国会質問

質問日:2017年 3月 8日 第193国会 厚生労働委員会

長時間労働是正問題――参考人質疑

過労死ゼロどころか助長/「働き方」政府案 家族の会代表ら
衆院委で参考人質疑

 今国会の焦点の一つとなっている長時間労働規制についての衆院厚生労働委員会の8日の参考人質疑では、安倍政権が進める「働き方改革」について、複数の参考人から「逆流させる議論だ」(川人博弁護士)など批判が相次ぎました。
 政府は2月、残業時間の上限を月100時間、2カ月平均80時間という案を示しました。過労自殺した電通の高橋まつりさんの遺族の代理人も務める川人弁護士は「耳を疑った」と強調。「全く納得できない。反対だ。月100時間残業しなければ倒産するような会社があるのか。人命よりも会社の存続が優先されるようなことがあっていいのか」と厳しく批判しました。
 電通の過労自殺が労災認定されて以降、多くの企業で三六協定があっても残業時間を月80時間以下に抑える流れが生まれているとし、「今が青天井だから規制がないよりましという議論があるが、今回の案が通れば、よりましどころか時間短縮の流れを逆流させる」と強調しました。
 全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表世話人は、2014年の過労死防止法の議論の際に意見陳述に立ったことに触れ、「まさか3年後に過労死ゼロどころか、過労死を助長する月100時間残業合法化、労働時間規制を緩和する高度プロフェッショナル制度、裁量労働制拡大の法改正が国会に提出されるとは。向かう方向が逆です」と指摘。夫が過労自殺した無念にも触れ、「命より大切な仕事はない」と訴えました。
 残業代ゼロ法案は取り下げるべきだとして、高度プロフェッショナル制度は「自由な働き方と言えるか」とたずねた日本共産党の高橋千鶴子議員に、川人弁護士は「使用従属の関係、指揮命令の関係は裁量労働でも高プロ制度でも変化はない。一部分をとって自由だとすり替えている」と語りました。
(しんぶん赤旗2017年3月9日付より)

 

――議事録――

※参考人は以下の4名です。
 ○島田陽一 早稲田大学副総長・法学学術院教授
 ○川人博 弁護士・厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員
 ○大久保幸夫 株式会社リクルートホールディングス専門役員・リクルートワークス研究所所長
 ○寺西笑子 全国過労死を考える家族の会代表世話人

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、四人の参考人の皆さん、急な要請にもかかわらず本委員会へ出席いただき、また、貴重な御意見を拝聴できました。本当にありがとうございます。
 働き方改革実現会議や厚労省の検討会などさまざまやられている中で、三六協定の特別条項に上限がないのはおかしいということや、総労働時間を減らすべきだということではほとんど異論がないのではないか、一致しているのではないかと思うんですね。あとは、それをどこまできちっと書くかということが、いろいろ意見が分かれているところなんですけれども、一方では、野党がいわゆる残業代ゼロと呼んでいる現行労基法改正案を取り下げないのはやはり矛盾しているんじゃないかと私は思っております。
 そこで、まず、島田参考人と川人参考人に同じ質問をしたいと思います。高度プロフェッショナル制度の問題について意見を伺いたいと思います。
 本当に時間に縛られない自由な働き方というのはあり得るんだろうか。もしあるとしたら、なぜそれが年収要件とリンクするんでしょうか。年収が高ければ自由だというのが、なぜそう言えるのか。あるいは、自由な働き方と言いながら健康確保措置を課しているのは、やはり自由じゃなくて、長時間労働になるリスクを認めているからじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕
○島田参考人 御質問ありがとうございました。
 高度プロフェッショナルということの前提で、いわゆるホワイトカラー業務においては、私の理解では、裁量性ということがよく言われますが、二つの裁量性がある。一つは仕事の進め方、手段、これについての裁量性と、仕事量の裁量性という二つの要素があるというふうに思います。
 先ほどの御質問との関係で、本当に自由な働き方なのかという御質問でございましたので、今の二つの観点から申し上げますと、仕事の量について裁量性を高く持っているというのは必ずしも多くないだろう。仕事のやり方、手段についての裁量性の高い、これは相当程度広くいるのではないか、このように考えております。
 その上で、そうした場合にどういう働き方の工夫が必要かということは、先ほどの繰り返しになるんですが、一つは、やはりおっしゃるように、健康の確保ということについては、これは当然必要でございまして、仮に実労働時間管理をしないからといって、使用者が、そうした人たちに対する健康を配慮する、あるいは安全を配慮するという義務から解放されるわけではないということは当然だろう、このように思います。
 ただし、その場合に、賃金との関係でいったときに、いわゆる法定労働時間と時間外労働の割り増し賃金のリンクが必要なのかというと、必ずしもそういうふうにする必要はないということは十分あり得るだろうというふうに考えております。
 その上で、現在の高度プロフェッショナルということなんですが、これ自体は、私は、かなり限定をされた職種でしかありませんので、それほど、これによって柔軟性が大幅に確保するとも思いませんが、これによって極端な、いわば自由がないのに長時間労働だけはさせられるという人がふえるというふうにも必ずしも評価してございません。
 それから、年収要件につきましては、御指摘があったんですが、私は、仮にそういう柔軟な働き方をする制度のとおりにしても、年収要件というのは少なくとも我が国においては余り適切ではないだろう、むしろそれは、そういう、いわば時間外労働と割り増し賃金と切り離していいかどうかというのは、それぞれの職場の中で、先ほど言ったような労使のコミュニケーションの中でその範囲を確定していくべきなのではないだろうか、このように考えているところでございます。
○川人参考人 裁量労働制の問題も同じなんですけれども、結局、高度プロフェッショナル制度の問題についても、本質的な問題として、その当該労働者の仕事の目標、いつまでにどのような成果を上げるのか、そういう目標の設定というのは会社、使用者が行うわけですね。基本的な業務内容、それと業務目標、例えば納期であるとか、例えば特許出願を担当しているような人であれば、それはいつまでに出願できるようにとか、こういうことは基本的に会社、使用者が決めるわけです。その大枠の中で、ある程度時間をどのように使って仕事をするかとか、そういうことに裁量性が与えられると問題があります。
 ですから、本来的に、使用従属の関係、指揮命令の関係という本質的な問題は、高度プロフェッショナル制度においても裁量労働制においても変化がない。この点において、ある部分をとって自由であるとかいう形で議論をすりかえている、そういうふうな危惧を私は持つわけです。
 健康問題も、何かといいますと、これは本来的に大きな枠、目標設定は企業が行っている以上、それは自己責任で健康は守ることができないんですよね。
 ですから、そういう意味での高度プロフェッショナル制度を含めた自己裁量というものに対する見方が、余りにもそれを肥大化し、実態以上に強調し過ぎている。もっと労働者性が貫徹されているという側面を見るべきである、そのことを申し上げたい。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 島田参考人も先ほどの答弁の中で、労働量については自由だということは、やはりそういう労働者というのは多くないだろうという御指摘がございましたし、年収要件はやはり適切でないとおっしゃっていただきました。
 今の川人参考人がおっしゃったように、労働者性というのは必ずついて回るわけですから、やはりこれは自由な働き方と言ってしまうのは違うんじゃないかということを改めて感じました。ありがとうございます。
 次に、大久保参考人に伺いますが、働き方改革は非常にテーマが多岐にわたっておりまして、女性活躍に熱心に取り組んできたということを承知しております。
 それで、私は、女性活躍を進める鍵は、やはり世界一とも言われる男性の長時間労働を改善することではないか。男性の家事、育児時間が極端に少ないことや、男女の賃金格差の大きな要因の中に、残業ができることや単身赴任が可能なこと、そういうことがやはり実質的な条件となっている。やはりここを改善していかなければ本当の意味での活躍にはならないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大久保参考人 基本的なお考えは、私もほとんどそのように感じております。
 女性活躍の問題を考えていく上では、やはり男性の育児や家事への参加というのはとても重要なことでありますが、例えば、働き方改革のテーマの中でいくと、いわゆるテレワークと呼ばれる働き方、我々の会社でも、リモートワークという言葉でかなり全社員に導入をやっておりますが、そういう働き方改革を進めると、在宅で男性、女性問わず仕事をする日が出てくる。こういう時間の中で、自然な形で育児に参加をしたりとか、あるいは家事労働の一部を担ったりということも出てきますので、そういう効果も見据えながらさまざまな施策をやっていく必要があるだろうというふうに思います。
 それから、単身赴任という御指摘がございましたけれども、今現在、単身赴任の数はふえ続けているというところでございまして、特に現在、共働きの世帯が、世帯の全体の六割を超える段階まで来ておりますので、男性も女性も二人とも働いている状態の中で、例えば片方が転勤という形になると、ワーク・ライフ・バランスを阻害する非常に大きな要因になるんですね。単身赴任するか、あるいは例えば夫が転勤になった場合に、女性は今のキャリアをやめてついていくかという選択になってしまいますので、どちらも余りうれしくない選択になるんだろう。
 こういった慣行についても、本当にこのままいくのかどうかということを見ていく必要があると思いますし、私はちょっと、転勤制度というのも、かなり制度疲労を起こしている日本独特の制度なのかなというふうに思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 女性活躍法案のときに、単身赴任というのは待つ人がいないから長時間になるのよという指摘をしたことがありまして、自分も似たようなことをやっているわけでありますけれども、本当に貴重な御意見だったと思います。
 次に、寺西参考人に伺いますけれども、大切な家族を失った悲しみから立ち上がり、それも長い時間をかけて闘って、労災認定までの御苦労というのは本当にいかばかりかと思いますし、同時に、先ほど紹介されたように、労災認定までたどり着かない会員さんもたくさんいらっしゃると思います。やはり、労災認定の最大の障害は何だろうかということで、ぜひお願いします。
○寺西参考人 御質問ありがとうございます。
 やはり最大の課題は、労働時間の客観的証拠です。
 まず、脳死にしても自死にしても、労働時間というのを示す必要があります。これは申請者側に立証責任ということを私たちは言っていますが、行政の方は、別にそんな立証責任は負わせていないという反論もあるんですけれども。
 やはり、私自身も、準備に足かけ三年かかりました。というのは、会社が箝口令をしいて誰も教えてくれないということがありました。退職者があらわれないと、なかなか協力してもらえない。ですから、やはり、まずは労働時間。それには、事業主がきちっと適正把握をして、何かあればそれを誠実に出すということ、それが一番の課題だというふうに思っています。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 その点で、川人参考人にもう一回伺いたいと思うんですけれども、高橋まつりさんの事件でも、過少に申告をしていたものを、川人参考人が非常に苦労して時間を客観的に出してきたというふうな過程があったと思うんですね。
 先ほど陳述の中にもあったように、今、労働時間の管理あるいは把握はガイドラインにとどまっております。やはり、使用者がちゃんと調べろということも書いているんだけれども、それを法定するべきではないかというふうに思います。インターバル規制を仮に設けたとしても、正しく把握できなければ実効性あるものにはならないと思うんですね。その点で、ぜひ御意見を伺いたいと思います。
○川人参考人 私、せんだっての一月のガイドラインの内容は、基本的に大変評価しております。
 問題は、ガイドラインにとどまっている。これはきちっと法制化して、そして労働時間をきちっと正確につけるということは、本来、経営の基本中の基本でありますし、CSRの観点からいっても最も基本的な問題であります。ですから、これを法律で明確に示すということがとても重要である、そのように考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 本当は、もう一問聞きたかったのですが、ここで、やはり私も時間を守りたいと思います。
 きょう参考人の皆さんからいただいた意見を、本当にこれからの本物の働き方改革に結びつけていけるように頑張っていきたいと思います。
 きょうは本当にありがとうございました。

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