厚労省の誤導明らか
高橋氏 子宮頸がん絡む報道
日本共産党の高橋千鶴子議員は17日、衆院厚生労働委員会での「臨床研究法案」の審議で、同法案によって厚労省は臨床研究に罰則付きの中止命令がだせるなど強い権限が付与されるとしている一方で、同省自身が不透明であってはならないと指摘し、子宮頸(けい)がんワクチン(HPV)の健康被害についての疫学調査の結論を一方的に誘導しようとした同省を追及しました。
昨年12月26日付の夕刊各紙は一斉に、厚労省のHPV研究班がHPVワクチン未接種でも接種後に表れる症状と同様の症状があるなどと、ワクチン接種との因果関係がないかのように報道しました。
高橋氏は、調査結果では頭痛や倦怠(けんたい)感などどれか一つでもあれば症状にカウントしており、ワクチン接種と接種後の症状とに因果関係があるとは言えないというのが研究班の結論であることは議事録を見ても明らかだと指摘。厚労省の見解をただしました。同省の福島靖正健康局長は、両者は比較できないというのが研究班の結論だったと認めました。
12月26日の審議会終局前に同日夕刊が研究班の結論を一部のみを報じたのは、厚労省が事前に記者に内容を説明していたからだとも認めました。
高橋氏は厚労省のミスリードは明らかだと糾弾し、報道各社に審議会の結論をどう説明したのかについての資料を委員会に出すよう要求。丹羽秀樹厚労委員長は理事会で協議すると表明しました。
(しんぶん赤旗2017年3月23日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です、先ほど終わったばかりでありますが。
臨床研究法案について、先ほど来、昨日の、製薬大手ノバルティスファーマ社のディオバンをめぐる論文データ改ざん事件で、薬事法違反に問われた元社員の東京地裁判決、無罪となったこの問題、取り上げられました。
私も正直びっくりしたんですが、ただ、裁判長は、被告が意図的にデータを改ざんしたと推認できる、このことは認めているわけですよね。誇大広告にまで当たらない、これは当然異論があるわけですけれども、問題は、やはりデータを改ざんしたということ自体が大きな問題で、この法案の出発点であったと思うんですね。だとしたら、そのことが法律違反とかにならなかったとしても、そのことがきちっと正されることがやはり必要なんじゃないか、そういう仕組みをつくっていかなきゃいけないんじゃないか、こう思うんですね。
前回の議事録を読み返してみますと、私はやはり、厚労省に罰則つき中止命令ができる強い権限を付与することになった、その権限を行使できる資格があるかと言えば失礼ですけれども、何だろうかと言ったわけですね。
私自身がこの間取り上げてきたのは、例えばJ―ADNI、アルツハイマーの長期横断観察研究問題、田村大臣のときでありましたけれども、メールで告発されたにもかかわらず、告発された相手に向かって、また厚労省がメールを、こんなの来ましたけれどもとやったという驚く事件でありました。それで、薬害イレッサの下書き事件。そして、先ほど取り上げた、HPVワクチンの、WHOと厚労省との下打ち合わせというんでしょうか、そういうことがあってはならないと私は思うんですね。
大臣は、前回の答弁の中で、厚労省の中における必ずしも適正じゃない動きについて、「製薬企業とか学会との関係が厚労省との間でやはり曇りがあるようではいけない」、こう、いい答弁をされました。その後、何か努力されてきたか、伺いたい。曇りがとれたのでしょうか。
○塩崎国務大臣 製薬企業とか、あるいは学会などとの癒着が疑われるようなことがないように、厚生労働省として、国家公務員倫理法の遵守を一層徹底しなければいけない。
やはりコンプライアンス意識というのが大事だということで、私は、事あるごとに、法曹資格を持った人に必ず意見を聞くということをしばしば言ってまいっているわけでございまして、特に、群馬大学の問題なんかでもそうでありますが、やはりガバナンス、コンプライアンス、こういったものがきちっと、自分たちもそうですし、その監督をする場合の相手方にも同様のものを求めるという意識を持つために、法曹資格を持った人の発想というものを、絶えず意見を聞きながらやるということを心がけてまいりました。
今年度からは、六月と十二月の年二回、利害関係者との間での禁止行為などの、公務員倫理、服務に関するEラーニング研修あるいは法令遵守自主点検というのを実施しておりまして、厚生労働省本省全職員が受講をしているわけであります。
それは一つの例であって、先ほど申し上げたとおり、コンプライアンス意識あるいはフェアなガバナンスを、いかなるときも確保するということを心がけるように徹底してまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 フェアなガバナンス。私は、もっと日常の中で、厚労省が、もしかしたら当たり前になっていて気づいていないんじゃないか、そういうことっていっぱいあるんじゃないかということを思っているんですね。
きょうは、そういう視点で一つ話をしてみたいと思うんですが、資料の3を見ていただきたいです。
これは、昨年十二月二十六日の朝日、日経夕刊です。めくっていただいて、読売、東京新聞夕刊で、どちらも十二月二十六日の夕刊であります。見出しがほとんど同じです。「未接種でも同様の症状」「接種ない子にも同様症状」と。これは一面に書かれましたし、年末の大変な取り込んでいるときに、大変目立ったわけであります。
どういうことかといいますと、十二月二十六日、研究班から疫学調査研究について報告があった。これは先ほどの、済みません、HPVワクチンの問題です。ワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を有する者が一定数存在したことなどが報告されました。この研究が、例えば一枚目の記事、先ほど私が紹介した地裁の口頭弁論の記事ですね、こういう記事のところにもちょこっと載るわけなんです。研究班は、同様の症状が接種している人にもしていない人にも出ていますと、繰り返し引用されるわけですね。ワクチンを打っても打たなくても同じ症状が出るんだから、ワクチンのせいじゃないだろう、そう言いたいんだと思います。
そこで伺いますが、この研究はどういう目的で行われたのか、また、政府としてはこの研究をどう評価したんでしょうか。
○福島政府参考人 お答えいたします。
この研究でございますけれども、平成二十七年九月の審議会におきまして、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状、これがワクチンを接種していない方でも起こり得るのか、また、どれくらいの頻度で生じるかということを疫学的に把握する、これが必要である、こういう御意見を頂戴したことを受けまして、昨年一月から開始をいたしまして、その結果を昨年十二月二十六日の審議会において、研究を担当した研究者の方から御報告をいただいたものでございます。
この結果でございますけれども、HPVワクチン接種歴がないと報告があった十二歳から十八歳の女子におきまして、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が、接種歴のない人口十万人当たり二十・四人、また、その同年齢の男子の方でも人口十万人当たり二十・二人という推計がされておりまして、HPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が一定数存在をしておるということが明らかになったというふうに考えております。
○高橋(千)委員 私も、二〇一五年の五月十三日にこの委員会でHPVワクチン問題を取り上げたときに、そのときは副反応報告の改善について取り上げました。改善されたという話ですね。要するに、疼痛や運動障害などの多様な症状が、ワクチン接種から発症までの期間にかかわらず報告対象になったと。
それまでは、いろいろ症状ごとに、それはもう何週間後を過ぎちゃったらもうならないんだみたいな、そういう厳密な決まりがあって、それを拾っていくとやはり限定されるんじゃないかということで、期間にかかわらずというふうな報告対象を広げたということがあったわけなんですね。
でも、私、今思うと、そのときの「多様な症状」、この言葉がキーワードになったということになるなと思います。今の答弁も、その多様な症状は打った人も打たない人も同じくらい出ているという報告だったとおっしゃいました。
そこで、この報告は、昨年の十二月二十六日に審議会が開催されて報告されているわけですが、どのように報告されて、どのような結論を得たのでしょうか。
○福島政府参考人 先ほど答弁いたしましたけれども、これについては、まず、疫学調査の結果として、HPVワクチン接種歴がないと報告のあった十二歳から十八歳の女子におきましては、そのHPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が、接種歴のない人口十万人当たり二十・四人、男子では十万人当たり二十・二人ということで、先ほど申し上げましたように、その接種歴のない方においても、一定、その多様な症状を呈する方がいることが明らかになったというふうに報告されております。
また一方で、接種歴があると報告のされた方で多様な症状を呈する方につきましては、接種歴のある人口十万人当たり二十七・八人存在すると推計をされております。
ただ、この調査につきましては、その接種歴について、接種歴のある方、接種歴のない方、接種歴が不明の方、この三種類ございまして、接種歴ありと接種歴なしという、その二つの集団における多様な症状の頻度、これは、その母集団の年齢構成が異なることに加えまして、さまざまなバイアスが存在するということも同じ結果として報告をされておりまして、このため、この比較、接種歴ありとなしということの比較はできないということも報告をされているものでございます。
○高橋(千)委員 そうですね。今、さっき言った答弁と同じだと言いながら、違う答弁をしましたよ。
つまり、最初は、一回目の答弁は、接種した人もそうじゃない人も多様な症状を呈する者が一定数存在した。しかし、二回目の答弁には、そのほかに、結果が、これは審議会の配付資料の中に、こう書いてあります。祖父江氏のまとめです。「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。」
二つ結論があるわけですよね。それをちゃんと言わなきゃだめなんじゃないですか。意図的に上の方だけを今言っているわけなんです。
資料の七枚目を見てください。
これは、たくさんある資料の中の一部なんですけれども、全国の病院、一万八千三百二医療機関ですが、ワクチン接種後に生じた症状と同様の症状に少なくとも一つ以上当てはまる患者を抽出してください、その患者さんの病状は何ですと医師が説明できる、できないというのを分けていくんですね。そのうち、例えば、それはそっくりな症状なんだけれども、この人はてんかんですとか、はっきりわかっているものは外していきます。そうした中で、ワクチン接種後に多様な症状を呈する者と、そうじゃない、接種していないけれども同じような症状を呈する人が同じくらいだという数字が出てくるんですが、この下の表を見ていただきたいんですね。
この、主治医が説明できると回答し、最も説明できる傷病名が、何かワクチン接種後に生じた多様な症状とは区別しがたい、よく似ているという意味なんですよ。これが、いろいろなものがありますでしょう、うつ病、うつ状態、抑うつ状態、心身症、不安障害、頭痛、偏頭痛、睡眠障害も入っていますが。これは一つでも当てはまるとカウントしているんですよ。誰でも当てはまるんじゃありませんか。申しわけないが、誰でも大概、頭痛持ちだわなんてなったり、それを一緒くたにしているんですよ。
でも、上の方は、主治医が説明できるとして回答したのには、やはり免疫脳症ですとか神経障害ということでワクチンに関係する、そういうことを言っているわけなので、そのことを、何か同じ症状が出ている、接種していない人も出ている、そういう答えにすることは絶対あり得ないと思うんです。
これは議事録も読みました。各委員からいろいろな意見が出されました。祖父江氏は最後に、その比較はこの調査から出ない、こう言っているんですね。明言しています。
だとすれば、先ほど私が紹介した記事は、いかにもミスリードではありませんか。審議会が終わったのは十二月二十六日の午後四時です。ところが、先ほど紹介した記事は十二月二十六日の夕刊です。つまり、審議会が終わる前に、もう発行しているんです。つまり、これは厚労省が審議会の前に記者レクをやっているからですね。
〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕
○塩崎国務大臣 今、資料を含めていろいろお話がありました。
先ほど局長から御説明申し上げたのは、それなりの疫学研究の中で、どういうことがわかったのかということをそのまま御説明申し上げたわけでありますが、同時に、これは議事録をお読みになっておられるからおわかりだろうと思いますけれども、いろいろな意見が出ました。宿題も大分いただいております。
この審議会において、宿題、委員から出された指摘が、いろいろな方向を向いている指摘がありまして、今、研究会において追加的な分析を実施しておりまして、この分析が終了次第、その結果を審議会に報告していくということで、HPVワクチンの接種のあり方については、やはり科学でしっかりと分析をしていくということが大事でありますので、この研究班から報告される追加分析の結果などを踏まえて、科学的な知見の収集を行った上で総合的に判断をしていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。
いずれにしても、今回初めて疫学的な研究をやっていただいたということでありまして、それについての御意見もいろいろあって、御指摘をいただいているようなこと、今いろいろありましたが、そういうことを含めて、まずは一回目、議論をしていただいたわけでありますので、さらにまた回数を重ねていくんだろうというふうに思いますので、これは御一緒に皆さんで考えて、何よりも大事なのは、子宮頸がんをどうやって減らしていくのか。毎年三千人ずつ亡くなっていくわけでありますから、この有害事象は一体何なんだということを、淡々と科学的にしっかりと分析していくことが大事だろうというふうに思います。
○高橋(千)委員 大臣、答弁をそらさないでくださいよ。
私が聞いているのは、結果が出る前に、研究班が報告する審議会がやられる前に記者レクをやったんでしょうと聞いているんです。イエスかノーか。
○福島政府参考人 お答えいたします。
この審議会におきまして御説明する、報告をいただく内容につきましては、非常に学術的な内容であるということで、事前に記者の皆様方にも、どういう研究を行ったのか、そして結論についてどういうものを出されたのかということについては、私どもの評価を加えることなく中身を正確にお伝えするということで、正確に御理解いただくということで御説明をいたしました。
○高橋(千)委員 正確に御理解していただいていたら、全部同じ見出しになるはずがないですよ。厚労省がそういうレクをやらなければ、こうならないわけでしょう。四社一斉に、もっとあるかもしれません、私、今これしか持ってこられませんでしたけれども。
研究会の、いいですか、審議会が終わった翌日の読売新聞には、「「副作用」症状 追加分析へ」という見出しで、比較はできないとの内容だったと、研究班の報告の中身を詳しく紹介しています。それと並べて、弁護団の、調査に問題がある、会見内容も並べて報じています。だけれども、夕刊の一面で報じた翌日に、三十二ページでしたかね、三十一ページだったかな、そういう中で、どっちが目立つかは明らかじゃありませんか。
どのように説明をしたのか、本委員会に資料を求めます。委員長、お願いします。
○福島政府参考人 お答えいたします。
先ほど、審議会で御説明した中身につきまして、審議会で御報告いただきます中身そのものについて報告したわけでございます。
これは事前に高橋委員の方にもお届けをしておりますけれども、このときの疫学調査の結論、三枚結論がございますけれども、その特に一番最後の結論は、「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する者が、一定数存在した。」二つ目が、「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。」この中身につきまして、これが結論であるということについても、きちんと御説明をいたしております。
○高橋(千)委員 先ほど言ったように、その説明した資料を理事会、委員会に提出してください。委員長、お願いします。
○三ッ林委員長代理 理事会にて協議いたします。
○高橋(千)委員 よろしくお願いいたします。
やはり、さっきも言ったように、ここで報道されていることが、もう結局が、同様の症状を、打っても打たなくても一緒だということが、一番メッセージとしてやられているんですよ。それは厚労省が、わざわざ研究班が報告をする審議会の当日に新聞に出して、審議会の中身は、もっともっと議論しなくちゃいけないねとなったのに、これをまずミスリードのようにやって、それが、その後の新聞各紙、いろいろなことがあるたびに書かれているんですよ。そういうことが問題だと言っているんじゃないですか。全然反省していない。このことを強く指摘して、この資料をしっかりと精査をして、ただしていきたい、このように思います。
以上で終わります。
――資料――