国会質問

質問日:2016年 11月 25日 第192国会 厚生労働委員会

年金カット法案(国民年金等改定案)

将来世代も水準低下 首相認める

 日本共産党の高橋千鶴子議員は25日の衆院厚生労働委員会で、年金カット法案は“将来世代の給付確保のため”と言う政府の言い分を突き崩し、「まずこれ以上の給付減と負担増をやめるべきだ」と述べ、法案の撤回を迫りました。
 高橋氏が、年金の伸びを物価・賃金の伸び以下に抑えるマクロ経済スライドで「年金水準=購買力が下がるのは明確だ」とただすと、安倍首相は「物価の伸びほど年金は上昇しない」と認めました。
 さらに高橋氏が、今回の改定でマクロ経済スライドの未実施分を持ち越すことや、賃金に合わせて改定するルール見直しによって「前年より年金水準が下がり、将来世代の水準も下がる」とただすと、安倍首相は「物価が上がっても賃金が下がれば、下がった賃金にスライドさせる」と述べ、将来水準の低下を認めました。
 高橋氏は、現役男性の手取り収入の50%給付を維持すると言う主張についても、受給開始年以降にどんどん落ち込み、40・4%まで下がると追及しました。
 塩崎恭久厚労相が“物価スライドで購買力を維持する”と昨年答弁していたことに触れ、今回、賃金スライドを提案するのは矛盾していると追及すると、厚労相は答弁に立てず、鈴木俊彦年金局長は「50%の水準を保てるのは新規裁定者(=受給開始年)だけだ」と認め、「賃金の動きに合わせて改定してこなかったため、将来の年金水準が下がる結果になった。きちんと対応するのが責任だ」と居直りました。
 高橋氏は、地方では年金収入が県民所得や家計消費の2割を占めていることを示し、「高齢者にいま以上のガマンを押し付ければ国民全体に悪影響を与える。年金を削れば経済の好循環なんて生まれない。これ以上の給付削減をやめ、医療・介護の負担増もやめるべきだ」と強調しました。

(しんぶん赤旗2016年11月26日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 先ほど来、今の長妻委員を初め、やはり年金制度のそもそも論の議論がされていると思います。とてもいいことだと思うんですね。午前の参考人質疑においても、このタイミングというのは余り、もっと、決議をやって一週間後にきちんと参考人をやるということをやるべきなのに、非常に、きょう朝決議していきなり参考人になったという、異例中の異例ではありました。そのことは強く指摘をしたいんですが、しかし、それぞれに貴重な意見をいただきました。
 与党の質問者からだって、もっと話したい、そういう意見が出たではありませんか。やはりこれは、議論はもっともっと深めていくべきなんですよ。臨時国会の枠で無理やりおさめるという必要は全くない、そのことを重ねて指摘したい、このように思います。
 そこで、先ほどの続きから入りたい、通告を残しておりましたので、やりたいと思うんです。
 年金水準がどうなるかということは、先ほど来議論されているように、現役男子の手取り収入との比較で、所得代替率であらわしております。
 手取り収入とは、実際の年金加入者の標準報酬月額の平均値に、家計調査で見る、先ほど長妻委員が示していただいた、税、社会保険料を引いた可処分所得割合を掛けて出しているということであります。
 それで、聞きたいのは、当然想像できる、可処分所得というのは減っているであろうと。二〇一四年度の可処分所得割合は〇・八一四となっておりますけれども、前回、前々回と財政検証時と比較してどうなっているのか、また、今後どう見ているのか、まずお答えください。
○鈴木政府参考人 ただいま御紹介いただきましたように、財政検証で、前年度におけます男子被保険者の平均的な標準報酬額に相当する額から公租公課の額を控除した可処分所得に基づきまして所得代替率を計算することとされております。これも、御紹介いただきましたように、総務省の家計調査を用いまして可処分所得割合を算定した上で、この可処分所得割合と標準報酬額を掛け算することによりまして可処分所得を算出している、こういった算定過程を経ております。
 その中で、平成二十六年度の財政検証では、この可処分所得割合の値が〇・八一四でございましたが、その前の回、平成二十一年度においては〇・八三三、さらにその前の回、平成十六年度は〇・八四でございました。
 もう一つ、将来の見込みでございますけれども、この点につきましては、今後の税あるいは年金以外の社会保険料を具体的に見込むということは大変難しゅうございますので、その見込みをお答えすることは大変に困難であるというふうに言わざるを得ないと考えております。
○高橋(千)委員 ごめんなさい、今、数字を聞いたわけじゃないんですよ、それは正確に出るわけがないので。
 当然、可処分所得は減っていくと考えるのが普通だと思いますが、違いますか。
○鈴木政府参考人 将来の見込みに当たりまして、例えば今後の人口がどうなるのか、あるいは経済を初めといたします経済社会情勢がどうなるのか、そして、そういったものを前提といたしました税制、そして社会保険を初めといたします社会保障の制度がどうなるのか、こういったさまざまなことが絡んだ上での可処分所得の状況ということになりますので、趨勢を今の段階で一概にこうであるというふうに決めつけて申し上げるまでには私ども至っていないと言わざるを得ないと思っております。
○高橋(千)委員 余りにも消極的なお答え。それはそうですよね、税や社会保険料がふえるなどということを言うのはなかなかつらい立場ではあるかなと思います。
 十年間で、今お答えいただいた数字を聞いても、二・六%も税、社会保険料の割合が上昇したことになるわけです。
 先ほど参考人質疑で年金者組合の加納さんが紹介したケース、これはいただいた資料を見て私が計算しますと、〇・七七九なわけですね。ですから、今〇・八一四だけれども、既に八を割っているという状態なんだ。やはりこれが実態なんじゃないか。数字よりもさらに乖離が進んでいる。
 私が言いたいことは、年金そのものをふやすべきだし、減らすべきじゃないと思っている、だけれども、それは、先ほど来議論しているように、制度設計に時間がかかります、だけれども、可処分所得をふやすことはできるんです、政治の決断で、そのことを言いたいんですね。
 先週、私は、南三陸町、宮城の被災地に行って、被災者の声を聞きました。ちょうど公営住宅の入居が始まっているところで、あるいは抽せんなどもやっている最中なんですね。ですが、皆さん一様に心配しているのは、仮設は今まで無料でしたので、公営住宅の家賃が払えるだろうか、そのことを心配しているんです。
 例えば、年金は月四万五千円しかもらっていないけれども住民税は払っている、これは当地の言葉で言いますとぷらぷらと言うんですって。つまり、境界なんですよ。ぎりぎり非課税世帯にならない境界で住民税を払っている。そのために、介護保険料は年九万円、月にすれば七千五百円なんですね。もう初めから天引きされているから幾らも残らないと訴えていた。本当に高いなと思いました。そうして引かれて引かれていけば、年金は三万円程度しか残らないんじゃないかなと思います。
 介護保険料がこの間も全国で上がっていることを思えば、もう可処分所得割合は実際の数字よりももっと下がっているであろうと当然想像ができるわけであります。
 本会議で総理は、低所得者に対しては年金生活者支援給付金が平成三十三年度からスタートし、今まで以上に高齢者の生活を支えてまいりますと答えました。しかし、対象となるのは非課税世帯のみなんです。今言ったように、ぎりぎりのところで課税世帯になっている方には何の恩恵もないんです。
 医療、介護の保険料の負担軽減もある、こうもおっしゃいました。だけれども、財政審でやろうとしている負担増、もう既に、三年間で一兆五千億円に自然増を抑制する、だから医療と介護で一千四百億円削り込むということが議論されているじゃないですか。これをやっていったら、もうどこまでも下がっていくわけですよ、手持ちの収入が。
 ここをもう本当にとめなければ、これ以上の負担増をやめるという立場にならなければ、これは政治の決断、大臣の決断でできることではありませんか。大臣、お願いします。
○塩崎国務大臣 趨勢的に、可処分所得割合が下がっている、つまり、公租公課の負担がふえているという御指摘をいただいたかと思いますが、この問題をしっかり見ていくことは、そのとおり、大事だと私も思います。
 それは、主に何の支出があるのかというと、やはり他の社会保障、医療だったり介護だったり、そういったところで、もちろん税もございますが、そういった低年金、低所得の方々の年金課税の場合には、比較的、基礎年金だけだとかからないとか、そういうところはもう既にあるわけですけれども、そういう面で、それがどうなっていくかということを考えていかなきゃいけませんし、今、これは、それぞれの部会で介護も医療も絶えざる見直しはしているわけでありますけれども、同時に、低所得、低年金の方々についても、これはしっかりと目配りをした上で制度設計をしなきゃいけないと思っております。
 一方で、医療制度、それから介護の制度、これらの持続可能性というものも同時に考えていかなきゃいけないということでありますので、先ほど来申し上げているとおり、いろいろな点を総合的に考えていかなきゃいけませんし、きょうの午前中の参考人でも、やはり社会保障全体で見ていくといったことが言われているところには、そういった面でもちゃんと配慮した上で、可処分所得が減り過ぎない形で負担があるべきだということも御指摘をされているんだろうというふうに思いますので、そういうことをしっかり考えていきたいと思います。
○高橋(千)委員 確かに、午前の議論では、社会保障全体で見るべきだという議論がありました。ところが、それを提案した年金部会長である神野先生が、現物給付、つまり社会保障の医療や介護のことですよね、それは極めてみすぼらしい、こういう表現をされたんです。
 ですから、大もとをきちんと守らなければ、あれもあるよ、これもあるよと言っても、やはり大もとは守らなければだめなんです。持続性とか言いながら、たった今、本当にもうやっていけないという声が上がっている、それに応えていくべきなんだということを指摘しなければならないと思います。
 私は、実は民主党政権のときも要求したことがあるんですけれども、今言った、本当にわずかな差で住民税を払っているような方、そして、そのために負担が非常に大きい方、その方たちには、境界層という考え方がございます、減免をすることによって生活保護に陥らない、これは介護保険の世界にあるわけですけれども、この考え方をもっと整理して、減免制度を、やはり社会保険料の負担をもっと減らしていって、自立しながら暮らしていける、そういう道もちゃんと考えたらいいんじゃないでしょうか。
 前向きの提言をさせていただきましたが、大臣、いかがですか。検討するとおっしゃってください。
○塩崎国務大臣 私は、先ほど申し上げたような考え方でおりますが、今御指摘をいただいたような制度も参考にしながら、やはり低所得者、低年金者対策というのはしっかりやっていかなきゃいけないというふうに思います。
○高橋(千)委員 よろしくお願いしたいと思います。
 それで、二〇〇四年の年金改正のときもモデル世帯というのは実態から離れているんじゃないかという議論はもう既にあったと思うんですね。
 今だって、平均標準報酬四十二万八千円、四十年間正社員で、妻が四十年間専業主婦、これを物差しに使っているということ自体が非常に現代に合わないし、しかも、比べるときは、一人の男子の収入に対して夫婦二人で五割を何とか保っているねなんて、そんなことを言っているのでは、現実とはかけ離れている。だから、基礎的消費支出が賄えないという議論が当然あるんだと思うんです。
 ですが、二〇〇一年、女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会というものがありました。その後、例えば、離婚したときの年金の分離とか、やはり女性がもっと権利を発揮できるように、あるいは社会参加に応じての年金のあり方というのを検討したことがあったんだなと思うんですね。
 そのときに、モデル世帯、要するに、昭和六十年前、基礎年金が導入される前のモデル世帯というのは、もともと男子一人の厚生年金で二人分が賄える水準だった、逆に言うと、単身世帯ならむしろ有利だったわけですよね。それがまだずっと今に残っている。余りにも現実的じゃない。当時は男性の正社員が九二・六%だったわけです。それががくんと減って、非正規がふえている。
 そういうことを考えれば、ちょうどこの昭和六十年というのは、男女雇用均等法ができて、一方では派遣法ができた、そういう社会の反映でもあるんです。加入者の責任だけでは言えないということなんですね。
 だとすれば、このモデル世帯の指標をもっと現実に合わせて、経済指標がAからHまであるように、多様にやって、その中でもきちんと年金がやっていけるのかなということを見るようにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○鈴木政府参考人 ただいま御指摘いただきましたモデル世帯でございますが、これは御案内のように、現在の制度では法律に定義が書かれておりまして、それによってさまざまな改正等の効果を計測するということでございます。
 一方で、今先生御指摘ございましたように、社会経済の情勢、家族の状況も変化をしておりますので、これまで大臣からも御答弁申し上げておりますけれども、今後の検討課題として、どのようなモデルの設定の仕方をしたらよいのか、そうしたことも含めて、また検討してまいりたいと思っております。
 今回の財政検証におきましても、夫婦世帯だけではなくて、女子の単身世帯、男子の単身世帯も含めまして、幾つかの類型の世帯につきまして具体的な年金の水準というものをお示ししておりますので、そういったことも含めまして、今後検討してまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 百年安心の中の、あと九十年あるわけです。それがもう変えられないみたいな議論をしないで、今の年金の法案の中で、こうしたモデル世帯のあり方や、本当に今、せっぱ詰まっている人たちの生活を保障していくこと、そのことをきちんと議論しようではありませんか。結論を出すべきではありません。
 そのことを申し上げて、質問を終わります。

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