国会質問

質問日:2012年 6月 14日 第180国会 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会

子育て新システム、修正しても保育解体

 日本共産党の高橋ちづ子議員は14日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で、子ども子育て新システムについて「保育の解体が本質」と批判し、公的保育の拡充こそ必要と主張しました。

※しんぶん赤旗2012年6月15日付記事もご覧ください!

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、子ども・子育て新システムについて質問をします。
 昨夜、政府が既に総合こども園撤回を認めたとニュースが流れておりました。大臣、総合こども園は撤回するのでしょうか。認定こども園の拡充などが言われておりますけれども、もともと自民党政権時代につくったものだから余り影響ない、このようにお考えなのでしょうか。

○小宮山国務大臣 今まさに三党で御協議いただいているので、私がここでどこまで踏み込むかというのは難しいところなんですが、総合こども園の、その総合こども園法を取り下げるということが新聞報道されていると思います。ただ、そこが狙いとしていた、親の働き方にかかわらず就学前の必要とする全ての子供に質の高い学校教育、保育をするということ、待機児童の解消をするということ、子育て家庭の養育を支援するというその目的を取り下げたわけでは全くございません。
 このねじれた国会の中で合意を得るために、これはずっと申し上げているように、認定こども園が先駆的な取り組みでございますので、それを今のままの認定こども園にしておくということではなくて、子供のためにしっかり取り組もうという各党の合意のもとに、それを拡充することによって、総合こども園法で目指したものとかなり近いところへ持っていけると私は考えていますので、何とか三党の合意が成り立つように期待をしているところでございます。

○高橋(千)委員 多分、そんなふうにおっしゃるんだろうなと思っておりました。多分、既に新システムという言葉ではなくなるんであろうと指摘をしなければなりません。
 もともと新システム自体が、柱だけで中身がほとんど決まっていない、何を聞いてもこれからですという、政省令に白紙委任という建物でありました。私は、それ自体が問題だと指摘をしてきました。これがまた修正されて、我々、外野に置かれて、さあ、調いましたから採決ですと言われても、到底納得できるものではありません。
 ことし三月までに、三百二の自治体から意見書が採択されております。その後も、集計できていないものの、採択はふえ続けています。一番新しいのは、この委員会をやっている最中の六月八日、群馬県議会だということです。
 委員長にぜひ要望します。
 改めて、公聴会に公募があった保育関係者を招聘し、参考人質疑を行い、十分な質疑を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○中野委員長 理事会で協議いたします。

○高橋(千)委員 お願いいたします。
 そこで、岡田副総理に伺います。
 子ども・子育て支援法案は、附則第一条において、施行期日について、消費税法案が施行する年の翌年四月一日までの間となっており、要するに、組み立てが、増税なかりせば新システム法なしというつくりになっております。
 それで、今言ったように、もう新システムではなくなるんだろうと思うんですけれども、増税とリンクさせる、増税で七千億円、この考え方は同じなんでしょうか。

○岡田国務大臣 子ども・子育て支援策を充実するためには、財源が必要でございます。
 消費税の増税、所得税その他もございますが、そういった措置なくして実施をするということは、それは困難であるということです。

○高橋(千)委員 要するに、増税がまず条件だという答弁だったかなと思います。
 ですから、やはりこれは、これまでも繰り返し指摘をしてきたことでありますけれども、小宮山大臣がよくおっしゃっていたことでもあります。OECD諸国と比べてもGDP比で子育て予算が極端に少ない、そういうことから出発した新システムだったわけですね。
 でも、もう子ども手当は挫折をし、増税が残っている。曲がりなりにも子育ての充実というのであれば、消費税増税に財源を求めるべきではないと思います。経済的に弱い子育て世代を直撃するだけではなく、負担はみんなに公平にさせるけれども、必ずしも受けられるサービスというのは公平ではありません、格差が生まれる、そういうことを指摘しなければなりません。
 さて、中身に入りたいと思います。
 六月四日、福島市で開催された地方公聴会で、全国認定こども園協会副代表理事の古渡一秀氏が、原発事故の影響で福島の子供たちが激減したことを数字で示しまして、福島の現在は日本の将来の姿だ、そう指摘をし、少子化の進行に歯どめがかからないことを訴え、幼稚園児は激減したのに保育所の充足率はほとんどが一〇〇%を超える、ミスマッチだと述べて、一日も早い制度改革をと強調されました。
 私は、思わず質問で、論理が飛躍していませんかと言いました。といいますのは、少子化だから新システム、何でですかということなんです。幼稚園はあいている、保育所は足りない、だから幼保一体化だというのであれば、物すごく、経営者の論理、現実的な話であって、保護者のニーズや子供の利益とは無縁の話だと思うんですね。
 大臣の認識を伺います。

○小宮山国務大臣 御指摘の意見陳述は、急激な子供の数の減少あるいは地域の経済状況等の変化による幼児教育、保育のニーズの急激な変化に対し、幼稚園と保育所の制度が分立している状況ではニーズに的確に対応できないという趣旨だったというふうに認識をしています。
 今回の改革での幼保一体化、これは、幼児教育、保育について、全ての市町村で地域の需要を把握して、事業計画を策定して、それに基づいて提供体制を整備するということ、給付や施設を一体化して二重行政を解消すること、指定制の導入によって小規模保育などを含む多様な事業を財政支援の対象とすることを目指しています。
 こうした取り組みによりまして、全ての子供たちの育ちを公平に保障したいということでやっていることなので、御指摘のようなことは当たらないのではないかと思います。

○高橋(千)委員 大臣が別に陳述者の意見を代弁する必要はないと思うんです。こういうことはあちこちで言われております。ですから、幼保一体化はそういう理屈ではないのだとおっしゃればいいんですよ。

○小宮山国務大臣 これは、施設のため、経営者のためというのではなくて、幼保一体化は、子供たちのために、親の働き方とかにかかわらず全ての必要な就学前の子供に質のよい学校教育、保育をするということ、また待機児の解消をするということなど、そのための、就学前の、同じ子供たちを対象にした施設ですから、さまざまな施設、整備されているものが就学前の子供にふさわしいので、あいている施設があれば、それはそこが子供たちのために提供されればいいという、あくまで子供の視点で考えているということです。

○高橋(千)委員 それがふさわしい条件を備えていくのであれば、私はそれはいいんだと思うんですよ。だけれども、何か、二重行政が問題で待機児が解消しないかのような、そういう議論が盛んにされてきた。そうじゃないだろうと。保育所が本当に必要で、保育所の充足が一〇〇%を超えていて足りないんだというのであれば、そのものをずばりやればいいじゃないかということを盛んに指摘してきたわけであります。
 一昨日の中央公聴会でも、震災で新システムが必要だという議論が非常に出ているんです。そう言われました。私は、全然それは違うと思います。逆に、保育の役割が本当に問われたのではないか、このように思うんですね。
 まず、保育所が一人も子供を死なせなかったということがよく言われます。私は、これを美談にしてはならないと思います。被災三県のうち、被災した保育所は七百二十二カ所です。うち、実は、保育中に亡くなった子供が宮城県で三名おります。保育外、お迎えが来て帰った子供や休んでいた子供の何と八十名も犠牲になっております。非常に痛ましいことだと思います。
 ことしの二月に、津波で全壊し、仮園舎に入っている陸前高田市の公立保育所を訪ねました。ここでは、実は三分の二の子供がお迎えが来て帰宅しているんですね。ですから、残った子供は全員助かっているんですけれども、残念ながら十名が犠牲になっております。普通に過ごしていることの大切さがわかったと言っていました。
 保育所には月一回の避難訓練が義務づけられておりますが、ここでは毎月二回やっています。仮園舎なので通園路が違いますので、本当に毎回毎回先生たちが避難路を確認して、民間の空き地を見つけてはお願いに行って、ここは保育所の避難場所ですという小さな看板を立てるんですね。本当に苦労をして頑張っている。それでも、毎回訓練のたびに課題を見つけるんだとおっしゃいました。常に張り詰めている気持ちが伝わってきました。
 その園長さんが述べたことは、命を助けられる定員にしてくださいという言葉でありました。小宮山大臣はこの声に応えられますか。

○小宮山国務大臣 大震災のときに、本当に、保育園で保育士さんたちが、日ごろの訓練も生かして、大変な努力をされて子供たちの犠牲が出なかったということについては、内閣府でやっていたワーキングチームの中でも多くの御意見を伺うことができました。こういう質を保っていくということは、これは必然というか、必ずやらなければいけないことだと思っています。
 そのために、今回、消費税というところには御異論があるんだと思いますが、確実な恒久財源をしっかりと、今までよりはかなり、一%の中ですのでまだまだ足りないとおっしゃる向きはありますけれども、二・七兆のうち〇・七兆というのは、今までの考え方からしたらかなり子ども・子育てに力を入れていますので、その中で、職員の配置基準の改善ですとか、あるいは処遇の改善も含めて、質の改善を、優先順位をつけながらしっかりと取り組んでいって、子供にとっての最善の利益と言えるような、そういう状況にしていきたいというふうに考えています。

○高橋(千)委員 配置基準を守っていても、もし子供たちが全員いたら助けられなかったと言っているということなんです。最低の基準だということを認識しなければなりません。それを、質を担保するとは言うけれども、今の認定こども園を参考にしたいということを大臣はこれまでも答えてきたはずだと思います。
 そこで、川端大臣にも伺いたいと思います。
 公立保育所の方がむしろ民間よりも定員管理が厳しいので非正規が多いよね、そういうことが指摘されていますね。どうでしょうか。

○川端国務大臣 定員、これは財政的な問題ではない御質問ですか。
 それぞれ公立保育園の人件費を含む運営費等については、運営主体が地方自治体でございますので、そこの部分で運営をされるということでありますが、その所要額は、一般財源化、税源移譲を三位一体改革でされましたので、地方交付税で手当てする財源手当てを、地方財政措置は講じておりますけれども、定数の基準については、これは厚生労働省の基準に基づいて算定されるものというふうに承知をしております。

○高橋(千)委員 では、今言った非正規の問題は把握されていますか。

○川端国務大臣 正確に数字を把握しているかと言われれば、全部を承知しているわけではありませんが、実態として、定数の中で、それぞれの自治体の集中改革プランを含めて、いろいろな工夫の中でそういう部分が存在していることは事実だというのは承知をしております。

○高橋(千)委員 やはり、中身をきちっと見ていきますと、質を担保するということはもちろん答弁されます。でも、現実はそうなんだ。しかも、公立がそうであるからこそ、これまでは、公私格差ということで、私立の保育園にも補助をしたりとか、そういう形でやってきましたけれども、しかし、公立が定員管理の厳しい中でなかなかふやせないんだ、非正規が多いんだということは、総務省自身が認めていることなんですね。そこから変えていかなければだめじゃないかということを指摘させていただきました。
 それで、質の確保とはどういうことなんでしょうか。
 今言ったように、歩けない子供、赤ちゃんを抱えて、やはり、保育士さんが、とてもじゃないが全員いたら助けられなかったということが現実の問題であります。
 また、新システムでは、子供が全員そろうのは、総合こども園であれば、幼児教育をしている四時間ですか、その時間だけなんですよね。そして、働き方によって、短い人も長い人もいる。つまり、顔ぶれがそのときによって、時間帯で違うわけです。そして、保育士さんのローテーション、これはもう既に、かなり細かい、パズルのような状態になっています。つまり、いつも、保育士さんと子供さんが常に向き合っている、同じ状態ではないわけですよね。
 そうすると、いざというときになかなかその態勢がとれないじゃないかということをやはりすごく想像して、それではとても新システムではだめだ、そういう声が上がってきた。これが被災地の実態なわけです。そういうことに対して応えていけますか。

○小宮山国務大臣 やはり、おっしゃっている質の確保には、人員配置など一定の水準を満たすということ、それでまた、学校教育、保育の内容として、国が示す指針に沿った内容が行われることなどが必要だと思います。
 それで、確かに、いろいろな形態の子供が入ってくると、今度でいえば保育教諭といっていますけれども、先生方の顔ぶれが変わっていくということは事実だと思います。
 先日私が伺った埼玉の認定こども園でも、これまでの幼稚園で教えてきた幼稚園教諭、それから保育をしてきた保育士さんがそれぞれまざり合うことによって、それぞれの経験が生かされて、子供たちにいい保育、教育ができているというようなお話もございますので、なるべくそのよいところを生かして、補い合いながら、顔ぶれが違ってくることのマイナスが出ないように、そこはきめ細かな対応が必要かというふうに思っています。

○高橋(千)委員 もちろん、幼児教育をされてきた方と保育をされてきた方たちが互いの経験を生かすというのは、それ自体は大変いいことだと思いますよ。そういうところに私も視察に行ったことがあります。
 ただ、現実に今やろうとしているのは、働き方に応じてと言っているんですから、顔ぶれがいろいろ変わったり、安定しないということがあるでしょうということ、そのシステム自体の問題を指摘しているわけであります。
 そこで、保育の必要度を決めると言います。この必要度を決める認定証、この期限はどうなるんでしょうか。介護保険でありますと、最初に、その認定が半年間ということだったので、目まぐるしくて大変問題になったわけです。これが、期限がどうなるかということです。
 それから、あなたは長時間、あるいは、あなたは短時間、こう決められたときに、しかし受け皿がなかった、希望するこども園に入れなかった場合、やむなく小規模保育所に預けました、でも、その方は、希望する園に予約して、あきが出たら入りたい、そういうときに、優先権があるでしょうか。あるいは、私は、希望するこども園に入りたいから、市町村があっせんしてくれたとしても拒否をして待ちたいです、そういうことが認められるでしょうか、優先されるでしょうか。

○小宮山国務大臣 保育の必要性の認定は、一定の期間内に限って有効になります。具体的な有効期間については、今後、子ども・子育て会議などで関係者の御意見を伺いながら、制度の施行までに検討をしたいと思っています。
 その後、二点おっしゃいましたけれども、一点目の、その子についての保育の必要度というのが変化がないので、希望するこども園にあきが生じた場合の選考で優先されるということにはなりません。
 それからもう一点、保護者があっせんを断ったことをもって保育の必要性の認定が取り消されるということにはなりません。

○高橋(千)委員 取り消されはしないけれども、優先はされないというお答えだったと思います。
 実は、これは、前に厚労省と少しやりとりをしたときに、要するに、こども園給付は既に受けていて、公費が入っているところにあなたは入ったんですから、そこは優先権は消滅しますよ、そういう説明だったわけです。
 そうすると、これはちょっと、保護者が選択できるよと幾ら言ったって、意味が違ってくるわけです、固定化されてしまう。そこにやはり格差が出てくるし、メニューというのは、幾ら言っても、それが選択できるだけの、実際のメニューと、また、それがかなう、いわゆる資金面ですとか、そういう条件が合って初めて言える話なんだということを改めて指摘したいと思います。
 それで、総合こども園ではなく認定こども園になるんじゃないかということが言われています。余り議論されていないんですけれども、認定こども園というのは、そもそも既に直接契約ですよね。それから、保育料は施設側が決められます。基準も、小学校でさえ三十人学級なのに、三十五人学級となっております。知事認可も認める中で、最低基準も自治体に委ねることができます。ある意味、新システムの先取りとは言えないでしょうか。

○小宮山国務大臣 新システムの先取りだとおっしゃることと、認定こども園、特に幼保連携型のところが今の新システムの中の総合こども園の先駆的取り組みと私どもが申し上げていることは、表と裏から言っているので、それはそういうことだと思います。

○高橋(千)委員 私にしてみれば先取りですが、大臣にしてみれば先駆的だとおっしゃいました。ただ、前段のところは否定をされませんでしたね。
 要するに、私たちが指摘をしている問題というのは既に起こっているわけですよね。それで、認定こども園に戻って拡充すればいいんじゃないかという単純な話ではないんじゃないかということなんです。問題を払拭するデータがないんですね、今言った問題については。
 つまり、大臣はよく、高く評価をされていますとおっしゃいます。保護者の方が八割、施設側が九割ですか、評価をしていると。しかし、それは、そういう一定の保育料を払っても、施設でこれまで待機していたけれども入ることができたとか、いろいろな人が確かに喜んでいるかもしれません。でも、現実に、入れなくて結局仕事をやめざるを得なかった人がどれほどいるのかとか、保育料がどのくらい高いのか、そういうデータが全くないんですね。教えてくださいと言ってもありませんでした。そういうこともきちんと、子供や保護者から見てどうなっているのか、調査をするべきではありませんか。

○小宮山国務大臣 保育料につきましては、今の保育所で行っている応能負担と同じでございますので、高くなるということはありません。

○高橋(千)委員 ですから、最初に聞いたじゃないですか、施設が決められると。

○小宮山国務大臣 施設が決めますけれども、市町村が国が示した基準に従って判断をいたしますので、そんなに法外に高いものが出てくるということにはなりません。

○高橋(千)委員 ですから、そういう懸念は法案が通るときから指摘をしているんです。それを払拭するデータを出してくださいと言っているんです。イエスかノーか。

○小宮山国務大臣 データとおっしゃるのは、今までの認定こども園のデータですか。
 もちろん、今までの認定こども園制度にのっとって今やる方向で修正協議は行われていると聞いてはいますけれども、認定こども園を拡充してやろうとしておりますので、そういう中で、やはり、今度子ども・子育て会議のようなものをつくるということは皆さん合意していただける点だと思いますので、いろいろなチェック機能も含めまして、そこのところはきちんとした制度にできるというふうに考えています。

○高橋(千)委員 負担がどうなっているかとか、入れない人たちがどうなっているかとか、そういうデータが一切なくて、評価しているというデータだけでいわゆる先駆的な取り組みなんですと言われるのでは、やはり懸念を払拭できないじゃないか。それを拡充すると言っている以上は、それがどういうものなのかというのをきちんと示してくださいと言っているだけなんです。
 小渕報告のことを馳委員がいつもおっしゃいますので、私もよく勉強させていただきましたけれども、二重行政の問題とか、やはり運営する側の議論なんです。ですから、私は何度も聞いているということです。
 そういう意味で、きょう、ちょっと参考に質問させていただきますが、今回、株式会社の問題も出てきているわけですけれども、あした、構造改革特区の評価委員会の教育部会で、株式会社立の学校について、方向性について意見書が出されるという報道がありました。
 全国に、大学五、高校二十一、小学校一、トータルで二十七校ある株式会社立の学校について、全国展開するには大きな課題があることが文部科学省の調査でも判明しました。
 最も多い高校で、不適切と見られた課題はどのようなものでしょうか。

○高井副大臣 御指摘の構造改革特区による株式会社立学校の制度は、平成十六年の小泉政権のときに始まっておりまして、これまで、小学校一校、中学校一校、高校二十四校、大学七校が設置をされています。これらの株式会社立学校の状況については、我々の調査において、学校経営や教育活動が不適切な事例があるということが明らかになっております。
 とりわけ、最も数の多い高校では、そのほぼ全てが通信制高校でありまして、特区区域外の民間施設で試験等が実施されている事例、それから、そうした民間施設が学校の看板を掲げるなど、学校と混然一体となって運営されているという事例がございました。あと、添削レポートのほとんどが多岐選択、マークシートで行われているという事例、こうしたちょっと問題のある点が見られます。
 また、こうした学校の設置を認可した認定の地方公共団体、市町村の職員に高等学校の教育行政の経験がなく、やはり学校に十分な指導ができていないということなどの課題があると認識しております。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 学校の看板を掲げているんだけれども全然それが違いますよということや、スクーリングがないとか、添削がマークシート方式で解説もつかない、自宅で試験を受けられるということで、誰が答えたかわからないじゃないか、そういう実態が明らかになって、課題があるということになったわけです。やはりこういう調査をしなくちゃいけないんですよね。
 改めて、全国展開を見送って、学校教育に熱意のある企業ならやはり学校法人を目指すべきだと私は思いますが、どうでしょうか。

○福田大臣政務官 お答えをいたします。
 構造改革特区の特例措置としての学校設置会社による学校設置事業につきましては、現在、御指摘のとおり、構造改革特区本部の評価・調査委員会において検討を行っているところでございます。
 その検討では、経営的に苦しい学校が多いこと、小・高校の八六%が学校法人化を考えていること、通信制高校で教育に課題があるなどの指摘がある一方、英語教育、IT、不登校などの教育の多様化や、生徒の地域行事への参加や世代間交流による地域の活性化、地元人材の雇用創出などの効果があることも確認されたところでございます。
 近く、評価・調査委員会において評価意見が取りまとめられる見込みと承知しており、政府としては、この評価意見を踏まえて適切に対応していく所存でございます。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 適切にとおっしゃいましたけれども、今指摘されたような、まさに、学校という看板をつけてはならない、不適切だという指摘に対しては、やはりきちんと評価を行って、拙速な結果を出さないということを強く指摘したいと思うんです。
 せっかく文科省が、学校法人を目指すのであればそこに支援をしたいということを言っているわけですね。やはり、私、保育でも同じことが言えるのではないかと思います。本当は、今の答弁、川端大臣が所管なんですけれども、ここでは答弁してはならないということだったので、大変残念ですが、ぜひこれは、聞いていただいたということで、お願いしたいと思います。
 保育への株式会社の参入は二〇〇〇年から既に行われているわけですけれども、その後も規制緩和を求める声は非常に強く、圧力も強かったです。今回も、制限つきとはいえ、株式配当を認める、こういうことが言われています。
 〇八年の十二月二十六日、規制改革会議第三次答申において、さまざまな要件や金額の制約が課せられている運営費の使途範囲について、「株式会社等の事業者から制限の撤廃・緩和が強く要望されている。」こういう指摘に対して、厚労省は何と答えていますか。

○小宮山国務大臣 規制改革会議第三次答申での御指摘に対しましては、平成二十年十二月二十六日に、「保育所運営費は、国民の税を財源として、保育所の適切な運営に必要な経費に対して補助されており、適正な公金支出の観点から、その目的の範囲内でその使途が制限されるべきと考えている。」という厚生労働省の見解を公表いたしました。この考えは、今も変わっていません。

○高橋(千)委員 今も変わっていないということでありました。
 その後のところに、株式会社で配当が出るくらいだったらそれを職員の充実に回すことができるじゃないか、そういう指摘まで厚労省はしているわけです。私は、やはりその立場を貫くべきだと思います。サービスや規制の内容が、国民の生命、生活や労働者の労働条件など、密接にかかわるものである、だから、その上で、大半が国民に負担いただく税や社会保険料だからこそ慎重であるべきということを厚労省は答えているわけです。
 新システムは、規制改革会議の強い圧力の中で進めてきた保育制度改革でもある。要するに、規制の側と厚労省とのせめぎ合いということと国民の声ということ、そういうことがあった。ですから、本当の本質は保育そのものの解体ということが言われなければならないと思います。
 私は、仮に修正されたとしても、そこの根っこのところが問われていく、やはり公的保育の拡充こそが今求められているんだということを強く指摘して、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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