――― 議事録(午前) ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、五人の公述人の皆さん、それぞれに大変興味深く聞かせていただきました。お忙しい中ありがとうございました。
早速質問させていただきます。
最初に、駒村公述人に伺います。
先生はまさに公聴会の常連でもございますので、〇四年の年金法改正について評価を伺いたいと思います。
先ほどの最初の公述の中でも一言、課題ということで触れていらっしゃったと思うんですが、〇四年の三月十八日、参議院予算委員会の中央公聴会におきまして、先生が問題点ということで述べられたことがございます。積立金を一年分だけ九十五年後に持ちつつ、五〇%の給付水準を維持しつつ、なおかつ保険料一八・三五%というものを維持できるのかと、これを全て同時に維持することは可能なのかという指摘をされていたかと思います。
百年安心というネーミング自体はやはりふさわしくないということは主張されているかと思いますが、先生のこの論点から見て、現行年金制度をどのように評価されているのか、伺います。
○駒村公述人 ありがとうございます。
当時の評価と今の評価も変わっておりません。保険料を一八・三%に固定することによって若い世代に保険料が限りなく上がっていくことはないんだということを伝えたところは一つの評価できるところだと思います。
一方で、マクロ経済スライド、これはどこで終わるのかというのは、結局、経済成長、賃金上昇率、出生率、こういったものに左右される。現時点では五〇%割れというのはまだ明らかにはなっていませんけれども、若干当時よりは出生率が上がっている分はいいわけですけれども、今後の状況次第では五〇%割れという可能性はまだ残っているというふうに思いますので、この部分は、入り口も出口も締めているというのは、かなり窮屈な制度ではないのかなと思います。
さらに、百年安心という言葉は、先ほど私は言いかえましたけれども、百メーター後を見ながら現在を調整するんだ、そして百年間手放し運転して、もう何もしなくても大丈夫だよという意味ではないんだということがきちんと国民に伝わっているかというところが若干心配でございます。
さらに、マクロ経済スライドで基礎年金までが二〇〇九年の財政検証でも大幅に下がっていくというところは、大変心配しているところでございます。
以上です。
○高橋(千)委員 基礎年金がマクロ経済スライドで非常に下がっていくことが心配だという御指摘、非常に重大ではないかなと思っています。
同時に、入り口も出口も締めたんだ、そういう中で、結局百年安心の制度は正しかったんだという議論がこの国会でもされているわけです。もうその中で既に、ではデフレ下でも発動するべきではないかという議論がされているということについて伺いたいなと思っています。
次に、西沢公述人にそのことを伺います。
昨年十一月二日付の日経新聞の「経済教室」に寄稿されていらっしゃいます。「限られた保険料収入の範囲で、積立金も活用しつつ今後百年間給付を続けられるとの見込みが立つまで適用される。」というふうな表現をされているんですけれども、二〇一五年の水準でいいますと、マクロ経済スライド率は一・二%と小宮山厚労大臣が答えています。これをデフレ下でも発動するとなると、本当に下限がなくなって、どこまでも下がってしまうということになりますけれども、それでもやむを得ないというお立場でしょうか。
○西沢公述人 やむを得ないですね。
保険料一八・三%、国庫負担二分の一の中で給付できる範囲まで、財政が均衡するまでマクロ経済スライドをデフレ下でも適用するというのは避けられない。ただ、先ほど申し上げた基礎年金と報酬比例の区分けのことを繰り返し申し上げますと、基礎年金がそれでよかったのかというのは、駒村先生がおっしゃったとおりであります。ですので、デフレ下でやるのは避けられないと思います。
以上です。
○高橋(千)委員 今のお答えは、多分基礎年金には踏み込むべきではないという御趣旨かと思いますが、デフレ下でもやむを得ないというお話でありました。
同じ質問を河村公述人に伺いたいと思います。
私たちは、もともと特例水準の解消やマクロ経済スライドに反対をしております。ただ、まして、デフレ下での経済スライドの発動となりますと、本当に最後の歯どめさえも取っ払ってしまうということでは、到底認められないと思っておりますけれども、御意見を伺います。
○河村公述人 お答えします。
私はマクロ経済スライドに反対なものですから、今の質問は非常に答えにくいんですけれども。やめて組みかえた方がいいという立場ですから。ですけれども、今、前の二人がおっしゃったように、仮に続けるとすれば、基礎年金に及ぶべきではないということは、もちろんそう思います。
それから、公的年金の財政が非常に難しいのは、基礎年金勘定という仮想勘定があって、そことの資金のやりとりが頻繁に今起こるようになっているんです。そこの中身については計算の結果だけ発表されているんですけれども、内容はよくわからないところが多いんですね。ですから、そういうことなどももう少しきっちり開示していただく。
それで、基礎年金というのはもともと国民年金ですから。国民年金は社会保険じゃないわけです。国民年金法というのは国民年金保険法ではないわけですね。ですから、あれはどちらかというと定額拠出、定額給付という制度がもともとの出発点ですから、所得の差というのは余り考えていない制度なわけです。
ですから、そこへむしろ戻していくというふうに考えるべきだとは思うんですけれども、そこだけやろうとしてももう今や難しいので、ちょっと余り具体論はないんですけれども、とにかく何とか組みかえられないかというのが私の意見です。
○高橋(千)委員 お答えにくいということでしたが、反対の立場を私も言っておりますので、同じであるということで、ありがとうございます。
それで、次に、菅家公述人と小野公述人に同じ質問をさせていただきます。
一つは、最低保障年金制度の創設について賛成か否かということです。これは、民主党のという意味ではなくて、我々は、国連からも最低保障年金制度を創設すべきだということを勧告されておるわけで、日本としても報告をしている立場ですから、当然これをつくっていくべきだと思っております。それについてどう思っているかということです。
それと、その際の財源についてどのようにお考えかということです。
連合の年金のプランによりますと、基礎年金から始まって、その半分は一般財源で、半分は目的税という形で紹介をされていますが、消費税との関係はどうなのか。そうなると、企業負担をどのように考えているのか。
ちょっと一遍に言ってしまって申しわけありませんが、お願いいたします。
○菅家公述人 連合も最低保障年金制度を提起している立場でありますけれども、その財源につきましては全額税とし、その半分については一般財源、そして残りの半分につきましては社会保障目的税、ありていに申し上げますと消費税を充当すべきだというふうに考えているところでございます。
二番目の御質問にございました厚生年金保険料の事業主負担分、基礎年金に入っている事業主負担分につきましては、したがって、所得比例年金の事業主負担の引き上げに充当すべきだということで、そこは引き続き負担すべきという考えでございます。
○小野公述人 私は社会保障全般の専門家でもございませんので極めて狭い見識でしかないんですけれども、申し上げましたとおり、最低保障年金という民主党の新しい年金制度を意識しつつ、今回、福祉的加算というのを導入された、あるいは、その六分の一加算というのが入ったというふうに認識しておりまして、その制度が入ることによるマイナス面というものもやはり考えないといけない。
一つは、先ほど申し上げましたとおり、自助、共助、それを原則とした保険制度ですね、社会保険制度に対する影響。それから、みずから努力をする、その姿勢に少し水をかけるようなことになりはしないか。そういう意味で、少しやり方を考えた方がよろしいのではないかなというふうに思っております。
財源等々につきましては、少し、まだ見識、見解を持ち合わせておりませんので、御容赦願いたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
自公政権下での社会保障国民会議の議論ですとか、最低保障年金の議論がされている中で、やはり、そのまま全額税という考え方が提起をされておりまして、そうなった場合に、結局、企業負担が全くなくなってしまうよねということと、大幅な消費税の増税になるよねということは、既にそのときから議論をされておりましたので、あえて質問させていただきました。ありがとうございます。もちろん、反対の立場で質問させていただきました。
そこで、河村公述人にもう一度伺いたいと思います。
最初の意見陳述の中で紹介をされた、就業者の中に占める雇用者の割合が高まっているが、雇用者に占める年金加入者の割合が下がっていると、数字を示しての表現、大変わかりやすい指摘だったと思います。やはり支え手が必要だということ。それから、特別法人税を課税せよというお話、まだ研究段階かなとは言われますけれども、しかし隠れた法人税減税と言えるのかなと思って、大変興味深く聞かせていただきました。
そこで、もう一つ提案があった標準報酬の引き上げの問題です。一般的には、それを引き上げると給付にはねるのではないか、高くなり過ぎるのではないかという心配が聞かれるわけですけれども、影響は小さいという先生の御説明だったかと思います。もう少し詳しくお願いいたします。
○河村公述人 お答えします。
私は先生じゃないので、普通に呼んでいただいていいんですけれども。
それで、標準報酬の上限というのを、今まで十一回ぐらい改定があって、こういうふうにどうも内部では決めたらしいんですね。一番上の標準報酬が五%を超えると報酬を引き上げるというふうになっているんですね。ところが、今五%を多分超えていると思いますよ、十年以上やっていないですから。ですから、まず、それは少なくとも、厚生労働省の内部、年金局の内部の考えでしょうけれども、もう少し刻みをつくって、かつ上の方まで引き上げるということをやった方がいいと思うんですね。
さっき申し上げた、給付に折れ線をつくるという、アメリカの公的年金の方式ですけれども、これはほとんど議論がないんですよね、日本では。これほどアメリカの影響を受けている国はないのに、アメリカの公的年金について紹介した本というのは余りないんですね。これは、だから実際には議論をしないとまずいんじゃないかとは思うんですけれども、要するに、高所得であると負担感というのは非常に小さいんですよ、今の厚生年金は。ですから、大した保険料も払っているというふうにならない。ですから、そこを少し上げても、別にそれほど問題にはならないと思います。
それから、厚生年金の給付というのは、御存じのとおり、平均標準報酬を使いますから、四十年間の最後のところだけちょっと上がってきても、それは、四十分の一とか、その年数分しか響かない。ですから、拠出はすぐふえますけれども、給付になってくると、平均標準方式ですからこれはそんなに影響は大きくないだろうと思うんです。
ただ、今デフレ下なので、昔は、こういう仕組みはインフレ下ではかなりうまく機能したんですけれども、デフレ下というのはちょっと難しい面はあるかもしれません。そこら辺は、もう少しデータなどで調べて検証する必要はあると思います。
○中野委員長 終わりました。
○高橋(千)委員 一言だけ済みません。
○中野委員長 はい。
○高橋(千)委員 残念ながら、時間が来ましたので。
先ほどの坂口委員の質問の中で、再計算をやっていくべきだという御指摘があったと思います。ひたすら、年金財政が破綻してツケ回しが起きるんだという議論だけがされている中で、そうではない、余地があるんだということを御指摘いただいたかと思います。非常に今後の参考にさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
――― 議事録(午後) ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の公述人の皆さん、お忙しい中御出席をいただき、貴重な御意見をありがとうございました。
時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。
まず、大日向公述人に伺います。
先生には、〇八年の五月に、次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方、いわゆる社保審の少子化特別部会、部会長であられたと思いますが、その報告を受けて、厚労委員会で質問させていただいたことがございます。やはり参考人として出席をいただきました。
私はやはり、先生の先ほどのお話にもあったと思うんですが、自公政権下の議論が今回の新システムの土台になっていると考えておりますし、また、本会議の質問などからずっと見ていても、与党の議員からもそれが土台であるという説明があったのかなと思います。
そこで、特別部会は、〇九年の八月の政権交代を挟んで、切れ目なく継続をされて議論されておりますよね。そして、〇九年十二月に論点整理が出されています。我々は、その間、何か粛々と特別部会は進んでいるよねと、意見をなかなか言うところではなかった、選挙があったわけですから。
ですから、そういうことを踏まえますと、先生にぜひ伺いたいのは、自公政権時代に検討されていた保育制度改革と、民主党政権下での今の新システムの違いはどのような点なのでしょうか。
○大日向公述人 御質問ありがとうございます。
先生のおっしゃるとおりでございます。
先ほども私申しましたように、今回の新システムは、九〇年の一・五七ショック以来、二十余年かけて、超党派でいろいろ先生方が御検討くださったものの成果だというふうに考えております。特に私が大きな思いを持っておりますのは、二〇〇七年の、子どもと家族を応援する日本重点戦略です。重点戦略、これは、二〇〇四年の子ども・子育て応援プランのときに、これからは日本社会の来るべきグランドデザインを描いて、果敢に重点戦略を策定して打ち込むべきだ、そういう御提言をいただきました。その御提言を受けて、重点戦略は二つの課題を打ち出しております。
一つは、働き方の見直しです。そしてもう一つは、地域の子育て支援、保育の充実です。この重点戦略の課題を受けて、即、少子化対策特別部会が設けられ、これまでの保育制度のいろいろな問題点を改善すべく検討を行いました。それを今回の新システムではかなり受け継いでおります。
ただし、少子化対策特別部会は、保育制度の改革に限られておりました。しかし、今回の新システムでは、保育制度改革だけでなく、幼稚園も含め、そして地域の子育て支援拠点も含め、全ての地域、全ての子供たちの幸せ、そして、その親の生活を保障しようという観点で議論をさせていただきました。
先生方の超党派の御議論の土台があっての一つの結実だと思っております。本当に感謝しております。ありがとうございます。
○高橋(千)委員 先生の思いがたくさんあるんだと思いますけれども、結局切れ目はないのだというお話だったかと思うんですね。ただ、全ての子供たちということで若干違うのだというので、基本は同じだという趣旨であったのかなと思うんですが、さまざまな施策が出されました。そして二十余年の成果である。そして、一年半、三十五回の審議を経て今回の新システムの法案を出された。それが数日の三党修正協議で振り出しに戻ろうとしておりますけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。
○大日向公述人 三十五回検討会を持ちまして、これは、私だけではなく、全てのかかわった委員たちがひとしくこういう思いを持っております。ここまで子供たちのために議論をさせていただいたことは非常にありがたい、この議論を、どうか一刻の猶予もない今の子供たち、そして親たちのために実りあるものにしていただきたいと思います。成案として法律が通ることを心から願っております。
どうか、最後申しましたけれども、子供たちのために、そして全ての地域の親たちのために、この新システムを通していただきたいと思います。
もしこれが崩れることになったら。子供たちは数年ですぐ大人になってしまうんです。この数年間を無駄にしてはならないと私は考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
私は、逆の意味で、子供たちには時間がないので無駄にしてはいけないなと思っております。先生方が一年半かけて議論したことを国会でももっと議論するべきではないか、そう思うんですね。
別にこれは論戦の場ではないですので、あくまでも私の意見ですけれども、例えば、先ほど認定こども園をつくりましたと池坊先生はおっしゃいました。ただ、残念ながら、認定こども園の議論のときは、半分の所管である厚生労働委員会では、共管であるにもかかわらず連合審査さえもできませんでした。法案をたくさん抱えていましたので。私は厚生労働委員として発言をしたかったのに、そういう機会さえもなかったわけです。
本日も、残念ながら新システムに対して反対の立場の明確な御意見の方がいらっしゃらないな、そういう中で議論が煮詰まったということはないことを祈りたい、もっと審議をしたいなと思っているということを紹介したいと思います。
そこで、続けて質問いたしますが、児童福祉法二十四条、市町村の保育実施義務が削除されたことについて、林公述人、森田公述人に伺いたいと思います。
私たちは、保育実施義務が削除されたということは、待機児童という概念そのものがなくなってしまうのではないか、待機の実態が隠れてしまうのではないかと思いますが、この点について御意見を伺います。
○林公述人 御質問ありがとうございます。
現行の児童福祉法では、保育に欠ける場合、市町村は保育所において保育しなければならないとされているわけでございますが、横浜市は横浜市の責任として、待機児童の解消を目指し、ハード、ソフトの両面で現在精力的に取り組んでいます。
一方、新システムになりますと、児童福祉法が改正されて、さらに、子ども・子育て支援、新法が新しくできて、この法律に基づいて保育行政を行っていくことになります。
改正後の児童福祉法では、市町村は、保育を必要とする全ての子供に対して必要な保育を確保する措置を講じなければならないというふうになっているわけですけれども、この新法では、市町村が地域の需要を踏まえた計画的な保育の基盤整備を行うことになっています。これらの法律によって、市町村が子供の健やかな育ちを重層的に支える仕組みとなることから、新システム稼働後も市町村の責任が後退するものではないというふうに考えています。横浜市としても、これまでと同様に横浜市の責任としてしっかりと保育行政を行ってまいります。
以上です。
○森田公述人 これまでも、実は、待機児の概念等を含めて、基礎自治体と国の中ではかなり違いがあったりしました。地域の中で子供たちを育てる親たちの状況というのは、実は、しっかり意見反映、あるいは制度設計や、あるいは具体的な量の整備、あるいは実施の方法、評価のあり方、こういったところにきちんと意見反映ができる状況にはないのが現状の状態です。
そういった状況の中では、どうしても行政の意図によって実施されるというふうなことになってしまいますけれども、その前提として、私が先ほど来申し上げているように、会議体をきちんとつくり、そして市町村の役割というものを、保護が必要な、あるいはさまざまな支援が必要な子供たちに対して、基本的には保育を必要とする子供たち全てに提供できるような形に実施できるかどうか、そこが問われているんだというふうに思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
先ほど森田公述人がお示しいただいた表といいますか、いろいろな支援の必要な子供がいるということを目に見えるようにすることはとても大事なことだと思うんです。
だけれども、待機に我々がやはりこだわるのは、そのことによって、それこそ最初に林公述人がお話しされましたように、仕事を諦めたり、二人目の子供を諦めたりするようなことがずっと叫ばれていながら、そこに本当に向き合ってこなかったのではないかということが指摘をされて、公的保育の拡充ということを我々は求めているんですけれども、全ての子供ということで包含されてはいけない、こだわらなければならない部分なんだというのが言いたかったわけであります。
そこで、林公述人に伺いますが、市町村の役割は後退するものではないというお話をされました。これはやはり、この間の論戦ですとか、それから諸団体の要望などが非常にありまして、政府の答弁も、かなり、逆に強く市町村に責任を持たせるのだ、あるいは、撤退への規制ですとかそういうことをきちっと書いていくんだということを答えてきたんです。逆にそれは非常に矛盾が起きないか。つまり、何か事が起こったら、それはみんな市町村がちゃんと見なかったからよということになりかねないのではないか。保育の実施義務というのは行政と国が両方持っているものだ、私はこのように思っています。
林公述人は、全ての権限を持たせてほしいとおっしゃいました。そのことの意味ですけれども、例えばナショナルミニマム、人員配置や面積基準なども含めて、やはりこれは自治体に委ねるべきだというふうにお考えでしょうか。
○林公述人 本当に、何度か申し上げておりましたけれども、基礎自治体の私どもの現場の中でこういった政策が進められていて、それを私自身も三年近く見詰めてまいりまして、先ほどの保育の会議なんかも、現場の方というか地域でやるべきだという、この法案の中にも入っているんですが、そういうこともあって、私としては、やはり市町村にお任せをいただきたい。横浜市は大都市制度ということをちょっと主張しているんですが、自助自立という形で、財源とともにお任せいただければやれるというふうに考えております。(高橋(千)委員「基準も」と呼ぶ)はい。
○高橋(千)委員 基準もという意味であったと思います。なかなかそれは、ちょっと賛成しかねる意見であります。
それで、最後に直接契約の点で、大日向公述人と、時間があれば森田公述人にも伺いたいと思います。
これは介護保険の保育版にならないのだろうかという強い懸念を持っております。保護者は、市町村によって保育のニーズを認定されて、直接契約を結ぶことになるわけですけれども、下手をすると、保護者の方が選ばれる可能性があるのではないか。つまり、キャパが足りない場合ですとか、要するに所得の格差で、保育料は応能負担だと言いつつも上乗せ徴収を認めているとか、さまざまな問題があります。
一番問題なのは、そういうことがまだ見えていないんですよね。例えば、長時間と短時間の境目はどうなるのだろうかとか、保育料の決め方はどうなるんだろうか。そういうことがわからないままに、法制定後の政省令に委ねられる。本当にこれで子供のためだということが言い切れるかという不安を持っています。その点で御意見を伺いたいのと、森田公述人は児童福祉ということでずっとかかわってきましたので、直接契約が格差につながらないかという懸念を持っていますが、一言伺いたいと思います。
○中野委員長 大日向公述人、高橋さんの持ち時間が過ぎてしまいました。簡単にお願いいたします。
○大日向公述人 直接契約、私どもは公的契約と呼んでおりますが、いろいろ御不安があることは承知しております。
しかし、新システムは、全ての子供を対象として市町村が事業計画を策定します。そのために地域住民のニーズ調査を行います。地域の実情に応じて、必要な施設を計画的に整備することを求めます。市町村の権限と同時に責務をふやします。従来のように、財政上の理由で、必要な施設の開設を抑えることはできなくします。
保育の必要性については市町村が客観的基準に基づいて認定して、それを受けて保護者は施設を選択するということです。しかし、需要と供給がアンバランスなとき、待機児が今なお解消しない地域では、しばらくは従来どおりの方法が踏襲されると思います。
また、幼稚園は、今親たちが直接契約をしているのになぜ余り不満が出ないか。需要と供給のバランスがとれているから。保育量をふやすことによって親たちが路頭に迷わないようなことを基礎自治体に求めます。そこのところはぜひ御理解いただきたいと思います。
ただし、先生が御不安のような、障害を持っているお子さん、あるいは経済的にいろいろな不安、厳しさを持っているお子さんたちに対しては、従来以上に市町村が責任を持ってこども園をあっせんするということも非常に強く義務づけております。子供たち、親たちが路頭に迷うことのないような制度を私たちはつくりたいと思っております。
○中野委員長 森田公述人、恐縮ですが、簡単にお願いします。
○森田公述人 どうもありがとうございます。
私は、ちょうどこの五年間ぐらい、十代で出産した親の妊娠、出産、子育てというものの調査研究もしてまいりました。その中で非常に感じているのは、やはり、非常に難しい行政手続とかなんかはできない人たちが多いんですね。どんなに手続を簡単にしても、やはりその人たちを直接的にサポートするような、先ほど横浜市がコンシェルジュをつくったというお話がありましたけれども、私も、ちょうど今、五年間、埼玉県で子育てマネジャーというのを養成してまいりました。五百人ほど養成したんですけれども、そういう、なかなか自分の力で自分の状況を判断して、そして行政施策あるいは具体的な地域施策につながらないような人たちの場合には、そういった新しいシステムが地域に必要だろうということは思っております。
そういった意味で、さまざまな形での権利侵害が起きないように、あるいは、利益を自分のところにきちんと持ってこられない人たちに対しては、そういったシステムが必要だというふうに思っております。
以上でございます。