国会質問

質問日:2017年 4月 21日 第193国会 厚生労働委員会

医務技官について、ゲノム医療について

ゲノム情報、適切な対応を
高橋氏 新設医務技監ただす

 日本共産党の高橋千鶴子議員は4月21日の衆院厚生労働委員会で、「グローバルヘルス(国際保健=保健、医療面での国際的取り組み)」への対応と称するイノベーション(技術革新)優先の官邸主導の健康・医療戦略に関連し、新設される医務技監は国民の医療や保健を担う厚労省の立場を貫くよう主張しました。
 同委で審議中の厚労省設置法改定案では、医学的知見に基づき同省を総括整理する医務技監を新たに設けるとしています。高橋氏は、厚労省がゲノム医療実現推進協議会で「がん、希少・難治性疾患、感染症、認知症他の疾患について日本人患者10万人の全ゲノム(遺伝)情報等の集積を目指す」としていることなどを示し、ゲノムは究極の個人情報であり、個人情報保護法のみでは対応できないと強調しました。
 高橋氏がヒトゲノム解析研究の倫理指針についてただすと、塩崎恭久厚労相は、改定個人情報保護法に沿って5月に指針を見直すと答弁。高橋氏は、内閣府の調査会がヒト受精胚の臨床応用は容認できないとしていると指摘。塩崎氏も倫理上許されないと認め、厚労省の専門委員会で検討すると答えました。
(しんぶん赤旗2017年5月3日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 法案の趣旨説明の文書には、厚生労働省の所掌事務の的確な遂行を図るため、医学的知見に基づき厚生労働省を総括整理する職として、医務技監を置くと書いてあります。当初は私も、これを見て、医系技官のポストだと思っておりました。午前の質疑の中でも、目指してほしいという声や、あるいは医系技官の集大成である、そういう期待の声があったかなと思います。
 確認ですが、でも、そうではなくて、医師でなくてもよいという意味であるということ、それと、大臣が任命するということなので外部登用もあるということだと思いますが、確認をします。
○福田政府参考人 お答えいたします。
 医務技監の任用について、医師免許が必要であるかどうかを含め、法令上、特段の規定はございませんが、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職であるため、医療に関する専門知識や経験などは必要だと考えております。
 また、具体的な任用につきましては、内部、外部を含めて、任命権者である厚生労働大臣が、求められる適性を考慮して選定を行い、その任免に際し、内閣の承認を得た上で登用されるものと考えております。
○高橋(千)委員 ちょっとわかりにくかったんですが、専門的な知識、当然ですが、だけれども、言ってみれば、医師だってジャンルがさまざまあるわけですから、全てに通用しているというわけではないわけであります。
 そういう意味では、専門的知識、いろいろな経験ということで、医師でない場合もあり得るということと、外部登用もあり得るということを、もう一度確認します。
○福田政府参考人 今委員御指摘のとおりでございまして、専門的な知識や経験等は必要ですけれども、それは必ずしも医師である必要はないということでございますし、内部、外部の登用につきましても、外部登用も含めてあり得るということでございます。
○高橋(千)委員 確認しました。
 二〇一五年六月の保健医療二〇三五には、「保健医療政策について、総合的なアドバイスを首相や厚生労働大臣に対して行う「保健医療補佐官」の創設(任期五年)」と書いてあります。これは多分、先進国の事例を参考にしたと思うわけですけれども、そこから受けるイメージと今回の提案は、ちょっとトーンダウンしちゃったのかな、正直言ってそう思うんです。
 次官級といいますけれども、俸給表でいくと局長より上で審議官よりも下なわけですよね。そうすると、首相にもアドバイスできる、そんな形で本当にできるんだろうか。
 当初の想定はちょっと違ったけれどもここら辺になっちゃったということなのか、いやいや、そうではないというのか、大臣のイメージをお伝えください。
○塩崎国務大臣 保健医療二〇三五で、これは平成二十七年六月に取りまとめをいたしましたが、ここで、今御指摘の、保健医療政策について総合的なアドバイスを首相や厚生労働大臣に対して行う保健医療補佐官、チーフ・メディカル・オフィサーの創設を提言されたわけであります。
 恐らく、イギリスのチーフ・メディカル・オフィサーというのは百五十年ぐらいの歴史がある立派な制度でありますが、一方、今年度から新たに設けることを御提起申し上げている医務技監についても、厚生労働省の幹部としてだけではなく、例えば、新型インフルエンザ等の健康危機事案が発生した場合に、内閣官房と緊密に連携をして、医療、保健面から必要な役割を担って、政府全体の対応に貢献していくことなどを想定しております。
 したがって、保健医療二〇三五の趣旨にも合致をしているのではないかというふうに考えております。
○高橋(千)委員 任期は五年というのは決まってはいないと聞きました。もっと短い場合もあるということだと思います。
 それから、全体にアドバイスするということを大臣はおっしゃった。ということは、書いてあるとおり、首相にもアドバイスできる、そういう立場ですか。
○塩崎国務大臣 私も三年近く厚生労働大臣をやってみて、例えば、いわゆるグローバルヘルスに対応する司令塔はどこだろうかというと、基本的には官邸だと思います。しかし、官邸の職員で医師の資格などを持つ専門的知識がある方は今でもおられません。したがって、グローバルヘルスに関しても、あるいは災害医療というのも大事で、災害のときも災害対策本部が官邸につくられますが、そういう際にやはりちゃんと総理にアドバイスができる人がいるという意味においても、私は今回の医務技監は首相にも当然アドバイスができるというふうに思っております。
○高橋(千)委員 だとすれば、もう少し整理をした方がいいんじゃないでしょうか。
 別に私はそういう立場をいい悪いと言っているのではなくて、今、厚労省が第一義的に保健や医療、衛生、そういう分野を持っていると思っているけれども、大臣が今言ったように、実際にグローバルヘルスというと官邸が中心である。どちらかというと官邸主導でいろいろなことが決められていって、その中で、厚労省もその枠の中でというところが多いわけなんです。
 だけれども、本当に必要なことは、きちんと物が言える、そういう関係をつくっていかなければ、そしてまた、それにふさわしいポストでなければならないんじゃないか。そういう意味では、逆に中途半端だなということを率直に思いましたので、今の答弁を聞いていても、全体を聞いていてもそう思ったということで、少し整理をされたらどうかということを指摘したいと思います。
 同時に、「保健医療政策に関する技術的、公衆衛生的な専門性・中立性を担保しつつ、」とあるわけです。医務技監は、当然、製薬企業等とは利益相反関係がないことが条件だと思いますが、いかがでしょうか。また、それを担保するためにも、国会に報告、チェックする仕組みをつくるべきではないでしょうか。大臣、お願いします。
○塩崎国務大臣 新たにつくられるこの医務技監は次官級の職であります。医療、保健に係る重要施策について医学的見地に基づいて総括整理するわけでありまして、特定の企業等の利害関係者と利益相反の関係となることは、これはあってはならないと考えます。
 現在、幹部の公務員については、国家公務員法とか、あるいは国家公務員倫理法、ここにおきまして、服務規律や職務上の利害関係者との関係について、一般職員よりも厳しいルールが定められています。
 具体的には、利害関係者から贈与を受けた場合や株取引を行った場合などには、各省の大臣宛てに報告書を提出することが義務づけられておりまして、その写しは国家公務員倫理審査会に送付をされて審査されるなどの仕組みが設けられているわけであります。
 医務技監についても、こうした仕組みを通じて職務の公平性、そして公正性が確保されるものと考えております。
○高橋(千)委員 ここは確認をさせていただきます。
 私はやはり、さっきの午前中の議論で、医系技官に期待する、要するに国際舞台で活躍してもらいたい、そういう意見がたくさん出たと思います。それは全くそのとおりだと思うんですよ。でも、同時に、やはり厚労省の中で、許認可権とかさまざまな権限を持っている医系技官がさまざまな事案にかかわってきた、そういう反省もあるわけですから、そこを明確にしていただきたいという思いで質問させていただきました。
 次に、今、内閣委員会で、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律案が審議中であります。そのポンチ絵を資料の一枚目につけました。一定の基準を満たし、医療情報の管理や利活用のための匿名化を適正かつ確実に行うことができる者を認定する仕組みだといいます。
 それで、この流れが、利活用の成果は、新薬の開発や費用対効果の分析、未知の副作用の発見ということで、患者が受診している医療機関から情報が行って、匿名加工があって、それをやるのは研究機関や行政や、こういうふうなフローがあるわけですね。
 ここで伺いたいのは、この医療情報の中にはゲノム情報も入るんでしょうか。
○大島政府参考人 お答えいたします。
 医療機関が検査などに伴って保有しますゲノム情報は、定義上は新しい今回の法案に規定する医療情報に含まれます。
 ただ、ゲノム情報のうち、全ゲノムなど個人情報保護法に定める個人識別符号に該当するものにつきましては、そのままの形で利活用者に提供することはできない扱いとなります。
○高橋(千)委員 一遍に利活用ということではないということだったんですが、定義上は含まれるということがまず一つあると思うんですね。
 それで、資料の二枚目を見ていただきたいんですが、これは「ゲノム医療の現状」と書いてありますが、二〇一五年の資料です。ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースの資料であって、これはすごくわかりやすいんですよね。
 基礎から応用へとステージアップしていく矢印がありまして、真ん中のところで実用化と書いてあります。日本は、ゲノム解析により原因遺伝子を特定、治療方針の決定とすることはもう既に実用化にたどり着いている、それでも保険収載は、この青の矢印を見ますと、日本は三十六疾患に対して、イギリスは四百九十二種ということで、大分差が開いているぞ、そういう資料になっております。特定の遺伝子を持った疾患に対する標的治療、これは余り違いがないんですけれども、その下のところでいくと大分おくれているというふうにこの図は言いたいんだろうと思います。
 めくっていただいて、資料の三枚目、「ゲノム医療の実用化に向けた基盤整備の概要」、これはゲノム医療実現推進協議会、二〇一六年の資料ですが、厚労省が出しているものだと思います。「二〇二〇年度までに、がん、希少・難治性疾患、感染症、認知症他の疾患について、日本人患者十万人の全ゲノム情報等の集積を目指す」とあります。やはり、こうした形でゲノム情報の活用、実用化ということを大きく打ち出しているわけなんですよね。
 それで、やはりゲノム情報は究極の個人情報であり、また、本来、匿名加工というのはできないと思うんですね。そうすると、やはり個人情報保護法の一つの並びというだけでの対応ではできないのではないかと思うんです。
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針、この見直しなどはどのようになっているでしょうか。
○塩崎国務大臣 ゲノム情報を含みます医療情報というのは、各種の情報の中でも特に機微性が高いということで、本人に対する不当な差別あるいは偏見が生じることがないように、今般の個人情報保護法改正において要配慮個人情報と位置づけられて、本人の同意を得ない取得が禁じられているわけであります。
 一方で、ゲノム情報を用いた医学研究というのは、従来は不可能であった個別化医療の診断法であったり治療法であったり、こういったものの開発に大きく貢献をすると同時に、新しい産業の育成などにも重要な役割を果たしているわけでありまして、円滑に実施をされていくということが今後大事な課題となってまいります。
 このために、ことしの五月の改正個人情報保護法の施行にあわせ、今お話がございました、ゲノム研究に関する倫理指針、これを見直して、この指針に基づく学術研究は改正個人情報保護法の義務規定の適用除外としまして、これまでとほぼ同様の手続、いわゆるオプトアウトによって実施をすることができることとしたところでございます。
 今後も、個人情報の保護に配慮しながら、ゲノム情報を用いた医学研究の実施に支障を来すことがないように適切に対応してまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 個人情報保護法の適用除外ということで見直しをしたというお答えだったと思います。
 私、実はこのゲノム指針についてすごくこだわっているのは、前回の改正、平成二十五年の改正のときに、ちょうどこの資料の二枚目の一番下にある、「健常人を前向きに追跡するゲノムコホート 東北MMB」と書いてありますよね。現在登録数が約十一万人。これは東北メディカル・メガバンク構想。これについて復興特別委員会で質問したことがあるんです。ですから、大臣はいらっしゃらないところではあったんですけれども、やはり、被災地で、沿岸部で三世代の家族が多いぞ、そこに注目をして大規模なコホート研究をやろうということであったわけです。
 だけれども、そのときに、やはり指針が改定をされて、事前の同意について十分にとらなくてもよいということで、それから、どのような利用がされるかということについて、全部は一々は報告ができないので、包括でもよいというふうなことになったこと、そして何よりも、やはりこういうゲノム研究をするときには、利用者が本当に健常な状態でなければならないという大原則があるにもかかわらず、被災地で本当に大変な経験をした方たちに、そのかわりに地域医療を応援するからねという形でやるというのはいかがなものかということを指摘したことがあったわけなんです。一番傷ついている人たちにそういう調査をするということが、本来の立場からどうなんだろうかという提起をしたことがあったわけなんですね。
 こういう問題というのは、先ほど来、当然機微な情報だと言ってくださっている。だけれども、やはり利活用というところが前に出ますといろいろな人権に響くことがあるのではないかということで、言いたかったということであります。
 それで、こうした中に驚く報道があったわけであります。
 資料の四枚目。上の段が四月十九日付の朝日新聞、下の段が翌日、二十日付の朝日新聞です。見出しに「ゲノム編集 学会VS国」と書いてあります。狙ったとおりの遺伝子を改変できるゲノム編集をヒト受精卵などに使う研究の審査のあり方をめぐり、国の責任で審査するよう求める学会に対し、内閣府は協力する立場との見解を崩していないとして、反発した学会側が研究の妥当性などを審査する合同の委員会の解散を決めたと。これはただごとでないなと思ったんですが、翌日、菅官房長官が、国として責任ある関与をすべきと考えていると直ちに会見をしたわけですよね。
 なぜこのようなことが起きたのか、簡潔にお願いいたします。
○進藤政府参考人 お答えします。
 ヒト受精胚に対するゲノム編集を用いた研究のあり方につきましては、生命倫理専門調査会において、関係学会と協力しながら、実効性のある仕組みを構築すべく検討しているところでございます。
 このあるべき仕組みについて、内閣府としては、国として責任ある関与をしていく方針であり、生命倫理専門調査会の取りまとめに基づき、関係学会と連携を密にし、国内におけるヒト受精胚に対するゲノム編集を用いた研究を適切に審査できる仕組みを構築していくこととしております。
 今回、関係学会の御対応について御指摘がございましたが、私どもの意思疎通が不十分であったために、私どものスタンス、方針の一部に誤解が生じてしまったかと考えており、今後このようなことがないように、関係学会と連絡を一層密にとり、実効性のある仕組みを学会と協力して構築することとしたいと考えております。
○高橋(千)委員 やはり、こうしたスキームがなければ、ここのスキームの外から研究に参加をする人が出てくるであろうという、大変危機意識を持っての学会の指摘だったと思います。
 資料の五枚目にありますが、三月に委員会を開いたというところで、いろいろな学会が協力をし合って合同ゲノム編集研究委員会を立ち上げるということを書いているわけであって、そこがなぜこうなっちゃったんだろうということで、非常に気をつけなければならないと思います。
 この会議のときに、合同ゲノム編集委員会は、生命倫理専門調査会の取りまとめに基づき、学会が案を具体化しようとするものである、学会が自主的に決定し、勝手に研究の審査を行う組織ではないと明言をしている。特に、ゲノム編集技術は、特殊な設備を必要とせず、簡単な技術で、しかも安易に試すことができる、そのため、学術研究機関以外の施設において、研究をバイパスし、医療としてヒト受精卵に対して安易に実施されてしまう可能性がある、内閣府の守備範囲が科学技術に限られており、医療までは及ばないとされているが、規制が全く存在しない我が国の現状は極めて危険であると指摘をしているわけで、やはりこの立場が非常に重要ではないかなと思っています。
 この合同委員会が立ち上がる前の二月に、米国の代表的学術機関である科学アカデミー、NASと医学アカデミー、NAMが、遺伝性疾患を予防する目的に限ってヒトの受精卵に応用することを容認する報告書をまとめたということで、急速な研究の進捗に鑑みて審査体制の整備が急がれていたという背景があったかと思うんです。
 そこで、大臣に伺いたいんですが、一昨年、NHKで「デザイナーベイビー」というドラマがあったわけですよね、遺伝子組み換えの赤ちゃんが主人公だったわけですけれども。やはり、今言ったような予防ではなくて、例えば、好ましい外観を実現するだとか、身体能力や知能を増強するというふうな目的でやることも可能なわけですよね、技術的には。やろうとすればそういうふうなことができてしまう。やはり、ここまでいくともはや神の領域であって、触れてはいけないと思うんですね。
 そういう危機感があってこの間の歯どめが必要だという議論があったんじゃないのかなと思うんですが、大臣はこの点についてどのようにお考えでしょうか。
○塩崎国務大臣 内閣府の生命倫理専門調査会が、平成二十八年四月に、「ヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究について」という中間取りまとめを行っています。これを見ますと、御指摘のデザイナーベビーを含めて、ゲノム編集を行ったヒト受精胚の臨床応用、これについては現時点では容認できないとされています。
 そして、いわゆるデザイナーベビーは倫理上容認されるべきではないわけでありますが、体細胞に対する疾病の治療等を目的としたゲノム編集技術、これの臨床応用には対応していく必要があるのではないかというふうに考えております。
 厚生労働省としては、内閣府の調査会の中間取りまとめも踏まえて、今月から、遺伝子治療等臨床研究に関する専門委員会、これが立ち上がったところでございまして、この専門委員会において、遺伝子治療等の適応範囲など、遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しについて検討をしてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 大臣の気持ちを今聞いたわけですので、審査会の結論はよく存じていますので、容認されるべきではない、ここが、時代が進んでいったら容認してもいいよというふうにならないように、ここを確認したかったわけであります。
 それで、やはり医療技術の進歩には限りがなくて、政府の健康・医療戦略では、やはりグローバル人材の育成や日本の医療、介護技術の国際貢献などをうたっているわけです。医務技監は、そうしたグローバルな展開の鍵を握るポストなのかもしれません。
 でも、国民にとってそれがどうかということなんですが、保健医療二〇三五には、基本理念として、公平公正、自律に基づく連帯、日本と世界の繁栄と共生の三つを挙げて、「個々人の自立のみに依存した健康長寿の実現はなく、必要十分な保健医療のセーフティネットの構築と、保健医療への参加を促す仕組みによって社会から取りこぼされる人々を生じさせない」と書いてあるわけです。大変いいスローガンなんですよね。
 ところが、「安定した保健医療財源」というくだりでは、財政審と全く一緒で、急に現実的になるわけなんです。公的医療保険の基本原則を守りつつ、公的医療保険の外のサービスを選択できるようにして、融資だとか寄附だとか、補完機能をやるべきじゃないか、不必要に低額負担となっている場合の自己負担の見直しや、軽度の疾病に負担割合を高くしたらどうだ、そういう議論がされてくるわけなんですね。
 そうすると、先週まで介護の議論をしていました。負担増だという議論をしていました。やはりそういう中で、次世代、持続可能だといいながら負担増を求めても、そのわずかな財政効果をはるかにしのぐ、桁の違う割合で医療イノベーションに巨額な予算が注がれていくわけです。この折り合いをどのようにつけるのでしょうか。
○塩崎国務大臣 保健医療二〇三五というのは、私のつくった私的な懇談会として開催をしていただきました。公的医療保険の機能や役割に関する御指摘の記述は、医療保険の持続性をどう高めるのかということで、安定した医療保険財源を確保する上での一つの方策として提言をされているというふうに理解をしています。
 少子高齢化のもとでは、保険制度を持続可能なものとしていくために、予防とか健康づくりを積極的に進めていくことに加えて、公的医療保険についても不断の見直しを行うべきということが重要だというふうに思います。
 しかし、そうした見直しによって得られる財政効果は医療イノベーションのための投資に充てるという直接の関係にはないために、両者のバランスを考慮するというものではなく、いずれも適切に進めていく必要があるというものではないかと思っております。
 その上で、医療イノベーションについては、質の高い医療を国民に提供するためには不可欠なものであって、投資に見合った効果が得られるか否かの判断に当たっては長期的な視点が重要でありますけれども、医療の質、そして患者の利益、そしてコスト、こういう視点をさまざま踏まえながら、しっかりと推進をしてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 これはまだ続きがあると思います。午前から議論されているUHC、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、これにおいても、やはり全ての人々が払える適正な負担ということが言われていますし、SDGsにしても、やはり貧困と格差というのが大きなテーマ、環境だけではなくて大きなテーマなわけなんです。そこを切り離してただイノベーションではないということで、しっかりとまた議論していきたいと思います。
 終わります。

 

――資料――

2017年4月21日厚生労働委員会配布資料

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