日本共産党の高橋ちづ子議員は14日の衆院厚生労働委員会で、高齢者の深刻な暮らしの実態を示し、民主、自民、公明3党がもくろむ年金給付額削減の中止を迫りました。
高橋氏は、70歳から74歳の高齢者の医療費窓口負担が来年4月から2割(現行1割)に引き上げられれば9割以上の高齢者に影響が出ることを指摘。「医療費と介護保険料の負担増、年金の連続引き下げと消費税増税という連続負担増に高齢者は耐えられない」と迫りました。
三井辨雄厚労相は医療費窓口負担増については「来年度予算編成で検討する」と述べましたが、高齢者の連続負担増については「すべての世代に負担をしていくことが必要だ」と強弁しました。
高橋氏は、全日本年金者組合の調査では、「負担」のトップが食費であることを紹介し、「生きていくためのぎりぎりの費用ですら負担になっている実態だ」と強調。その上で低所得高齢者対策として打ち出している「老齢年金生活者支援給付金」について、満額の5000円がもらえるのは40年納付した者だけであり、「逆に負担増で吸収されてしまう。無年金・低年金対策にもならない」と指摘し、年金給付削減は中止する以外にないと主張しました。
櫻井充厚労副大臣は、「超高齢化社会を迎え、社会全体で手当てしなければならない」と正当化。高橋氏は、「負担能力に応じた負担をこそ求めるべきだ。非正規が当たり前の雇用のあり方を変えて、安心の社会保障で購買力を増やす方向に政治を切り替えよ」と反論しました。
(しんぶん赤旗 2012年11月15日より)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
年金法案に入る前に、年金生活者にとって非常に大事な高齢者医療について一言伺いたいと思います。
七十代前半の方の医療費窓口負担は、今回まだ補正措置がされていないために、このままでは来年四月から二割になってしまいます。先週の委員会では、来年度予算編成の中で検討すると大臣は答弁しているかと思います。
後期高齢者医療制度については、〇九年の政権交代につながる大きな反対運動が起こりましたし、ここに座っていらっしゃる長妻委員長もしかりでありますし、私も衆議院で共同提案に加わって、廃止を目指して頑張っていたかと思います。ただし、事実上、廃止の公約が破られたのではないか、このように思うんですね。
ただ、医療費の窓口負担については本則二割を一割で維持してきた。これは後期高齢者医療制度をつくった自公政権時代に補正で維持してきたことでありまして、それを何も、政権がかわったのに、やめて二割にする必要はないわけです。一割で維持すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○三井国務大臣 今御質問ございましたように、七十歳から七十四歳までの患者負担につきましては、法律上二割とされております。平成二十年度の後期高齢者医療制度の施行に当たりまして、円滑な施行を図るために一割に凍結、それ以降もこれを継続しているわけでございます。
御指摘の七十歳から七十四歳までの患者負担につきましては、いろいろ御意見もございます。そういう中で、見直しに慎重な意見もある一方、世代間の公平の観点からも、高齢者であっても相応の負担をしていただくという視点も重要だ、こういう意見もございます。
いずれにしましても、平成二十五年度の予算編成過程で検討してまいりたい、このように考えているところでございます。
○高橋(千)委員 この時期に至ってまだそういう検討という、来年度の予算編成に当たってということで、かなり時間的には厳しいものがございますが、しかし、やはり余りにも大きな影響なんだ、そういう立場に立っていただかなければならないと思うんですね。
全国保険医協会が診療所や病院に対して行った二〇一〇年度の調査で、この半年間に患者が経済的理由から治療を中断または中止する事例があったか、この問いに対して、あったと答えた方が三八・七%、医療費負担を理由に検査や治療、投薬を断られたことがあった、これは四三・一%、また未収金は四八・二%あると答えているわけです。
ですから、今、医療費の窓口負担は、二割に上げるよりも、むしろ、全体として、若い世代も含めて、軽減する、三割負担は厳しいということが全体の声ではないか、ここをしっかりと受けとめていただきたいと思うんです。
〇九年の数字しかちょっともらっていないんですけれども、七十歳から七十四歳の医療保険加入者数は六百三十一万人です。うち三割負担に該当する現役並み所得者、現役並みということも非常に厳しいあれですけれども、五十八万人にすぎません。つまり、言いかえれば、九割以上の方にこの二割ということは影響が出る、こういうことなんですね。
大臣に伺いたいと思うんです。
医療費の窓口負担増、介護保険料の負担増、その上、特例水準の解消による年金の連続引き下げ、そして消費税増税という連続負担に高齢者が耐えられるでしょうか。年金の手取りがさらに減ったということと同じ意味になると思うんですね。
高齢者の生活実態をどう認識し、その影響についてどうお考えなのか、大臣に伺います。
○三井国務大臣 高齢化の進展によりまして、社会保障給付費は増大せざるを得ないと思います。また、高齢者を含めた全ての世代に御負担をお願いしなければならないと思います。また、給付内容を充実させるためにも、負担の上積みは避けられません、上昇は避けられません。
一方、世代間の公平を図り、負担を将来世代に先送りせず、社会保障の持続可能性を確保することが必要であります。
なお、今回の御審議をお願いしている年金の特例水準解消は、本来の年金額より高い水準で支給している措置を解消いたしまして、現役世代の将来の年金額の確保につなげるものであります。
また、負担面のみに着目するのではなくて、消費税の引き上げに伴って実施されます医療、介護等の充実など、給付面も考慮する必要があります。
いずれにしましても、今回の一体改革におきまして、低所得者に対して、年金生活者支援給付金の支給や保険料軽減などの対策を講じることとしております。
○高橋(千)委員 大臣は私の質問に直接答えていないと思うんですね。生活実態をどう認識して、影響をどう考えるかということを伺ったわけです。
負担の上積みは避けられないとおっしゃいました。増税によって医療や介護が充実するとおっしゃいました。その保証は一切ありません。今出ている法案や検討されている方向の中で、ああ、これは充実だなと思うものがないじゃありませんか。
それから、特例給付の水準の解消についても、これは一体改革の委員会で私が指摘したことですが、十年以上かかって起きた乖離を三年間で急激に解消しようとするわけなんです。一気にやろうとするものなんだ。これを本当に今の高齢者に一気に押しつけることがいいのかということを指摘したはずであります。
そこで、もう一度同じ質問をしますけれども、次のことを少し聞いていただきたいと思います。
資料の一枚目に、総務省の消費実態調査のデータをもとに我が党が試算したものなんですけれども、実際の年収に対する消費税の負担割、これを出させていただきました。
これは誰も想像できると思うんですが、年収が高いほど当然ゆとりがあって、全部使わなくてもいいわけですので、消費税の負担率は軽いことになります。しかし、所得が低いと、食べることや生活必需品にほとんど費やされるので、負担率が高いわけですね。
特に、一番下の年収二百万円未満の方の負担は、何と五・三%。つまり、消費税が五%であるにもかかわらず、五・三%になっているんです。これは、手取りでは生活ができなく、貯蓄を取り崩してまで年収以上に消費せざるを得ない実態を意味しているのではないでしょうか。
全日本年金者組合女性部の実態調査、これは政府交渉のときに厚労省の担当者の方にもお渡しをしているので、ごらんになっているかと思うんですけれども、さまざまな実態が出されています。
その中で私が非常に心に響いたなと思うのは、家計の負担になっているのは何か、そのトップが実は食費なんです。四一%。つまり、生きていくためのぎりぎりの費用が負担だ。言いかえれば、ほかに削るものがないということなんですよ。節約できるものは、電気、ガス、水道など全て節約している、買い物は食べるものだけです、年金だけでは衣類を買うことができない、夏にはガスの元栓を閉めている、テレビの明かりで食事をしている、そういう実態も政府交渉のときに紹介をされました。
まず、こういう実態を大臣自身がどう受けとめているのか、それに応じて影響をどう考えるのか、もう一度お答えいただきたい。
○三井国務大臣 先生のおっしゃるとおり、その生活実態というのも私なりに認識しているところでございます。
しかしながら、社会保障を安定化させるためには、やはり消費税というのはどうしても必要だ、こういうぐあいに考えているところでございます。
いずれにしましても、最低保障年金制度につきましても、今、セーフティーネットというのも私たちは考えているところでございますので、ぜひそういうことで御理解いただきたいと思います。
また、現役世代の生活が苦しいということは当然理解いたしますが、しかしながら、高齢者にもやはり一部引き受けていただきたい。全世代でやはり負担をしていくということが必要だと思います。
そういう意味で、消費税については社会保障に充てるということにしたい、こういうぐあいに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 一部引き受けていただきたいというお話がありました。先ほど櫻井副大臣も高齢者の貯蓄の話をされましたね。だけれども、政府の統計によっても、公的年金受給者の六割は年金だけが家計の全てなわけですよね。その実態と一部の貯蓄をたくさん持っている人とを一緒くたにしてはいけない。私たちはちゃんと、持っている人からもらってくださいということを主張していますので、混同しないようにお願いをしたいと思います。
さて、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる財源二兆六千億円は、年金特例公債の償還原資が消費税財源であり、今後も、平成二十六年度以降の消費税の増収分を財源としてということが明確にされました。
ただ、その消費税については、先ほど来も議論していますけれども、附則十八条の三によって、経済財政状況の激変にも柔軟に対応するとあるわけで、経済状況が回復しない場合、増税できない場面も当然生まれると思います。
そうすると、今回の特例公債は既に先取りをしてしまっているわけですから、穴があくことになっちゃうわけですよね。どうなるのでしょうか。どうするつもりでしょうか。
○櫻井副大臣 先ほど三宅委員に対しても御答弁させていただきましたが、我々は、まず一つは、消費税を上げられる環境をつくっていきたい。これは、済みませんが、消費税を上げるためだけではなくて、日本の経済を活性化するというのは、これは消費税の問題だけではなくて、これは共産党さんを含めて全ての議員の方々が同じ思いだと思っております。
その上で、そのようなことが起こらないようにすることが、これはまず努力するべきことだと思っていますが、そうできなかった場合については、先ほども御答弁申し上げましたとおり、状況が変わったわけですから、その時点で、どういう形でそのことについて手当てしていくのかということは考えさせていただきたいということでございます。
それから、もう一点だけちょっと申し上げておきたいことがありますが、我々も負担増を望んでいるわけでも何でもないということ、このことは、これは御理解いただきたいと思っています。
ただし、今の状況で、逆に申し上げれば、超高齢社会を迎えて、年金の給付や、それから医療費、それから介護保険料などがどんどんふえていきまして、平成三十七年には現在のレベルの一・五倍まで給付水準が膨れていくわけです。そうすると、これを一体どうやって手当てしていくのかということは、これは社会全体で手当てせざるを得ないわけです。そうすると、おっしゃるとおり、負担できる方々が負担されるというのは、これは当然のことだと思いますが、では、どこまでの方々にそういった御負担をお願いするのかということだと思います。
それから、先ほど消費税のお話がありましたが、だからこそ、消費税を引き上げた際に低所得者対策もきちんと行っていきましょうということは盛り込んでありますので、そういったこと全体を含めて議論をさせていただければありがたい、そう思います。
○高橋(千)委員 時間がちょっと限られておりますので、今の提言に基づいて私もさらに反論したいところですが、次の質問にまず答えていただきたいと思うんですね。
というのは、経済活性化を望んでいる、当然であります。私たちもそういう提言を出しています。問題なのは、穴があいたら困るから絶対増税できるようにしなければならないということではないんです。修正合意で、向こう三年間、法案なしに赤字国債が可能となるといいます。これはとんでもないことであります。また、増税できなければ順繰りに赤字国債で穴埋めするとでも言うのでしょうか。
私は、そういうことではなくて、今回の措置によって基礎年金の二分の一国庫負担は既に法定化されるわけですよ。その差、三六・五%という計算も必要なくなるんです。つまり、この基礎年金の財源を増税とリンクさせるべきではない、こういうふうに思いますが、いかがですか。
○櫻井副大臣 これは、二年前に財務副大臣を務めさせていただいたときに相当議論をさせていただいたんです。
社会保障の伸びが、現在毎年約一兆円ずつございます。これを、各省庁の支出を相当抑制して賄ってまいりましたが、今我が党が定めている中期財政フレームの中で申し上げると、結果的には、もうここのところが賄い切れなくなった。これは自公政権のときから、この制度をつくったときに安定財源の確保ができていなかったわけです。
結果的に、我々も埋蔵金を一生懸命探して手当てしてまいりましたが、決してそうならなかった。その結果として新たな財源を求めざるを得なくなったということでございます。
○高橋(千)委員 その話も、一体改革の委員会のときに、私、岡田副総理への質問で言っているんですよね。
一兆円の乖離と言いますけれども、二兆円もの増税を、その当時、国民にしているわけですよ。定率減税の廃止ですとか公的年金等控除の廃止、縮小ということで、これを基礎年金に入れると約束したんですから、それを流用してきたということを忘れてはなりません。財金の副大臣のときにさんざん指摘をされていたことだと思います。
それで、資料の三枚目に、さっき副大臣がおっしゃった低所得者対策ということだと思うんですが、最大で月額五千円の老齢年金生活者支援給付金、これが出るわけですけれども、これは実は納付実績に応じてなるわけですので、四十年間納付した方が、基礎年金月額六万四千円、これは物価に応じた額がこの程度になるだろう、それプラス五千円、満額でこれなわけですね。
ですが、二十年納付になりますと、半分になって云々で月額二千五百円ということと免除給付金というふうな形で、だんだん減っていって、十年納付、新しく十年ルールができましたけれども、月額千二百五十円にすぎないわけです。そうすると、足していっても二万円にならない。
これでは、無年金、低年金対策にもなりません。いわゆる基礎控除三十八万円から見ても、最低生活を割ることになるわけです。どのようにお考えですか。
○糸川大臣政務官 一体改革では、当初、低年金問題への対応として年金加算を行うということが提案されておりましたけれども、三党協議の中で、保険料の納付意欲を損なって、社会保険方式になじまない、こういう意見が出されたところでございます。
この意見を踏まえまして、年金加算については、三党合意において、年金制度の枠外で実施することとされるとともに、給付金の額を、保険料の納付意欲に悪影響を与えないよう、納付実績に比例するということとしたものでございます。
低年金対策としての効果とともに、年金制度への影響、この双方を考慮した結果としての判断であるということで御理解をいただきたいと思います。
○高橋(千)委員 五千六百億円を投じて低所得者対策だといっても、これでは、結局、最低生活も保障できないで、保護に頼らなければならないのか。そういうことを全体として考えたら、このような、つけ焼き刃と言ったら大変失礼ですが、数字合わせをすることよりも、取られるものを減らす、負担を減らす、そうして全体として最低年金の設計をつくっていくという方がずっと建設的ではないかと指摘をさせていただきます。
それで、障害年金は、基礎年金が月額五千円、一級の方は六千二百五十円給付されるといいます。
私は、ここで一つ提案をしたい。
無年金者救済のために制度化された特別給付金の受給者も、この五千円給付の対象とすべきではないかと思うんですね。この対象者がどのくらいいて、必要額が幾らか、このこともあわせてお答えいただきたい。
○糸川大臣政務官 先ほどの繰り返しになりますが、三党合意において、納付意欲というものをしっかりと、損なわないようにしていくということがございました。
先生御指摘のことでございますが、給付金の支給につきましては、こうした協議の経緯を踏まえまして、年金受給者の対象ということにさせていただいております。
人数と金額でございますけれども、平成二十二年度末の特別障害給付金の受給者数というのは、一級の方が二千百九十八人、二級の方が六千八百十四人の、合計九千十二人となってございます。この人数に、一級の月額六千二百五十円と二級の方に五千円ということを機械的に乗じますと、およそ五億七千万円となってございます。
○高橋(千)委員 こういうものは、五億七千万という額は、これはもう支給していいのではないか。実際には無年金障害者は十二万人と言われますので、やはりそこに向かっていくべきだ。特別給付金だって、本当は年金として出してほしいという中からこうしてできた制度ですので、一歩進めていただきたいということは要望したいと思います。
最後に、指摘にとどめたいと思うんですが、先ほど来、やはり若い世代との均衡ということが何度も言われます。後世にツケを回さない。しかし、今、現実に起こっていることは、子や孫の世代が、仕事もなく、年金保険料の肩がわりを親にしてもらったり、おばあちゃんのすねをかじっている、これが実態ではないでしょうか。もう将来世代に云々という事態ではないんです。今、年金生活者が支えているというのが実態なんです。
先ほど紹介した年金者組合の調査には、そういう実態がたくさん紹介されています。
成人の息子がいるが、病気のため働いていない。生活保護も受けることができなく、私の年金のみで暮らしている。糖尿病の息子が職を持っていない。こちらの年金も少ないのに頼られている。四十五歳の長男と二人暮らし。十年前から働かないので将来が心配だ。四十三歳になる息子の仕事がない。三十六歳の次女は仕事が安定していない。娘が一人親家庭で、孫のサポートもしていますが、いつまでやっていけるのか心配です。これはどこにでもある話なんですよね。
社会保障制度改革推進法に書いたように、社会保障は家族で責任をとれと言っているわけでしょう。これだったら、もう今現在もそういう状態に置かれているわけなんです。
だから、財源が少ないから高齢者はもっと負担せよとか、そういうことだけでは、もうとてもじゃないが、潤いのある社会保障どころか、あしたの安心も築けない。
非正規が当たり前の雇用のあり方を抜本的に変えて、安心の社会保障制度で、むしろ購買力をふやしていく、そういうプラスの方向に切りかえていかなければならないということを指摘して、終わりたいと思います。