国会質問

質問日:2017年 3月 24日 第193国会 厚生労働委員会

残業時間上限規制の適用除外業務、東北大学非常勤職員雇止め問題

雇い止めやめさせよ
東北大非常勤職員 高橋氏が指摘

 日本共産党の高橋千鶴子議員は24日の衆院厚生労働委員会で、東北大学の非常勤職員約1500人が2018年3月末に契約期間満了で雇い止めとなる恐れがある問題を追及しました。
 労働契約法改正(13年4月施行)により、有期雇用が複数回の契約更新で5年を超えて継続すれば、労働者は無期雇用への転換を企業に申し込む権利をもちます。権利は、施行日から5年の18年4月以降に初めて発生します。
 高橋氏は、厚労省ハンドブックでも「多くの会社にとって有期社員が戦力として定着している」「(無期雇用への転換は)むしろ自然なこと」と説明していると指摘。塩崎恭久厚労相も「まさにそういう趣旨」と認めました。
 しかし東北大は、契約の更新上限を5年と規定。14年の就業規則改定で、継続する5年の開始期を13年4月1日に設定することで、無期転換申し込み権が発生する前に更新上限が到来するようにしています。
 高橋氏は「無期転換を避けるための(規則の)変更ではないか。労使合意もなくこのような変更が許されるのか」と大学への指導を求めました。
 山越敬一労働基準局長は「厚労省は労働者保護を使命としている。無期転換を避けるための雇い止めは望ましくない。事案を把握すれば啓発指導する」と答弁しました。
(しんぶん赤旗2017年3月30日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 初めに、長時間労働規制問題について何点か伺います。
 資料の1は、二十三日付、つまり、きのうの東京新聞でありますが、「運輸業 五輪後まで除外」と大きな見出しがございます。記事の三段目に、「厳しい競争で運転手の賃金も低く抑えられがちで、人手不足につながり、長時間労働に拍車がかかる悪循環が繰り返されている。」と指摘をされています。同じく左側には、医師も五年猶予とあるんです。
 働き方改革実現会議が、現在、時間外労働の大臣告示基準の適用除外とされてきた自動車の運転業務や建設事業について五年間猶予するという報道、また、医師についてもこのように報道されているわけですが、事実でしょうか。お願いします。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の自動車運転業務、それから建設業の関係につきましては、三月十七日の第九回の働き方実現会議におきまして、総理から次のような御発言がございました。長年の慣行を破り、猶予期間を設けた上で、かつ、実態に即した形で時間外労働規制を適用する方向としたいという発言でございます。
 現在、この方向に沿いまして、国土交通省及び厚生労働省とも協力をしながら調整を行っているところでございますが、何年間猶予といった、具体的にどのような形で時間外規制を適用していくかにつきましては、まだ内容が決定しているということではございません。
 また、医師につきましてでございますが、検討の対象になっているということは事実でございます。ただ、医師の働き方に関しましては、一方で、過重労働の問題も指摘されるわけでありますが、他方で、法律で、治療、診療を拒んではならないというふうにされておりますこととか、あるいは医師不足といった問題など、さまざまな論点もあるところでございまして、引き続き調整を図っているところでございます。
 いずれにいたしましても、働き方改革を進めるという方向性は共有した上で、実態を踏まえて対応のあり方を検討する必要があるというふうに考えておりまして、実行計画の取りまとめに向けて、さらに最後の調整に努めてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 小林次長に、もう一問伺います。
 働き方改革の必要性という方向性については共有しているとおっしゃいましたが、それは余りにも範囲が広過ぎますので、それは幾ら何でも、必要だねということは方向性が一緒かもしれません。しかし、具体的な中身について、やはりさまざまな意見があるんだろうと思うんです。
 総理が、今紹介があったように、十七日の実現会議で、猶予期間を設けた上でというふうにおっしゃっています。その背景が何かということを考えたときに、三月七日に、石井国土交通大臣と自動車運送事業関係団体との意見交換会をやっているはずです。トラック、バス、ハイヤー、タクシーなどの団体ですけれども。また、九日には連合が、加藤働き方担当大臣に宛てて、時間外労働の上限規制の例外業務の扱いに関する要請書を出しております。これは、実態を踏まえて罰則つきの上限規制を義務づける、そして上限規制の施行までの措置として、労働時間等の改善のための措置を設けるとあります。
 これは、この流れをどういうふうに解釈すればよいのかなと。つまり、三つ確認したいことがあるんです。つまり、罰則つきの上限規制はやむなしというのが、意見交換会だとか、この議論の流れなのか。二つ目は、しかし、それはほかの業務とは違う規制を求めているのか。それから、猶予期間が必要と、これはもうみんな一致しているということだと思うんですが、その三つを確認します。
○小林政府参考人 お答えいたします。
 まず、御案内のとおり、今後、一般的には、現在、告示で定められておりますものを法定化していく、そして、上限規制を設けて、罰則の対象にしていくということでございます。
 その大きな方向性というのは共有した上で、一方で、実効ある規制にしていかなければならないということがございます。そういうことで、実態を十分踏まえる必要があるんだろうということであります。
 御指摘のような自動車あるいは建設につきましては、施主あるいは荷主との関係等々ございまして、それらの関係もあわせて改善を図っていかなければ、実効ある長時間是正につながっていかないだろうということで、そういう問題を解決していくためにも、一定の猶予期間が必要になってくるだろうという考え方に立っております。
○高橋(千)委員 ということは、私が聞いたことを全てお認めになったということですよね。上限規制は必要だという方向だ、向きは一緒だと。ただ、ほかの業種と一緒ではない、実態に合わせてと。そういう意味でしょう。
○小林政府参考人 現在、上限告示で、建設それから自動車運送の業務というのは適用除外となっております。
 これは先ほども御答弁申し上げましたが、施主との関係、荷主との関係というのがあって、そういった関係性全体を改善していく必要があるということで、そういった取り扱いになっていると理解しておりますが、そういった改善を図りながら、最終的には同じ方向に沿ってやっていけるように改善を図っていく。そのために一定の猶予期間が必要になるだろう、そういう考え方でございます。
○高橋(千)委員 やはり、今まで除外だったものを除外でなくするんだ、一定の規制は設けるんだ、それはまず多としたいと思うんですね。
 ただ、今回の案は、そもそも今回の案だって繁忙期に百時間未満、我々議論しているように、いわゆる過労死ラインを認めることは許されないということが議論されている。つまり、今、まず一般の業種に適用しようとするものすらがゆるゆるの規制だと思っているのに、それを、実態に合わせてという形でもっと違うものになっていくのか、あるいは猶予をさらにするのかということは、やはり絶対にやってはいけない、私はこのように思うんです。
 それで、資料の二枚目に、これは、実は昨年十月十二日の予算委員会で使った資料と同じであります。過労死白書が出され、過労死等の請求件数の多い職種のトップが自動車運転であるということ、平成二十七年度の労災の請求件数百五十三件、支給決定件数が八十七件。そして、三番目に多いのが建設従事者なんですけれども、これは六番目にも建築・土木等とあって、若干、内容で分けているんです。これを足し算すると七十七件ということで、二番目に多いということになるんですね。
 ですから、過労死あるいは重度の労災が最も多いとわかっていながら、規制を緩和する、あるいは猶予する、こうしたことはやはりやるべきではないと思いますが、これは大臣に伺います。
○塩崎国務大臣 今、小林次長の方からお答えをいたしましたが、建設業と自動車の運転、今御指摘のように、労災でも死亡事故が一番多いのが運転ということで、それはもう私どももよく認識をしているところでございます。
 しかし、今回、総理が決断をして、猶予期間を設けた上で、かつ、実態に即した形で、長年の慣行を破って、時間外労働規制を適用する方向としたい、これは罰則つきということが前提だろうというふうに理解しておりますけれども、こういう発言があって、いわゆる改善基準告示でしかなかった規制を、行政指導にとどまっていたわけでありますから、これを、規制を罰則つきで適用するということがこれで決定づけられたということは、やはり大きな前進だというふうに考えておるわけであります。
 建設業については、天候不順など、作業日程が圧迫されるということが間々起きる、それから、施主から工期を一方的に厳格に守ることを求められてしまうというようなこと、あるいは自動車の運送業務について、荷主とか配送先の企業の都合によって労働時間が振り回されて、手待ち時間が発生してしまうというようなことが数々あって、業務の特性あるいは取引慣行等、それぞれの課題があって、これについてもしっかりと取り組んでいかなきゃいけないと思っておりますけれども、法的な規制、時間規制、労働時間規制だけでは、あるいは企業の努力だけでは改善できない問題があるということだと思います。
 したがって、実態に即した形で時間外労働規制を適用していく、そのためにはこのような問題も含めて解決をしていこうということが大事で、労働慣行や、企業の仕事のやり方の慣行ということなので、これを直す際には多少やはり時間がかかるのかなということでありますので、具体的にどのような形で時間外労働規制を適用していくかについて、引き続いて、石井国土交通大臣ともしっかり協議をしてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 済みません、さっき足し算を間違えました。三番と六番を足すと七十三件でありました。失礼しました。訂正します。
 時間がかかるというのは、そうおっしゃるんですけれども、これは今に始まった問題ではないわけですよね。ずっと議論されてきた。だとすれば、猶予期間を五年とか何年といっても、余り変わらないんじゃないかと思うんです。
 しかも、私は、実際には、たった今ではない。というのは、質問しますが、実現会議の資料を見れば、法律が施行されてから五年後の見直し規定を設けるとあります。そうすると、そこに合わせて猶予期間五年というふうな案もあると報道をされています。だけれども、三月十三日の労使合意案には、上限規制に関する詳細については労政審で検討するとあるんですね。つまり、労政審をやるんだ、きちっとした条文を整えるためには。そして、法案が成立し、施行するというと、ここで書かれているような、オリンピックまでにはと言っているうちに、これはもう、法律が施行されるころがオリンピックと同時か、その後くらいになるんじゃないでしょうか。
○山越政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘をいただきました自動車運転そして建設事業でございますけれども、上限規制をどのような形で適用すべきかにつきましては、この実行計画の取りまとめに向けて、現在、調整がされているところでございます。
 こうした業務につきましては、大臣からも御答弁がありましたように、自動車運転業務につきましては、例えば荷主の都合で手待ち時間が発生するといった業務の特性、あるいは取引慣行の課題もございます。そういうことから、何らかの形で一定の猶予期間を設けることが必要であるというふうに考えておりますけれども、それを具体的にどのような期間とするかにつきましては、全体で、どのような形で適用すべきかの中で調整が続いているところだというふうに承知をしております。
○高橋(千)委員 そういうことを聞いているんじゃなくて、労政審をやって、法律ができて、施行するまでにも何年もかかりますよねと。最初から、見直し規定五年だから、五年が最短の案だみたいなことを言っちゃうと、実は、今から五年ではなくて、今から八年くらいになっちゃうこともあるんですよ。そういうことではないですよねということを聞いている。
○山越政府参考人 今申し上げましたように、自動車の運転業務などについては、その業務の特性から、一定の猶予期間を設ける必要があると考えておりますけれども、いずれにいたしましても、上限規制をどのような形で適用するかというのは、まず実行計画の取りまとめが行われるわけでございます。この取りまとめが行われましたら、これを踏まえまして、私ども、再度労政審などで検討していくということになるというふうに考えております。
○高橋(千)委員 ですから、なかなかお答えにくいんでしょうけれども、今、取りまとめがあってから労政審を行うというふうにおっしゃいましたので、そもそもそこに時間がかかるわけなんです。猶予期間、猶予期間と言いますけれども、今から五年という意味ではないんだということで確認をさせていただきたいと思うんですね。
 実は、業界の申し入れ文書、昨日、二十三日です、石井国土交通大臣宛てに一斉に要望書が出されています。私は、それを読みました。
 全日本トラック協会は、「方向性としては賛成であり、業界としても労働時間短縮に向けて一層努力して参ります。」こう述べているんですね。
 それで、その上で、具体的な提案をしています。荷主に対する指導、取引環境の改善、トラック輸送の生産性向上のための支援、高速道路の十分な活用、これは、それぞれ意味があると思うんです。
 そして五番目に、「東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、トラック運転者がますます不足することも懸念される」云々ということで、「猶予期間の設定や、段階的な適用を図っていただきたい。」こういうふうに書いているわけですから、何か五年がひとり歩きするということはおかしいなということを重ねて言いたいなと思うし、業界自身がこういうことが必要だと言っているように、取引条件などはやはり社会全体で取り組まなければならないし、労働力を確保するためには賃金アップが絶対必要であります。
 ですから、丁寧な議論をしている時間が必要だと。当然ですけれども、でも、それが、今言ったように、計画を経て労政審ということで十分なるわけですから、そこからまた先送りするというふうなことはしない、全体で取り組むということをしながら、いつまでも曖昧にしないということを、ぜひお願いをしたいと思います。
 これは質問にしたいですが、時間がないですので、次に進みたいと思います。
 今回の実現会議では、私がこの間繰り返し取り上げてきた休日労働の問題なども、結局、年七百二十時間には入っていないだとか、そういう指摘したいことがございます。これからも引き続き取り上げていきたいと思います。
 それで、きょうは、本題である改正労働契約法の無期転換ルールと雇いどめ問題について質問したいと思います。
 資料の3にありますけれども、平成二十四年の九月十九日、国立大学協会が平野当時文部科学大臣に宛てて、「改正労働契約法の適切な対応に向けた支援について」という要望書を発出しました。
 全部読めませんが、2のところを見ていただきますと、「国立大学法人においては、従前より上記任期法の趣旨に基づき、多数の教員等に任期を付して雇用してきたところでありますが、この度の改正労働契約法を硬直的に運用した場合には、任期法の趣旨が損なわれ、教員の流動性を高められなくなるばかりでなく、教育研究の活性化にも支障を来すことになります。」かなり重大なことを言っていると思うんですね。
 この改正労働契約法とは、同年八月に成立し、翌平成二十五年四月から施行されました。第十八条で、通算五年を超えて有期雇用契約労働者が反復更新された場合に、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みをいうわけですけれども、施行日から五年、つまり来年、平成三十年四月に初めて、五年を超えて、無期転換の対象となる労働者が生まれる。
 そういうことを予測して、こういう要望書が出されたと思うんですが、文科省は、この要望にどのように対応したのでしょうか。また、現在、各大学の調査を行っているということですが、どのような内容で、結果がいつごろわかるのでしょうか。
○義本政府参考人 お答えいたします。
 二十四年に国立大学協会の方から要望が出た上において、教員につきましては、特に、国立大学協会の方から文部科学大臣への要望書におきまして、委員御指摘のとおり、教員の流動性の向上や教育研究の活性化への懸念が示されまして、大学の特性に即した制度の弾力的な運用や解釈の明確化についての要望がされたと承知しております。
 平成二十五年におきましては、研究開発の能力の強化及び教育研究の活性化等の観点から、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部改正が成立いたしまして、改正労働契約法では、無期転換申し込み発生までの期間が原則五年とされているところ、大学等及び研究開発法人の研究者及び教員等につきましては、十年の特例が設けられたところでございます。教員につきましては、この趣旨に沿って運用しているところでございます。
 一方、事務職員につきましては、従前どおり五年が適用されるわけでございますが、平成二十七年九月三十日に厚生労働省労働基準局長から出されました、無期転換ルールへの対応に関する早急な検討のお願いについての文書を、各国立大学法人に情報提供を行うとともに、本法律の趣旨を踏まえまして、適切な対応をいただくようお願いしているところでございます。
○高橋(千)委員 質問の二つ目のところですが、調査のことを答えていただいていないと思うんですが、昨年の十二月九日付で、各国立大学法人並びに大学共同利用機関法人人事課長宛て、担当課長宛てに対応方のメールを行っていると思いますが、その目的と結果について、まとまれば御報告いただけるのか、伺いたいと思います。
 また、そもそも調査する前に、任期つきなどの非常勤がどれだけいるかというのは当然わかっていると思うんですが、およそどのくらいいるのか、お答えください。
○樋口大臣政務官 平成二十八年十二月の調査でございます。この調査におきましては、対応方針がおくれている国立大学法人に対しまして、平成二十九年四月の五年目の契約更新時に各労働者に明示できるように早急に無期転換ルールへの対応方針を検討いただくこと、通算五年到来時の雇いどめについては都道府県労働局と相談の上適切に対応をしていただくこと、厚生労働省から提供していただいている無期転換ポータルサイトや無期転換ルールの導入の手順やポイントをまとめたパンフレット等を参考にしていただくことなどについて、各法人に対して周知をし、調査を行ったところでございます。
 しかし、その際に、いまだ検討中という大学法人が多くございましたので、改めまして、今週、平成二十九年三月の二十一日火曜日に、全国立大学法人に対して、厚生労働省が各独立行政法人における無期転換ルールへの対応状況に関する調査を行った内容に準じた調査を行っているところでございまして、四月中旬を目途に取りまとめる予定でございます。取りまとめが済みましたら、開示をさせていただきたいと思います。
 人数につきましても、その中で聞いておりまして、今は掌握できておりません。
○高橋(千)委員 わかりました。
 最初は年度内と聞いていたわけですけれども、四月ということでありますが、開示をしていただけるということですので、しっかりと御報告をいただきたい、このように思います。
 それで、国大協は、先ほどの資料の3にあるように、「任期法による有期労働契約を適用除外とするなど大学の特性に即した制度の弾力的運用や解釈の明確化について文部科学省のご支援が不可欠」と述べているわけですね。
 適用除外とせよと。よく出てくる言葉ですが、しかし、国立大学協会として、厚労省が監修したQアンドAを発表しておるわけで、その中を見ますと、大学の教員等の任期に関する法律の位置づけについて、労働契約において任期を定めることの合理性があることを法律上明記したものにすぎず、国立大学法人や公立大学法人と大学の教員との間の関係は、かつては任用だったと思うんですが、労働契約であると整理されたものであるため、労働契約法の規定は適用されると明快に答えているわけで、除外云々という話にはならないと思いますが、いかがでしょうか。これは厚労省に。
○山越政府参考人 国立大学法人、そして公立大学法人で働いている教員につきましては、おっしゃいましたとおり、基本的には労働契約法の規定が適用されます。
○高橋(千)委員 当然のことながら、解雇濫用法理も適用されるということで確認をしたい。
○山越政府参考人 労働契約法に定める解雇に関する規定は、適用が当然されるということになります。
○高橋(千)委員 確認しました。
 そこで、無期転換ルールが発生することを免れるために、期限が来る前に雇いどめをしたり、あらかじめ無期転換申込権の放棄を同意させるようなことは、労契法第十八条の趣旨に照らして望ましいとは言えない、特に、労契法の趣旨を没却させるものであり、公序良俗に照らし無効とされる、そういう厳しい表現も使って厚労省は通知をしていたと思います。
 改めて聞きますけれども、ここで言う労働契約法十八条の趣旨、何でしょうか。
○山越政府参考人 労働契約法第十八条でございますけれども、これは、同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、使用者に対し、無期労働契約の締結の申し込みをしたときは、使用者が当該申し込みの承諾をしたものとみなすとした規定でございます。これは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、有期契約で働く方の雇用の安定を図るため設けられた規定と承知をしております。
 こうした規定が設けられました背景といたしましては、有期労働契約は、期間の満了時に当該有期労働契約が更新されずに終了する場合もありますけれども、他方で、労働契約が反復更新されまして、長期間にわたり雇用が継続する場合も少なくないわけでございます。このために、更新による雇用の継続を希望する有期契約労働者にとりましては、雇いどめの不安があることによって、年次有給休暇取得などの労働者としての正当な権利の行使が抑制されるといった問題があったことから、このような規定が設けられたものでございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 実態が、長期間にわたって雇用が反復更新されているにもかかわらず、やはり有期という契約であるがために雇いどめの不安が絶えずつきまとうわけで、だからこそ、この無期転換権によって雇用の安定を図るということが趣旨として言われたのかなと思います。当時の質疑を思い出していたわけですけれども。
 そこで、大臣にもぜひ答えていただきたいと思うんですが、厚労省がつくった無期転換ルールの啓発リーフといいますか、ハンドブックと書いているんですけれども、これは資料の4にあるんですが、この下半分のところを見ていただきたいと思うんですね。
 赤で書いているところを中心に読んでいきますが、「なぜ「無期転換」への対応が必要なのでしょうか?」今日、有期社員の約三割が通算五年を超えて有期労働契約を反復更新している、だけれども、有期社員が戦力として定着している。仮に一年契約で働いたとしても、実質的には会社の事業運営に不可欠で恒常的な労働力であることが多く、ほぼ毎年自動的に更新を繰り返しているだけと言えますと。だから、大きな矢印があって、このような社員を期間の定めのない労働契約の社員として位置づけ直すことは、むしろ自然なことであり、実態と形式を合わせる措置と言えます、このように考えれば、無期転換は特別なことでも、また大変なことでもなく、より適切な雇用関係にしていくための取り組みなのですと。大変ポジティブなメッセージが書かれていると思うんですね。
 雇用の安定というだけではなくて、もうずっと繰り返してきたからこそ会社にとって必要な戦力なんだ、だからこそ無期転換というのは自然なことなんだという打ち出しをしているというのは、私は、これは自分がずっと思っていたことですけれども、これを書いてくれたなと思うんですが、大臣にぜひ、これは認識を共有していただけるか、伺いたいと思います。
○塩崎国務大臣 これは我々、野党のときにできた法律で、自民党も賛成をしたわけでございますが、先ほど局長からも答弁しましたけれども、労働契約法の第十八条には、同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、使用者に対し、無期労働契約の締結の申し込みをしたときは、使用者は当該申し込みを承諾したものとみなす、こういう規定ぶりであるわけでございます。
 これは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、有期契約で働く方の雇用の安定を図るために設けられた規定と承知をしておって、今御紹介をいただいた厚生労働省がつくったリーフレットの中に、ポジティブに書いてあるというお話がございましたけれども、まさにそういう趣旨であったというふうに思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 そういう趣旨でやはり無期転換を図っていくべきだ、必要な人材を確保するために短期の雇用を繰り返すのではないということで、転換をしていただきたいなと思っております。
 時間の関係で、少し質問を飛ばします。
 資料の5を見ていただきたいんですが、これも厚労省がつくった紹介のリーフであります。「安心して働くための「無期転換ルール」とは」というふうに書いています。大体真ん中のところを見ていただきたいんですが、「対象となる方は」「契約期間に定めがある有期労働契約が五年を超える全ての方が対象」と書いています。そして、「書面で行うことをお勧めします」、書面で申し込みをしなさい、した方がいいですよというふうに書いています。それで、その申込書のひな形が右にありまして、申込書、受理通知書ということの案も右についてあるわけです。
 それで、この矢印をずっと見て、はたと気がついたわけなんですけれども、申込書にもあるように、「通算契約期間が五年を超えますので、」こう書いているんですね。だけれども、一年契約を繰り返している人は平成三十年四月に五年目を迎えるわけなんですけれども、この平成三十年四月の時点でもう一度契約をしてもらわないと申込権が発生しないことになりますよね。
○山越政府参考人 平成二十五年四月一日から一年の有期労働契約を締結した方についてでございますけれども、契約期間を通算した期間が五年を超えていなければ申込権が発生しませんので、平成三十年四月一日以降に新たな契約を結んだ形になりませんと、無期転換申込権は発生しないということになります。
○高橋(千)委員 これは結構ショックで、一年一年繰り返して、もう五年になるよといっても、もう一回、有期だけれども契約を一旦結んでもらわないと契約申込権が発生しないということで、非常にやはり雇いどめの不安というのが出てくるなということを指摘したいわけなんです。
 それで逆に、この資料をもう一回見て、例えば平成二十八年から三年契約を結んでいる、こういう場合は平成三十年をまたぐわけですよね。そうすると、もしかして既に申込権が発生しているということでしょうか。
○山越政府参考人 無期転換でございますけれども、二回以上有期労働契約を締結しないといけないということになっておりまして、その期間が五年を超える場合でございますので、平成二十八年からではなくて、平成二十五年四月から三年間の有期労働契約を仮に結んでいたとしまして、同じくその方が三年間更新したということになれば、それは通算期間が六年ということになりますので、二十八年の時点で無期転換申込権が発生することになるのではないかというふうに思います。
○高橋(千)委員 もちろん、そういう意味で言いました。二十五年から三年契約していて、二十八年四月にもう一回三年を契約すれば既に申込権が発生している、そういう方がいるんだということですよね。これは周知していく必要があると思います。
 そこで、東北大学は、昨年五月一日の数字で、正規教職員五千百十三名に対し、准職員、時間雇用職員など非正規職員合計が五千二百五十九名、五〇・七%なんです。そのうち、来年三月末で契約期間満了となり、雇いどめのおそれがある職員が千五百二名にも上ります。
 実は、ここの大学は、これまでも三年雇用契約でした。しかし、大学総長の判断で、四年目以降の更新がされてきました。規則にもそう書いてあります。
 ところが、現在は二〇一八年三月末までの五年契約となり、突如、更新の上限あり、つまり、今言っている平成三十年四月の前で更新が切れる、こういう契約になったわけであります。
 それで、資料の六枚目を見てください。
 これが就業規則ですけれども、右側が改正前なんですね、今言ったことが書いてあります。「三年を超えない範囲内で、」と決まっているんだけれども、「総長が特に必要があると認めるときは、」ということで、実際には超えて雇用が続いていたということです。左側に、これを五年とするということが書かれてあるんですね。
 無期になった方も若干いらっしゃいます、昭和五十五年から続いた方たちが無期になっているので。一人一人の契約書に初めて、更新上限がありなしというのを書かせるようになって、それを認めないと更新できないという格好になるんですね。
 私が問題にしているのは、この下の附則のところなんです。「この規則は、平成二十六年四月一日から施行する。」四月一日から、平成二十六年。しかし、その二番目です。「改正後の第六条第三項の規定は、平成二十五年四月一日以後の日を初日とする期間の定めのある労働契約の期間について適用する。」
 つまり、規則が施行する一年前にさかのぼって契約を結んだことにしちゃったんですよ。それで五年なんですって。そうすると、平成三十年の四月でちゃんと終わるわけです。
 これはおかしくないですか。契約を一年さかのぼって、今いる一年前から契約していたことにする。あり得ますか。明らかに無期転換ルールを避けるための変更ではないでしょうか。
○山越政府参考人 個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、労働契約を変更する場合にどの時点から変更を適用するかということについては、特段法令上の制限はないところでございます。
 変更が合理性を有しているかどうかは、就業規則の不利益変更の法理等に照らして、個別に司法において判断されるべきものであるというふうに思っております。
○高橋(千)委員 不利益変更を組合が全く知らなかったんです、これは。一年たってから、後で、えっ、一年さかのぼって契約していたのと、知らなかったんです。これはもう完全に不利益変更になりますよね、労使合意がないんですから。
 これは一般論で、もし労使合意がなく、こうしたことが行われたら、やはり無期転換ルールを避けるための変更だと言えるのではないでしょうか。そこを確認したいし、啓発指導に取り組む旨を、これまでも局長自身が答弁されていますので、当然その対象になると思いますが、いかがでしょうか。一般論で聞いています。
○山越政府参考人 お答え申し上げます。
 労働契約の労働条件の変更でございますけれども、そういった変更が合理性を有するかどうかは、今申しましたように、個別に司法において判断をされるべきものでありますけれども、他方で、労働者保護を厚生労働省は使命としておりますので、無期転換ルールを避けることを目的として雇いどめをすることは、厚生労働省として、法の趣旨に照らして望ましいものではないというふうに考えております。
 そうしたことでありますので、そのような事案を把握した場合には啓発指導をすることとしておりまして、今後ともこうした取り組みを行ってまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 労働者保護を使命という言葉を言っていただきました。
 大臣も、その立場で啓発指導を当然行うべきだということで、一言決意をお願いします。
○塩崎国務大臣 個別のことはともかくとして、一般論で申し上げれば、働く方の保護を使命とするのは厚生労働省として当然のことでありまして、無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇いどめをすることや、更新年限や更新回数の上限を一方的に設けるといったようなことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないというふうに思います。そのような事案を把握した場合には、都道府県労働局において、しっかりと啓発指導を行ってまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 終わります。

 

――資料――

2017年3月24日衆院厚生労働委員会資料

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