――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の意見陳述人の皆さん、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
私は、比例東北ブロックの選出でございますので、福島も地元と思っております。また、青森県の出身でありますので、福島第一原発とは切っても切れない関係であるということで、きょうは大変貴重な機会をいただいたと思っております。
最初に伺いたいのは、私は、二月十五日の予算委員会で、大震災と原発事故から五年ということで取り上げさせていただきました。
その中で一番言いたかったことは、さっき話題にもなっております福島復興指針によって、帰還困難区域以外は来年の三月までに避難指示を解除し、そのための集中支援を行うのだということについて、やはり目標を持つことや、集中してそのために取り組むのはもちろん大事なことなんですけれども、ただ、それが、期限を区切って支援とか賠償が打ち切りということでは違うので、被害の実態ある限り必要なことを続けるべきではないか、このように指摘をいたしました。
安倍総理も、期限を切って行うものではないとお答えいただいたし、また、賠償についても、東電に対してやはり公平公正かつ迅速に対応するよう指導していくという明確な答弁をいただいたと思っております。
そこで、渡邊陳述人と斎藤陳述人に、この区切りの問題と損害賠償などの問題について、率直な御意見をいただきたいと思います。
○渡邊博美君 今お話ありましたように、五年という区切り、そしてこれが、先ほど申し上げましたように、まだまだ避難している方が十万人近くいらっしゃる。そして、先ほど申し上げましたように、相双地区だけで八千の事業所が事業を再開できない、これからどうしようかと悩んでいる。そして、実は、相双地区だけではなくて、福島県の中通り地区、そして会津地区にもそれぞれの地元を支える産業がありますけれども、それらも全て、かなりの風評被害あるいは人手不足とか、いろいろな影響を受けております。
あとは、一番は、人口減少というのは、実は、一人の人が消費する金額というのはそれぞれ、たくさんお金を使う人もいればいろいろありますけれども、おおよそ年間百万円というふうに我々は考えております、そうしますと、一万人が減るというのは、もうそれだけで大変な消費金額が下がるということで、そういう中で地元はいろいろな中小企業が仕事をやっておりますので、それでなくても影響は受けるんですね。
ですから、おっしゃるように、私も、期限を切るということは、一つの目標としてやるのは結構ですけれども、それがありきという形は、地元を非常に混乱させ、あるいは地元で仕事をやる人も住んでいる方も、やはり非常に精神的に追い詰めることになるのではないかなというふうに思っています。
我々商工会議所も、ほとんどが中小企業の団体ですので、それは我々もそうですし、日本商工会議所の三村会頭も、絶対サポートするということで、いろいろな現場に来ていただいていろいろなことを今やっておりますので、そういう意味で、期限ありきということはやはり考えないで進めていきたいというふうに我々は思っています。
以上です。
○斎藤富春君 先生がおっしゃったとおり、目標や集中というのは当然必要なものと、私も理解をしています。
ただ、一律に期限を切ってとなると、県の立場、各自治体の立場、それから住民の立場からいって、これはちょっと無理がある話なので、先ほど私述べましたが、県知事を会長にした県の損害対策協議会というのがあって、もちろんそこに国も、今回の指針の改定についての説明会を何度か行ったんですが、出された意見は、今、渡邊さんがおっしゃったとおり、一律の期限を設定するということについては、多くの意見というか不安というか、そういうものが出されていました。ですから、やはり実態に基づいた対策というのは必要になってくるというふうに思います。
先ほど私が言ったとおり、帰りたいという方はもちろんいらっしゃって、その方の希望を受けとめるということも必要なんですけれども、帰れないという方もいらっしゃいますので、そういうさまざまな思いの方、判断をされている方にひとしく国は寄り添うべきだというふうに私は思っています。
一番問題なのは、解除と賠償の問題がリンクするという問題ですね。なので、精神的損害賠償については一年長く賠償、補償するということですけれども、やはりリンクしているということが住民にとっては非常に不安な材料になっているということ。
あとは、きょうのために、先週土曜日、私は、広野町から楢葉町、富岡、大熊、双葉、浪江と、いわゆる六号線をずっと北上しましたけれども、本当に来年解除するんでしょうかというぐらいの状況でした。双葉、大熊というのは帰還困難区域なので、六号線の両側はバリケードが張ってあるんです。信号でとまる必要はないんですよ。黄色点滅ですから、ずっと高速道路のように真っすぐ走れるんです。
そういう状況を、やはり現地も見ながら、期限については柔軟な対応というのが必要だと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
営業損害の問題ですとか、もう少し賠償のことは聞きたいんですけれども、ちょっと時間の関係で、もし時間があればもう一度伺いたいと思います。
次に、斎藤陳述人に、労働者の問題で、除染作業の労働者ですとか、あるいは原発サイトで収束作業に当たっている労働者の相談を受けたり、そういう活動をされていると思うんですけれども、少し実態とか要望とかをお聞かせいただければと思います。
○斎藤富春君 福島の復興にとって、安全な事故収束と除染というのは大前提になると思っています。そういう点で、原発で働く作業員、除染に携わる作業員という方々の努力が絶対必要なわけです。
ところが、私たちの相談に寄せられた状況を見ますと、まず、原発労働者の場合には、第一原発、七千人の方々が日々奮闘されているんですけれども、御承知のとおり、多重下請構造という仕組みがあります。東電は、積算労務単価をもちろん持っています、そして危険手当ももちろん払っているということですが、その内訳は一切明らかにしていないんですね。
私たちが現場の労働者や下請の社長から聞いた話だと、例えば、積算労務単価は一日五万から十万を東電は設定をしています。しかし、私たちのところに相談に来る、例えば七次下請の作業員などは、一日六千円という方もいらっしゃいました。多い方で一万二千円です。ですから、五万円だとすれば六千円、十万円だとすれば一万二千円。八割、九割がピンはねされる、こういう仕組みの中で命がけで働いているというのが原発労働者。
除染労働者も、これは環境省管轄の公共事業であります、一万円の危険手当がついていますので、国交省の基準でいうと一万六千三百円というのが除染作業員の日当になります。それに危険手当がプラスされる。
ところが、私たちのところに相談に来る労働者は、大体一万五千五百円から一万六千円の手取りなんですね。要するに、その中身を見ると、一万円の危険手当というのは間違いなく作業員に届けなくちゃいけないので、それは来ている。しかし、残りの五千五百円から六千円というのが日当になるわけです。
この根拠は、福島県の最低賃金なんですね。福島は、七百五円というのが時給、最低賃金です。これに八を掛けていただけるとわかります。これにべったり張りついているという状況。
これが除染という公共事業の末端で作業する作業員の実態だということで、やはりきちんとした処遇と、それから、要するに、作業すればするほど被曝をするという特殊な作業になりますので、そこの安全管理、健康管理というのが重要な課題になっているというふうに思っています。
○高橋(千)委員 貴重な御意見、ありがとうございました。
次に、山名陳述人に伺いたいと思うんですが、廃炉のキーマンと呼ばれているということで、緊急時対応と中長期の対応について今お話をいただきました。
それで、先に汚染水の問題なんですけれども、先ほど、緊急時、最初は大変どたばたしていたけれども改善されてきているとお話がありました。とにかく出だしがどたばたしていたことと、初めてのことばかりなのでいきなりうまくいかないのは当然であろう、それは私も理解をしているところなんです。
ただ、現状認識の問題で、例えば海側遮水壁が汚染濃度が意外に高くて、結局建屋にバックをしている。そのバックをしていることによって、汚染水が、当初は一日四百トンと言われていて、それが百五十トンまで減るんですよ、原子炉に行く前に海に戻すんです、そうした説明がされていたわけですけれども、結局振り出しに戻っちゃった、今そういう状態なわけですね。
また、十五日に規制委員会の検討会が開かれておりますけれども、凍土壁の問題。結局、全部きかせてしまうと、やはりきき過ぎて、むしろ建屋の中の汚染水が漏れ出すのではないかという規制委員会の指摘もあり、今海側だけをとりあえずすることにしたというふうな報道もございました。
こうした現状を見ると、なかなかまだ改善とは言えないのではないかと思いますが、伺います。
○山名元君 汚染水の問題について御質問なんですが、まず、私の機構は、実はこの汚染水問題については直に関与していない立場におります。国の汚染水処理委員会が管轄している事項であります。
したがって、これから私が申し上げますことは、我々も汚染水というのは非常に重要に考えておりまして、独自にしっかりウオッチしておるわけですが、先生の御指摘について言いますと、結局、凍土壁というのは、地下水を汚染した原子炉に近づけないための遮断措置なんですね。それによって地下水が建屋の中に入らないようにして、汚染水の蓄積、増加量を防止、低減しようという発想でやっているわけです。
規制庁の方から、凍土壁の運用に関して、地下水の水位のコントロールにおいて慎重にいきなさいという指示を受けてきた、これが現実でございます。
確かにその指摘も当たるところがあるわけで、したがって、十五日の監視・評価検討会の方で、海側からまず壁をつくっていこうという一つの結論に向かっているわけですが、これはあくまで、地下水の水位のコントロールを慎重に見きわめた上で、凍土壁については完成に持ち込むという指導なんですね、慎重に。
したがって、この問題は決して解決していないというのではなくて、むしろ地下水のコントロールを慎重にやって、汚染水がもう外に出ないような慎重な対応をとりながら、海側とそれに続いて陸側の凍土壁を閉じていこうという方向を向いているということです。
したがって、ある意味で、リスクを避けるために慎重にとっていることであって、これは凍土壁が、もし、そういう、慎重に見ながら、特に地下水コントロールに問題ないという結論が見えてきましたら、全体を閉じれば地下水の流入量は間違いなく減るということになります。したがって、地下水を近づけないという当初の目標を達成することができるようになるということになるんです。
したがって、この問題は、慎重にやっているという観点で、もうしばらく慎重に見ていただけないでしょうか。その経緯を見た上で、凍土壁をきちんと閉じたときに流入量をどれぐらい減らせるか、それがうまくいけば一日百トン以下に下げられるということで今計画しているわけですが、そういうポジションにあるということを、まず御理解いただきたいと思います。
○高橋(千)委員 東電から説明を受けているんですが、たくさんのポンプで水位との関係、上げたりはしないのだという説明をされていました。
ただ、それ自体が深刻なことだなという受けとめをしておりまして、もちろん慎重に見ていくという立場だというのはよくわかっておりますけれども、なかなか、今現状が改善に向かっていると言い切れるかなという疑問点を述べさせていただきました。
もう一つ、第二原発の廃炉についてどのようにお考えか、ぜひ伺いたいと思うんです。
山名陳述人がいろいろな場所で、産経新聞などにも意見を述べておりますけれども、やはり、そうした原発の、要するに廃炉について、福島県議会でも決議をしているし、全体の意見としては全基廃炉となっていると思うんです。だけれども、そのことがいつまでも決定されない。そのことについて、先生の知見でさまざまな指摘があると思うんです。
例えば、会計の問題ですとか、あるいはエネルギー需給計画との関係でベストミックスでは必要なことであると。つまり、再稼働がやはり計算上も必要だと思っていらっしゃるのか、あるいは東電の救済という点でも必要なことだと思っていらっしゃるのか。そうしたことを、もし問題意識がおありでしたら伺いたいと思っております。
また、同じ質問を斎藤陳述人に、県内の意見をよく聞いている立場で、もう一度伺いたいと思います。お願いします。
○山名元君 そうですね。非常に難しい問題なんですが、私自身は、国全体のエネルギー計画の問題と福島第二の問題は全く分けて考えるというスタンスで考えております。
国全体の話は極めて長期であり、また、CO2、COP21の問題とか、エネルギー依存の国がどう生きていくかという非常に大きな話というふうに伺っておりまして、その中で、政府としてはあるエネルギー基本計画を決めておられる、こういう理解でございます。
しかし、福島第二の話は、福島県民にとって、この事故をして、原子力じゃないという気持ちは当然わかりますよね。大変なお気持ちの問題でありますから、国全体のエネルギー基本計画と福島第二の問題を直にリンクさせて考えることはそもそも無理な話であると思います。
そういう意味で、東京電力自身がそれをどう扱うかということはまだ時間が要るとは考えておりますが、いずれにせよ、福島県民の皆さんの心情をやはり尊重する必要があると思っておりまして、非常に特殊な位置づけにあるものを、県民の感情、皆様の感情もしっかりと考えながら、東京電力と福島県でしっかり議論されるべき問題だというふうに思っております。
そういう意味で、私自身は、今この機構の代表でございますが、それについて実は論評する立場にないと言った方がよろしゅうございますね。そういう意味で、私自身としては、国のエネルギー計画と福島第二という極めて特殊なケースの問題はしっかり分けて考えるべきだというふうに考えております。
○斎藤富春君 第二原発の廃炉については、ここで私がコメントできないぐらいというか、言う必要もないぐらい、さっき私が言いましたのは、県議会、それから五十九の市町村の議会全てが、もう福島には原発は要らないという決議を上げていますので、これ以上のものはないと思います。
そして、先ほど私、現地に行きましたというふうに話しましたけれども、現地の方の話を聞くと、帰れない理由がいっぱいあるわけですけれども、その大きな理由の一つに第二原発があると。楢葉は立地自治体ですから、そういうことも当然出てくるわけですね。
ですから、本当に私、コメントする必要がないぐらい、このことははっきりしているということを申し上げたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
今、山名陳述人が、県でしっかり議論云々とおっしゃって、心情を尊重させるべきだとおっしゃった。でも、本当、県では今、斎藤陳述人がおっしゃったように、既に結論は出ているわけなので、国と東電に決断していただきたいということを重ねて発言して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。