日本共産党の高橋ちづ子議員は7日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、原発事故の賠償問題を取り上げました。
高橋氏は冒頭、6日の広島市での平和記念式典で福島事故を重ね合わせた発言が多かったことに触れ、「原発ゼロを明確に打ち出すべきだ」と求めました。
高橋氏は、原発事故の賠償で政府が示した「考え方」と東電が示した基準について、避難指示区域と賠償がリンクしていることが問題だと述べ、地域や個人の事情を考慮すべきだと迫りました。
これにたいし枝野幸男経産相は、「基準を作る以上どこかで線引きしなければいけない」と述べる一方、「被災者の個別の状況を踏まえ柔軟に対応する」と答えました。
高橋氏が、不動産などの財物賠償が一括で支払われた場合、ローン債権に取られ、生活も自宅の再建もままならないのではないかと追及したのにたいし、平野達男防災担当相は、「一括払いを原則としつつ、被災者の意見を聞くことが大事だ」と答えました。
また高橋氏は、東電が昨年の仮払金(1家族100万円)の返済を求めており、精神損害への賠償とした月10万円から差し引かれている実態を告発。経済的に追い詰められている被災者に対しひどすぎると指摘しました。枝野氏は、「調査し、具体的に教えてもらえば自分が指導する」と答えました。
高橋氏がこの間の議論などを踏まえ、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針を見直すことを求めたのにたいし、 平野博文文科相は「今後、必要に応じて紛争審査会でしっかりと対応する」と答えました。
(しんぶん赤旗 2012年8月9日より)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
昨日は、六十七年目の広島原爆の日でありました。この一年間で五千七百二十九名の被爆者が亡くなり、原爆死没者名簿に登載された方は二十八万九百五十九名にも上るということであります。改めて、深く哀悼の意を表したいと思います。
今度の式典は、福島第一原発の被害者への思いが強く語られた式典でもあったと思います。
松井一実広島市長は、広島平和宣言において、今も苦しい生活を強いられながらも前向きに生きようとする被災者の皆さんの姿は、六十七年前のあの日を経験した広島の人々と重なりますと述べ、あの忌まわしい事故を教訓として、我が国のエネルギー政策について、核と人類は共存できないという訴えなど国民的議論が進められていること、市民の暮らしと安全を守るためのエネルギー政策を早く確立してくださいと訴えました。
野田総理は、脱原発依存の基本方針のもと、中長期的に国民が安心できるエネルギー構成の確立を目指しますと挨拶で述べられました。
私はやはり、市長の挨拶や、また子供たちの誓いを聞いて、それを受けての総理の挨拶は非常に抽象的で決意がよく見えないな、このように思いました。昨日は、総理はゼロに向けて課題の整理をと指示をしたという報道もありますが、改めて今、政府は原発ゼロを決意すべきだと思います。
この点について、そして、少なくとも、福島県議会が一致して求めている福島第一、第二原発の全原発を廃炉にすべきだ、このことは既に国として明確に打ち出すべきだと思いますが、藤村官房長官に伺います。
○藤村国務大臣 高橋委員にお答えいたします。
まず、今後のエネルギー政策ということで、脱原発依存という言葉をずっと野田総理も使い続けております。政府の方針であります。これは、中長期的に原子力への依存度を引き下げていく、そういう方向性を示したものであります。
ちょうど今現在、原発依存度を含む今後のエネルギー政策の具体的あり方については、いわゆる国民的議論を行っていただいているところ、こうした中で、原発依存から脱却するというゼロシナリオを支持する大きな声があるというのも現実、承知しています。一方で、現実的に、ではどう対応するのかといった観点から、また別な意見がさまざまあるということも示されているとおりであります。
こうした国民の皆様の御意見を定性的に、あるいは定量的に、両面から総合的に評価をしながら、政府として責任を持って今後の戦略を決定していく、今その途上にあるということではございます。
それからもう一点の、福島第一そして第二原発。昨年十月、福島県議会において、第一、第二の廃炉を求める請願を採択するとともに、さらに昨年十二月、福島県が、国及び原子力発電事業者に対し、県内の原子力発電所について全て廃炉とするということを求められている旨を示した復興計画を決定し、公表されていることであります。
政府として、まずは立地の市町村も含めた地元の皆様のさまざまな御意見、それから、一方で、この八月からはいわゆる国有化に近い形ですが、東電の経営状況なども総合的に勘案をしながら、原子炉設置者であるところの東電が主体的に適切に今後判断を行っていくべきものである、このように考えているところであります。
○高橋(千)委員 今、国民的な議論がされている、必要であるということをおっしゃった後で、現実的にはさまざまな別な意見があるとおっしゃいました。そのさまざまな別な意見のところを、官房長官、きょうはおっしゃっていませんけれども、報道によれば、経済界より、こういう表現を使っているので、国民の圧倒的世論は、既にこの意見聴取会でも七割がゼロを支持しているということが現実ではないか、やはりそこに本当に正面から向き合うべきだと思うんです。
そして、今官房長官自身がおっしゃったように、県議会はもっと、全体で一致してゼロを言っているわけですから。この中には、もちろん、自民党の議員さんのように、これまでは原発を進めよと増設を言ってきた議員さんもいるわけです。しかし、この事故の教訓を踏まえて、もう廃炉以外にないのだという決意をしたのに対して、国が明確にそれに応えていく、福島法をつくり、基本方針をつくり、今本当の意味の復興再生に向かっていくときに、そこが曖昧だというのはやはりおかしいのではないか。
もう一言お願いいたします。
○藤村国務大臣 将来の中長期的方向性について、今まさにさまざまな議論をしていただいている最中であるということですので、あらかじめ国がこういう方向であるということを今回示さずに、幾つかのシナリオでお示しをしてきたところです。そういう意味では、国民的議論というものが煮詰まってきた中で、国としてきちんと方向性を打ち出したいということであります。
それから、福島の廃炉問題についてですが、これは、東電が今いわゆる国有化という状態になっていますが、ただ、あくまでこれは東電と原賠機構による総合特別事業計画に基づいて行われた、いわゆる原子力賠償支援機構による出資というものでのいわゆる国有化と言われるわけで、あくまで東電は、一時的な公的管理にはありますが、この計画において、業務運営上の経営判断あるいは意思決定が新経営陣のもと、つまり新しい経営陣のもとで行われるということが何より肝心であります。
そうした中で、やはりそれは、今、福島の立地の市町村あるいは地元のさまざまな御意見、そして経営状況、これらを総合的に勘案しながら、まずは設置者である東電において判断していただくことであるというのが今の政府の見解でございます。
○高橋(千)委員 きょうはこれ以上は、ちょっとほかの課題がありますので、議論するつもりはないんですが、もう東電は事実上の国有化である、そして、この間の福島法の中でも原発を推進してきた国の責任を明確にしたわけであります。それなのに、原発をどうするかについてはやはり東電が決めるのよというのはやはりおかしい。やはりそこは、国がゼロに向かってどうやっていくのかということを、まずそこに立つべきだということを重ねて指摘したいと思います。
あすは、官邸前のデモに毎週金曜日に取り組んできた方たちと総理がお会いになるということを聞いておりますので、とにかく真摯な答えを期待したいし、引き続きこのことを求めていきたいと思います。
官房長官、よろしいです、ありがとうございました。
さて、私も八月一日の視察にも参加をさせていただきました。本当に自治体の長の皆さんの言葉というのは大変厳しいですけれども、それを私たちはやはり受けとめなければならないし、何度でも伺って、現地にも行って声を聞いて、何度でもこういう機会を設けて取り上げなければならない、そういうことでしか私たちはやはり国会に身を置く者として役割を果たせないんじゃないかということを思ったところであります。
そういう決意を述べて、きょうは賠償の問題を少し中心的に質問をしたいと思います。
七月二十日、経済産業省が「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方について」を発表しました。そして、二十四日には東電が同じく基準を発表しました。この国の考え方と東電の基準との関係、どのようになっているでしょうか。
○枝野国務大臣 基本的には、加害者側としての基準というのは七月二十四日に東京電力が公表した賠償基準でございます。ただ、今回の賠償基準は、国が進める避難指示区域の見直しと密接にかかわるものであること、それから、今後の生活再建に関し、賠償だけでは全ての課題を解決できるものではありませんが、国の取り組み姿勢を示すグランドデザインや関連する施策との整合性を図る必要があることから、東京電力任せにするのではなく、自治体や住民の方々などの意見を伺って、政府としての考え方を示す必要があるだろうということで、七月二十日に「賠償基準の考え方について」というものを発表いたしました。
東京電力に対しては、この七月二十日の「賠償基準の考え方について」を踏まえた上で、なおかつ、賠償基準というのはあくまでも最低限これだけお支払いするという基準であって、指針や賠償基準から一歩も出ないような硬直的な対応をすることなく、個別の案件についても親身、親切に対応するよう指導することとあわせて、東京電力に対して示したものでございます。
○高橋(千)委員 基本的に、東電が示した基準というのが政府の考え方とほぼ一致しているということを説明を聞いておりますけれども、政府が今そういう指導的なことができるという答弁であったんですけれども、国の考え方が東電の基準に対して、言ってみればどういう効力を持つのかということをまず確認したい。
○枝野国務大臣 事実上なのか公式になのか、いわゆる行政指導になるんだと思います。
○高橋(千)委員 行政指導というのがどういうときに言うのかなとちょっと思ったわけですけれども、説明されているのは、東電とまた政府の側が一緒になって取り組みをしてきたということであったのかなと思うんですね。
それで、今説明がされたとおり、賠償の基準が避難指示区域とリンクをしている。それで今回、三つの区域になりました。帰還困難区域、いわゆる年間二十ミリシーベルト以上になり、五十ミリを超えるおそれがある、五年以上は帰れないと思われる区域。それから居住制限区域、年間二十ミリを超えるおそれがある区域。また、避難指示解除準備区域、年間二十ミリシーベルトは下回るであろうという区域の、三つの区域に再編をされたわけです。しかし、その再編が、一つの市町村の中で、南相馬市や飯舘村のように三つにも分けられてしまう、そういうこともございました。また、旧計画的避難区域なども一応残っている、ややこしい状況であります。
小高区のある被災者の方は、この間まで立入禁止と言っていたのに、きょうからは自由に入っていいと言われても、泊まらなければということですけれども、安全なのか、とても理解できない、除染も何も進んでいないのにとおっしゃいました。本当にそのとおりだと思うんですね。ついこの間までは、年間二十ミリシーベルトを超えるから全村避難よなどということを言っていたのに、二十ミリを下回るから何時間いてもいいですよとなったら、一体どこに基準があるのか。とても不安は解消できないわけです。
ところが、そういういろいろな思いがあるにもかかわらず、この三つの区域とその解除の時期によって、住宅のいわゆる賠償が変わるわけですよね。もう一年以上たっている、五年以上帰れなければ、足し算して六年以上で全損と評価をする。全額支払うけれども、解除の時期によって六分の二とか六分の三というような計算になるというわけであります。非常に、これでは納得がいかないのではないか。
いろいろな個々の気持ち、解除といっても不安で帰れない、あるいは、道路一つ挟んで基準が違う、そういう人たちの声にどう応えていくのか。もう帰れないという方たちも、一緒に全壊で、全損でいいのではないか、こういう意見も出ていますけれども、いかがでしょうか。
○枝野国務大臣 当事者の皆さんのお気持ちは十分わかるんですが、何か基準をつくる以上は、どこかで線を引かないと基準はつくれません。全ての人のそれぞれの事情に全て応じてそれぞれ対応をするということであれば、逆に基準なしで、ということは、一件一件全部、相当因果関係がある損害がどれぐらいなのかということを立証をお願いするというのも、今回の事故の態様から見て適切ではない。やはり基本的には一定の基準、基準をつくる以上は何かで線を引かなきゃならない。そういったことの中で、なおかつ、これは賠償でありますので、逸失利益がどこに幾らあるのかということで線を引かざるを得ないという性格のものであるということは御理解をいただきたいというふうに思います。
ただ、その上で、実際に、ではどういうふうにこれが運用されるのかということでございますが、実際の避難指示の解除の時期でありますが、これは、何か放射線量が下がったから機械的にやりますということではありません。インフラの復旧や除染の進捗状況、あるいは地域の生活環境など、復旧の状況を総合的に判断した上で、なおかつ、市町村と十分に調整し、その意向を酌んで決定をすることといたしております。
したがいまして、警戒区域の解除は、これは一切立ち入らないでくださいというところから変わるということでは大きな変化のように感じられますけれども、これは本当に念を入れて、万が一に備えて警戒区域は距離でとっていた状況でありますから、警戒区域は解除はできても、実際にそれで避難指示解除準備区域になったからといって、すぐに解除がされるというものではありません。実際に、現実的に、そこにもともと住んでいられた住民の皆さんがそこに戻って、もとの生活ができるという環境が整い、そのことについて地元の市町村などの皆さんの御意見も踏まえて、そういう状況になったなというときに初めて解除されるものでありますので、そして、地区割りで一応の線は引かれていますが、避難指示解除準備区域においても、今のようなことで、結果的に五年を超えて、事故から六年を超えて帰れない場合には、全損の場合と同じ賠償になるということで基準を設けております。
そうした状況を踏まえた上で、さらに、あくまでもこれは最低基準の基準でありますので、個別のそれぞれの被害状況によって、ここは柔軟に対応していくということが前提になっております。
○高橋(千)委員 個別のやり方については後で質問をいたします。
さっき大臣がおっしゃったように、加害者である東電が基準を決める、それだけではだめなので国もきちっと指導するんだということをおっしゃいました。加害者である東電と推進してきた経産省が一緒になって基準を決めている、これが現実なんですよ。だから、これまで国がいろいろな、例えばSPEEDIの情報を出してこなかったとか、さまざまなことがあって今に至っているわけですから、国民が不信を持ったり、迷って決め切れないでいるとか、さまざまなことがあっての今回の、今の問いになっているわけですから、そこはよく考えていただきたい。
ただ、一律ではないんだというお答えをしていただいて、現場の声をよく聞いてということだったので、まずそこをちょっと採用したいと思います。
それで、基準については、もちろん、双葉八町村の首長さんなどの意見も聞いて一緒にまとめ上げてきたということも承知をしています。また、一定評価するということもおっしゃっていました。ただ、本当にそのとおりになるのかというのは、やってみないとわからないというのがあるわけですよね。全損だからこれこれもらえるのかなと思っていると、そう簡単ではないのではないか。
例えば、土地を事故前の評価額でカウントする、住宅を新築と仮定した上で経年償却、これはでも四十年も五十年もといったら価値がなくなっちゃう、そこで二割の下限を設けると工夫をしてくださいました。ただ、逆に言うと、新しければ新しいほどローンの残債も多いということになっちゃうわけですよね。そこで、一括払いでまとまったお金が入ってローンの債権にとられちゃうと、生活も成り立たず、自宅再建もできず、かつ五年間、後、何もお金が出ないということになっちゃうわけです。
この間の質問の続きにもちょっとなってしまいますけれども、そこはやはり自宅再建ということもちゃんと考慮しながらローンの問題はやる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○平野(達)国務大臣 賠償金の支払いの方法ということについての御質問かと思いますけれども、今、賠償金につきましては、精神的損害とか就労不能損害、営業損害、一部はこれから支払われることになると思いますが、こういったものについては、一括による支払いと一定期間ごとの支払いと選択できる形になっております。
一方で、財物と言われるようないわゆる土地建物、こういったものについては、ほかの公共事業もそうなんですけれども、これは、賠償を受ける側がむしろ一括を求めてくる例も多いということもございまして、一括でお支払いするというのが原則になっております。
ただ、今回の場合は非常に巨額にもなるということでもございますし、ローンに全部とられるというような、そういう御指摘もございましたけれども、これをどういうふうなお支払いでするかということについては、今のような原則をまず基本にしつつも、これから被災者の方々あるいは被災自治体の意見を聞いてみるときに意見も聞くということは大事ではないかというふうに思っております。
○高橋(千)委員 ぜひお願いをしたいと思います。一括払いということが逆にあだになって再建の道が閉ざされるということでは問題であるということであります。
同じく、福島の沿岸部は、津波もあり、原発の二重被害、こういう区域もございます。それで、津波で家が流されたところが今言ったように二重に苦しんでいる。事故直後にはうちに戻ることもできなかったし、あるいは救援や捜索も十分には入れない、そういう特殊な事情がありました。しかし、これは逆に、これも前回もやった話ですけれども、財物賠償は家がなくなっちゃったということで小さくなっちゃう、これもおかしいんじゃないか。帰れないということでは、うちがあるところもないところも同じ全損でいいんじゃないかと思うんですね。いかがでしょうか。
○枝野国務大臣 これも、お気持ちは重々わかるんですが、基本的には、やはり損害賠償ということになると、逸失利益を補填するというか補うということでございます。そうしたことから考えると、もちろん土地については、地震、津波の被害を受けた場合であっても原子力損害のみの場合と同様に対応するということになりますが、そもそも津波によって家がなくなってしまっていたという場合には、今回の事故との相当因果関係というのを認めるのは、これは法律ではちょっと無理だということでございます。
ただ、半壊とか部分損壊等の場合にどの程度それを評価するのかということについては、賠償が不当に低くなることのないよう、東京電力を適切に指導してまいりたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 ですから、だんだん全損になってくれてかなり考慮してくれているようだと思っても、現実にはこういうふうに思ったとおりにはいかないということがあるのではないか、そこをやはり乗り越えていただきたいということできょう質問をしています。
それで、きょう、さらにちょっと驚いたのは、本払いが始まったせいで東電が昨年の仮払金、これは単身者が七十五万円、一家族は百万円、これをお支払いしているわけですけれども、仮払いなので返済してくださいということになっているそうであります。これは、被災者は、本当に当時、膨大な資料、もう書けないと大変な思いをして、ようやく書いて、ようやくもらって、ほっとして、そんなことまではわからないわけですよ。後でよくよく聞いたら、書類の一番下に小さく、仮払いなので返してもらいますというふうに書いてあるそうです。
そうなると、では一体、もうお金はないですよね、そういう中でどうするんですか。全額返金するケースがありますか。本払いとの相殺と聞いていますが、実際に返金が生じた人がどのくらいあるのか。本当にこれは、今、経済的にももう困窮している中で、一方的に引き去りするということがあってはならないと思いますが、どのようにいたしますか。
○枝野国務大臣 東電が昨年払った仮払金の返済を求めているケースはないはずでありますので、念のため、国会で御指摘を受けたので、ないだろうなと東電には確認いたします。
ただ、あくまでもこれは仮払金でありますので、賠償のうちの一部を先に仮に払ったということでありますから、本賠償の際にそれが相殺されるということ、これ自体はやむを得ないことだというふうに思っています。
ただ、これも、例えば今回、二百万円払いますというときに、既に仮払金が百万ありますから半分ですということを一気にやったりすると、それはいろいろな影響があったりするということもあるでしょうから、今後、どういうふうに相殺をしていくのかということについては、被害者の方々の実情等を踏まえて、しっかりと御相談をしながら、工夫しながらやっていく必要がある。
こういうふうに努力をしているという報告は受けておりますが、国会でも指摘を受けましたからということで、しっかりと、何か問答無用で相殺なんだから当たり前だみたいな態度はとらないようにと。ただ、制度的には最終的に相殺せざるを得ないのは御理解いただいた上で、ただ、丁寧な対応をさせていきたいと思っています。
○高橋(千)委員 これは、東電の資料の中に確かに、調整をしながら相殺を一遍にではなくやっていくというふうな趣旨のことを見つけました。
ただ、福島出身で、大熊ですとかいろいろ仮設に入って避難されている方を支援している方から、たくさん寄せられているということで訴えられたんですけれども、今度、精神損害に対して月々十万円の賠償がいただけるようになったわけですよね。それが結局相殺だということなんですよ。ここで、受けてきた大変な苦痛に対して、精神損害で認めよう、十万もらえると思ったら、そこから返す以外にないんですよと。相殺していくしかないんです。ほかに収入の道がないのにです。そういう実態になっている。
逆に、またこれからいろいろな賠償ができてきたときに、申請に行けばまたそういうことになるかもしれないということで、申請に行くこと自体をためらっている、そういう声さえも聞かれているわけなんです。
ですから、まだまだ本当に生活を立て直す途上といいますか、そこまでも至っていない被災者の実態に照らして、やはりここは、まず調査をきちっとしていただいて、親身な対応をしていただきたいということを重ねて。
○枝野国務大臣 実は、東電の社長にも親身、親切な対応ということで指示をいたしましたときにも、そこで社長とも話をしたんですが、大分、新しい執行部、これは我々がかなりコミットして選びましたから、問題意識を共有してもらっていると思いますが、何しろ膨大な職員が対応に当たっています。現場の末端まで徹底することはかなり大変だ、だからそこをしっかりやってほしいと社長にも申し伝えたところでありますし、社長もその問題意識を共有してもらっています。
ただ、現実にはやはり、本当に何千人単位の方々が現場で対応していますので、適切でない対応のケースがゼロと言うつもりはありません。ぜひ、例えば何月何日に何という職員がこういう対応をしたなどという情報を上げていただければ、これは私、行政指導権を持っていますので、東京電力に対して具体的に指導をすることができます。
ぜひ、そういった情報を、共産党さん、ほかの政党さんも、情報を集めるのがお得意だと思いますので、そうしたことがあったら、委員会などの場ではなくても、御指摘をいただければしっかりと対応させてまいります。
○高橋(千)委員 しっかりお願いします。
時間がなくなってしまったので、ちょっと最後まとめて、せっかく平野文科大臣がおいでいただいたので、伺いたいと思います。
今いろいろお話ししてきて、問題がいろいろあるんですけれども、しかし、現場では、きめ細かく対応することもできる、個々に対応することもできるという話になっているわけですね。経産省が事務局となっている原子力損害賠償円滑化会議、これも進められております。また、文科省が事務局、中心になっておりますADRが動き出して、少しずつ頑張っていらっしゃる。その中で、総括基準の要点というものが発表されて、中間指針などに明記されていない損害についても、さまざま紛争に出される中で、こういう要点があるから解決ができるんじゃないかということを整理されてきた、そういう努力をされてきたと思うんですね。
私は、そういう中で、例えば、いわゆる風評被害として盛り込まれていなかった宮城県ですとか千葉県ですとか、そういう頑張ったところがちょっとずつ盛り込まれたりとかあるわけですよ。それを、もうある程度の積み上げは来ましたから、半年何もしていません、中間指針の見直しをやはりすべきではないでしょうか。
○平野(博)国務大臣 今議員御指摘の部分について答えますが、その前に、私どもはADRということで、いかに被害者の立場に立って、この問題、賠償問題についての紛争を解決するか、こういう視点で、今日まで体制強化も含めて取り組んでまいりました。これはもう御案内のとおりだと思います。中間指針含めて、指針を出しながら、その指針をベースに、紛争審査会では、そういう指針を出しながら、いかに類型化したものを含めて、総括基準、こういうものを決めて、より解決の促進に努めるようにと、今日まで来たわけでございます。
したがって、先ほど枝野大臣の方から、区域の見直し等々、あるいはまた改めた見直しがございますから、今後、必要に応じて、私どもとしては紛争審査会の方でしっかりと対応するようにしてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ぜひお願いします。
時間が来ましたので、またぜひこういう機会を委員長にお願いして、終わります。