国会質問

質問日:2013年 3月 15日 第183国会 厚生労働委員会

生活保護基準引き下げではなく、最賃の引き上げこそ必要

 

(写真)質問する高橋ちづ子議員=15日、衆院厚生労働委

(写真)質問する高橋ちづ子議員=15日、衆院厚生労働委

 日本共産党の高橋ちづ子議員は15日の衆院厚生労働委員会で、政府の生活保護基準の見直しにより受給世帯の96%で最大10%引き下げが行われると述べ、基準引き下げは憲法が保障する最低限度の生活のレベルを国が引き下げることだと批判しました。
 高橋氏は、実施される基準引き下げで最低賃金が頭打ちになる危険性があると追及。最低賃金について、フルタイム労働者の労働時間をもとに生活保護基準と比べているが、平均実労働時間(月155時間)で算定すれば「ほとんどの都道府県で生活保護基準に追いついていない。生活保護を引き下げるのではなく最賃の引き上げこそ必要だ」と述べました。
 田村憲久厚労相が最賃引き上げは「中小零細企業に負荷がかかる」と述べたことに対し、高橋氏は使用者側から最賃と生活保護の整合性のあり方自体を見直すべきとの議論がでていると指摘。田村厚労相は、使用者側が主張する「(見直しは)いかがなものかと思う」と答弁しました。
 厚労省としてもできることがあると被災地支援のため同省が社会保険料の事業主負担を免除したことにもふれ、高橋氏は、中小企業支援とセットで最賃引き上げを行うことがデフレ不況打開につながると強調。自公政権時代の2007年、当時の柳沢伯夫厚労相が賃金底上げのために中央最賃審議会に引き上げを諮問したことに言及し、最賃引き上げによる内需拡大で不況を打開し、働く貧困層から抜け出していくという前向きな姿勢で取り組むべきだと強調しました。
(しんぶん赤旗 2013年3月16日より)

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――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、生活保護問題一本で田村大臣に質問しますので、よろしくお願いいたします。
 ことし八月から、生活保護受給世帯の九六%の方が平均六・五%の引き下げになります。衆参の予算委員会で多くの議論がされてきました。
 私は、〇七年の保護基準の見直し議論があったときも何度も議論に立っておりますけれども、しかし、基準そのものは下げなかった、そういう経緯があったと思います。このことを本当に大事にするべきではないか、その経緯を本当に踏まえるべきではないか。改めて、引き下げをやめるべきだ、このように申し上げます。
 大臣は、引き下げの理由について、繰り返し、ゆがみの是正と答弁をされています。
 しかし、基準を引き下げるということは、生活保護法が、憲法二十五条に基づく、そういう法律である限り、最低生活費とはこの程度と国が決めることになります。国民の暮らしが大変になっているのに、その底辺のところと比べて下げていく、これは、憲法二十五条に保障される健康で文化的な最低限度の生活がこのレベルというふうに下がっていく、こういうことは許されるんでしょうか。

○田村国務大臣 以前も予算委員会等々でお答えいたしておりますけれども、そもそも、ゆがみの是正というのは、第一・十分位という一定のグループの中の平均的な数字の中で、そのゆがみというものを生活保護の生活扶助の基準に当てはめて是正をしたというような手法でございます。
 具体的には、年齢、世帯人数、地域、こういうところを合わせてゆがみを是正した。言うなれば、生活保護世帯の中でも格差があったといいますか、不公平感があった、それを是正したというところでございます。
 もう一方は、これは今委員おっしゃられませんでしたけれども、物価の下落分というものを勘案して今回の適正化をさせていただいたということであります。

○高橋(千)委員 その比較したことをゆがみだと言い切ってしまっていいのか。それは基準部会の検討あるいは報告書から見ても、決してそうではないと思うんですね。
 なぜ、年収の階層を十分類して、その一番下である一の十分位と比較したのか。そもそも、人口は一〇%ということで割っていったということかもしれないのですが、年収で見ますと二・六%にしかなりません。所得の高い二割の世帯は全体の四割を占めている。そもそも、格差がその中にあらわれているわけです。この一の十分位の可処分所得の平均は九十二万円、最大でも百三十五万円。OECDの基準で見る相対的貧困線以下にあるわけですね。
 ですから、消費実態調査をする上で、サンプルの中に生活保護世帯が紛れ込んでいるかもしれない、それを除かなければ比較できない、こういうことが基準部会で最初に注意事項として出されているわけですね。しかも、報告書の中では、一の十分位の階層には生活保護以下の所得基準で生活している者も含まれることを留意すべきである、このように書かれているわけです。
 そもそも、そういう比較がおかしいのではありませんか。

○田村国務大臣 重ねて申し上げますが、金額の比較はいたしておりません。つまり、ゆがみの是正をしただけの話でありまして、そもそもの生活扶助基準というものは、今までの経緯の中で使ってきたものであります。
 ただ、そこに物価下落分というのを今回は勘案したわけでありますけれども、さっき言われたような、言うなれば、第一・十分位の平均的な金額というものをこれに当てはめたというわけではございませんでして、重ねて申し上げますけれども、地域でありますとか、年齢でありますとか、それから世帯人数、こういうもののゆがみをちょうどこれに当てはめたということでございますから、基準の金額をこれに合わせたというわけではございません。

○高橋(千)委員 金額を合わせたものではないということは十分承知をしております。しかし、そもそも限界がある。
 これは、資料の一枚目につけていますけれども、留意事項の丸が六つありまして、三つ目にちゃんと書いているように、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意。」する、このように述べているわけですよね。
 ですから、金額じゃないけれども、要するに、子供のいる世帯が乖離しているんだと。そこをかなり下げるというふうな格好に実態は反映しているわけですよね。
 それプラス、デフレの影響だということで、デフレの問題はきょう議論をしませんけれども、比較しているのはどっちも同じ影響を受けているわけですよね。だから、それを突然に基準部会が、つまり、これまでずっとデフレだったのに、そのことを考慮しないできたのに、何で今、取ってつけたように、多分、財政効果を上げるためだと思いますが、そういう形でデフレ論が出てきた。これは全く納得いくものではありません。
 それで、この資料の上の方についているように、大臣がさっきから、ゆがみ、ゆがみとおっしゃる乖離の部分ですね、夫婦子一人、子二人、高齢単身、こういうふうに比較したデータがございます。それを見ても、実は高齢単身が四・五%。これは、私が言っているように、一番低いところと比べてもさらに四・五%生活保護世帯の方が低い、そういうデータなんですね。これはもう言うまでもなく、老齢加算の廃止とか、こうした影響があったのではないか。
 ですから、いろいろ限界があるデータの中でもこんなに低いんだということがあるにもかかわらず、実際に二枚目の資料を見ますと、ほとんどプラスのところはないんだと。一番プラスで、プラス〇・一ですよ。あとは全部三角がついている。これは本当に是正されたと言えるんですか。

○田村国務大臣 ゆがみの議論と物価の議論と、ちょっと分けて考えなきゃいけないんだと思うんですが、ゆがみの方の議論をすると、委員がお配りをいただいた、一枚目の一番上のエのところですよね。このように、上がるところもあれば下がるところもあるということであります。それに物価を勘案する。
 ちなみに、一四%下がるところがありますけれども、これは最大限一〇%という話でありますから、そうは書いてありますけれども、物価も勘案した上で一〇%までしか下げていないということであります。

○高橋(千)委員 私は、多分、こういう議論をすると必ずおっしゃるのが今のせりふであって、そのままやるともっと下がるところがありますよ、一〇%では足りないところがありますよということだと思う。それは幾ら何でもあり得ないでしょうということで議論してきた。
 でも、その逆だってあっていいじゃないかと。乖離があるところがあったら、ある程度頑張ったよというのもなくて、結果としては、全体としては下がるところだけなんだということでいいのかということを今指摘したわけであります。
 要するに、低いところは大いに是正をすべきだ、だけれども、高いところをいきなりそのまま直すのはおかしいというのが、これまで積み重ねてきた議論じゃないかということであります。
 議論を続けます。
 保護基準の引き下げに連動して三十四の事業が影響を受ける、このことも繰り返し予算委員会などで議論をされてきました。政府として、わざわざ資料をつくってきたわけですよね。私自身も、昨年の一体改革の委員会で、例えば非課税世帯ですとか、就学援助ですとか、影響があるということを指摘してきました。
 私は、これは、全てはカバーできないと思います、どんなことをしたって。だって、自治体に委ねなければならないことがあるわけですから。
 ただ、私がきょうあえて大臣に指摘をしたいのは、やはり生活保護基準というのは、二百十五万人と言われる生活保護受給者を守っているだけではなくて、数千万人に及ぶであろう一般の人々の生活の下支えになっている。つまり、生活保護基準に近いくらい収入が低い人には税金を課さないんだとか、あるいは、減免をするのだ、そういって、せめて、収入が低いけれども可処分所得を守っていく、そういう役割を果たしてきた。だから、基準というのは、生活保護受給者のためだけのものではない、そう言えますよね。

○田村国務大臣 これも委員も御承知だと思いますけれども、生活保護基準というものを我が省としては一定のルールのもとでつくっているわけでありまして、例えば、今言われました住民税の非課税限度額等々は、それを加工してお使いになっておられる。これは、総務省の方が何を基準にするかということで、生活保護の生活扶助基準というものをお使いになっておられるということでありますが、全く機械的に連動はいたしておりません。それは向こうの方でいろいろと加工されているわけでございますので。
 そういうこともございまして、もう御承知のとおり、閣僚懇談会の中において、こういうものに対して影響をなるべく及ぼさないようにというような合意をいたしました。
 また、さらに申し上げれば、税というのは自公政権の中におきましては党が結構影響力があるというのは、もう御承知のとおりでございまして、税調の幹部の先生方ともお話をさせていただきまして、私がその旨をお伝えさせていただきましたら、それに関しては、十分に勘案しながら、来年度はこれは変わりませんから、再来年度、住民税の場合は変わってまいりますので、そちらの方の決定に向かって、しっかりとあなたの考え方というものに留意していくというようなお話はいただいております。

○高橋(千)委員 技術的なことではないんです。加工しているというのは十分わかっていますし、それを踏まえて昨年も議論をしています。
 そういうことを言っているのではなくて、生活保護が、さっき言っているように、憲法二十五条を踏まえたいわゆる最低生活、ナショナルミニマム、そうであるからこそ、これが一定の基準になっているんだ、いろいろな、いわゆる低所得とはどういうものかというのを考えるときの。そういう意味での大事な下支えになっている、そういう役割を持っているんだという、理念というか、認識の問題ですね。
 それはそうだと、一言で。

○田村国務大臣 今まではそうでございました。といいますのは、基準世帯というものがあって、そこから、それぞれの生活保護の、世帯人数だとか、そういうものを足し合わせて基準を決めておりました。
 ところが、今回はゆがみの是正をしましたので、それぞれの地域、それぞれの年齢、それぞれの世帯数というのが所与になっておりますから、これをそれぞれのいろいろな制度の最低基準というものに使えるかどうかというのは、これからの議論の中で、皆様方が、それぞれの制度の御議論をいただく話になってこようと思います。

○高橋(千)委員 今非常に重要な答弁だったと思うんですね。だって、今まではそうだったかもしれないけれどもとおっしゃいました。
 そうすると、生活保護のいわゆる法の理念そのものが変わってしまうのか。だって、基準額というものは、地域によって、あるいは世帯数によって変わるのは当たり前のことですよ。
 そんなことを言っているんじゃないです。それが下がったらやはり連動して下がるとかということは、下支えの役割がなくなってしまうということを私は指摘しているんです。そういう位置づけなんだよねということで、もう認識が変わっちゃった、自民党政権になって変わっちゃったということですか。

○田村国務大臣 要するに、それぞれの制度は、それぞれの制度の目的や趣旨、そういうものにのっとってやられているわけでありまして、厚生労働省が生活扶助の基準、生活保護の基準を使ってくださいと言っているわけじゃないというのは、もう御理解いただいていると思います。
 それを、何を使われるかということに関して、今までよりも使いづらくなったことだけは確かでございまして、それはなぜかというと、今までみたいに標準世帯というものがなくなっちゃったんです。全てのものが所与になっていますから、例えば、それぞれの制度が今までの生活保護の全ての世帯に当てはめてやっているわけではないわけでありまして、それぞれの制度の中におけるそれぞれの世帯の、要するに基準というものをどう使うかという場合に、今までみたいに機械的にはこの生活保護の基準を使いづらくなっておるものでありますが、そこは勘案されながら、それぞれの制度がどうされるかということを御決定されるんだというふうに思います。

○高橋(千)委員 ちょっと大臣、そこまで言っちゃうというのは、使いづらくなっちゃった、まるでほかの省庁が勝手に基準を参考にしているんだみたいな、そんなことを言っていいのか、それだけの重みのあるこの歴史的な法律を、そこまで言っていいのかと指摘しなければなりません。
 私は、社会保障制度改革推進法、やはりここのところに穴があいたのが、社会保障は自己責任というところから来ているのかなということを言いたいんですが、きょうは具体的な話をしたいので、ちょっとそこは抑えて、次の機会にしたいと思っています。
 そこで、保護を受けている人は、みんな満額もらっているわけではありません。これは相当誤解されていると思うんですね。中には、年金をもらっている、でも余りにも少ない、だって働いているときのお給料が少ないわけですから、とても暮らしていけない、あるいは、それでプラスパートで夫婦でやっと十二万四千円とか、そういう方もいるんです。そういう方がもらっている保護というのは数千円の場合もあります。何か、みんなが丸々もらって丸々楽しているみたいなイメージを持っている方がいるけれども、とんでもないんですね。
 そういう方たちが、一定の収入があるがために、これで、要するに基準が下がることによって、あなたは該当しませんとなっちゃうんじゃないか、はみ出してしまうんじゃないか、それを大変心配されています。いかがでしょうか。

○田村国務大臣 今のお話、例えば二十万の方が、一割仮に下がったとして、まあ一割は下がらないんだと思うんですが、一割下がったとしたら十八万だと。そうすると、十九万収入があって、二十万の基準に一万足らないから一万もらわれている方が、もらえなくなっちゃう可能性があるのではないか、生活保護から退出をされる可能性があるのではないかという御指摘だというふうに思います。
 理論上はそういうことはあると思いますが、そもそもそこまで本当に収入がある方がどれぐらいおられるかということ、それから、あったとしても、現場では、数千円でまた生活保護の世界に戻られるという話になると、やはり病気になったりして医療の費用がかかっちゃうと大変だということでありますから、その程度ですと、運用の中で、これは安定的に脱するということが一つの条件でございますから、そう簡単には生活保護から脱するというわけにはなかなかいかないという判断をされると思いますので、全くいないかと言われれば、全くいないとは言えませんけれども、そうはおられないのであろうというふうに認識いたしております。

○高橋(千)委員 ここもとても大事なことで、本当にそうだと思うんですね。
 数千円の保護からはみ出した分、何万円という扶助、今、住宅ですとか医療とかにはねてくるというのでは、保護をもらっている人よりもがくんと下がってしまうことになるわけで、それを考慮しているということを大臣は答弁されたんだと思うんです。その趣旨は、私、基準を下げるなということをまず前提に言っていますが、徹底していただきたい。すごく大事なことだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 さて、政府の影響の中に、最低賃金、これが入っていないのはどういうことでしょうか。これも、最低賃金法は、基準の見直しが議論されていた〇七年に改正をしておりますけれども、御承知のように、生活保護との連動ということが議論をされて、法律が改正されました。最賃を下げないまでも、頭打ちになるという作用が働かないのかと大変心配していますが、いかがでしょうか。

○田村国務大臣 御承知のとおり、これも委員はお詳しいと思いますけれども、最低賃金は、地方の最低賃金審議会の方で御議論をいただくわけでありますけれども、労働者の生計費でありますとか賃金水準、さらには企業の支払い能力、こういうものを勘案しながら、公労使でお決めをいただくわけであります。
 生活保護等々の基準を一定程度配慮するというような話はありますが、しかし、これは機械的に連動しておるわけではございませんから、決して、今回のことで最低賃金が下がったりだとか、上がりにくくなるということにはならないというふうには思っております。
 ただ、一方で、最低賃金というものは、当然、どちらかというと、大企業よりかは中小企業の方に適用されることが多うございます、中小零細の方に。
 そういう意味からいたしますと、経済の状況というものを十分に勘案しないと、それほど大きな引き上げというものは望めないわけでございますので、そういう意味では、今我々も、三本の矢を射込みながら、日本の経済をしっかりと力強いものにしていく中において、このような最低賃金も上がりやすい、そんな環境をつくろうというふうにいたしておるような次第であります。

○高橋(千)委員 上がりやすい環境でなくて、ぜひ上げてほしいという立場で、今これから質問いたします。
 まず、最低賃金と生活保護、これは本来は全然制度が違うものであり、時間給であるということもあるんですね。だけれども、この法律を改正したことによって、比較をするということを初めてやりました。最低賃金の審議会でこれを検討したわけですけれども、その比較をどのように計算するのか、簡潔にお願いします。

○中野政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生御指摘がございましたように、中央最低賃金審議会におきまして、平成二十年にその比較方法について整理されているところでございます。
 この整理によりますと、各都道府県の地域別最低賃金額を、時給でありますので月額に換算し、そこから税や社会保険料を控除した後の金額と、生活保護のうち、衣食住という意味で、若年単身世帯の生活扶助基準の都道府県内人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものということとの比較ということで、行っているところでございます。

○高橋(千)委員 時間の考え方なんですけれども、なぜ所定労働時間、百七十三・八時間ですね、なのかということですよね。これは、週四十時間、フルタイムで五日間、一年間休みなく働くということを意味しております。これは、今や三六%が非正規だという時代に、あるいは、パート労働者が圧倒的に多い、フルタイムではない方たちが圧倒的に多い、そういう中で、これを比較するというのが現実的なのか。
 当然、毎月勤労統計などで見ると、平均実労働時間は百五十五時間、こういうデータがございます。それを比べると、実際には、もうほとんど全ての都道府県が生活保護を下回っている、こういう実態になると私は思いますが、いかがですか。

○中野政府参考人 ただいまの点につきましては、最低賃金審議会におきまして、この比較の際に労使の間で議論があったところでございます。
 その際に、片や働いておられる方、片や生活保護を受給されている方というその実態の比較からすれば、働いている方の収入といたしましては、法定労働時間をベースにした考え方が適切であろうということで、議論の結果、その審議会で整理されたということでありますので、これによって比較されていくということが適切であろうかと思っているところでございます。

○高橋(千)委員 ぜひ大臣に伺いたいと思うんですけれども、これまで、最低賃金と生活保護の乖離を解消してきた、あと六つしかないよと言っています。でも、私が言っているように、実労働時間で比較すると、ほとんどなんです。まだ生活保護に追いついていません。その原因が、今説明をされたように、最低賃金審議会の中でそういう実態だったと。
 使用者側の意見は、最低賃金を月額換算する上で用いる労働時間については、実労働時間をとることは適切ではない、法定労働時間をとるべきである、このように言っています。つまり、長くフルタイムで働く、これを見るべきだと言っています。
 片や、最低賃金を上げてほしい、こういう議論になりますと、今や正職員で終身雇用のような形態はもうないから、パートなどがふえているから、高卒初任給並みというわけにはいかぬと議論している。
 全く身勝手なんです。実態がパートだから最賃を上げるわけにはいかないと言っておきながら、時間だけはフルタイムの正社員と比較しているんですね。これはおかしいじゃないですか。
 実態で比較をしてこれだけ乖離があるんだ、だったら、乖離があるんだったら生活保護費を下げて乖離を直しましょうじゃないんですよ。最賃を上げる、そういう立場に立つべきではありませんか。

○田村国務大臣 委員のようなお考え方もあるんだと思います。それぞれの考え方があるんですが、いずれにしても、最賃を上げるためには、企業もそれなりに、その賃金で事業が運営していけるようにならなきゃいけないという実態もあり、そして、最低賃金というのは、もちろん大企業でも適用しているところはありますけれども、中小で最賃で雇われているところは多いわけですね。
 そうすると、最賃が、今度、事業が運営できない中で上がっていくというような話になれば、当然、中小零細企業にはそれは大変な負荷がかかるわけでございますから、最賃が上げられるようにそういう経済環境をつくるというのが、我々政府、政治の役割だというふうに思っておりますので、そのような形にできるように頑張ってまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 最賃の議論をすると、必ず中小企業の問題が出てきます。当然、審議会の中でもそういう立場で議論がされるわけです。
 しかし、だからこそ、中小企業の対策もしっかり同時にやれということがこれまで議論をされてきたことと、そうやって雇用者の給料をふやすことが、結果として、めぐりめぐって中小企業の支援になるじゃないかということも議論をしてきたところです。
 震災後、最賃の引き上げが一円とかそういうときに、こういう議論がありました。
 二〇一二年版経営労働政策委員会報告。中小零細企業の存続を脅かす最賃引き上げということで、財界の方たちはおっしゃっています。震災後、三県の地方最賃が全会一致とならなかったことは、労使一丸となって復旧復興を目指す機運に水を差す結果となった。最賃引き上げによって雇用調整や自主廃業、倒産に追い込まれる企業が出てからでは取り返しがつかないことを肝に銘じておくべき。ここまでおっしゃっているわけです。
 しかし、同じ被災地の、例えば岩手日報などは、「事業所が徐々に復活し、震災で職場を失った被災者がようやく戻り始めている。そうした人々の生活を支えるためにも、賃金水準を上げる必要があるのではないか。」信濃毎日などは、「これで最低の生活を保障する時給と言えるのだろうか。」こういう指摘をしています。岩手は六百五十三円、長野は七百円、そういう水準なんですね。やはりそういう立場に立たなきゃおかしいじゃないかと地元紙が言っているわけです。
 当時、厚労省は、中小企業の皆さんが雇用を維持して頑張っている、それを応援するために、社会保険料の事業主負担を免除したではありませんか。民主党政権の時代でありますけれども、あっという間に打ち切られました。こういう形で応援する方法があるんですよ。それをやればいいじゃないかと。中小企業は大変だ、大変だというのであれば、大企業にばかり減税をしないで、中小企業に実のある支援をするべきだ、こういう立場に立って言いたいと思います。
 資料の最後につけておきましたが、平成十九年、柳沢大臣のときです。これは諮問書ですね。最低賃金審議会に対して諮問をしております。
 このとき、私は委員会で、最低賃金の決定権は大臣にある、これは条文がそうなっています、これで大臣に確認をしました。その後の審議会のときに、柳沢大臣が、パート労働者など非正規雇用が拡大して、働き方の多様化が進んでいる、だから最低賃金をぜひ引き上げたいと厚労委員会で答弁したということを、審議会にわざわざ大臣が出向いて発言をされています。
 その上で、この目安について、賃金の底上げに関する議論に配慮してくださいと言って、その後ろについている底上げ戦略推進円卓会議、この中でも、格差の固定化を防止するという議論がされたんだということ。これは、政府の意思が明らかにここに託されているわけです。
 だからこそ、安倍総理が予算委員会で、一九六〇年、最低賃金法を制定したのは岸内閣だ、二桁引き上げを達成したのは第一次安倍内閣だ、自慢ではないがと胸を張っていらっしゃいました。田村厚労大臣が、その第二次安倍内閣のもとで、こうした明確な最賃引き上げの意思を示すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○田村国務大臣 この合意に基づいて柳沢大臣がおっしゃられたことから、生活保護との逆転を是正してきたわけであります。残すところあと六都道府県というところまでやってまいりました。そういう意味では、その思いはそのままずっと引き継がれているんだというふうに思います。
 一方で、今も賃金が上がっているところがあります。それは、やはり経営状況がよくなってきているから、そういうところは上がっているわけでありまして、一方で、今回の春闘でも厳しい回答を出されたところもある。それは、非常に厳しい経営状況の中でそうせざるを得なかったのかもわかりません。
 最賃という意味からすると、繰り返して申し上げますが、この意思をそのまま継いで最賃を上げていくためにも、まず経済全体の底上げがないことには、これは全てに普遍的に係る最低賃金というものでございますから、なかなか委員がおっしゃられるような大胆な最低賃金の引き上げというものが見通せないわけでございますので、そうなるべく経済環境の整備にしっかりと努めてまいりたい、このように思っております。

○高橋(千)委員 やはりそれは経済環境の整備と一体でなければ、今のままだと、大企業は、かなりの支援策があるし、まだ内部留保もございますからいいかもしれないけれども、本当に中小企業は、めぐりめぐってくるのはいつになるのかという議論になるんですよ。
 そういう中で、今、使用者側からは、最賃と生活保護を連動させたことが厳しいんだ、今度の見直しの中でこの整合性のあり方について再度議論することが必要である、こういうことまで出ているんですよ。まさかそれはないですよね、大臣。

○田村国務大臣 審議会でお話しいただくことでありますけれども、まあそれはちょっと、今までやってきたことに対する否定でございますから、いかがなものかというふうに私自身は個人的に思います。
 いずれにいたしましても、そういう声が出ておるということ自体、経済状況がまだ十分によくなっていないということでありますから、そういう言葉が出ないような経済環境に持っていくというのが我々政府の仕事であるということを肝に銘じております。

○高橋(千)委員 最後に、要望します。
 労働総研の調査で、私たちは最低賃金全国一律千円というのを目指しているわけですけれども、仮にそれをした場合に、働いて、なお生活保護を受けている方たちが、今、一二・九%いらっしゃいます、そういう方たちが抜け出せるわけです。そうすると、十六万世帯がワーキングプアから抜け出せる。そうすると、何か保護がふえてお金がなくてというマイナスの考え方ではなくて、最低賃金を引き上げて、全体の地域経済を循環させて、そしてワーキングプアから抜け出すんだ、そういう前向きの発想をするべきではないか。
 ぜひ田村大臣には、審議会に御出席をいただいて、強い意思を示していただきたいということを要望して、終わりたいと思います。ありがとうございます。

質問の映像へのリンク

http://www.youtube.com/watch?v=c6EVRht75kk&list=PLrB7SAgyEZKKxdYAFtF3dzau-ftYrJhVk&index=10

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