女川原発は廃炉に
高橋氏、水産・観光業応援を
日本共産党の高橋千鶴子議員は9日の東日本大震災復興特別委員会で、震災で大きく傷ついたにもかかわらず東北電力が再稼働に向けた手続きを進めている女川原発(宮城県女川町)について、「原発ではない新たな道を目指すべきだ」と訴えました。
女川町は震災で震度6強の揺れに襲われ、死者・行方不明者は827人、建物の全壊率は3分の2に上りました。同原発も地下3階まで浸水し、原発建屋に無数の傷が入るなど深刻な打撃を受けました。
高橋氏は、震災以前から同原発が繰り返し地震を受けてきたことを指摘。宮城県の有識者会議や超党派でつくる脱原発県議の会などが、被災プラントを前提とした審査を求めてきたことを紹介。原子力規制委員会の田中俊一委員長も、「注意深く検討する」と答えました。
高橋氏は、須田善明女川町長の「原発に依存し続けるのではなく、自分たちで地域の仕事を生み出していかなければならない」との発言を紹介し、「今こそ、原発を廃炉にして新しい道を歩むべきだ。水産業や観光業など持てる力を引き出す自治体づくりを応援すべきだ」と訴えました。
資源エネルギー庁の多田明弘次長は廃炉を決めた自治体への新たな補助金をつくり、再生可能エネルギーへの転換を支援していることを述べました。また高木陽介経済産業副大臣は、「原発立地自治体の要望に耳を傾けながら応援したい」と答えました。
(しんぶん赤旗2017年3月12日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、女川原発の再稼働問題と復興について伺いたいと思います。
宮城県女川町は、三・一一大震災で震度六強の大きな地震を受けました。人口一万十四名の町で、死者・行方不明者合わせて八百二十七名にも上ります。建物は三分の二が全壊。被災規模の最大はお隣の石巻市ですが、被災率は女川町が最大ということです。
私が震災後、女川町に伺ったのは三月十九日でした。何もかも流され、変わり果てた町の姿に言葉を失いました。高台にあるために避難所かつ仮庁舎となっていた小学校で、安住前町長が私に、また一からやり直すさと気丈におっしゃったことが忘れられません。その後に引き継いだ須田善明町長のリーダーシップのもとで、町の再生、高台移転も進んでおります。
そんな中、昨年十二月二十六日の河北新報にこんな記事が載りました。資料の一枚目につけてあります。一番上の段のアンダーラインを読みます。「大きな復興工事はあと二、三年で終わってしまう。それまでには何とか再稼働してもらわないと……」女川原発関連の物品納入や関連工事を請け負う業者の協同組合の理事長さんの声です。とても切なくなりました。復興事業が終われば再稼働しかない、そう言わせることにです。
原発と共生してきた方たちの気持ちも尊重しながら、しかし、原発ではない新たな道はないのか、それがきょうのテーマであります。
まず、今村大臣に伺いますが、大臣就任後、各地の被災地を回っておられると思います。女川原発は被災した原発だという認識は共有されているでしょうか。
○今村国務大臣 私も、女川は被災直後も行きましたし、つい先般も三カ月ぐらい前に行きましたけれども、まさに今おっしゃったとおり、被災した原発であるという認識は持っております。一番大事なところまでは壊れていなかったというところでとどまってはいるということであったかと思いますが。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
資料の二を見ていただきたいと思います。
女川原発は、三陸海岸南端にある牡鹿半島の中ほどに位置して、印をつけてあります震源地、この震源地から約百二十三キロ、実は福島第一原発より震源地に近く、そして、右側に表をつけてありますけれども、地震加速度も福島が五百五十ガルに対し女川は五百六十七ガルと大きかったことがわかります。
地震発生の瞬間、女川原発一号機、三号機は運転中で、自動停止しました。二号機は実は定期点検が終了し、まさに制御棒を抜いていた途中でありました。すぐに戻したわけでありますけれども。災害時の拠点となるはずのオフサイトセンターは全壊し、当時の所員が犠牲になっています。外部電源は五系統のうち一系統のみ使いました。
そして、資料の三についてありますが、津波に備えた対策ということでこれまで東北電力がやってきたんだと、上の方が女川原発、下の方が福島第一原発と比較しているわけなんですね。要するに、高台に、一定の高いところに置いたからとか、引き波対策で取水路を斜めに、たとえ引き波でもちゃんと冷やす水がとれるようにとか、そういう構図にはなっているんです。
でも、よくよく見ていただきたい。地盤が一メートル沈下しました。なので敷地の高さは十三・八メートル、津波の高さは十三メートル。ですから、その差わずか八十センチで難を逃れたのであります。備えたはずではありましたが、実際には、ここの海水ポンプが水圧で持ち上がり、地下三階まで浸水し、熱交換器や補機冷却水ポンプも水没をいたしました。
当時は経産省所管の原子力安全・保安院でありましたが、保安院はその後、どのように三・一一大震災による女川原発への影響評価を行ったのでしょうか。
○山田政府参考人 東北地方太平洋沖地震による女川原子力発電所の原子炉建屋等への影響評価については、当時の原子力安全・保安院が平成二十四年九月三日に中間取りまとめというものを公表してございます。この取りまとめにおきましては、地震に対して原子炉建屋や設備の機能維持が確認された一方で、東北電力が当時実施していた原子炉建屋等の点検結果も踏まえ、耐震評価手法の妥当性の確認が必要であるなど、課題が示されてございました。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
その中間取りまとめが資料の四枚目につけてあります。日付を入れていなくて大変失礼しましたが、九月三日、今お答えがあったように、課題があるということが提起をされたということで、今後も見ていくようにという話だったと思うんですね。
ところが、保安院は、九月三日に中間取りまとめですから、本当なら最終報告と行くんでしょうけれども、その後、九月十九日には廃止をされて規制委員会に引き継がれたわけなんですね。ですから、これが本当に引き継がれたんだろうかと、実は議論をしていく中で規制庁からこういう経過があったんだよということを聞いて、あれっと思ったわけであります。
それで、ちょっとそういう問題意識を持ちながら続けていきたいと思うんですが、女川原発は、福島第一と同じ沸騰水型軽水炉、マーク1と言われる形ですけれども、一号機から三号機まであるうち、一番新しい二〇〇二年運開の三号機がプルサーマルであります。
二〇一三年の十二月に、女川原発二号機の再稼働審査が申請されました。現在、審査中であります。東北電力は、二〇一七年の四月を目指してきた安全対策工事の完了時期を来年度後半まで延期すると発表し、まだまだ再稼働というところまでは至っていないと思っております。
そこで、資料の五を見ていただきたいんです。
これは昨年十二月二十五日の河北新報です。中ほどに「繰り返しジャブ」という見出しがあると思うんですね。それはどういうことかというと、下のアンダーラインを読みます。宮城県の有識者検討会のメンバーで東北大災害科学国際研究所の源栄正人教授が、過去の地震が設備に与えた影響を指摘した。「完工から二十年以上、繰り返しの揺れでジャブを打たれてきた。これだけアクティブに揺らされた原発はない」と指摘をしています。
大震災からさかのぼると、岩手・宮城内陸地震もありました、宮城北部連続地震もありました。ずっと地震が実はあったんですね。こうした原発の再稼働審査に当たって、特別に考慮する基準はあるのでしょうか。
○田中政府特別補佐人 過去に地震を受けたかどうかにかかわらず、施設が満足すべき基準は同じであります。地震について言えば、施設の安全重要度に応じ、想定される地震動に耐えられる必要があります。
過去に地震に遭遇したプラントのための特別な基準があるということはありません。
○高橋(千)委員 基準はないということ、過去にどんな地震があったかどうかにはかかわらないというお答えでありました。
例えば、昨年九月八日の宮城県主催、第十回女川原子力発電所二号機の安全性に関する検討会、この中で、原子炉工学が専門の岩崎智彦氏が、三・一一の地震に被災しているということで、この適合性審査とかいう規制庁の枠の中に被災プラントとしての審査というものはどういうふうになされているかと質問をしています。
今言った委員長のお答えは特にないというお答えだったと思うんですが、東北電力は、自主的に地震後健全性確認ということで進めているということをるる説明をされています。しかし、岩崎氏は、では宮城県としても規制庁の方にやはり意見を言うべきだ、被災プラントとしての審査をどのようにされているんですかと求めるべきだというふうに言っています。
このことは県議会でも取り上げられておりますし、市民団体からの公開質問状など、さまざまな形で要望が寄せられていますけれども、国の方には伝わっているのでしょうか。
○田中政府特別補佐人 私どもには、宮城県の有識者会合における専門家の意見について、宮城県から何の連絡も届いておりません。
○高橋(千)委員 今、衝撃な答弁でありました。何の連絡も受けていないということでありました。これは県議会でまた大きな問題になるのかなと思いますけれども。
実は、宮城県には今、脱原発をめざす宮城県議の会という超党派の会がございます。市民団体とあわせて、昨年の十二月に公開質問状をしているんですね。
その中で、県の答えは、これは明確に口頭で答えをしていただいて文書もあるんですけれども、原子力発電関係団体協議会において国に要望する機会があった、つまり立地団体、宮城県だけではなくそういうことがあった、十一月にそれを行って、代表幹事である福井県の安全環境部長から、東日本大震災等の巨大地震や大津波により大きな影響を受けた原子力発電所について施設の健全性を考慮した審査を行うよう求めると直接要請した、そして原子力規制庁総務課広報室がそれを受けて出席していたという答弁があるんですね。
これは全然委員長の方には伝わっていないということですね。
では、改めて、私は、こうして宮城県だけではなくて立地自治体として要望が上がっている、一応規制庁の方で受けとめている、これは事務局のミスかもしれませんけれども、しっかり受けとめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○田中政府特別補佐人 宮城県の専門家の御意見は直接承ってはおりませんけれども、私どもとしては、審査の中で、女川原子力発電所二号炉については、東北電力より、大震災により発生したひび割れ等、耐震壁に千百三十カ所ぐらいのひび割れ等が発生しているということで、その耐震壁の力が十分に耐震性を持つかどうかというようなことについて今評価をしておるところでございます。
事業者の方は影響はないという説明をしておりますけれども、私どもとしては、被災を受けた原子力発電所として十分注意深く建屋の耐震性等について確認するということで今進めているところでございます。
○高橋(千)委員 今、次の質問にもかかわる答弁をいただきました。
資料の六に、実は今委員長がひび割れとおっしゃったものが、ことしの一月十八日の朝日新聞に載っているものなんですけれども、女川原発の建屋、ひび千百三十カ所ということです。地震など外部の力に対する変形のしにくさをあらわす表現だということなんですが、剛性が低下しているということで、それも、地震に弱い、揺れが大きくなる建屋の上部ほど多くて、三階に集中していた。これは図を見るとわかるんですが、剛性が七〇%も低下していた。しかも、下の方は二階から下も二五%も減ったということが報道されています。
これは東北電力に直接私聞いたんですけれども、千百三十カ所というのは全部数えたんですかと言ったら、確かに一つずつ数えましたと言っていました。ただし、当然数えられないものもありますと。つまり、高線量とかで近寄れなくて、それを全部数えたということは無理だということをおっしゃっていました。
ただ、この審査会合を規制委員会の主催でやっている中で電力が説明しているのは、結局、さらに、損傷を受けてひび割れが多く発生した耐震壁の終局耐力はその影響を受けていない耐震壁と同等だと確認をしておりますと。つまり、今、田中委員長がおっしゃったように、影響がないという説明だったわけですね。
逆に納得いかないんです、私は。数字は確かに見せられました。余裕があるんですよということで説明を受けました。しかし、さっきから言っているように、そもそもこれは東北電力の自主調査なわけですね。ですから、電力が出した数字をまるっと、余裕があります、大丈夫ですと規制委員会が追認するということになっては困るということを今言いたかったわけなんです。
委員長は先ほど十分注意深くというふうにおっしゃっておりますが、たった今届いたきょうの河北によりますときのうも会合があったわけで、規制委員会の側からは、被災して剛性が低下したところにさらにハザード、つまり災害などに耐えられるかどうかは極めて技術的に難しいということを述べたということで、これは田中委員長も同じ見解でよろしいでしょうか。
○田中政府特別補佐人 昨日の委員会でそういう発言がありまして、私もそのとおりだと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
今後はやはり、こうした地震を受けたプラント、しかも大きなプラントへの影響ということを基準にぜひ考えていただきたいなと思います。
この剛性が、女川原発について東北電力はこの七ページの資料を出しているわけです。大きな地震に何度も遭ったということがこの資料を見るとわかります。ちっちゃい字でよく読めないんですけれども、三・一一のときは大きく剛性が低下して、四・七のときにもやはり低下していた、でも持ち越してきたから大丈夫なんてことを言っているわけなんですね。でも、繰り返し繰り返しこれだけの被害を受けてきたんだから普通であるはずがないだろうということを、あえて指摘させていただきました。
雑誌「科学」の六月号には、二〇一一年秋の米国の原子力学会の定期会合にマサチューセッツ工科大学の専門家が世界の原子力発電所の地震による影響の受けやすさというのを発表していますが、これは三・一一の前の数字を使っての評価なんですが、実は女川原発は世界一危ないという米国のマサチューセッツ工科大学の評価でありました。大変衝撃を受けたわけですけれども、やはり世界じゅう地図に落としても地震大国であることはもう明らかで、そこに原発が集中しているということではそうした評価になるのかなというふうに思っております。
次の質問は、一言だけ言ってくださればいいんです。
この審査会合のあった翌日の一月十八日には、今度は規制委員会主催で、主要原子力施設設置者、いわゆる電事連関係者の原子力部門の責任者との意見交換会をやっております。今国会、原子炉等規制法が出されるということで、規制に対する緩和の要求も出されているということがあるわけですね。
例えば、一月二十日付の原子力産業新聞には、原子力比率が二〇から二二%というエネルギーベストミックスとの関係でいうと、四十年運転していっても二〇二〇年代前半、六十年運転していっても二〇四〇年前半にはこの比率を割り込む、だから、再稼働、稼働率の向上、四十年超えて運転、新増設、リプレース、こういうことを電事連の側は申し上げたということがあるわけですけれども、やはり規制委員会が主催して意見を聞いて持ちつ持たれつみたいになっちゃったら困るんです。その点で一言、そうではないということで田中委員長に確認をさせていただきたい。
○田中政府特別補佐人 国際的にもIAEA等の安全基準においても、全ての安全関連課題で許認可取得団体との対話のための公式及び非公式の仕組みを構築しなければいけないとされています。
私どもも、米国等の例に倣いまして、原子力部門の責任者と原子力規制についての全体的な枠組みあるいは新規制の円滑な導入、予見性を高めるための規制基準の明確化等について技術的な意見交換を行うことによって双方の理解を深めるという試みとして、こういった会合を持ったわけであります。
安全を高めるということは規制側だけの責任ではなくて、事業者がその趣旨を十分に理解してそれに沿った取り組みをしていただくということが大切でありますので、そういった意味で、こういった対話を今後も継続的に持ちたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 この意見交換会、被規制者という言葉が使ってあるわけですね、規制者と被規制者との意見交換会。確かに今、国際的にも標準であるという答弁をいただいたわけなんですけれども、規制委員会としてはたくさんの審査を抱えていて技術的にも人的にも大変である、原発の側、電力の側は、早く通してもらいたいな、審査が長引けば長引くほど四十年という残りの中でその分が大分削られちゃうよと率直な意見を交わしているわけで、それが持ちつ持たれつになっては困るという趣旨で指摘をさせていただいたので、これは指摘のみに、まさかそうではないという趣旨で受けとめさせていただきたいと思います。
そこで、資料の八を見ていただきたいと思います。
下の写真は東北電力の体育館なんですね。震災で東北電力の体育館にこれだけの方が避難をされました。最多受け入れ者数は三百六十四名だそうであります。
実は、私、この方たちが半分くらい減ってからですけれどもこの場所に行きました。そのときに、町民の皆さんが口々に電力さんにはお世話になっているとおっしゃいました。それは私はそのとおりだと思うし、それを否定するつもりは一切ないんです。町の建物をそこの町から見て一番頑丈だということで原発に避難をしたわけなんです。だけれども、上を見たらわかっていただけると思うんですが、赤いバツは道路が寸断したところであります。注釈が書いてありますけれども、このほかにも多数ありと書いてあるわけですね。
だから、とりあえず女川原発ではなかったから避難ができたと思うけれども、実際に女川原発に福島のような事故が起きたら、それは逃げ道はないということになる。まさか原発に逃げるというわけにはいかないわけですよね。これは電力に実は話をしたことがあるんですが、いやいや、大丈夫です、シェルターをつくりますからと言っていましたけれども、一体幾つつくるつもりなんだ、いつまでいるつもりなんだ、そういうことになるわけなんです。
それで、資料の最初に戻っていただいて、下の段に今の須田町長の言葉を紹介しています。「今の三機はいつか止まる。原発に依存し続けるのではなく、自分たちで地域の仕事と価値を生み出していかなければならない」と。
もちろん、町長さんが今、再稼働反対と言っているわけではないんです。ですが、これ以上ふやすつもりもないんだなというのがわかると思うんですね。いつかは自立したいという気持ちが込められている。私は、だったら、とめるのは今でもよいのではないかと思うんです。これから先リスクを背負う必要はないわけで、町をゼロに近い状態から復興する今だからこそ、原発も廃炉にして新しい道を歩むべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○高木副大臣 原発の廃炉の問題でございますが、これまでも福島第二原発の話でずっと申し上げてまいりましたけれども、一応、廃炉につきまして、炉の設置者であり、現場に精通している事業者がみずからの責任で判断するもの、これが基本的な原則でございます。
ただ、今御指摘されたような、道路が寸断された場合にはどうなるんだ、これはまさに大変な問題でございますので、今、女川の地域の避難計画につきまして、国と関係自治体などが参加する女川地域原子力防災協議会の枠組みのもと、関係者が一体となって検討を進めており、引き続き、避難経路の検討も含め、その充実化に向けてしっかりと取り組んでいくこととしている。伊方が今再稼働されておりますけれども、伊方も道の問題がございましたので、避難計画としては海に船で避難をするという計画もございます。ですから、しっかりと地元と国、そして県も含めまして協議を進めていくということが必要であろうか、このように考えています。
○高橋(千)委員 今、避難計画の質問をしているわけではなくて、もちろん事業者がみずから決めることだという答弁があるのはわかりつつ、あえて質問させていただきました。やはりそういう道を開いてもいいんじゃないかということであります。そもそも、伊方だって、船に乗るといっても津波が来たら乗れないよなと思いますし、もう片側は原発の脇を逃げなければならないわけで、これは女川も同じなんですね。そこを切り離して再稼働審査と別にやっているということ自体もやはり責任がないことだと指摘をさせていただきたいと思います。
それで、ちょっと前に進める議論をしたいんですが、一般論として、原発の立地自治体には交付金や税収があり、それで潤っているから原発をなくすのは難しいのではないか、そういうことがよく言われます。仮に不交付団体であっても、地方交付税は基準財政需要額と収入額の差で見るのですから、そこでもし税収が不足すればその分を地方交付税が充当することになると思いますが、いかがでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
毎年度地方団体に対して交付される普通地方交付税の額は、地方交付税法に基づきまして、当該地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える額となります。これは、例えば過去に不交付団体であったかどうかなどは問わないものでございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
極めてシンプルな答弁でありましたが、資料の九を見ていただきたいんですね。
これは総務省につくってもらった資料なんです。不交付団体はまだいっぱいあるんですが、原発立地自治体の中での不交付団体の状況であります。実は、女川町は二〇一三年から不交付団体から交付団体に転じているので、この中にはありません。
見ていただきますと、基準財政収入額のうち固定資産税の占める割合が圧倒的に多いわけなんですね。もちろん固定資産税といったときに原発だけではないわけですけれども、全国平均が三六・五%、ここと比較すると例えばその上の玄海は八〇%ですし、泊村は九一・七%、六ケ所村が八三%というふうに極めて割合が高いわけですから、原発関連の固定資産税が大きく収入を占めているということは見てとれると思うんですね。
だけれども、これがもし入らなくなったとしても、財政需要額と収入額との差では、普通に、過去不交付団体だったからといって地方交付税の対象にはなるんだと。当たり前のことを確認させていただきました。そういうことだと思います。
では、もう一つ、エネ庁に伺いたいんですが、いわゆる電源立地地域対策交付金は廃炉を決定すれば廃止されます。では、廃炉を決定した町にどんな支援策があるでしょうか。また、今どんな全国の原発の状況かというのを一番最後のページにつけてあります。これは御丁寧に東北電力が持ってきてくれた資料なんですけれども、白いところが、廃炉を決めた島根とか玄海とか敦賀とかがそういうのに入るわけなんですね。こういうところはもう既に出ておりますので、実際にそういうところに対する支援策が何か今具体化されていたら教えていただきたい。
○多田(明)政府参考人 お答え申し上げます。
今先生御指摘のとおり、電源立地地域対策交付金は廃炉が行われますとその翌年度から原則交付されない、こういう仕組みになってございます。
そして、今も地図で御紹介がありましたとおり、震災後、福島第一原発の六基のほかにも、敦賀でありますとか玄海でありますとか島根あるいは美浜といったところ、さらには翌年ですけれども伊方、こうしたところが廃炉が決定されております。最初に廃炉が決定されましたのが平成二十七年の四月でございました。したがいまして、今申し上げましたように翌年度から交付されないので、二十八年度からはその分交付金が交付されないということになるわけでございました。
したがいまして、私どもといたしまして、廃炉が行われた自治体、これは自治体の判断ではなく事業者の判断でございますので、こうした自治体向けの支援として平成二十八年度予算の中で工夫をいたしまして、先生の資料にございます十ページでございますけれども、上にあります原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業交付金、この制度の中で廃炉の自治体といったものも対象といたしまして、立地地域に与える影響を緩和するためにこの事業を使える、こういうふうなことにいたしまして、廃炉が行われた市町村に対しましては十年にわたって支援を行えるようにするといった措置を一つ行いました。
それからもう一つ、下にございますエネルギー構造高度化・転換理解促進事業費補助金でございますが、こちらにつきましては立地地域などがエネルギー構造の構造転換あるいは高度化といったものを図るために手当てするというものでございまして、これも同じく平成二十八年度予算からつくったものでございます。その中で、既に二十八年度予算の執行の中で、例えば敦賀市においては水素社会の構築に臨む、あるいは松江市においては地熱の活用を進める、こういったことに取り組んでいるというふうな状況になってございます。
○高橋(千)委員 新たなメニューができているということを紹介いただきました。資料も紹介していただいて、ありがとうございます。十ページにつけておきました。
私は、やはり今度は廃炉を選択できる新しいスキームを検討すべきだ、立法措置も含めて検討すべきだと思います。女川町は全国初の復興モデルではないかと思うんですね。かつて、潤沢な原発マネーによって同じような箱物建設や維持管理に大きな予算を充当していた町であります。
しかし、そうした中、前町長の時代に九九年のあのジェー・シー・オーの事故があって、あるいは、松島基地があるんですが、ブルーインパルスの墜落事故などもありました。あのときに、やはり女川だって事故を起こすかもしれない、そういう危機感を持って、避難道路の建設のため国や県にも要望して二カ所のトンネルを建設し、町の財政はやはり身の丈に合った行政にしようじゃないかと切りかえて、ポスト原発を見据えて基金を造成してきました。
今は復興予算ですから桁が違う町の予算になっていますけれども、それを除くと財政規模が大体六十から七十億前後なんですね。それに対して百三十億円程度の基金を積み上げてきたんです。そういう町の努力をしっかり後押しして、本来の水産業、観光業など、そうした持てる力を引き出す自治体づくりを応援していくということをやっていったらいいんじゃないかと思います。これは経産省と復興大臣にお願いします。
○高木副大臣 今御指摘いただきましたように、それぞれの町がどう自立していくか、まさに地方創生という流れで国の方も今バックアップ体制もとっております。そういった中で、原発、廃炉の問題でございますが、今、多田次長からも答弁させていただきましたように、平成二十七年に五基、二十八年に一基の廃炉が決まる中で、さまざまな形で立地地域への影響を緩和するための財政措置というのを行ってまいりました。
さらに、それ以降どのようにその町が、また自治体が自立していくかということは、しっかりと立地自治体の声に耳を傾けながら応援していかなければいけない、このように考えております。
○今村国務大臣 今委員がおっしゃったこと、言われようとすることは私もよくわかります。
しかし、現実には、では具体的に何をどうやってやるかといったときに、原発のあるところの地理的な条件であるとか、あるいは時間がかかるとか、そういった課題もあるわけでありまして、そういう意味で、原発は原発としながら、そしてまた並行的に新しい事業スキームをつくってやっていくというようなやり方もやはり必要なんじゃないかなというふうに思っております。
しかし、基本的に、いろいろなことをやっていこうということについては賛成であります。
○高橋(千)委員 きょうは問題提起をさせていただきましたので、復興事業が終わったら再稼働しかない、こんな悲しい判断ではなくて、本当に町が財政的にも自立をして、新しいまちづくりができるように一緒に応援していきたいなと思っております。
終わります。
――資料――