国会質問

質問日:2017年 4月 5日 第193国会 厚生労働委員会

介護保険法等改定案

利用者負担増を批判
衆院委 介護保険改定で高橋氏

 日本共産党の高橋千鶴子議員は5日、衆院厚労委員会で、前回改定から2年足らずで利用者負担の3割への引き上げを盛り込んだ介護保険法等改悪案は「利用者負担増やサービスの抑制は、家族の負担を増やし、政府の介護離職防止とも逆行する」と批判しました。
 高橋氏は、民医連の「介護困難800事例調査」をもとに、2割への引き上げで給付抑制が起きている事例を示し、3割への引き上げとともに高額介護サービス費(自己負担限度額)の月額上限が引き上げられることの影響について質問。蒲原基道老健局長は約18万人が負担増となると答弁しました。
 高橋氏は「狙いは、こうして小さな穴を一つひとつ開けていくことで、さらなる負担増がしやすくなるからではないか」と批判しました。
 さらに高橋氏は、前回改定で施設入所の低所得者への食費・居住費補助(補足給付)の要件を厳しく見直したことで認定件数がマイナスになったと指摘し、「認定が減ったというのは補足給付を受けられなくなったということだ」と批判。蒲原局長は負担増による影響を認めました。
 これらの介護保険改革は、財務省の「改革工程表」に沿ったものだと高橋氏が指摘したのに対し、塩崎恭久厚労相は「改革工程表に書いてある通り」と認めました。高橋氏は、安心の制度設計は厚労省の責任で行うべきだと主張しました。
(しんぶん赤旗2017年4月7日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 十九本の法律を束ねた医療介護総合法案について、本会議で審議入りしたのは二〇一四年の四月一日でした。私が登壇をしました。あのとき、消費税八%への増税と同時に始まったわけで、地域包括ケアという言葉自体あるいは考え方自体はいいものでありますけれども、医療からも介護からも追い出される大改悪だ、こういう指摘をしたわけであります。地方公聴会と、医療、介護、二回に分けて参考人質疑をやりました。
 今度の法案は、中心は三本だからそれほどでないと与党の皆さんは言います。しかし、そのときに、やはり参考人の皆さんも含め、さまざまなことが指摘をされた。それが現実となっているのではないか。我々が指摘したことも含めて、前回の改正の影響をきちんと検証しないまま、さらなる改正であるということなんです。
 介護だけでなく、障害も子育て支援も、地域包括ケアという地域共生の概念はこれまでの社会保障を大きく転換するものであり、十分な審議が必要であると思います。
 委員長に、まず、この問題での徹底審議についてお約束をいただきたいと思います。
○丹羽委員長 審議時間については、理事会でお諮りさせていただきます。
○高橋(千)委員 きょうは、まず利用者負担について伺います。
 実は、今言ったように、前回、大変なボリュームがあったわけですから、利用者負担について、本会議で一言質問をしましたが、実際の委員会ではそれを取り上げられなかったんですね、総合事業の問題ですとか人材の問題ですとかがさまざまあったものですから。今回は、順番を変えまして、負担について先に質問したいと思います。
 資料の一枚目が前回の見直しであります。
 「平成二十六年改正における一定所得以上の利用者負担の見直し」ということで、非常にたくさんのことが書かれておりまして、今見ても、大変わかりにくいわけなんですね。
 この基準値が合計所得金額百六十万円以上。これは、収入から公的年金等控除や給与所得控除などを控除した後の所得であり、単身でいうと、年金収入のみの場合は二百八十万円以上というふうに決められて、これらの方が二割負担になったわけであります。そして、分布でいうと、六十五歳以上高齢者の上位二〇%に該当するという説明でありました。
 この影響については、もう先ほどまでもずっと繰り返し指摘をされました。しかし、私からも指摘をさせていただきますが、今回の負担の見直しは、三年後の施行になります。来年の八月一日。ですから、まだ検証が進んでいない中で決めるのは早いと思います。なぜ、今三割まで決めたのでしょうか。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 二十六年改正におきます二割負担導入の影響につきましては、これまでも何度も御質問いただいておりますけれども、サービスの受給者数や利用回数等に関する全国的なデータの分析、あるいは、自治体あるいは介護事業者などの関係者からの実態をお聞きすることなどを通じまして、いろいろな形で実態を把握しているところでございます。
 今回の見直しでございますけれども、やはり、この介護保険制度を将来にわたって持続可能なものにするという観点で、世代内、そして世代間の負担の公平を図る、とりわけ、その際には、負担能力に応じた負担をという観点、こうしたところから、現役並みの所得を有する方の負担割合を二割から三割にするというものでございます。
 今回の三割負担の導入につきまして、対象については、これは二割負担者よりも一層範囲を限定した、特に所得の高い層であるということでございますし、また、負担の上限額、これは月額四万四千四百円ですけれども、据え置くといったような配慮を行っているところでございます。
 今後、制度の持続可能性を図るために、こうした必要な措置を講じたいということでございます。
○高橋(千)委員 先ほど、限定したという三割負担の対象の方のことについて阿部さんが指摘をしておりましたけれども、ちょっと続けたいと思うんです。
 前回の本会議で、私は、介護保険部会でも、年収二百八十万円というラインは低過ぎるという批判があったことを紹介し、まず前回の負担増の検証の議論をしています、「年収二百八十万円ぎりぎりの層など、利用抑制が進むのではありませんか。利用料二倍化は、きっぱりやめるべきです。」と指摘をしました。
 実際に、このぎりぎりの層というのがございまして、施設や訪問型、さまざまな介護事業を行っている全日本民医連の「介護困難八百事例調査」報告、先ほど、発表されたんですけれども、それを見ますと、基準額をわずか二千円超えたことで二割負担になってしまったという方がいらっしゃいました。まさにぎりぎりのところで大きく変わった。ヘルパーの利用を毎週月曜日と土曜日受けていたのが、第一と第三の土曜日のみになった、デイケアの利用も減らし、持病を持っている妻の負担がぐっとふえた、こういう事例がございました。あるいは、家屋を処分してわずか三百万円ほどの収入があった、これで基準年収が上がってしまったわけですね。
 介護の所得の考え方は、災害のときに高台移転で大騒ぎをしたわけですけれども、要するに、そういう資産の処分による一時的な収入も数えてしまう、見てしまう。なので、基準年収は上がってしまって、実際の所得の力とは全く合わないんだけれども、二割になってしまった、こういう方もいらっしゃったわけであります。
 だからこそ、まず、受給者数が変わっていないという単純な話ではなくて、もっと実態を見るべきではないかという指摘が重ねてされてきたんだと思うんですよね。その点についてはいかがですか。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど、これまでのいろいろな全国データの分析等についてお話し申し上げました。そのときにも、これまでも申しておりますけれども、全国データの分析で、例えば制度が変わった七月、八月の間の分析というのはお示ししているわけでございますけれども、そのほか、加えて、各自治体で、幾つかのところで、これは期間は少し離れていますけれども、同じような分析をしているものも我々は収集しているところでございます。
 そうした意味では、一定の状況というのは把握しているところでございますけれども、大臣からも何度かお話し申し上げておられますけれども、どのような工夫ができるかといったことについては、これからいろいろ考えていくということでございます。
○高橋(千)委員 負担にはいろいろな種類があるんですね。
 資料の二枚目を見ていただきたいと思うんです。
 「利用者負担のあり方(見直し案のイメージ)」ということで、これは昨年の十一月二十五日の介護保険部会に出た資料で、これがまさに見直し案が出た瞬間の資料であります。なので、見直し案ということで、現役並み所得相当は三割負担というところが赤く囲ってあるのと、一般のところの高額介護サービス費が三万七千二百円から四万四千四百円ということで、赤くなっております。
 これをまず見ながら、この三割負担については、厚労省は、介護保険受給者全体の約三%くらいだ、十二万人くらいだと説明しているわけですね。だから影響は非常に少ないということを言っております。
 ところが、右にあるように、高額介護サービス、これは自己負担限度額ですよね、これが一般の階層でも三万七千二百円から四万四千四百円に引き上げられる。これは月七千二百円の負担増になるわけです。これは事実上の負担増なわけですよね。十二万人とはまた別な話だと思います。どのくらい対象者はいますか。
    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 高額介護サービス費の一般区分の引き上げの件でございます。三万七千二百円から四万四千円に引き上げることによる負担増となる人数でございますけれども、これは最大でおおむね十八万人程度ではないかというふうに考えております。
○高橋(千)委員 おおむね最大で十八万人ということでありました。
 それで、ちょっと資料をめくっていただいて、6です。
 これは在宅の資料も同じものがあるんですけれども、「施設サービス受給者の平均的な利用者負担額等」ということで、括弧の中がどれだけの負担増になるかということで一覧になっております。
 一割負担の方でも、要介護四の方は八百円の増、要介護五の方は三千八百円の増となっておりますし、二割負担の方は軒並みふえているということがわかると思うんですね。ですから、これが本当に一部の人といっても、満遍なく影響がある人がいるということがまず一つ指摘ができるかと思うんです。
 その上で、済みませんが、もう一度先ほどの資料の2に戻っていただきたいと思うんです。
 これはちょっと考え方の整理で確認の質問をさせていただきます。
 右側に高額介護サービス費のイメージというものがあります。介護費が三十万円の場合、一割負担ですと、三十万円ですから三万円なわけです。この例に出しているのは市町村民税非課税世帯ということで、二万四千六百円が限度額である。そうすると、それから先は、五千四百円は高額介護サービス費として補填される仕組みになるということが書いてある。ところが、一般以上の所得階層の方は、今は限度額が三万七千二百円ですので、一割負担が三万円だと限度額にはこれまではさわらなかったので、丸々三万円負担をしていたということになるのかなと思うんです。それが今度二割負担になるとさわってくるということになるんじゃないかと思うんですね。
 資料の4を見てください。いろいろ飛んで申しわけありません。
 「高額介護サービス費の件数及び給付費の推移」となっております。これは、制度改正直前と直近、平成二十八年三月支給分で比較をしています。
 第四段階のところを見ていただきたいと思うんですが、一般の階層となる第四段階のところの高額介護サービスの支給件数が、十一万九千七百件だったものが二十一万九千二百三十六件と大幅にふえております。
 つまり、今言ったように、二割負担になったことでこれまでは限度額にさわらなかったものがさわるということで、逆にこれは高額介護サービスの利用がふえた、そういう理解でよろしいですよね。これは整理だけで聞いています。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、二割負担になりますと、いわばそこの二割分の負担がふえてきますので限度額にかかるようになってくるので、その関係でこういうふうに支給の率がふえてきているものというふうに考えております。
○高橋(千)委員 単純な確認をさせていただきました。済みません。
 一割負担のときは限度額にさわらなかったけれども、二割になったらさわるんですというのは財務省から教えていただきました。なるほどなと思ったわけでありますが、資料の五枚目であります。
 これが、昨年の十月四日の財政審の財政制度分科会に出された「高額介護サービス費制度の見直し」という見出しであります。
 これは、介護保険と医療の高額療養費制度を比べると、介護の方が現在三万七千二百円で低い、医療は四万四千四百円じゃないか、こう比べているわけですよね。
 そして、右側の方を見ますと、これが、今言った二割負担になったことによって高額介護サービス費を使ったというので、前は六億七千万円の給付だったのが二十六億七千万円、二十億もふえたじゃないかというのを比べて見せているわけなんですね。
 そして、利用者負担の比率は上昇したものの、同水準にとどまっており、制度全体では、約十年間、実質的な利用者負担割合は上昇していない、こういう指摘をして、速やかに、同じ水準、四万四千四百円にせよ、さらに、医療の方が限度額を上げるときはそれに合わせよという指摘でありました。
 この資料が出された当時、説明を受けまして、本当にあの手この手で目をつけて、ここがもっと出せるじゃないかみたいなことを言うんだなと思って、正直驚いたわけであります。
 そこで、質問します。
 今回、一般の所得階層も高額介護サービス費を四万四千四百円に上げるのはそのためでしょうか。そして、それで幾らの財政効果を見込んでいますか。
○蒲原政府参考人 ここの高額介護サービス費の、今回、これは今年度からでございますけれども、引き上げの関係ですけれども、財務省の側からするとこういうことを提示されたのかもしれませんけれども、私どもからすると、これはやはり利用者負担についての世代内の公平あるいは世代間の公平の確保というところが大きいと思います。そういう観点から一定の範囲で引き上げをお願いすることによって、最終的にはやはり制度の持続可能性というのをきちっと確保していくということにつながるのではないか。
 これはもちろん一定の財政効果があるんですけれども、公平という観念でそれぞれが公平な形で費用負担を持ち合う、そういうことがやはり制度の安定的な持続可能性の基礎になるということではないかというふうに考えております。
○高橋(千)委員 結論は一緒だけれども、財務省と同じ観点ではないという今の説明であったのかなと。財務省からするとこういう観点でありますよなんてことを今おっしゃいました。
 財政効果は、今突然聞いたのですぐは出ないと思うんですが、当然、この六・七億円と二十六・七億円の間あたりに、その差二十億円のうちにおさまるんだろうから大して大きくはないと思うんです。先ほど阿部さんが指摘したのと同じことだと思うんですね。
 ただ、狙いは、こうして小さな穴を一つ一つあけていくことで、さらなる負担増がしやすくなるからではないか。繰り返し審議会でも意見が出ているし、この委員会でも意見が出ているように、やはり介護は医療と異なるんだということを、そういう立場で議論をしていってほしいということを指摘しておきたいと思います。
 次に進みます。
 それで、もう一つ、負担増との関係で、前回の改正で補足給付の見直しも行っていると思います。
 資料の7を見ていただきたいと思います。
 施設入所者の食費、居住費について、住民税非課税世帯の入所者には補足給付という形で負担軽減をしています。これに対して要件の見直し、一、二、三と前回ありました。預貯金。配偶者の所得、世帯分離しても配偶者が課税対象ならだめなんだというふうに大変厳しくなりました。それから、遺族年金や障害年金など非課税年金も勘案するという大変厳しいものだったと思います。
 これにより影響はどのくらいあったのでしょうか。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 お話ございましたとおり、前回の改正におきまして、これもやはり、保険料の上昇を可能な限り抑えて制度の持続可能性を高める、こういう観点から、在宅で生活する方との公平性を図るということ、あるいは預貯金等を保有しているにもかかわらず保険料を財源とした給付が行われることが不公平ではないかといったような観点から、補足給付の要件の見直し、これを厳格に少し見直したということでございます。
 制度改正による影響でございますけれども、私どもは、サービスの受給者数や利用回数等に関する全国的なデータの分析、あるいは自治体や介護事業者などの方からの実態を聞くといったことなどを通じまして日ごろから実態を把握しております。
 今回の補足給付の関係、これは施設の入所者の関係でございます。補足給付の見直しの影響のみを切り出すというのはなかなか難しいんですけれども、例えば、これまでも申し上げていますけれども、平成二十七年八月の制度改正の施行前後においてサービス受給者数の伸び率を見ますと、これは、施設サービスの利用者数も含めて、これまでの傾向と比較して顕著な差は見られていない、こういう状況でございますので、そういうようなこととして認識をしているところでございます。
○高橋(千)委員 ちょっと今びっくりしたんですが、最後のところ。
 資料の8を見ていただきたいと思うんです。
 「補足給付の認定件数の推移」ということで、これは、第一段階はマイナス三%、第二段階はマイナス一九%、第三段階はマイナス二一%、特に七月から八月のところで同じくがくんと落ちておりますよね。これをもって顕著な差は見られないって、それでいいんですか。
○蒲原政府参考人 先生お示しの、この八ページの資料でございますけれども、補足給付につきまして要件を見直してより厳しくしたということに伴って、補足給付の認定件数、これ自体は、これは第一段階、第二段階、第三段階、それぞれ所得が低い方のところの三つでございますけれども、それぞれにおいて補足給付の認定件数は確かに一定下がっているということでございます。
 ただ、これは認定件数なので、これ自体が入所者の入所している数というのとは、直接はちょっと違うということでございます。
○高橋(千)委員 やはり答弁していることの意味をよく考えていただきたいと思うんですね。
 負担が一割から二割になったことに対する影響がどうですかと聞かれたときに、受給者数がほとんど減っていないから、変わっていないから影響は余りありませんと言っておきながら、では、補足給付の影響がどうですか、認定件数が二割も減っているじゃないかというのに対して、これは認定件数が減ったのであって、違いはないって、意味がわからないですよ。
 認定件数が減ったということは、補足給付を受けられなくなった、それは負担増とイコールじゃありませんか。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 補足給付という給付は、確かに、要件が厳しくなったという関係で、受けていない人がふえてきている、もともとよりも受けている人が減ったということでありまして、これと入所している数というのは、一応、ちょっと別の概念ではないかというふうに考えております。
○高橋(千)委員 入所している数なんて聞いていないですよ。負担増でしょうと聞いています。当たり前じゃないですか。
○蒲原政府参考人 これは、冒頭この補足給付の見直しの趣旨を申し上げました。在宅で生活されている方とのバランス、幾つかの観点から見直したということで、その分でいうと負担がふえているということだというふうに認識しております。
○高橋(千)委員 最初からちゃんとそう言いなさいよ。わかっていてやったんでしょう。負担増するためにこうして認定要件を厳しくしたんだから、減らなきゃ困るんでしょう、皆さんに言わせれば。それが問題だと言っているんですが、しかし、それを認めないというのは話が違いますよ。
 負担が八十万から百万も上がったという方もいらっしゃいます。さっき読んだ中にあったように、世帯分離でもだめということなので、もう離婚しかない、こういう相談もたくさんあるわけですね。これは当初から懸念が出されていたことなんですが、通帳のコピーを提出することがどうしても嫌だ、そんな大層な資産があるわけではないんだけれども、やはりそれはプライバシーの問題で嫌だ、だから、受けられるのに受けない、そういう方もいらっしゃるわけなんですね。こういうことを、やはり大きな影響なんじゃないかということで、ちゃんと見ていってほしいということを言っています。
 その上で、大臣に質問しますが、さらなる資産情報の拡大や、持ち家を担保にするリバースモーゲージなども議題に上っておりますが、さらに検討していくつもりなんでしょうか、大臣。
○塩崎国務大臣 これは、先ほど長妻委員からの質問があった際にも、所得だけではなくて資産についても考える考え方があるということを言っておられましたが、この利用者負担における資産の勘案ということにつきましては、平成二十六年の介護保険制度改正におきまして、施設入所者等の食費、居住費、この負担の軽減に限って預貯金等を勘案する見直しを行った、これは補足給付でありますが。
 預貯金などの資産の勘案を利用者負担割合の判定等にまで拡大をするのかという御質問かというふうに思いますが、まず第一に、社会保障において、負担能力を資産でどこまでカウントするのかということについてのコンセンサスは私はまだないのかなというふうに思っていますが、とりあえず、二十六年の改正のときには、預貯金などを勘案するというところまでが決まったということであります。
 したがって、この資産状況の確認のための、例えば市町村が事務でそういうことを把握できるのかとか、そういうことについても大変整理しなきゃいけない課題があろうかというふうに思いますので、まだまだそういうことについては、十分なコンセンサスができているわけではないということだろうというふうに思います。
○高橋(千)委員 これに関しては、少し慎重な御答弁でありましたので少しほっとしたわけでありますけれども、今言ったように、影響についてしっかり見てから議論していくべきだと思うわけですね。
 今、資産の話をしましたけれども、非課税年金まで対象にする、これも、当事者の皆さんは本当にそのときになってからわかったということもあるわけですし、夫婦が結局離婚しなければ減免も受けられないとか、それまではやはり行き過ぎだったんじゃないかということを改めて総括するべきだと思うんですね。
 考えてほしいのは、介護はもう高齢者だけの問題ではありません、親や祖父、祖母を介護している若い人たちの問題でもあるんです。
 先ほど来、世代間の公平感ということをいつも言いますけれども、しかし、これは若い人の問題だと位置づけなければ、やはり解決の道が出ないと思うんですね。だからこそ、介護離職ということが大きな問題になってきたんじゃないかと思うんです。
 先ほど紹介した民医連の調査の中には、そういう家族への影響が浮き彫りになっています。ちょっとだけ紹介します。
 六十五歳の女性。要介護二。夫は入院中、独身の長男と三人暮らし。本人の年金は月四万円足らずです。週二回で生活援助を利用しています。本当は毎日でも必要な状態ですが、経済的理由からできません。長男は働いています。五時出勤、残業もしながら、夜の八時に帰ってきます。買い物や調理などの家事を含め、介護をして、入院中の父親の分も洗濯などの面倒を見ています。もしも生活援助が保険から外されたら、もしも負担がこれ以上ふえたら、働きながらの長男の負担も疲労も蓄積し、生きていても息子に迷惑をかける。こういうぎりぎりのところに追い詰められていると思うんですね。
 二人目は、八十五歳の男性です。要介護一。妻、未婚の娘と三人暮らし。介護をずっとやっていた妻が、ストレスで帯状疱疹ができて介護困難になりました。娘の方に全部かかっちゃうわけですが、娘は月曜から土曜日まで働いていて、休みがありません。デイサービスに週四回通うことで少しだけ負担が軽減されておりますが、もしも要支援に認定が変更されたら、要するに、頑張って、認定のときだけは少し軽く出るんだそうですね、これがもし要支援になっちゃったら、本当に頼みのデイサービスも使えなくなってどうしようという訴えをしています。
 七十八歳。要介護二の父と要介護三の母を、夜勤専門の非常勤職員である長男が働きながら介護をしています。年金は月五万円。デイサービスや福祉用具が使えなくなると家族総倒れの危機である。
 こういう事例がたくさんあるんですね。いずれも、未婚の働いている子供が介護をしながら精いっぱい頑張っている。ぎりぎりの状態になっているということなんです。こういう実態がありながら、審議会の委員などは、あれば便利という意識だとか、民間の家事代行サービスに比べて安過ぎるとかさまざまなことを言って、これを介護保険から離せばいいという議論を盛んにするわけですよね。
 高齢の夫婦に非正規あるいは長時間労働で未婚の子供。これでは結婚もできないし、一億総活躍にはならないし、離職すればたちまち暮らしていけなくなるわけです。利用者負担増やサービスの抑制は、家族の負担をふやし、それどころか家族崩壊にもなりかねない。政府の介護離職防止策とも逆行すると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 これは何度も申し上げているように、助け合いの仕組みである介護保険というのは財源は三つしかなく、保険料か税金かあるいは自己負担、窓口負担、この三つの組み合わせをどういうふうにしていくことが、制度全体が長続きをして、持続可能性があって、なおかつ必要なサービスが必要な方々にいくということが最も大事なことであるわけであります。
 そういう意味では、今回三割に引き上げる方々が三%ではありますけれども出てくるということでありますけれども、それは、やはり三%にとどめるというのは、所得について、特に現役並みの所得を有するということで限定的にしているということが一つ。それから、月額四万四千四百円の負担の上限は据え置くということでありますので、三割負担となる方全ての利用者負担額が一・五倍になるわけでは決してないわけでありまして、既に負担の上限額に達している方については新たな負担は起きないということでありますので、介護離職などは、私どもにとって優先的に排除していかなきゃいけないということを政策目標として掲げておりますけれども、そういうことも実現をできるようにしながら、しかし一方で、介護保険の持続性を確保するための最小限のやはり今回の改善、負担増ということだというふうに思います。
○高橋(千)委員 今の大臣の答弁は、よく受けとめれば、負担の影響がありそうなところには及ぼさないんだよという趣旨でおっしゃっているのかなと思いますが、今私が言ったような事例を踏まえて、この後の質問を少し聞いていただきながら、最後にもう一度伺いたいと思います。
 そもそも、三割負担が突然に持ち込まれたのは昨年十一月二十五日の介護保険部会です。先ほど紹介した負担のあり方、これは見え消しの資料でしたけれども、これが出されたわけですね。素案が、事務局である厚労省介護保険計画課長が提案されて説明をしています。
 委員の皆さんからは、きょうは三割負担という話が出ました、三割負担の話は今回、委員の皆さん、見るのは初めてですけれども、新聞にどんどん三割負担という話が先に出てくる、介護の重度化や長期にわたりサービス利用するという観点からいたしますと医療と同列で論ずるということはやはり慎重であってほしい、その上で今回三割負担の話が出てきたという方や、私はまさか三割負担ということの提起があるとは考えてもいませんでした、こういう発言が相次いでいるんですね。
 介護保険部会は昨年二月に始まって十六回も審議を重ねておりますが、この間に出された意見をまとめて素案を出しますと言っているのに、その素案を出す段階で新しい提案が事務局から出される。おかしくないですか。なぜこのタイミングで出されたのですか。
○蒲原政府参考人 昨年、法改正のいろいろな事項につきまして、介護保険部会で議論をいただいたところでございます。
 御指摘の利用者負担のあり方の検討についてでございますけれども、介護保険部会の議論の開始時に、その段階で、まず、主な検討事項の一つとして利用者負担のあり方というのを提示をいたしておりました。その後、八月十九日、十月十九日、十一月二十五日の三回にわたって部会で議論を行ったというところでございます。
 十一月二十五日の介護保険部会におきまして三割負担に関する論点を提示しましたけれども、これは、それまでの二回の議論の中で幾つか意見があったということを踏まえたものでございまして、例えば、負担能力に応じた負担になるようにしていくべきではないか、あるいは、医療保険制度における患者負担割合との整合性をとるべきではないか、こうした議論がそれまで過去の二回にあったということで、そうした議論を踏まえて、十一月二十五日に論点を提示して議論をいただいたということで、何回かの積み重ねがあるということでございます。
○高橋(千)委員 そんな、ずっと方向が一緒だったみたいな言い方をしちゃいけないと思うんですよ。
 二〇一五年の十二月の二十四日、経済・財政再生アクション・プログラムが出されておりますが、そのときには、軽度者に対する生活援助サービス、福祉用具貸与等やその他の給付について、給付の見直しや地域支援事業への移行、負担のあり方を含め、今の国会に出すべきだという案が出されました。
 最初はそれを検討したんでしょう。だから、最初はそういう議論をしてきたと言っているんじゃないですか。だけれども、それは余りにも負担が大きいと委員の中で否定をされて、そこまではいかないという議論があって、最後にこれがどっと出てきた。それが結論じゃありませんか。財政審の建議がその直前の十一月十七日に出されています。やはりそれが影響したのではありませんか。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 先生お話がありましたとおり、二十八年の十一月十七日に財政審が、二十九年度予算の編成等に関する建議という中で幾つかの項目が入っております。お話がありましたとおり、いろいろな、ちょっと我々の考え方と違う、いわば軽い人に対しての負担を少し引き上げるべきじゃないか、こういうことが幾つか盛り込んでありました。
 それ自体もこれは利用者負担に関する議論でありますけれども、先ほど申しましたとおり、その前から利用者負担については検討の議題になっていまして、その中で、先ほど申しましたような、利用者負担に対してやはり一定の引き上げをすべきじゃないか、こういう議論があったというのも事実でありまして、そうした議論を踏まえて、先ほど来申し上げているような当日の議論になって、こういう方向になってきている、こういうことでございます。
○高橋(千)委員 そんなことを言ったら、さっき三人もの委員の発言を読み上げたんですよ。みんなが、今初めて見た、今突然出てきたという話をしているわけでしょう。それは、かつては出たよ、それを一旦否定してきて、まさか最後の段階でまた出てきた、そういうことを言っているんじゃないですか。それは違いますか。何でそれをきちんと認めないんですか。
○蒲原政府参考人 御説明申し上げます。
 委員から話がありましたとおり、それまで何度か利用者負担の議論がされたときに、引き上げるべきという議論がある一方で、おっしゃっているように、そういうことについてはいかがなものかという話もあって、その意味でいうと、両方の議論があって、何かそれまでにどちらかに収れんしたということではなくて、そういう両方の議論がある中で、十一月の、最後の二十五日のこの部会を迎えたということでございます。
○高橋(千)委員 財政審が十一月十七日に建議を出して、厚労省からいうと趣旨は違うかもしれないけれども、スケジュールは一緒だと言われていることに結局のっとっているじゃないかということを指摘したいと思うんですね。
 それで、大臣に伺いますが、さっき言った、財政審の中でも盛り込まれていた、軽度者の生活援助サービスやその他の給付の総合事業への移行については、二〇一七年度予算に向けた年末の麻生財務大臣との大臣折衝で、一九年度末までに検討すると明記をされました。
 これは三年後の通常国会成立を目指しているということでしょうか。三年後、つまり二〇二〇年。
    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕
○塩崎国務大臣 今、一七年度予算の際の大臣折衝について御指摘がありましたが、昨年末に改定をされました改革工程表がございますが、そこで、「軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付の地域支援事業への移行について、介護予防訪問介護等の移行状況等を踏まえつつ、引き続き関係審議会等において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」、こうされたわけでありまして、したがって、現時点で具体的な結論が出ているわけではないということがまず第一点。
 高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐという、これは、何度も申し上げている介護保険の理念でありますから、制度の持続可能性の確保、そして介護人材の確保が今大変厳しい中で、これにもきちっと配慮がされて、人材確保がされなければいけない。こういうことに留意して、これから審議会で御議論をいただいて、それは先ほどの改革工程表に書いたとおり、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということでありますから、その議論の結果がどうなるかということで私どもは考えなければならないというふうに考えております。
○高橋(千)委員 大臣が改革工程表に書いたとおりとおっしゃったのが非常に響きましたね。結局、書いたとおりなんですよ。
 それで、今、この法案の審議はきょうで二日目なわけですよね、審議は始まったばかり。だけれども、今言ったように、大臣折衝で次の約束をもうしています、改革工程表にも書いています。ということは、今回の審議は始まったばかりだが、成立した暁には、また次の、例えば要介護度二以下の、いわゆる軽度者と言われる人たちの福祉用具の利用の保険給付の割合を引き下げていくですとか、通所介護などその他の軽度のサービスを総合事業に移行するとか、そういういろいろなことを直ちに検討を始めるということでしょうか。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど先生からお話がありました財務省の建議に、おっしゃるようなことが確かに盛り込まれているところでございますけれども、今回改正に至るいろいろな議論の中で、今回改正においてはそうしたことについては行わないということで、今回の法案をまとめさせてもらったところでございます。
 御指摘の事項については、実は、いろいろな議論を踏まえて、最終的には経済・財政再生計画改革工程表という中でどう取り扱うかということになってございます。先ほどの建議の中では、軽度の方、この軽度の範囲は要介護二以下の、例えば福祉用具だとかそういうところについての負担の見直しというのが入っておったわけでございますけれども、今回、改革工程表の中では、例えばこの生活援助サービスの関係でいいますと、「生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和やそれに応じた報酬の設定」という言葉が使われておりまして、何か、地域支援事業への移行というか、軽度の人の負担とかいうことではなくて、そういう文言で入っております。また、「通所介護などその他の給付の適正化」ということが入っております。
 いずれにしても、こうしたものについては、関係審議会におきまして具体的な内容を検討し、来年、平成三十年度の介護報酬改定で対応するなどという盛り込みがされておりまして、こうした工程表に沿って対応してまいりたいと思っています。
 また、福祉用具については、これは法律改正事項ではございませんけれども、幾つかの改革をやろうと……(高橋(千)委員「必要ないです。知っています」と呼ぶ)はい。
 そういうことをやろうというふうにやっておりまして、何か、その中身は、負担の軽い人の負担を上げるとか、そういうことではございません。
○高橋(千)委員 大臣にもう一回頑張って答弁していただきたいと思うんですね。
 さっきの、実態を少しお話ししましたけれども、やはり、財務省や有識者の委員の方たちは、中重度に集中すべきだと。いわゆる軽度者、軽度者と言っているのは、介護度四、五の人よりはより軽度な方という意味なわけですね。でも、我々から見たら、介護度一も二も大変な負担があるじゃないかということを言ってまいりました。そして、やはり介護サービスがあるからこそ、ぎりぎりの経済的困難の中でも、家族の関係を維持したり、尊厳を保つ保障がされていると思うんですね。デイサービスに行けない日は一日寝たきり、何も動くことができないので、もう一日寝たきりという人が、もしも一日も行けなくなったら、本当に重度になるだけなんです。
 介護の利用料としてわずかな年金から出せる限度は月五百円しかないという方がいらっしゃいます。そうすると、何を使っているかというと、歩行器のレンタルのみだということ。それから、もう一人の方は、ベッドサイドの手すり、起き上がるための手すり、これをレンタルしているので精いっぱいだと。だけれども、そのたった一つのレンタルがあるおかげで立ち上がれる。そういうことで、その人なりの自立や日常生活が送れているわけですね。そして、それは家族の負担を軽減することにもつながっているわけなんです。
 だから、そういうことに、今、軽度なんだからとか、民間でもやっているサービスなんだからということで、切り離してはいけないということが言いたいわけなんです。次々と制度が改正されて、その影響をきちんと把握しないうちに次の検討を始めれば、結局、影響はないから大丈夫という話になっちゃうわけなんですね。
 これは厚労省にしかできない話だと思うんです。財務省は、もう数字、予算を見るのは得意ですから、いろいろな、こんなところにも財政効果があるかもと見ることができるかもしれないですけれども、やはり介護で、どんな意味があるのか、そこでどんな影響があるのかということをきちんと把握しながら安心の制度設計を提案していく、そこが厚労省の責任だと思うし、それを果たしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 実態の把握をしっかりやれ、こういうことでございまして、それはこれまでの御答弁でも申し上げてきておりますが、さまざまな工夫をしながら、このサービスの受給者の皆様方の、もちろん数や、あるいは利用者の数、そしてまた、どういう利用のされ方が、変化が起きているのかとか、あるいは、そういうニーズの変化等々について、やはり全国的なデータをしっかりと押さえながら分析をするということが大事だということが一つ。
 それともう一つは、これも何度も申し上げているように、都道府県や、場合によっては市町村直にでも、自治体の現場の話、そしてまた、介護事業者の側の、サービス提供側の関係者の実態、そういったことも踏まえて、私どもは絶えず実態をしっかりと把握していくということが大事だと思いますし、さらに、法律の施行に向けても、なお工夫をしながら、データを集めて、分析をしていくということは繰り返し申し上げてきたところでございます。
 いずれにしても、大事なことは、高齢者の自立を支援しながら、先ほど手すりで何とか立ち上がれるというお話がありましたが、まさに自立ということができるように支援をするということが一つと、重度化をできる限り回避する、場合によっては軽度化する、そういうことをやるのが介護保険の目的でございますので、そういうことをやりながら、必要なサービスが必要な方々にしっかりいって、なおかつ、制度としてこれが持続可能であるということになるようなこともしっかりと見ながら、全体のあるべき姿を絶えず考えていかなきゃいけないというふうに思います。
○高橋(千)委員 立ちどまる勇気も必要だと思います。
 ずっと午前からの議論を聞いていても、大臣は、多分、影響調査というのは施行の前にやりますよという趣旨のことをおっしゃっていたんだと思うんです。今もそういう分析が大事とおっしゃってくださいました。だけれども、日程は決まっている、施行も決まっている、改革工程表があるから、三年たったらまた次の制度改正だと。そうではなくて、やはり見直しするときも必要だ、ちょっと待てということも必要だということを言っています。
 それから、やはり若い人の問題でもあるということは、結果として制度を持続させていくためにも、どんどん担い手が減っていくわけですから、介護のために働けなくなるということは、税金も払えなくなるわけですし、担い手になれなくなるわけですから、そういう点でも、若い人も、働きながら公的介護保険がしっかりと支えられて、両立できる、そういうふうなものを目指して、見直しも必要だということを重ねて指摘したいと思います。
 きょうは、問いはもっといっぱい残していたんですけれども、余りいっぱい入らないで、特養ホームのことだけ質問したいと思います。
 資料の最後のところに二つの記事が載っておりますけれども、上は朝日新聞の三月二十八日付、下は毎日新聞の四月四日付です。特養ホームの待機者が三十六万六千人に減ったと報道がありました。
 これは、要介護二以下に、前回の改正で特養の資格を入れたので、そのせいではないかとまず読むわけですよね。ただ、それには、特例入所というんですか、特別な事情がある方は資格はあるよということを言っていたはずなのに、現実にはやはり門前払いになっていたのではないか、こういう指摘があったわけであります。
 だから、当時は、私たちは待機者にもなれない、こういう指摘をした気がします。保育所ととてもよく似た状況が起こっているわけですけれども、下の方に、三日までに、厚労省が事情を考慮せずに門前払いしないように定めた通知を全国の自治体に発出したという記事があります。やはり指摘がかなり多かったのではないかと思いますが、事のてんまつと今後の方針について説明いただきたいと思います。
○蒲原政府参考人 お答え申し上げます。
 特別養護老人ホームにつきましては、平成二十七年四月より、新規の入所者を原則要介護三以上に重点化しました。ただ一方で、要介護一、二であっても、認知症などやむを得ない事情により居宅での生活が困難であると認められる場合については特例的に入所が認められている、こういう状況でございます。
 委員御指摘の新聞記事で、待機者が減ったということで、先ほど御発言の中に、これが要介護一、二の関係があるのではないかという話がございましたけれども、事実関係だけ申しますと、これは、要介護三から五のところをとっても、前回から比べますと、今回まで約五万人減っているということでございます。
 その上で、要介護一、二のいわば取り扱いについてのところでございますけれども、もともとこの部分については、制度改正後、先ほど言いました、認知症等やむを得ない事情の方には入れるというふうに、我々、省令、通知で示しているところでございますので、そうした手続について、これをきちっと徹底を図るというために、先般、特養の入所に関する通知を改正したところでございます。
 この中身でございますけれども、一、二の方の入所申し込み手続につきまして、一つは、特例入所の要件を具体的に明記した申込書類をちゃんと施設が用意すること。これは施設でいろいろな様式がありますけれども、認知症だとかあるいは障害だとか、四つの要件というのに当たれば特例的に入所できるということになっていますけれども、その申請書の中できちっとその四つの要件を書くように指導をしているところでございます。
 あわせて、申し込みされる方がそうした特例入所要件に該当する旨の申告を行った場合には、申し込みを受け付けない取り扱いを認めないといったことを徹底する、こうした中身を盛り込んでいるところでございます。
 今後とも、制度の趣旨をきちっとそういう形で徹底していって、一定の条件にちゃんと当たる要介護一、二の方々の特養への入所というのがきちっとできるように努めてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 午前中に阿部議員が二十一世紀・老福連の資料を使って御質問をされましたけれども、その中に、この老福連の調査は、支払い困難で百以上の施設で退所する人が多いということが注目されたんですけれども、その資料の下にも書いてあったんです。そして、記事も、この特養待機三十六万六千人の二日後に、小さな記事が東京新聞に載りまして、門前払い、一九%あったと。つまり、二十一世紀・老福連の調査の中で、最初から介護度が一、二の人は受け付けていなかった、そういうことが判明したということでありました。
 ですから、やはりこれは、そういういろいろな団体や、私も言いましたけれども、そういう指摘があって初めてこのような通達になったのかなと思うんですけれども、やはり自治体にしてみれば、そうはいったって受け皿がないんだから、もともと一、二なんて無理よという気持ちがあったかもしれないし、国の制度がそもそも、そういう分け方をして聞いていますので、待機者がどうかということで、分け方をして聞いておりますので、そうなるのは無理からぬことというか、自治体だけを責められないということがあったと思うんです。
 時間が来ましたので、これは通達で訂正をしたのであれば、再度、実態調査の公表を求めたいと思います。
 きょうは、医政局長、済みませんでした。本当は質問する予定でしたが、時間が来てしまいまして、地域医療の問題との兼ね合いを質問したいと思いましたが、次の機会にしたいと思います。
 ありがとうございました。

 

――資料――

2017年4月5日厚生労働委員会提出資料

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