衆院 補正予算案が通過
野党4党反対 高橋氏が討論
2016年度第3次補正予算案が27日、衆院本会議で自民、公明の両党と日本維新の会の賛成多数で可決され、参院に送付されました。民進党、日本共産党、自由党、社民党は反対しました。
反対討論に立った日本共産党の高橋千鶴子議員は、補正予算案のうち北海道・東北で起きた昨年8月の豪雨災害の対応や熊本地震復旧にかかる災害対策費については「緊急かつ当然の支出」で賛成だとし、今冬の大雪対策についても特段の対応を求めました。
同補正予算案は16年度税収の見積もりについて1兆7000億円もの下方修正を行っています。年度途中の赤字国債の追加発効は7年ぶりで公債依存度も押し上げるものとなっています。高橋氏は「それなのになぜ軍事費だけは特別扱いなのか」と批判。今回盛り込んだ軍事費のうち実に6割以上がF35A戦闘機などの支払いを前倒しするものだとし、「なんら緊急性がない軍事費を補正予算で組むことは財政法の趣旨に反しており認められない」と述べました。
高橋氏は「安倍政権の大軍拡路線は将来の財政収支を圧迫し、国民生活に必要な施策ができなくなる危険性を増大させている」と指摘。「社会保障の分野では“後代へのツケ回しだ”と削減を迫る一方、軍拡のツケを将来世代に回すなどもってのほかだ」と強調しました。同日、本会議に先立つ衆院予算委員会での採決で日本共産党は宮本徹議員が反対討論に立ちました。
(2017年1月28日付より)
――議事録――
○高橋千鶴子君 初めに、新年を目前に火事で住まいを失った糸魚川市の皆さんに心からお見舞いを申し上げるとともに、今冬の大雪の被害に遭われた皆さんに心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
私は、日本共産党を代表して、二〇一六年度第三次補正予算案に対する反対討論を行います。(拍手)
第二次安倍政権発足から四年たちました。異常な金融緩和と財政出動、大企業優遇税制と規制緩和を柱にした大企業へのてこ入れ政策は、大企業の内部留保と大資産家の富をさらに拡大しただけで、国民の実質所得や消費拡大には結びついていません。二〇一四年四月の消費税増税により、国民経済の六割を占める個人消費の低迷がいまだに続いています。
社会保障予算は、財務省の改革工程表に忠実に従い、本来自然増として確保すべき予算を削っています。第一次、第二次を通しての安倍政権による自然増削減は三兆三千億円にもなります。医療も介護も年金も負担増、改悪の連続で、国民は疲弊し、将来不安が増大しています。
総理が強調する経済の好循環どころか、税収も伸び悩んでいます。二〇一六年度第三次補正予算で、歳入を一兆七千億円も下方修正して赤字国債を大増発したのは、アベノミクスの破綻そのものではありませんか。
まず、本補正予算案のうち、北海道、東北の八月豪雨災害の対応並びに熊本地震復旧の災害対策費千九百五十五億円については、緊急かつ当然の支出であり、賛成であります。
なお、南関東を中心に果樹のハウス倒壊などの大雪被害があった二〇一四年には、これまでの枠組みを超えた支援が必要であるとして、恒常的な降雪がない地域での特別な財政需要に特段の配慮をすることなどの委員会決議を行っています。今後も起こるであろう災害を念頭に置いたこの決議を生かし、今冬の大雪対策に当たっても、特段の財政支援や制度の柔軟な運用を求めるものであります。
次に、問題なのは軍事費です。
述べたように、本補正予算案は、二〇一六年度税収の見積もりについて、一兆七千億円の下方修正を行うものです。年度途中の赤字国債の追加発行は七年ぶりのことであり、公債依存度は三七・二%から三八・九%へと上昇しました。それなのに、なぜ軍事費だけは特別扱いするのでしょうか。
防衛省予算千七百六十九億円のうち千百十二億円、実に六割以上が歳出化の前倒しです。つまり、過去の予算で発注済みのツケを払う後年度負担分のうち二〇一七年度予定分を前倒しするものです。中身は、P1対潜哨戒機二十機で三百六十二億円、F35A戦闘機八機で六十八億円、F15近代化改修八機で十八億円等となっています。
財政法では、補正予算が認められるのは、義務的経費の不足のほかは、予算編成後生じた事由に基づいて緊要なケースに限られています。発注済みの武器の後年度負担分を繰り上げて払うことに緊急性のかけらもないことは明白です。何ら緊急性がない軍事費を補正予算で組むことは、財政法の趣旨に反し、断じて認められません。
安保法制を強行した安倍政権のもとで、アメリカと一緒に戦争のできる国づくりと一体に、軍事費は膨張し、後年度負担も拡大の一途をたどっています。二〇一六年度第三次補正を含めると、防衛省予算は五兆九百四億円です。二〇一七年度当初予算の後年度負担は四兆八千七百二十六億円、安倍政権の五年間で後年度負担は一・五倍に増大しています。
安倍政権の大軍拡路線は、将来の財政収支を圧迫し、国民生活に必要な施策ができなくなる危険性を増大させています。社会保障の分野では後代へのツケ回しだと削減を迫る一方で、軍拡のツケを将来世代に回すなど、もってのほかであります。
終わりに、今国会の召集日に、文部科学省の天下りあっせん問題を受け、同省の前川事務次官が辞職する事態が起きました。幹部職員の処分とともに省内に調査班を設置、安倍総理は全省庁の調査を指示しました。
本補正予算案の審議に当たって、野党からはこの問題で、速やかに集中審議と前事務次官などの国会招致を行うよう求めてきました。与党がわずか十三時間で審議を打ち切り、採決することを委員長職権で決めたことは、極めて遺憾であります。
予算委員会では、子供の貧困や給付型奨学金、高過ぎる学費についても与野党の議員が取り上げました。誰もが進学の夢を果たせる社会などと強調する総理の言葉とはかけ離れている実態です。一方では、研究費にも事欠く大学の予算に権限を持つ文科省がその権限を背景に大学の人事に介入し、省庁ぐるみで多くの文部官僚が高額待遇で大学にポストを得ている現実は、許されるものではありません。
速やかに集中審議を行い、他の省庁も含め、全容解明と徹底した再発防止へ取り組むべきであります。
以上、指摘して、反対討論を終わります。(拍手)