待機児問題 保育士の処遇改善こそ
高橋衆院議員 「詰め込みやめ恒久策を」
日本共産党の高橋千鶴子議員は30日の衆院厚生労働委員会で、政府が出した待機児童の緊急対策をただし、保育士の抜本的な処遇改善を求めました。
緊急対策は子どもたちの詰め込みであり、「預けられればいいのではないというのが保護者の声だ。(増床や分園など)恒久的対策とセットで行うべきだ」と求めました。
塩崎恭久厚労相は「緊急事態が終わったらやる」と答弁。高橋氏は「恒久的計画を持ちながらやらないと基準緩和が定着してしまう」と批判しました。
高橋氏は、保育士の処遇改善が全くないと追及。保育の公定価格の推移を示し、「2000年度と15年度でほとんど変わらないか、むしろ減っている。抜本的に拡充すべきだ」と迫りました。
香取照幸雇用均等・児童家庭局長は「2000年以降はデフレで公務員給与もマイナスだった」と釈明。高橋氏は「全産業平均より11万円低いまま推移してきた。特別な対策が必要だ」と求めました。
高橋氏は、公立保育所の民営化を批判。公立保育所を4割削減した仙台市で、廃止しなければ児童643人の受け入れが可能だったとして、「民間への置き換えで待機児は解消しない。公立保育所も建設できるようにすべきだ」と求めました。
仙台市で28年間、認可外施設として運営されてきた朝市センター保育園が認可保育所に移行を決め、認可の基準が子どもや保育士にとってもよい環境だという園長の言葉を紹介し、「認可施設を増やすためもっと応援すべきだ」と求めました。
(しんぶん赤旗2016年3月31日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
今、保育所待機児童問題と保育士の処遇問題は焦眉の課題となっております。保育園落ちたのブログは、瞬く間に共感が広がり、政治の責任を鋭く迫っております。本日、集中的質疑という機会を得ましたので、やはり与野党の枠を超えて取り組むべきだということをまず述べておきたいと思います。
私が厚労委員会に所属したのは二〇〇六年、ちょうど十年前です。その二〇〇六年三月の委員会で保育問題を取り上げ、以来、何度も質問しておりますが、改めてその最初の速記録を読み返してみて、たった今問題とされ、指摘されていることと同じなんですね。とても悔しくてたまりません。
当時の待機児童数は、十年前ですよ、二万三千人、ほとんど同じです。旧定義というものがございました。四万三千人でした。それから、二〇〇四年度から公立保育所の運営費が一般財源化され、公立から民営化あるいは民間委託が進んでいることを指摘しました。非正規雇用が拡大しているじゃないか、こういうことも指摘をいたしました。国はさまざまな対策をうたいつつも、結局、根本が解決していないことが言えるのではないでしょうか。
保育問題は、保育の市場化を叫ぶ規制改革会議との闘いでもありました。結局、当時も既に指摘しておりますが、待機児童問題も、根本解決ではなく規制緩和や詰め込み保育によってしのごうとしてきたという、この反省から出発すべきではないでしょうか。
二十八日、厚労省は、待機児童緊急対策と待機児童数を公表しました。既に朝からたくさんの方が取り上げていらっしゃいます。昨年四月の待機児童数が二万三千百六十七人、その後、年度途中の保育の申し込みなどで、十月には四万五千三百十五人となり、前年同月と比べ、二千百三十一人ふえたと発表しました。
資料の一枚目の下の段ですが、これは、待機児童に含まれる、含まれないのマル・バツ表が出されております。十二年度までと、平成十三年度から二十六年度まで、それから二十七年度以降ということで、三通り出しているんですよね。
その上の段に、定義の変遷ということで示しておりますが、二〇一五年度から、子ども・子育て新制度で、保育サービスの対象者は、いわゆる保育に欠けるという児童から、保育の必要な児童とされました。これは上の段に書いてあるとおりです。「市町村は、待機児童の対象外としている者も含めて個別ニーズに合ったサービス提供にきめ細やかに対応」と書いております。
そこで、質問は、まず、今回、待機児童の定義について改めて示し、潜在待機児童六万人を公表したのはなぜでしょうか。
もう一つ。新制度における保育の必要な児童は、ここに、ここにというのは、つまり、待機児童と潜在待機児童に網羅されているとお考えでしょうか。
○塩崎国務大臣 先日、与党からの御提案も受けて、厚生労働省として、待機児童解消に向けて緊急的な対応策を公表させていただきました。その際、あわせて、平成二十七年の四月時点での保育園等の待機児童数とその後の状況について、及び、待機児童から除外している四つの類型も含めて、待機児童の考え方についてお示しをいたしました。
三月十八日の厚生労働委員会で、平成十二年度以前の待機児童の旧定義と平成十三年度以降の新定義、これに関して質疑がございまして、その中で、もともと平成二十七年度から待機児童以外の状況も把握することとしていたということをお答えしたところでございまして、今回、その数字を明らかにしたということでございます。
二十八日の公表で待機児童の考え方についてお示しをしたのは、待機児童の定義の考え方や経緯について、言ってみれば、実態を正しく理解いただく、このためにこの数字をお示ししたわけでございます。
きょうお配りをいただいておりますが、お示しをしている待機児童から除外をしている四つの類型については、もう御案内のように、一つは地方単独事業を利用している方、二番目は特定の保育園等のみを希望している方、三番目は求職活動を休止している方、四番目は育児休業中の方でございまして、いずれも保育の利用申し込みが行われている方でありますけれども、このうち、求職活動を休止している、とめている方については保育の必要性の要件に該当はしないけれども、地方単独事業を利用している方、あるいは特定の保育園等のみを希望している方、そして育児休業中の方については、保育の必要性について各市町村において適切に判断されている方であると考えております。
市町村においては、潜在的な保育ニーズも勘案をして計画的に保育の受け皿整備を行っておりまして、厚労省としても、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 長かったんですけれども、聞いたことに答えたとは思わないんですね。
要するに、聞いたのは、待機児童数と、いわゆる潜在的な待機児童数、約六万人と発表されました、それと、新制度における保育の必要な児童、これはイコールですかということを聞いています。
○香取政府参考人 御答弁申し上げます。
先生お配りいただいた資料は、私ども、二十八日に大臣から緊急対策を御説明したときの資料でございます。
ここの線にありますように、今回新しい制度になりまして、保育に欠けるというところから、より、保育を必要とする方について客観的に、そういう意味でいうと、手を挙げることができるということで、外延を拡大したわけでございます。まず、この外延の拡大というのが、一つ、できるだけ多くの方に保育サービスを提供するための枠組みということになります。その中で、現に認可保育所以外の保育所でもさまざまに利用できている方については除外をするというのはこれまでの考え方と同様で、今回新しい場所がふえましたので、その分がふえたということでございます。
それ以外に、御指摘の、育休の方ですとか特定園のみの希望の方についてはこれまでと同様の考え方でございますが、ここにありますように、大きな広い外延の中という意味でいえば、必要な児童の中に入っているということになります。
もちろん、私どもが潜在的なニーズというふうに申し上げたときには、そもそも求職をもう初めから諦めているような方ですとか、あるいは将来そういったことがあれば働きたいと思っている方といったことも広く含めて、例えば五十万人といった数字を積み上げるときには対応しておりますので、その意味では、保育の必要な児童との関係はこの絵に示されたとおりでございますし、整備量を考えるときの外延というのはもうちょっと広いものをもちろん想定して考えております。
○高橋(千)委員 わかりました。
当初は、潜在ニーズ百万人などという数字も出されたわけですよね。ですから、私は、待機児童数の旧定義と言うときに、まず、そもそもそういう枠のはめ方が非常に問題だと思っておりましたが、それでも説明はしていたわけですよね、旧定義ではこうですということを説明していたし、今回、新制度でニーズを把握するとなった以上は、当然、旧定義よりもさらに広い方が把握されるはずだ、そこから出発するんじゃないかと思っていたんです。なのに、何で今まだ定義がどうの、待機児童の数がどうのと議論をしているんだろうか、それが納得いかないから聞いております。
十四日の参議院の予算委員会でも、我が党の田村智子議員が、川崎市では認可保育所に申し込んで利用できなかった方が二千二百三十一人もいるのに待機児童はゼロになっていると指摘をしました。これは、ですから、厚労省の言う狭い定義で言うとゼロになるわけですよね。それをわかって聞いているにもかかわらず、塩崎大臣は待機児童の定義をるる説明されたわけであります。全く意味のない答弁だと思います。
でも、三年前の四月の本委員会で、私も同じような質問をしております。杉並区の例です。認可保育所の待機児童五十二人と。そのとき、五十二人というのは一つの保育所が一人受け入れれば間に合う数になっちゃうじゃないかと。それは二十八日に大臣が会見でおっしゃったことと同じような意味ですよ。でも、実際は一月に申し込んだ方の三分の二に当たる千八百名がはみ出しているんだ、その声にどう応えるんですかということが言いたかったことなんです。
それに対して当時の田村大臣は、我々も、もっといるだろうなということは大体わかっているんですが、そこはカウントの仕方というものがそれぞれ自治体であるわけでございまして、そういう数字になってきておると答えておられます。一方で、認証保育園は、これは待機児童にカウントされないわけでございますから、潜在的にあるわけでございます、そう考えると、どうやって本当の待機児童の数をちゃんと把握するか、ここが一番大きな問題だということは我々も認識いたしておりますし、昨年の三党協議の中での議論の中でも何度も申し上げたとして、ちゃんとカウントできるような方策を考えていかねばならぬと答えていらっしゃいます。
ですから、もう一度聞きますが、絞って絞って、どこにも行き場のない待機児童がこれだけですよと公表するのは何の意味もないんです。新制度は、必要なニーズをつかみ、これに応えていくというスキームじゃなかったんですか。
○塩崎国務大臣 十三年度から使っているいわゆる待機児童は、ずっと民主党政権を含めて使ってきた定義であって、しかし、必ずしもそれだけではないということは我々もわかっているわけで、そのために、今回、特に新しい定義も、つまり、保育に欠けるとかつて長らく言ってきたことを、去年の四月からそれをやめて、保育が必要な方々には保育を提供するというのを原則にするということに変えたわけですね。
そういうこともあったので、私どもとしては、さらに、今までももちろんいろいろあることはよくわかっておりますが、改めて今回、先ほど申し上げた四つの類型のいわゆる広義の待機児童プラス、さらに、これから女性がお仕事を始められる方もいて、そうすると保育の需要はさらにふえるという潜在的なニーズを含めて、我々、今、一億総活躍社会づくりの中で四十万から五十万人にしたのは、最も多い、定義として、各市町村が上げてこられたものを合計したもので五十万人ということを申し上げているところでございます。
○高橋(千)委員 実は私、百万人の潜在保育需要の問題があったときに、こういうことを言ったんですね。そうはいっても、たった今の二万三千人の待機児童、四万人の旧定義の待機児童、その対策ができていないじゃないか、潜在ニーズを掘り起こす話をするのはいいんだけれども、四十万人受け皿をふやすというのはいいんだけれども、今の対策をやってくださいということを言いました。
ですから、きちんと、やはり、抽象的なことではなくて、中身でつかむということが大事だと指摘したいと思います。
ですから、私は、政府が今回緊急対策を出した中の、例えば保活の実態を調査するとか国民からの意見の募集とかいうのは、それはそれでいいと思うんですよ。全部やるべきだと思っております。それから、受け皿確保のための施設整備促進で、借地料への支援の強化ですとか余裕スペースを活用した保育園等の整備促進、これも党として緊急対策をやるべきだということを言っておりますので、それはもう、やるべきことはしっかりやる。ただ、そのニーズというのが四十万なのか五十万なのかというばくっとした話ではなく、しっかりとつかんでいただきたいということなんですね。
それで、次に行きますけれども、子ども・子育て支援法第六十条に基づく基本指針には、前文に次のように明記されています。
子ども・子育て支援については、この法の目的を達成するため、「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指すとの考えを基本に、子どもの視点に立ち、子どもの生存と発達が保障されるよう、良質かつ適切な内容及び水準のものとすることが必要である。
また、法は、障害、疾病、虐待、貧困、家族の状況その他の事情により社会的な支援の必要性が高い子どもやその家族を含め、全ての子どもや子育て家庭を対象とするものである。このことを踏まえ、全ての子どもに対し、身近な地域において、法に基づく給付その他の支援を可能な限り講じるとともに、関連する諸制度との連携を図り、必要な場合には、これらの子どもに対する適切な保護及び援助の措置を講じることにより、一人一人の子どもの健やかな育ちを等しく保障することを目指す必要がある。
と書いてある。
私は、この子ども・子育て支援法の基本指針は、児童福祉法にある子供の最善の利益、これをきちんと明記したということは歓迎したいと思うんです。
先週、保育園に落ちたの私と私の友達だと銘打って集会が行われ、私も参加させていただきましたが、赤ちゃんを抱いたママ、パパがたくさん集まって、仕事を本当にやめなければならないかと迫られている悲痛な訴えを聞きました。同時に、ただ預かってくれればいいと思っているわけではないと共通して出されました。子供を保育園で亡くされたお母さんも訴えておられました。
新制度においても、量だけでなく質もと説明してきたはずであります。受け入れ枠をふやす緊急対策では解決にならないのではないでしょうか。もしも、それはあくまでも一時的だというのであれば、恒久的な対策とセットで行うべきではないでしょうか。
○塩崎国務大臣 おっしゃるように、緊急対策は緊急対策であって、私どもは、一体改革の中の積み残しであります三千億についても、恒久財源を見つけながら実行していくということを、やるということを申し上げてきているわけであって、子ども・子育て支援新制度では、認可保育園のほかに、小規模保育など多様なサービスを公的な認可サービスとして位置づけ、そして待機児童解消加速化プラン、これを中心に今まで受け皿拡大を行ってきたわけですね。
質の向上についても取り組みを私どもは進めてきておりまして、消費税財源を活用して、三歳児の配置改善、これは二十対一から十五対一にいたしました。それから、処遇改善三%、保育士が研修を受けやすくなるような代替職員の配置などをやってきたわけでありまして、これは、三千億円超のメニューの中には質の向上というのも入っているわけで、安定財源を確保しながら、処遇改善については、約四百億、二%を上げるという、そういうものを含めたさまざまな質の改善をメニューとして取り組んでいるわけでありますので、これは安定財源を確保しながら実現していきたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 聞いたのは、例えば、小規模保育を、その定員を、十九までなのに三人も受け入れていいんだよとか、そういう緊急の受け入れをするというのをどうしてもやるというのであれば、次は、例えば分園つくりますよとか、そういう対策とセットでやるべきじゃないですかと言ったんです。今大臣が答えたのは、保育士の配置の問題で、それはこの後質問しますけれども、やはり、そうでなければ、緊急だというのが恒久になっちゃうんですよ。
前だって、これはそれこそ民主党政権のときでしたけれども、六割が定員枠をふやしてやったじゃないかという指摘を私はしました。小泉総理大臣のときのいわゆる待機児童ゼロ作戦のときも、定員枠を一一〇%、一二〇%とふやす。だから、それがいずれ定員になっちゃうわけですよ。そうじゃないということをセットでやってくださいということを指摘しています。どうですか。
○塩崎国務大臣 これも申し上げたとおり、今回、待機児童解消までの緊急的な取り組みということの位置づけで明示をしながらやっていることでございますので、それを恒久的な制度にするだのような発想は持っているわけではないので、今先生おっしゃったように、きちっとした、緊急事態が終わった後、克服した後、そういうことはやはりやっていかなきゃいけない。
しかし、それにつけても、当然必要なのは、やはり恒久財源がなければ一回だけの線香花火に終わってしまうということだろうと思います。
○高橋(千)委員 克服した後なんて言っていたら、いつまでも克服できないですよ。だから、対策をとりながらと言ったじゃないですか。言っている意味が違うんです。緊急事態が終わったらやりますよって、いつ終わるのかというこの状況をやはりちゃんと把握していただきたいと思います。
やはり現行基準よりも上回ってやっている自治体が多いんだということは、既に先ほど来御紹介がありましたので繰り返しません。
それで、大臣、昨年十一月二十七日の毎日新聞で記事が書かれておりますけれども、一億総活躍国民会議で保育の量を二〇一七年度末までに四十万から五十万にふやすと決めたとき、そのときの記事の中でこう書いています。規制緩和でできるものをやるように、金はかからないんだからと、取りまとめに向け、塩崎厚労大臣は省内で繰り返し指示したと書いてあります。
ですから、多分、昨年は余り、そこまで世の中の話題になっていなかったからおっしゃったのかもしれませんよ。先ほど山尾委員に指摘をされたのに対して、いやいや、予算はきのう通ったばかりだから、金かけないと言ったのは、それは言われても違うとおっしゃっていたけれども、最初から、去年のうちに、金かからない規制緩和をやれと言っていたじゃないですか。そういうところに本音が出ちゃうんですよ。違いますか。
手を振っておりますが、ちょっと、ここをやっていると、次、どうしてもしゃべりたいところに行かないので、次へ行きたいと思います。(塩崎国務大臣「言いっ放しじゃないか」と呼ぶ)それは指摘をして、本当に恒久的な対策をやるのかどうか、ちゃんと見ながら、言っていきたいと思います。
それで、当然、受け入れ枠をふやすことは保育士にとっても負担を重くすることになるわけですけれども、保育士不足と言われていますけれども、保育士を希望する人が減っているわけではないと思うんですね。
養成施設の箇所数、定員などがどうなっているか、簡単にお答えください。
○香取政府参考人 御答弁申し上げます。
指定保育士養成施設、保育士の養成施設でございますが、二十七年四月一日時点で、全国で六百四十一カ所ございます。ここの入学定員は、二十六年度において、定員五万六千四百四十八名、実際に入学された方は五万八百三十一名で、ほぼ定員の九割が入学されているということでございます。
○高橋(千)委員 資料の二枚目につけておきました。今、六百四十一と、それから定員が五万八千百三十一人とお答えがあったんですけれども、平成十八年との比較で見ても、五百三から出発して六百四十一ということで、ふえている。だから、介護の場合は養成施設が減っているという問題が起こっているわけですけれども、保育の場合は、まず目指す人はいるんだ。だから、目指す人が続けられるような対応をとればいいと思うんですね。
それで、次の質問は、なぜ今回の緊急対策に処遇改善が入っていないのかという質問をするつもりだったんですけれども、さっき大臣が答えた、あれが多分その答えだったと思うんですね。人勧と合わせて約四%の確保をするんだということを言っているんだと思うんです。それでは全然足りないよという議論を私たちはしております。
それで、資料の三枚目、保育士の平均賃金。短時間労働者の賃金というのが下にございます。
よく、全産業と比べて月収で十一万低いと言われるけれども、やはり、ベテランの所長でも二十五万円程度、新人なら十数万と、まさにワーキングプアです。奨学金も返せない、学生時代のアルバイトの方が高かった、養護教諭で臨採のときより十万円も減ったと。笑えない話です。そもそも公定価格の基本単価が安過ぎるのではないでしょうか。
二〇〇八年に保育所保育指針を改定しておりますが、保育所と保育士の役割はやはり高まっているわけですよね。つまり、地域の子育て支援としても位置づけられて、一層求められるものが大きくなっているんです。ですから、専門職として、そして子供の安全と豊かな育ちという観点から見ても、つまり、子供の立場から見ても、保育士の処遇を抜本的に拡充するべきではないでしょうか。
○中島政府参考人 お尋ねの、子ども・子育て支援新制度におきます公定価格の設定をどのようにしているかということでございます。
まず、単価の設定につきましては、人件費、事業費、管理費のそれぞれにつきまして、標準的な経費を積み上げて設定しておりまして、そのうち、人件費の額につきましては、標準的な賃金水準と各施設が満たすべき職員の配置基準をベースに計算しているところでございます。
昨年四月からは、先ほど塩崎大臣からの御答弁にもございましたけれども、消費税一〇%の引き上げを前提とした〇・七兆円メニューを前倒しさせていただいたわけで、その中で、研修を受講する保育士のかわりに保育に従事するために加配される研修代替保育士の人件費を新たに基本単価で評価したということでございます。
それとともに、各種加算等につきましては、処遇改善加算等々でも保育士さんの処遇については手当てをさせていただいたということでございます。
今後とも、公定価格の適切な設定というのは大変重要なことでございます。引き続き、安定した財源を確保しつつ、しっかり頑張ってまいりたいと思っているところでございます。
○高橋(千)委員 ちょっと時間の関係ではしょりながらやります。
今のお答えは資料の四枚目に書いてあるわけですけれども、子ども・子育て支援の量的拡充と質の向上項目ということで、質の向上のところは二重丸と三角と丸があるわけですね。三角のところが、この間から議論になっている、財源のまだ決まっていない三千億円が出なければできないところ。だけれども、これは、一歳児の職員配置を改善すること、四、五歳児の職員配置を改善することなど、待ったなしの課題だと思うんです。
やはりこれは、私は、最初から消費税財源ということに組み込んでしまったことが結果として大変なことになったんじゃないのかなと思っています。もし一〇%、我々は増税反対ですけれども、もしや一〇%をやらないかもしれないという議論がされているわけですけれども、やはりここは急いでやる、財源を切り離してもやらなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 今先生の方から御指摘をいただいたいわゆる〇・三兆円超のことでございますが、今回の緊急対策については、規制の弾力化とか運用の改善とか、予算を伴わない対策が多く含まれているわけでありまして、二十八年度予算に盛り込まれている補助メニューの中で、条件等の見直しで支援を強化して実施するものもあるわけであります。
一方で、恒久財源をもって拡充すべき改善等については、今回の緊急対策の中には入っておらないわけでありまして、これまでも、消費税財源を活用して、三歳児に対する保育士の配置を二十対一から十五対一に改善するといったことは、質の改善としてやってきたわけでありますけれども、例えば一歳児の職員配置、六対一を五対一にするというのは、大体六百七十億円かかることが見込まれているわけであります。
こういったことについては、現場から強く求められているわけでありますけれども、質の向上を実施するための三千億円超のメニューに入っているわけでありますから、先ほど来申し上げているように、安定財源を確保して実現に向けて取り組んでいかなければならないし、また、職員給与の二%分というのが、児童養護の関係の施設も入れれば四百億強ということになりますので、こういったことについてしっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。
○高橋(千)委員 しっかりと取り組んでいくということでありましたが、財源の問題を、やはり消費税増税しなければということではなく議論していってほしいということを求められているということを重ねて指摘したいと思うんです。
それで、資料の五枚目を見ていただきたいんですね。これは、保育所の単価表の推移。さっき私は、基本単価が少ないんじゃないかという議論をいたしました。それをちょっと経年で見ているわけですね。
元帝京大学の教授で保育研究所の所長である村山祐一さんが一定の条件を入れて公定価格のいわゆる試算をしたものです、九十人定員ですとか、民改費を一二%にしてとか。それで、その出した表を調査室にも精査をしていただいて出してみました。
そうすると、九五年から比較をしているのは、おわかりのように、九五年というのはエンゼルプランの最初の年なんですね。そこから見ると、二〇〇〇年度が一番高くなっている、ピークです。五年後が一〇〇%と書いているのはそういう意味なんです。そこから、二〇一五年度というのは、また下がっておって、九五年と比べても下がっているものもあれば、二〇〇〇年度と比べても一〇〇を割っている状態。
これだけ、この間もいろいろ加算をやってきたとか言うけれども、やはり基本的なところが少ない、変わっていない。この現状をどう見るのか。やはり急いで解決しなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
○香取政府参考人 御答弁申し上げます。
手元に細かい数字はございませんが、二〇〇〇年から以降、このあたりは、現行制度ではなくて旧制度下での保育の単価ということになります。
これは、そうしますと、当時の単価は、人件費については人勧ベースですし、その他物件費については、基本的には物価変動ということになりますので、この時期は、御案内のように、デフレの時期でありましたし、私ども公務員の給与も基本的にはマイナス改定でございましたので、もちろん、それは世の中全体がそうであったということだと思うんですが、そういう社会経済の賃金なり物価の動静にあってこういう形で改定が行われたものというふうに理解しております。
○高橋(千)委員 人勧はずっと減っておったし、デフレだったしというのは、全くそのとおりだと思うんですね。だけれども、他産業と比べても少ない状態がずっとこういうふうに維持されてきたということをやはりちゃんと見て、この間もいろいろ加算、民改費などのものをやってきたわけですけれども、新制度の前は十年までの加算でしたけれども、それが十一年までと、たった一年だけアップがふえただけなんですね。そういう点ではまだまだ改善がおくれているということを指摘して、これを急いで正すべきだと思っております。
それで、公立保育所の整備費が一般化されたこと、また、総務省の公共施設等総合管理計画によって、老朽化した公立保育所から順々に廃止などが迫られている、こういう指摘がされてきたと思っております。民間保育所がこの十年間で四千五百一ふえているんですが、かわりに、公立が二千五百六十七減っているんですね。つまり、看板がかけかわっただけ。
私は、何度かこの問題を質問しているんですけれども、志を持って保育をやりたいと思う民間の法人の方がいらっしゃったのに、結局、器を、そのままお願いしますねと言ったら、全然その待機児童は変わらないわけですよね、解消されない。そこを何とかならないものかなということをずっと思ってきたんです。
仙台市は、十年間で公立保育所を四割、二十カ所民営化するという方針を持っていました。ちょうど引き継ぎのときに視察に行きまして、公立の保育士さんは、民間の方に引き継ぐ瞬間なので、もう手を出さない、手を出すと子供たちとの関係がいつまでも切れないからと大変寂しそうに言っていたのを覚えております。
結局、その方たちは、スキルがありながら、公務員なので、市役所のどこかの部署で仕事をするんですね。保育士さんとして活躍してもらえるのになと思って、残念でした。この仙台市がもし公立を廃止していなければ、六百四十三人、児童の受け入れができていたのに、この点でももったいないなと思っております。
そこで、総務省に伺いますが、二〇〇五年から二〇一〇年までの集中改革プランで、地方公共団体の職員は二十三万人減少し、うち、保育士を含む福祉部門が約四万人減少している、これは平成二十五年四月の厚労委員会で答弁されています。
その後の五年間がどうなったのかということと、公立保育所の廃止が、結局、全体の削減の目標達成のツールとなってきたと言えないんだろうかということを指摘したいと思います。
○北崎政府参考人 お答えいたします。
平成二十二年から平成二十七年の五年間において、地方公共団体の職員数は約七万六千人減少しております。公立保育所の保育士を含む福祉部門の職員数については、民間委託や民間移譲の進展等により、約一万三千人減少しております。
総務省としては、厳しい財政状況にあっても、質の高い公共サービスを効率的、効果的に提供する観点から、地方公共団体においては、民間にできることは民間に委ね、真に行政として対応しなければならない政策課題などに重点的に対応した簡素で効率的な行政体制を実現することが求められているものとの基本的認識を持っております。
こうした基本的認識を踏まえつつ、地方公共団体においても、地域の実情に応じて、民間の能力やノウハウを活用することによりコスト削減やサービス向上を図る観点から、民間委託や民間移譲などが推進されるべきものと考えております。
具体的な手法については、地方公共団体が地域の実情に応じて自主的に判断するものでありまして、公立保育所の廃止をその手段として、地方公共団体に対して通知などをして要請しておるわけではありません。
以上であります。
○高橋(千)委員 やはりぎりぎりのところまで、私は本当は五年でもう底をついたと思っていたわけですね。でも、結局、それからまた、保育、福祉関係だけでも一万三千人も縮減をしている。結局、全体の目標を達成する上でも、一つなくすればそれだけの職員を減らせるわけですから、そうなってきたんじゃないか。
民間にできることは民間にと言うけれども、やはり公立でなければやれない仕事というのもあるわけですね。まして、今のような、待機児童が大きな問題になり、保育士の処遇が問題になっているときに、その模範となるべき保育士がやはりあってしかるべきではないかと思うんです。
実は、この仙台市の保育所では、正規職員が五年間で百四十人減って、非正規雇用の割合は二七%になっているんですね。それで、二〇一三年の正規の職員の募集はたった二十一人でした。それに対して二百九十三人、十倍以上応募しているんですね。翌年は十八人の枠に二百八人、二〇一五年は十八人の枠に百七十九人応募したそうです。
ですから、公立保育所だからと、やはり一定の条件があれば保育士になりたいと思う人がこんなにいるんですね。だから、やはり、その人たちに応えてもらう、働いてもらうということを考えて、公立保育所も必要だというふうな立場に立つべきではないでしょうか。
○北崎政府参考人 お答えいたします。
私ども総務省といたしましては、個別具体の地方団体の実情に応じて、地方団体が責任を持って、これは民間に委託すべきである、あるいは、こちらの方に地方公務員の正規の限られた人数の方を集中すべきであるというような判断をぜひしていただき、議会でも御議論いただいて、地域の実情に合わせた対応をとっていただきたい、そういう指導をしておるところでございます。
以上であります。
○高橋(千)委員 時間が非常に迫っておって、どうしても言いたいことがあるものですから。
大臣にも改めて、私は全部公立でやらなきゃだめだなんて言っているわけじゃないんです。やはり必要なものはちゃんと整備するということを、残念ながら今は予算がついていないということになっていますけれども、本当に必要であれば、児童福祉法二十四条をせっかく残したんですから、市町村の実施義務を残したわけですから、そこで、本当に足りないんだ、そのときに、誰か手を挙げてくれよ、お願いしますよというわけにはいかないわけですね。そのときにやはり市町村の手段としてできることがあるということは今後考えていく必要がある。公立保育所もやはりつくれるようにするべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
○塩崎国務大臣 公的な保育園についての議論は随分いろいろこれまでなされてまいりました。
これは最終的には市区町村長がお決めになることであろうかと思いますけれども、公立ならではのよさももちろんあることはよくわかるわけでありますが、そこのところのベストミックスをどう考えるかというのは、それぞれ自治事務としてその自治体がお決めになるということで、それぞれの保育ニーズとか人材の状況とか、さまざま考えた上でお選びをいただくことではないかということで、東京都内でも区立というのがたくさんございまして、私の身内も、うちの子供たちも区立で行っていましたが、まあ、それはそれとして、本当にあるべき姿はそれぞれが考えることだろうというふうに思います。
○高橋(千)委員 そんな人ごとのような話をしないで、やはり、選んでもいいよと言うんだったら、それに見合うお金を出してくださいということを議論しているんです。緊急対策というんだったら、それが一番効果的なんですよということを指摘しておきます。
きょうは、ぜひお話ししたかったのは、さっき認可外の保育所の話が出ました。きょう持ってきたのは、これは写真集なんですけれども、朝市センター保育園というので、実は仙台市の駅前に朝市があるんですが、たまたま私の比例東北ブロックの事務所が借りているビルの五階にございます、認可外ですけれども。でも、その朝市の中に子供たちがいるものですから、おじちゃん、おばちゃんから日常的に声をかけられ、また、朝市で仕入れる新鮮なものを食べて、とても地域で喜ばれて、二十八年間頑張ってきた保育園なんです。
それが、新制度になって、せんだい保育室という、東京の認証保育所みたいな、補助をもらっていたんですが、それを廃止するから小規模か認可かどちらかを選びなさいと言われたんですね。ところが、認可を選ぶには、つい七十メートル先にパチンコ屋ができたんですよ。認可保育所があればパチンコ屋はつくっちゃいけないんだけれども、認可外保育所だから、後から来たんです、パチンコ屋が。それで、だめだと仙台市に言われたものですから、署名をたくさん集めて、地域の人たちに支えられて、これは、ちゃんと特別な事情を見るということで、認可を選びました。大変なイバラの道をあえて選んだんです。
小規模の方が簡単です。でも、なぜ認可を選んだのか。園長が言っているのは、赤ちゃんから就学前まで一貫した保育がしたいと言っていること、それから、兄弟を引き離したくない、だから、どんなに苦しくても認可を選んだんだと言う。だから、保育園に入れなくてつらい声を上げていたお母さんたちのことを思って、本当にどきっとしました。
でも、そのために大変なお金を集めて、今、改修の準備をしているんですが、認可ってすごいと言うんですよ。五分の一採光基準があるとか、避難階段をつくらなきゃいけないとか、ゼロ歳児の部屋も広くなってゆとりがあるんだとか、それが保育士にとってもいいことだと言って、本当に大変だけれども喜んでいるんですね。そういう方たちもいるんです。
認可化の移行事業というのが今回若干緩和されるわけですけれども、やはり認可外から認可に移行するのは、五百二十八が新しくつくっている認可外、でも、認可に移行しているのは、それに比べ、たった七十六なんですね。本当に少ないんですよ。そこをもっと応援してあげる、受け皿になれる、頑張れると。あるいは、保育の志を持っている人たちに、応援する道があるんだと。
やはり、最低基準というのはそういう意味があるんだということをせっかく現場が言ってくれているので、保育とは何かという立場に立ってここを応援していただきたい、このことを指摘して、残念ながら、質問したかったんですが、時間が来ましたので、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
――資料――
【資料2】年度別指定保育士養成施設の施設数及び入学定員の推移