国会質問

質問日:2016年 10月 21日 第192国会 厚生労働委員会

関電課長の過労自殺

関電課長 過労自殺/「再稼働」が追い込んだ
高橋議員 残業規制除外通達撤回を

 日本共産党の高橋千鶴子議員は21日の衆院厚生労働委員会で、原発の再稼働審査に対応する業務をしていた関西電力の課長が過労自殺した問題をただし、電力会社の審査対応業務を残業時間規制の適用除外とした国の通達を撤回すべきだと迫りました。

 同課長は、高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の再稼働審査と、7月が期限だった運転延長審査を並行して担当していました。自殺した4月の残業時間は、国が定める過労死ラインを超える100時間前後に達したと報じられています。
 高橋氏が、再稼働のために過労死するほど働くことが現実に起こってしまったと追及すると、塩崎恭久厚労相は「個別の労災認定にかかわるので答弁は控える」と逃げ、関電との関係を直接明らかにしませんでした。
 高橋氏は、原子力規制委員会が電力会社の要望通りに業務を急がせてきた経緯を示し、「委員会の“のり”を超えている」と追及。田中俊一委員長が「期限を見ながら対応した」と開き直ったのに対し、「結局、早く早くとなって、この事件に至った」と批判しました。
 高橋氏はさらに、審査対応業務を残業時間規制の「適用除外」とした2013年の労働基準局長通達は九州電力の求めに応じたものなのに、なぜ九電以外の他社を含めた計14基で残業時間を「適用除外」にしたのかとただしました。
 「ほかもあてはまると判断した」と答えた厚労相に対し、高橋氏は「(再稼働を)応援しているのと一緒だ」と批判。通達の前に「すでに違法な労働実態があり、(国は)それを分かっていたのではないか」と追及しました。
 高橋氏は、九電が「法令順守」の名で適用除外を求めたことは「ルールを守るためにルールを外してくれというものだ」と批判。国には「(審査対応は)“公益”と言って残業規制を除外しながら、(過労死の)個別の事件は答えられないなんて話はない」と述べ、通達の撤回とともに、労働時間や労災の実態をきちんと調査・公表すべきだと強調しました。

(しんぶん赤旗2016年10月22日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 大臣、きょうは私は十五分ですので、どうか答弁は簡潔にお願いをいたします。
 十二日の予算委員会の続きをやりたいと思います。
 資料の一枚目、これは一斉配信の記事ではありますが、あえて、構成がわかりやすかったので、お地元の愛媛新聞にいたしました。「原発対応課長 過労自殺」という見出しであります。高浜原発一、二号機の再稼働と運転延長審査の対応をしていた課長、四十代の男性が四月に自殺し、敦賀労基署が労災認定していたことが十九日わかったと書いてあります。一月の残業時間最大二百時間にも及んでいたという深刻な実態が示されております。
 私は、十二日の予算委員会で、二〇一三年に労働局長通達ということで出されている、原発再稼働の審査対応業務を公益性のある業務として残業時間限度基準の除外を認めていたことを質問いたしました。同じものでありますけれども、資料の2と3、これは現物をつけてあります。それから、そのときに除外された原発が、どこの電力会社で、どこの原発の何号炉かということが3―2につけてございます。
 私はこのときに、やはり過労死ラインを超えてまで残業して再稼働審査に間に合わせることがなぜ公益かと追及をいたしました。それからわずか一週間なんです。高浜一、二号機は、この表を見ていただければわかるように、確かに除外には該当していません。ただ、三、四号機が入っております。また、当該課長は、管理監督者であるために、結局除外の対象なわけですね。再稼働のために過労死するほど働く。現実になってしまったことについて、大臣の御所見をお願いします。
○塩崎国務大臣 御指摘の件につきましては、個別の労災認定にかかわることでございますので、回答は差し控えたいと思います。
 いずれにしても、働き過ぎから命を落とすということは、御本人、御家族にとって、これは大変な、はかり知れない苦痛であるとともに、社会にとっても大きな損失になるわけであります。過労死をなくしていかなきゃいけないということは我々にとっても大事な命題だというふうに思っています。
 厚労省としては、管理監督者も含めて、働く方の心身の健康確保を図るために、一定の長時間労働を行った方への医師による面接指導とか、メンタルヘルス不調の予防を目的とするストレスチェックの実施などの措置を事業者に義務づけて指導を行っているところでございます。
 また、過重な労働による過労死等に対する労災請求が行われた事業場に対しては監督指導を徹底しているということで、今後とも、働く方が安心して活躍できるように、働く方の心身の健康確保、長時間労働の是正に積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 個別なので回答を避けるという型どおりの答弁がございました。
 報道でも、関電は、この方が社員であるかどうかも含めて回答を避けるという態度なんですね。当然、審査業務に当たっていた人が社員でないかもしれない、そのこと自体が信じられない話なんですけれども、きのうもレクのときに、やはり回答できないというお答えでありました。
 しかし、これはおかしいと思いませんか。報道されて、なぜ、どこから漏れたのかわからないという話なんですよ。では、どうして電通は、私は、この予算委員会のときに同じ電通の話もしましたけれども、抜き打ち検査だと言いながら、テレビカメラ、だあっと入って検査をしているんですか。関電だって明確にすればいいじゃないですか。
○山越政府参考人 お答えさせていただきます。
 御指摘をいただきました個社の労働時間の状況でございますとか労災補償の状況でございますけれども、これは個別の企業にかかわる事項でございますし、あるいは、労災については個人情報に関するものでございますので、答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論でございますけれども、過労死等の労災補償の請求があった場合には、まず迅速にその審査を行うとともに、請求内容から過重労働が疑われる事業場につきましては監督指導を行い、法違反については厳正に対処してまいる所存でございます。
○高橋(千)委員 だから、何で、電通はテレビカメラまで入って抜き打ち調査、しかも子会社まで調査をしているのに、これはできないんですかと聞いています。
○山越政府参考人 お答えをさせていただきます。
 御指摘の企業につきましても、立入調査の内容につきましては、個別の事案でございますので、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○高橋(千)委員 次の質問をしたいので指摘にとどめますけれども、大臣、きのう、電通のことは二〇〇〇年の最高裁の判決があったから特殊なんだと説明を受けました。だから、抜き打ち調査したとか、抜き打ちじゃないけれども、はっきり言って、みんな知っているわけですから、そういうことを子会社までやったということをおっしゃったんですよ。だったら、もっと早くやればよかったんですよ。それで、三年前にも過労死があったということが今わかったわけでしょう。
 だったら、関電だって、あるいは関電だけじゃなくて今の除外に値する原発だって、起こっていたかもしれないじゃないですか。本当に、犠牲者が何人もあってから、調査をします、強めます、わかりました、これでは済まないから指摘をさせていただいています。
 十二日の予算委員会では、同じ関電の美浜原発三号機の審査について指摘をいたしました。美浜三号機は、ことし十一月三十日に四十年を経過してしまうので、そうすると期限切れで、つまり、そこまでに審査が終わらなければ、あと延長できなくなるというので、何で規制委員会が急げ急げと言うんですかという指摘をいたしました。
 きょうは、田中委員長に来ていただいております。一時間おくれて申しわけありませんでした。
 実は、高浜原発も同じように七月七日が四十年の期限なわけですよね。それで、新規制基準の適合審査と四十年を超える運転期間の延長審査を並行して行っていたと聞いております。
 これは、次のページ、関電のホームページからとりましたけれども、新規制基準適合性審査の状況ということで、高浜一、二号機と美浜三号機、審査をまさに同時進行で、そして、期限が切れる、期限というのは、四十年たってしまう、このところに線を引きながらスケジュールを組んでいることが明らかになると思うんです。
 そして、美浜については、これは昨年の十月二十七日ですけれども、田中委員長から発言があったことも記されております。関西電力側の希望をしっかり聞いて原子力規制委員会としてしっかり取り組んでいきたい、そういうことをるるおっしゃっているわけなんですね。
 私は、本当におかしいんじゃないかなと思うんです。最初の記事の中にも書いてありますけれども、数万ページに及ぶ資料にミスが見つかるたびに、規制委員会への説明に追われていた、四月の残業も百時間前後で、また、そのときはちょうど審査のときでしたので、連泊をして、出張先のホテルで亡くなって、見つかったのは合格の当日だったというわけであります。これは、審査会合の議事録を見ましても、私にはちょっと技術的な言葉でわからないことがよくあるんですが、ただ、本当に精力的にやっていらっしゃいますよね。あしたまたやりますとかおっしゃって、次々とやっている。
 それは、規制委員会も大変な苦労をされたと思うんです。なぜなら、電力会社からも大変な圧力がありました。二〇一三年の七月に新規制基準が発表されているわけですが、それに駆け込むために電力会社が激しく早く自分のところをやってくれと言っているわけですよね。
 例えば、二〇一三年の六月六日の日経新聞、ある電力会社の幹部が、再稼働が一日おくれるごとに経営状況が悪くなる、このままでは株主代表訴訟に呼ばれるかもしれない、こういうことまで言って、早く早くと規制委員会をせかす。だから、規制委員会も大変だったとは思うんです。
 でも、やはり、電力会社の要望に合わせて審査の優先順位を変えたり、期限の四十年を無理やり合わせるために早く早くとやるのは、やはり規制委員会としてののりを越えているのではないでしょうか。
○田中政府特別補佐人 原子力規制委員会の事情によって事業者に審査の対応を急がせたということはありません。
 基本的に、先生御指摘のように、多くの審査案件がありまして、日々私どももチームを編成して対応させていただいております。
 高浜発電所一、二号機については、御案内のように、運転期間が本年七月七日に満了するという法律上決められた状況がありました。それから、美浜三号機については、十一月三十日で満了になるということがあり、関西電力だけに関して言えば、そのほか大飯の三、四号機の審査も同時並行でしたので、関電の社長さんに来ていただいて、どういうふうに会社としての考えがあるのかということを確認した上で、高浜、美浜もということでありましたので、やはり期限を見ながらそれに対応できるような、私どもも対応をさせていただいたということであります。
 その分、当然、ほかの事業所の審査は少しおくれるということもありますが、そういったことについても十分に関西電力の社長にはウオーニングを出しまして、私どもとしての対応をさせていただいた、最大限の努力をさせていただいてきたということでございます。
○高橋(千)委員 きょうは、これ以上は委員長にはお話ししませんけれども、先ほどの原発の一覧表をもう一度見ながら聞いていただきたいんですが、結局、順番を変えたことによって、後の方の原発もまた早く早くというふうになっちゃうわけですよね。そういう中で今の事案が出てきたのではないかと思うんです。
 予算委員会では、大臣は、この除外をするに当たって、九州電力から要望があって通達を発出したと答弁をいたしました。では、どうして九州電力だけではなく、今ここにあるほかの電力会社の原発にまで除外を認めたんでしょうか、個別審査するべきではありませんか。
○塩崎国務大臣 十月十二日の衆議院の予算委員会で御答弁申し上げましたが、九州電力からの要望は、発電用原子炉が新規制基準に適合しているかの審査、これに関する業務を限度基準の適用除外としてほしいというものでございました。
 九州電力からの要望は自社の原発についてのものでございましたけれども、当時の厚生労働省労働基準局において、新規制基準に適合しているかの審査に関する業務の内容を精査した結果、公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になると認めて、平成二十五年時点において原子力規制委員会に申請されていたものに限定して、三六協定の限度基準告示の適用を除外することとしたものでございます。
 こうしたことは、同時期に原子力規制委員会に申請のあった他の原発にも当てはまると当時の労働基準局が判断をして、通達の発出を行ったものというふうに理解をしているところでございます。
○高橋(千)委員 これは、全然おかしいと思うんですね。労働局の立ち位置がおかしいんじゃないですか。九州電力が自社のことだけ頼んだと言っているのに、何でほかの原発のことまでそんたくして、大変だろうと除外してあげるんですか。応援していることになりませんか。
 これは、結局、多分この時期に、七月八日の申請に間に合わせるために、もう既に違法状態、限度基準を超えている労働実態があったんじゃないですか。それをわかっていたから、何とかしたい、そうお願いもあったし、よそもそうだと、そういう態度をしたんじゃないですか、明らかにしてください。
○山越政府参考人 お答えいたします。
 今大臣からも御答弁申し上げましたとおり、平成二十五年当時、九州電力から要望がございまして、これを受けまして、当時の厚生労働省労働基準局におきまして、新規制基準に適合しているかどうかの審査に関する業務の内容を検討いたしまして、その結果、こういった業務が公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になるということを認めて、この当時申請されていたものについて除外を認めることとしたものでございます。
○高橋(千)委員 これは一言で終わります。
 最後の資料に西日本新聞をつけておいていますので、左側の記事を見ていただきたいんですね。これは私が質問した翌日の記事で、九州電力に取材をしてくださっているんですね。
 そうすると、要請した時期は二〇一三年の七月だと認めた上で、アンダーラインを引いていますが、九電が言っているのは、「法令順守の観点から、適用除外の可否を労働基準監督署に問い合わせた」と書いております。これはおかしくないですか。ルールを守るために、自分のところをルールから外してくれと言うんですよ。そうしたら、何でもありじゃないですか、外してもらったら、ルールを守れますって。こんなのを認めているのが今の厚労省だということなんです。だから働き方改革なんて言っていられないと言ってる。
 私は、大臣にあと求めて終わります。答弁は要りません、続きはまたやりますからね。公益だと言って除外をしておきながら、実際に事件が起こったら、個別だから答えられない、こんなばかな話はありません。除いた企業の労働時間の状態、労災の実態、これをきちんと調査して、この委員会に出してくださることを要求して、終わります。

 

――資料――

【資料1】「原発対応課長 過労自殺」(愛媛新聞2016年10月20日付)

【資料2】労働基準局長通達(2013年11月18日付)

【資料3-1】労働基準局監督課長通達(2013年12月5日)

【資料3-2】労働基準局監督課長通達(2013年12月5日)

【資料4】関西電力資料(新規制基準適合性審査の状況)

【資料5】「再稼働で残業制限外す」(西日本新聞2016年10月9日付)、「残業規制の適用除外『九電の要請で対応』」(西日本新聞2016年10月13日付)

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