帳をとっていたことは、たまたま児相は把握をしていたんです。だけれども、結局、ではその責任の所在が市役所なのか児相なのか、どっちどっちと譲り合うような格好になっちゃうわけですね。
ですから、これをこうやって見ていきますと、やはり、さまざまな、市役所がかかわる部分と児相がかかわる部分、あるいは医療機関との連携、そうしたことですき間が、人の面でもすき間があってはいけない、重なり合うことは構わないんだけれども、そういう意味でのすき間をつくってはならないというふうに思いますが、一言あればお願いします、局長。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
御指摘いただきましたように、妊娠期から出産、そしてその後の新生児、そして子供の育ちという過程について、すき間のないようにというのは御指摘のとおりだと思います。
そういう意味では、それぞれのフェーズに切れ目なくということと、関係者それぞれの方々が、かかわっておられる方が連携をとってやるという意味では、その拠点となるような子育て世代包括支援センターという新しい制度も使って、それぞれの地域地域の特徴はあろうかと思いますけれども、すき間のないような取り組みを進めていただくように我々も支援してまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
譲り合うことが結局、赤ちゃんが犠牲になるということになってはならないと思いますので、しっかりとお願いしたいと思います。
次に、司法の関与について伺います。
きょうかなりの意見が出ているわけですけれども、資料の二枚目に、これは裁判所のパンフレットの一部なんですけれども、「家庭裁判所調査官 家族・人・社会の架け橋」というのがタイトルなんです。
先ほど来いろいろなことを言われている調査官でありますけれども、左と右と、大きく言って少年事件と家事事件の二種類を扱うわけです。しかし、家事事件、家族関係の事件が結果として少年事件に、同じ子供が少年事件にもかかわっていくということもありますので、どちらもとても大事で、関係があるというふうに思うんですけれども、離婚の調停や、親権、監護権をめぐる争い、養子縁組の許可や、後見人の選任などに必要な調査を行い、裁判官に報告をするというものであります。もちろん、決定をするのは裁判官なんですけれども、その報告をするというふうになっております。
それから、資料の三枚目は、先ほど来出ている、今の法律で新設される司法が関与する部分であります。それから、下の方が、家庭裁判所の保護者指導勧告がどの程度出されているかというのがあります。
それで、もともと、児相の所長には職権による一時保護というのがあるわけでありますよね。そして、児童福祉司による保護者指導というものもある。しかし、施設入所などが必要だとしても、保護者がそれに同意しない場合、児童福祉法二十八条に基づく申し立て、家裁による審判を仰ぐことになるということです。しかし、通常、その審判が二カ月から四カ月かかるのに対して、一時保護であれば原則二カ月以内とされているのに、それが結果として長くなるのではということも指摘されてきたと思うんです。
それで、まず伺いたいのは、調査官による調査は、このフローを見ながらですが、どんなときに、どのタイミングで行われるのか、現状との比較でお答えください。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
家庭裁判所は、申し立てのあった全ての事案について勧告を行うわけではないということをまず前提に、今回、親子分離が避けられないほど深刻な虐待の場合など迅速な裁判が必要な場合に、従来どおり勧告を経ずに審判が行われるものはあるということかと思います。
私どもとしましては、今回導入しようとしております勧告の仕組みの方法について、いろいろと、都道府県に周知するなどにより、どういう事案に適切に活用されるかということについては今後考えたいと思います。
その上で、お尋ねいただきました、家庭裁判所がどのタイミングで、どういう形でということでございます。
あくまでも必要に応じて家庭裁判所の調査官に事実の調査をさせることができるという形になってございますので、現在のところは、私ども承知している限り、保護者等の陳述の聴取を行った後に家庭裁判所の調査官の調査が行われることが現実としては多いというふうに承知をしております。
先ほど阿部委員のやりとりの中で、ちょっと私、発言の機会を失しましたが、今回の形におきましても、家事審判手続法におきまして、それぞれの審判事案につきましては、保護者の陳述の聴取を行わなければならないということは決まっておりまして、タイミングが決まっていないということになってございます。
そういう意味では、今回の勧告を設ける改正により家庭裁判所調査官による調査のタイミングがどうなるかについて、なかなか一律にお答えするわけにはいきませんけれども、それは個々の裁判官の判断によって適切なタイミングで行われるというふうに私ども受けとめております。
○高橋(千)委員 先ほど、ちょっと局長が言いたそうな顔をしていたので、そのことはまずフォローいたしました。
それと同時に、そのタイミングというのは一回ではないですよね、つまり、一時保護の延長の場合と、それから再統合の場合など。そういう意味で、つまり、何か、一回出したらもうそれっきりよみたいな議論がされてあったんだと思うんですが、司法の関与というのは、そのたった一回の、勧告の紙を出すとか、あるいは審判を出すとか、それだけなのかということを聞いています。
○吉田政府参考人 失礼いたしました。
基本的には、勧告といいましょうか、申請をして、一定の指導をさせていただいて、その状況も報告をして、勧告をいただくということでございますので、その後、必要に応じて、また必要があれば、私ども、児童相談所サイドからは、裁判所に対しての申請は行われ得るということでございます。
○高橋(千)委員 それで、単に、児童相談所が保護者との対立関係にあるから、家裁が勧告書を出してお墨つきを与えるだけではないと思うんですね。それだと逆に対立を強めることにもなりかねない。
では、家裁による勧告書が出されても保護者が従わない、保護者指導に応えない場合はどうするのかということを伺いたいと思うんですね。
実効性の確保のために裁判所が命令を発したにもかかわらず保護者がそれに従わないときは、直ちに一時保護するべきとの意見もあったと聞きます。ただ、日弁連は、一時保護は子供にとって必要であるから実施されるべきものであって、保護者に対する制裁として実施されるべきものではないから賛成できないと表明している。私もそうだと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。
○塩崎国務大臣 あくまでも、子供のために何をするのかということが大事であるということは御指摘のとおりだと思います。
家庭裁判所は、保護者指導の勧告をした場合に、勧告のもとでの保護者指導の結果について都道府県等から報告を受け、その内容を踏まえて、里親委託等の措置の承認の審判を最終的には行うということになることがあるわけであります。
審判の内容については、家庭裁判所が個々の事案に応じて判断すべきものであって、その際、保護者が勧告のもとでの指導に従わないということは、一つの重要な考慮要素となると考えておりますけれども、それのみで判断をするのではないわけで、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害するおそれがあるかどうかと、この大事な判断をすることになると考えられるところでございます。
○高橋(千)委員 制裁的なことではないというふうに確認をさせていただきたいと思います。
きのうの参考人質疑の中でも、藤林参考人が、家裁の出番のことについて、これまでは、あらゆる手段を尽くしても奏功せず、最後の手段として親権の取り上げだけが残された段階で、親子分離の決定、そういう局面でしか裁判所が出てこなかった、出てこなかったというか、それは裁判所のせいではなくて、そういうふうになっていたということで、そうではなくて、もう少し、指導の段階、プロセスの段階でかかわるようになったことはよいことだというふうな指摘をされていたので、私もそのとおりだなというふうに思って受けとめました。
それで、この間、司法関与のあり方についても検討会が行われ、家庭への公権力の介入というのは、本来、憲法十三条、尊重されるべき個人の自由を不当に侵害するものであるし、あくまで、介入しなければ子供の権利としての健やかな成長を確保できないと判断する場合のみだ、ですから極めて制限されたものである、その上で、その強い権限だからこそ、ひとり児相だけの判断ではなく、司法の関与がやはり必要なのではないか、そういう議論があって、まずここにたどり着いているのではないかなと思っております。
そこで、最高裁に伺いたいと思います。
子供の意思確認、子供の福祉を守るために調査官はどのような工夫をされているのかということです。
先ほど来、九時―五時で、休日も出てくるわけじゃないしとか、ちゃっちゃと仕事を済ませる、そういう話ばかりされているわけですけれども、さっきの資料の中にも、これは、裁判所の中の児童室で親と子が遊んでいるところを黙って見ているわけなんですね。そのことによって、元気に生活できているのかな、パパとママに一番伝えたいことはどんなことかなというので見守っているんですが、親子の愛着関係を見ている、そういうふうな説明だと思うんですね。
例えば、きょうも大分議題になった面会交流で、監護親と非監護親の葛藤が激しいときに、子供は、やはり、今自分と一緒にいる監護親にさえも捨てられたら困るという気持ちが強くてなかなか本音を言わない、そういうふうな大変複雑なあらわれ方をするわけですよね。そこをどのように工夫していらっしゃるのかということをぜひ聞かせていただきたいと思います。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
家庭裁判所におきまして、子の意思を把握するに当たっては、委員の御指摘にもございましたとおり、家庭裁判所調査官が心理学、教育学等の行動科学の知見及び技法を用いて行う事実の調査という形で行っておりますもの、これを活用しているというふうに承知しております。
このような事実の調査に当たって、家庭裁判所調査官は、子の意思を把握するために、子供に対して面接をする際には、単に子供から話を聞く、言葉として出てくる表現を聞くということだけではなくて、子の表情やしぐさなど言葉以外の情報も十分に観察しながら、子供の意思を総合的に理解するように努めております。
委員の御指摘にございましたとおり、資料にありますような、裁判所の児童室で、遊具で一緒に遊びながらその様子を観察し、あるいは親と子がそういう形で交流している場面も見ながら、さまざまな情報を得ているところであります。
また、父母の紛争の内容、子の年齢、性格、それから子供が紛争に巻き込まれている程度ですとか、親子関係、子の現状などを踏まえますと、子供がいきなり初対面の家裁調査官と率直に話をすることは難しいな、こういうふうに予想される場合もあるわけでして、そういった場合には、いきなり事件の内容にかかわるような質問のための面接ということではなくて、子供と良好な雰囲気を醸成するためのまずは顔合わせというような形を先行させて、今回は一緒に遊ぶだけにとどめておく、その次に、信頼関係ができたところで面接という形にしていく、こんな工夫もしております。
また、家庭裁判所調査官は、事案に応じて、子供のふだんの様子を見ている保育所ですとか学校の職員の陳述、こういったものを聴取したりして、子を取り巻く事情、客観的な事実関係なども十分に把握して、これらを踏まえた上で、そのお子さんの意思、真意というのはどこにあるのかということを理解するように調査をしております。
このように、家庭裁判所におきましては、今申し上げたような形で、事案に応じて子供の意思を適切に把握するように工夫、努力しているものと承知しております。
○高橋(千)委員 貴重な紹介をしていただいたと思います。
私がこのことを取り上げようと思ったのは、司法心理学の視点ということで、家庭裁判所調査官による子の福祉に関する調査というレポートを読ませていただきました。これは、金沢家裁小松支部の主任家裁調査官小沢真嗣さんがまとめたもので、若干前のものなんですけれども、今みたいに面会交流が主流になっているもっと前の時点なんですけれども、実は、初鹿委員などが熱心に取り組まれている、親子断絶をめぐって、どちらかの側の話ではなく両方の、お母さんにもお父さんにも、それが逆の立場になる場合もあるんですけれども、両方の側で、監護親と非監護親の両方の支援をして経験をしている弁護士さんから紹介をされて読んだのがきっかけでありました。
いわゆる行動科学ということで、先ほどお話があったように、子供の発達段階、年齢によって当然理解できる範囲というのは違うわけですから、そういうものに応じて子供の心情や希望を聴取するものである、両親の紛争を経験した子は、自分はこれからどうなるのだろうという不安、対立する両親の間に入って悩む忠誠葛藤、一方の親と別れたことによる喪失感、両親が不仲になったのは自分が悪かったからではないかという罪悪感などなど、さまざまな関係、気持ちを持っていて、それをいかに引き出すかという非常に重要なスキルを持っているんだなということを学んだわけであります。
それで、ちょっとだけ紹介をしたいなと思うんですけれども、小五の長男を置いて家を出たお母さんが離婚訴訟をしているわけですが、夫は飲酒と暴言がひどいということで子供を置いて出たんだけれども、改めて親権を争っていて、母は、長男は父を嫌っているんだと言う。父は、いやいや、長男がそういうふうに反発しているのは反抗期のせいなんだし、お母さんのところに行くと転校しなきゃいけないし、友達とも別れなきゃいけないから、自分のところにいる方がいいんだと、全く、真っ向から陳述することが違うわけですよね。
その長男と調査官が会ったときに、お父さんとお母さんの言っていることが違うんでしょうと子供の方から言われたというんですね。だから、本当は、そういうことを聞かれる前に子供の方から言い出すというのは、いろいろな、事前に親からいろいろなことを吹き込まれていたりとか、そういう事情があるわけで、調査官が言ったことは、どっちが正しいかとかジャッジをするために来ているんじゃないんだよと安心をさせた上で、今後の生活のためにお父さんとお母さんができることが何かないかなと尋ねた。
これは、尋ね方が、物すごくストレートで、どっちに行きたいとか、そう言っちゃうと非常に難しいということで、あえてそういう聞き方をしたときに、お母さんのところに行きたい、勉強したいというふうなことを言ったんだそうですけれども、そのときに長男が言ったせりふが、時々寝る前に宿題をしていて考えてしまう、何でこうなったんだろうか、お母さんが出ていった日、僕は早く寝ていた、それがあかんかったんかと思ってしまう、夜更かししていればお母さんが出ていくのをとめられたのではないかと思うことがあると打ち明けたそうです。
ですから、打ち明けるまでにも相当の時間がかかっていると思うんですけれども、出ていったことをとめられなかったということが自分のせいだ、そういうことも子供は抱えているというふうな中で、いかに、大人の都合ではなくて、子供が本当に望む道を、そのときはもしかしたら本当の気持ちが見つけられないでいるかもしれないわけですけれども、それを引き出すスキルというのが本当に経験を積んでこそのものであり、また調査も慎重でなければならないなということをつくづく思ったわけであります。
そのことをもう一度確認したいのと、大変申しわけないんですが、この間も何度も言われていましたけれども、やはり、そういう意味でも、体制の充実ということが改めて必要なのではないか、これまでにない仕事をするのであるから体制をふやしていくことが必要なのではないかと思いますが、最高裁にもう一度伺います。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
体制につきましては、質の点と量の点があるということで、既に答弁もさせていただいたところでございますけれども、質の点に関しまして、今御紹介いただきました小沢調査官の論文は、現場の家庭裁判所調査官が必ずと言っていいほど読んでいるものの代表的なものの一つでございまして、こういったものも含めて、それぞれ研さんに励んでおりますし、また、外部の専門の方を講師にお呼びして御講演いただくなどして、面会交流ですとか子供の心理の問題に関する専門性を高めている、こういったことはこれからも続けてまいりたいというふうに思っております。
それから、量の点につきましては、今のところでは、現有勢力を活用してということで考えてございますけれども、新しい事件類型もできるというところもございますので、今後の事件動向等を踏まえて、必要な体制の整備については、もちろん努めてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 答弁としては、今後の任務のことを踏まえてということと、国会の議論を踏まえてということもおっしゃったと思うんですね。それは、前回の委員会でもそういうお答えをされていますし、きのうの参考人の陳述の中でも複数意見があったと思いますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいということを要望したいと思います。ありがとうございます。
もしあれでしたら、最高裁への質問はこれで終わりですので、御退席いただいても結構です。
それで、大臣に伺いますが、ちょっと時間が心配になってきましたので、二つくっつけて聞きます。
先ほど来議論をしていますので、もう十分そういうつもりでいらっしゃると思いますが、親子分離、再統合においても、やはり、大人の都合ではなく、子の最善の利益が尊重されなければならないと思いますけれども、その点の認識を伺いたい。
その上で、先ほど、午前でも水戸委員の指摘もあったんですけれども、児相の調査権限の強化というのは、全国児童相談所長会などが主張しているわけですよね。それで、できる規定といっているけれども、そもそも出せる情報も、虐待に関するものということで、非常に狭めているということも指摘をされています。ということで、児相の調査権に対する応答義務というのはやはり明記するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 まず第一に、子の最善の利益をしっかり尊重して、親子分離、再統合についても行わなければならないのではないのか、こういう御質問でございましたが、児童虐待対策につきましては、昨年の児童福祉法の改正におきまして抜本的な改正を行いました。何しろ、一番大事だと思っているのは、やはり子供の権利、子供が権利の主体であるということ、子供の最善の利益が優先して考慮される旨を、規定を明確にいたしたわけでございます。
したがいまして、児童虐待における親子分離や再統合の場面においても、子供の最善の利益が優先して考慮されるべきであるということを明確に考えているところでございます。
それから、児童相談所に対する関係機関からの資料または情報の提供に関しましては、昨年の児童福祉法の改正によりまして、民間の医療機関、児童福祉施設、学校等についても、地方公共団体と同様に、児童相談所長から児童虐待の防止等に関する資料または情報の提供を求められたときは、これを提供することができることといたしております。
これによりまして、原則として、個人情報保護法や守秘義務に違反することなく情報を提供できることを明確化したところでございます。
また、この改正を踏まえて、民間事業者からの資料あるいは情報の提供についても、個人情報保護法や守秘義務との関係について整理をし、必要な場合にはちゅうちょなく資料または情報の提供を依頼するよう、都道府県等に通知を発出し、周知を行ったところでございます。
引き続き、民間事業者を含めた関係機関から必要な資料や情報の提供が受けられるように、こうした規定や通知について周知を行ってまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ですから、できる規定であることには変わりないわけですよね。今、三つくらいの審議会が動いていると思います。また次の法改正を準備しているのかなと思いますが、やはりこれは、応答義務ということで、今通知している内容を法定すべきではないかというふうに指摘をしておきたいと思います。
それで、全国二百九カ所の児童相談所のうち、百三十二カ所に一時保護所が併設されていると聞いています。
この一時保護は、保護者の同意も子の同意も必要ないわけですよね。それだけ緊急を要するということで、とにかく緊急の場合は、私はちゅうちょするべきではない、このように思っています。子供の命が最優先であります。ただ、それが長くなれば、さっきも議論をしてきたわけですけれども、本当に突然連れていかれて、いつまで入っていなきゃいけないのかな、友達にも会えないと。言ってみれば行政による神隠しだという表現をされた方がいますけれども、そこは本当に、子供が第一だということをおっしゃっていますので、十分な対応をしなければならないと思うんです。
しかし、現実には、そもそも一時保護自体ができない、一時保護施設が満杯であるということがあるわけで、そういうときどうするんですかと聞いたら、児童養護施設に一時預かりとか、里親に、里親といっても、子供が欲しいと言っている人もたくさんいるらしいんですが、だからといって経験がない方に、子供を持ったことがない方にいきなりということは、それはできないということで、ベテランの方にお願いするということもあると聞きました。
そういう意味で、やはり、ちゅうちょすることがあってはならないという点で、施設の増設も含めて検討するべきかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 残念なことでありますけれども、一時保護を必要とする子供の数はふえているわけでございます。一時保護所は、入所率、常に一〇〇%前後となっているところも多々あるわけで、こういうことから、地域の状況に応じて、一時保護所の数とか定員をふやすとともに、里親そしてまた児童養護施設などへの一時保護委託も進めるという必要があると考えております。
厚労省では、従来から一時保護所の改修等に必要な整備費の補助を行っておりますが、加えて、平成二十八年度からは、里親に一時保護委託した場合の手当を引き上げるということもやってまいりました。児童養護施設等が一時保護委託児童を一定数受け入れることができる専用の居室などを設けていただいた場合には、その運営費に対する補助の加算も行ってきております。
そういうような措置を通じて、子供の安全等を適切に確保し、一時保護所の整備、そして一時保護委託の一層の推進に向けて、引き続きの努力をしてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 本当に緊急避難の話かもしれませんが、定員をふやすというのは、今、多様な子供もいるんだからということで、なるべく部屋を分けようという議論をしている、環境づくりをしようと言っているときですから、なるべくそれは避けた方がいいのではないかと思いますし、手当を当然出して委託もやるし、補助も加算するとおっしゃったけれども、いずれにしても、それには受け入れる側の人手も必要でありますから、あわせてお願いをしたいと思います。
少し具体の話に入りますが、第十次から十二次までの心中以外の虐待死事例の中で、施設入所の経験のある事例十四例のうち、家庭復帰後、児童相談所が家庭訪問等を実施して支援をしている、あるいは市町村が関与している、そういう事例は九人、六四・三%。関与しているにもかかわらず死亡に至っている。本当に残念であります。しかも、家庭復帰後、一から三カ月未満で死亡が四人、半年未満に九人で六四・三%であって、本当にこんなことは絶対あってはならないと思うんですね。
ですから、現実に、日々新しい事案に対処をしながら、しかし、家庭に帰してそれで終わりではない、フォローも本当にやっていかなきゃいけないという点では、やはり児相の体制というのをさらに強化することが必要かと思いますが、いかがでしょうか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
施設入所措置等の解除後におけるお子さんあるいは家庭への支援を継続するということが重要だというのは、委員御指摘、我々も同感でございます。
従来から、退所したお子さんたちに、退所前に、それぞれ、市区町村の要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協において、退所前で関係機関が情報共有するということを行うとともに、退所後少なくとも半年間は、児童福祉司指導等の支援という形で継続をするという運用を、これまで都道府県等に対して通知をさせていただいております。
また、昨年の児童福祉法等の改正によりまして、入所措置あるいは一時保護の解除後に、一定期間、市町村あるいは児童福祉施設など地域の関係機関と連携して、子供の家庭を継続的に訪問することによって、定期的に子供の安全確認、保護者への相談支援を行うことといたしました。こういうのを支えるためにも、児童相談所の体制強化という御指摘かと思います。
私どもとしては、昨年の法改正によりまして、児童心理司や弁護士等の専門職の配置を新たに法律に位置づけさせていただきましたし、それに伴う政令改正によりまして、児童福祉司の配置基準について、人口当たりの数というものをまずふやすと同時に、人口だけではなくて業務量も考慮できるように見直しをいたしました。
さらに、昨年四月からは、児童相談所強化プランという形で、児童福祉専門職などを、平成三十一年度までの四年間で千百二十人の増員を計画的に行うということをしておりますので、今後引き続き、体制の強化、計画的に着実に行うことによりまして、退所後のフォローを含めた、お子さんや家庭に対する適切な支援を行ってまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 強化プラン、四年間で千百二十人ふやすと。先ほど来もこの強化プランの資料を配って議論されているわけですけれども、増員してきたことはわかっております。ただ、実際には、虐待の件数が何しろ十万件を超えたわけでありますから、一人当たりのケース数というのはやはり年々ふえていって、追いついていないというのが現状だと思います。
しかも、今、増員していると言いましたけれども、正規職員の比率というのはどうなっているのか。それから、そのうち兼任、先ほども議論がありましたように、虐待対応だけではありませんので、兼任はどのくらいされているのか、この点、お願いします。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
児童相談所における専門職、手元に、平成二十八年四月一日現在、これは私ども厚生労働省として調べさせていただいております。
具体的には、児童福祉司の方々につきましては、その常勤職員、ここだけ数字を申し上げますと、三千十九人で、全体の児童福祉司さんの九九・六%。同様に、児童心理司さんにつきましては、常勤職員の方の比率が八七・三%、保健師の方が八六・一%ということで、専門職全体を合わせますと、九六・一%は常勤職員ということになってございます。
また、常勤職員の方、兼務の方もおられますが、どことの兼務ということまで把握できませんけれども、全体の兼任職員の割合は約八%というふうに把握をしてございます。
○高橋(千)委員 今、八%とお答えになりました。これはしかし、ある程度ばらつきはありますよね。当然、都市部ほど兼任が多いという指摘もありますし、ちょっと私が前に把握していた数字では、常勤率は六六・三%という程度の数字がありましたので、一定ふやしてきたのかなと思うけれども、まだまだそういう状況であるというのは言っておかないと。さらに対応していただきたいと思います。
それで、大臣に伺いたいんですが、市町村との連携を強めてきました。ただ、実際のところ、市町村の担当者というのは二年か三年でどんどんどんどんかわってしまうわけですね。そうすると、経験が蓄積されない、せっかく連携のいろいろなスキームをやってきたけれども、また人がかわって振り出しに戻っちゃうというので、非常に悩みになっています。
ただ、だからといって、同じ人がずっとそこにいろという提案はなかなかしづらいです。それだと、さっきから大臣が言っているように、それこそバーンアウトになってしまいますから、そこはうまくローテーションを組むとか、あるいは経験のある人を必ず残しながらというふうな、うまい組み合わせというのは絶対必要だと思うんです。
そういう点では、例えば総務大臣ですとか関係省庁と少し連携をとり合って、経験の蓄積がちゃんとされていくような体制をとるべきと思いますが、いかがでしょうか。
〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕
○塩崎国務大臣 去年のあの法改正で市町村に支援の役割を担っていただくということで、この役割は非常に大事になってくるわけであります。したがって、現場は市町村ということで、そういう意味で、子供とそれから妊産婦の福祉に関する支援事業を行うための拠点の整備にも努めないといけませんということで、組織や職員体制の充実が市町村レベルで求められるわけでございます。
一方で、今御指摘のように、職員は定期異動というのがございますので、一定年数経過した後には必ず異動してしまうというこれまでの現実がありますが、こういう点は、昨年七月から、子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ、そこにおいても、短い期間の中で異動した場合は経験が積み上がらないので、勤め続けられるような人事配慮をぜひ市町村にお願いをしたいということ、それから、人事異動が人材育成の妨げに間々なりがちではないのかといったことで御意見を伺っているわけでございます。
各市町村における職員の人事異動につきまして、各自治体の実情に応じて、それぞれの裁量によって行われるものではございますけれども、引き続き、私どものワーキンググループなどの構成員の方々の貴重な御意見を伺いながら、どういうことを、私どもとして改めて、市町村で子供の支援に当たっていただける方々、とりわけ虐待に対応していただく方々のあり方について、検討をよくしてまいりたいというふうに思います。
要対協が市町村にありますから、児童福祉に関してはやはりとても大事で、そこにおられる調整担当者というのが一人か二人、まあ多くてもですね、この研修受講は義務づけられておりますけれども、私は、市町村の担当する虐待関係の職員の皆さん方にはあまねく研修を受けてもらえればというふうに考えています。
○高橋(千)委員 問題意識は共有できているんだと思います。ぜひ、人材が引き継がれていくように、経験が継続されていくようにお願いをしたいと思います。
ちょっと定員があれかもしれませんが、続けますので、ぜひ、人の配置は大丈夫でしょうか、お願いいたします。
それで、二〇〇九年の改正児童福祉法によって、施設職員等による被措置児童等虐待について、都道府県知事が公表する制度が法定化されました。二〇一三年度の届け出、通告受理件数は二百八十八件で、事実確認が行われた事例は八十七件。この届け出というのは、子供自身だったり母親だったりさまざまあるわけですが、二百八十八件の届け出のうち、確認されたのは八十七件だと。この実態をどう見ているかということと、そのうち一時保護所の中の数字はどのようになっているのか、お願いします。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
御指摘いただきました平成二十五年度の被措置児童等の虐待のうち、届け出、通告受理のうちの事実が認められた件数は八十七件ということでございます。
そもそも、被措置児童等の虐待というのはあってはならないというのがまず基本、我々はそのように強く思っております。その上でも、こういう事例が報告されてございます。我々としては、このような事例が生じないように、まず最善の努力をするということは当然のことだというふうに思います。
そのため、引き続き、届け出、通告等の制度、こういう仕組みを、制度、法定化されましたものを周知するということと、自治体が行っていただいております指導監査、あるいは第三者評価などを受審していただいて、こういう施設内におけるあってはならないことを防止する、そして子供の権利擁護に係る取り組みを推進するということを進めてまいりたいと思います。
なお、お尋ねのこの八十七件のうち、一時保護所における件数は一件と把握をしてございます。
○高橋(千)委員 まず、私は、三分の一ほどの認定が正しいのかどうか、それから一件というのが正しいのかどうかというのを大変疑問に思います。
まず、あってはならないとお答えくださった。当然であります。絶対にあってはならない。だけれども、やはり一時保護所の中は大変閉鎖的で、なかなか実態が見えません。子供が小さ過ぎて訴えることができない、あるいは、訴えたとしても子供だからと相手にされないおそれもあります。正直言って、学校のいじめすら認めない行政が、自分たちの施設の中のことは認めないのかと言わなきゃいけないわけですね。これは本当にメスを入れなければなりません。
私は、三人の子供を児相に保護されて、家庭に戻った後、長女だけ分離させられた母親を知っています。三人ともとても仲よしで、子供たちとじゃれ合ったりして、私も一緒に会ったことが何度かあるんですけれども、今回の措置は大変衝撃でありました。
ただ、子供が複数いたために、複数の、つまり、長女も長男も次女も同じことを言っているんですね、児相の中で起こったことについて。隣の部屋から毎晩のようにどなり声や泣き声が聞こえたと訴えました。これは相手にされない。私も担当官にも話をしたわけですけれども、なかなかそこに光が当たりません。そのときに強く思ったのは、やはり第三者が欲しいと思ったわけであります。
新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の提言でも、一時保護所等への第三者機関による評価の仕組みを構築すべきとされました。第三者評価について、ことしから予算措置をしたというんですけれども、まだ手を挙げたところはないと聞いています。手挙げ方式では広まらないんじゃないか、これはやはり義務づけるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 児童相談所の一時保護所は、虐待等を受けた子供の安全を確保するとともに、心身の状況や置かれている環境を把握する、そういう施設でもあるわけでございます。子供の立場に立った保護、それから質の高い支援を行うということのために、一時保護所の運営等についての自己評価そして外部評価、これを行うことが質の向上につながるというふうに考えております。
こういうことからも、厚労省において、平成二十九年度予算で、第三者評価を受けるための費用への補助というのを創設いたしました。
今年度から第三者評価を実施することとしている一時保護所の数は現時点ではまだ把握できる段階にはなっておりませんけれども、今後、各一時保護所において、国庫補助を活用いただいて第三者評価を実施していただきたいと思っておりますし、その実態は私どもとしてもしっかり把握をしてまいりたいというふうに思っております。
あわせて、私どもの新たな社会的養育の在り方に関する検討会において一時保護のあり方そのものを検討することとしておりますので、その議論なども踏まえて、一時保護所の第三者評価を義務づけるかどうかについても検討してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 あってはならないと言った以上は、やはり第三者評価は絶対避けては通れないと思いますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。
今、社会的養育の在り方に関する検討会のお話がありました。その中で、問いが一つ残っていますので聞いておきたいと思うんですが、児童養護施設ですね、これはやはり、今、家庭に近い状況でやるべきだという方向の中で、大舎ではなく小規模な施設というのを全体として進めてきたと思うんです。
先日も、岩手県盛岡市で、たまたま、子供の貧困をテーマにしたシンポジウムをやったときに、みちのく・みどり学園というところの副理事長さんからお話を伺う機会がありました。
幼児から高校生まで、合わせて五十一人の児童を見ているんですけれども、そのうち、本体と合わせて六カ所、つまり、残りの五カ所は、小規模グループケアとか地域小規模児童養護施設という形で、まさに方針に沿って小規模化、定員五人から六人くらいのをやっているわけなんです。でも、大変いいんですけれども、私はそれも理想だと思うんですが、そのためには、当然、職員一人プラス宿直、それで三交代ですから、大変な人が必要です。しかも、夕食づくりも後片づけもやらなきゃいけないし、学校の対応もあって、子供と向き合う時間がない。本来なら、一対一くらいでなければ本当の意味での家庭的な環境というのはできないんだと訴えられているわけなんですね。
御存じのように、児童養護施設はみずから何か利益を上げて収入を得ることができるわけではありませんので、ここはしっかりと手当てをしなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 去年の児童福祉法の改正においては、やはり生みの親に育ててもらうというのが子供は一番、そして、それがかなわないということであれば、それと近い家庭環境で育ててもらう、つまり特別養子縁組ないしは里親、ファミリーホームというのがその複数形でございますが、それでもうまくいかないという場合には、施設の中でも、今御指摘のあったような小規模なものについてぜひ活用をというふうに考えています。
良好で家庭的な環境で養育をされるということが小規模のケア単位での養育であって、施設機能の地域分散による小規模化を私どもとしても推進しているわけでございます。
小規模化などに向けた職員体制について、今、充実の必要性を御指摘いただきました。そのために、平成二十七年度予算では、児童指導員等の職員配置を引き上げた児童養護施設等に対する新たな加算というのを設けたところであります。
また、職員の処遇改善については、これは何度も申し上げておりますけれども、平成二十九年度予算で、民間の児童養護施設等の業務の困難さに応えて、人材の確保と育成を図るために、まず、全ての職員の皆さんに給与の二%相当の処遇改善、これを行う。続いて、これに加えて、虐待や障害等のある子供への夜間を含む業務内容を勘案した、初めての上乗せということをやることになりました。
これらの改善が確実に実施をされるように都道府県や施設関係者に周知をしていくということと、現場の実態も伺いながら、児童養護施設等において良好で家庭的な養育環境が確保されるように、しっかりと取り組んでまいらなければならないというふうに考えております。
○高橋(千)委員 現場は本当に頑張っていますので、よろしくお願いします。終わります。
――資料――