核燃サイクル撤退迫る/高橋氏 汚染水問題も追及
日本共産党の高橋千鶴子議員は25日の衆院予算委員会分科会で、今なお深刻な東電福島第1原発の汚染水問題をただすとともに、核燃料サイクルからの撤退を求めました。
福島第1原発では、昨年10月の海側遮水壁の完成後、逆に高濃度汚染水が増え、タービン建屋に戻している状況です。経済産業省の田中繁広大臣官房総括審議官は、汚染水発生量が昨年9月以降の1日平均470トンから、今年は同490トンに増えていることを認めました。
林幹雄経産相は「汚染水対策は着実に進捗(しんちょく)している」と答弁。高橋氏は、汚染水貯蔵タンクの建設が汚染水の増加に追いつかないため、汚染水漏れが問題となった組み立て式タンクに貯蔵する方針であることを明らかにし、「2016年度早期にすべてを溶接型タンクで貯蔵するとした政府のロードマップにも到底間に合わない。極めて深刻な事態だ」と指摘しました。
また、高橋氏は、六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場が稼働し、16~18基の原発でMOX燃料を利用するプルサーマル発電が行われたとしても、余剰プルトニウム47・8トンをなくすには20年かかることを指摘。林経産相は「計画が適切に進めば着実に減っていく」と強弁しました。
高橋氏は、再処理工場の使用済み核燃料貯蔵プールが満杯に近いことなども示し、高レベル放射性廃棄物の最終処分地や処分方法も決められないままに原発を再稼働し、核燃料サイクルを動かすことは「矛盾の先送りでしかない。サイクルから撤退するべきだ」と強調しました。
(しんぶん赤旗2016年2月28日付より)
――議事録――
○高橋(千)分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。
林大臣、きょうはよろしくお願いいたします。
東電福島第一原発事故から間もなく五年になろうとしていますが、原発事故は到底収束したとは言えません。昨日も、あの事故の際に、核燃料が溶け落ちる炉心溶融、メルトダウンの定義を明記したマニュアルが存在していたのにもかかわらず、使用されずに、発表が約二カ月おくれる原因になったとの報道に大変唖然といたしました。情報のおくれ、また情報隠し、これこそが国と東電に対する不信感を募らせ、その後の施策、対応にも大きく影響したのではなかったでしょうか。
きょうは、やはり深刻な問題となった汚染水問題、廃炉の大前提であります、これについてまず伺いたいと思います。
高濃度の汚染水がタンクから三百トン漏れていた、これが判明したのは二〇一三年の八月二十日でした。その一月前に、東電が初めて汚染水の海洋流出を認めたのでした。
当時の茂木経産大臣は、東電任せでは解決は困難、国が前面に出ると発表いたしました。関係閣僚会議や、あるいは東電の中には廃炉チーム、また原子力損害賠償・廃炉等支援機構など、さまざまな体制もとって進めてきたことは承知をしておりますが、まず、汚染水対策の現状をどう見ているのか、簡潔にお答えをお願いいたします。
○林国務大臣 福島第一原発の汚染水対策については、汚染源を取り除く、そして汚染源に水を近づけない、汚染水を漏らさないの三つの基本方針に基づきまして、予防的、重層的に取り組んできているところであります。
昨年五月にタンク内の高濃度汚染水の処理をおおむね完了いたしました。昨年十月には、海側遮水壁が完成したことで、港湾内に汚染された地下水がほとんど流出しなくなりました。港湾内の放射性物質濃度が大幅に低下したことなど、着実な進捗が見られております。
引き続き、国も前面に立って廃炉・汚染水対策に取り組んでまいります。
○高橋(千)分科員 今、着実にというお言葉がございました。十月に海側遮水壁が完了したことで、海側の方には高濃度の汚染水がほとんど漏出しないという状況になったということをおっしゃったんですけれども、きょう問題にしたいのは、その逆なんですね。流出は大分防げているのかもしれないけれども、バックしているという問題であります。
資料の一枚目。これは昨年の十二月十九日付の河北新報でありますが、タイトルが「汚染水の発生量倍増」という見出しであります。大変衝撃を受けました。アンダーラインのところ、「汚染水が一日三百トンから六百トン程度に増加していることが十八日、分かった。」「建屋周辺の井戸から地下水をくみ上げ、浄化後に海洋放出する「サブドレン」が九月に稼働。建屋に流れ込む地下水量は一日三百トンから二百トンに減ったが、地下水ドレンからのくみ上げ量が増え、汚染水発生量が二倍程度に増えた格好。」
どういうことかというと、海側遮水壁は十月に完成して、地下水ドレーンと呼ばれる井戸でくみ上げた水、これが、本当は戻るのは五十トン程度だと見込んでいたそうでありますけれども、実際には、トリチウム、最大八千二百ベクレル、これは排出基準量を大きく上回っているわけですよね。これは高濃度であるということで、逆に、この絵の中にあるタービン建屋にバックする格好になっていて、結局、量がもとに戻ったんじゃないか、あるいはふえたんじゃないか、こういうことを言っているわけであります。
なぜこのようなことになっているのか、簡潔にお答えください。
○田中政府参考人 お答えを申し上げます。
日量四百トンがサブドレーン等の対策を講じる以前の段階で建屋に入っている地下水流入量としてあったわけでございますけれども、こういったものは、地下水バイパスやサブドレーンの稼働によりまして、日量約百九十トン程度に減少してきているという効果がございました。
一方で、今先生の方からも御指摘がありましたとおり、海側遮水壁の閉合に伴って、周辺の井戸から高濃度のものが出てきたということで、これについてはタンクに適切に貯蔵しているところでございますけれども、この結果、汚染水の日々発生する量につきましては、昨年九月までの一年間の平均の数字として、約四百七十トンという数字がございます。これが、この一月以降、足元では約四百九十トンということでございますので、本来減るべきであったものが減ってはおりませんけれども、おおむね同程度という状況でも一方ございます。
今後、舗装の徹底とか陸側遮水壁の運用開始など、さまざまな措置を講じながら、汚染水発生量の抑制に努めてまいりたい、そのように考えております。
以上でございます。
○高橋(千)分科員 一日四百トンの汚染水を処理しなければならないということが随分言われていたわけですけれども、それが今、四百七十トン平均から四百九十トン平均になっている。新聞で報道されているのは、六百トンまでいったということで、そのときのピークは多分過ぎていて落ちついているとおっしゃりたいんでしょうけれども、しかし、四百九十トンというのは、いかにもふえている。当初であれば、もっと、半分以下に減っているはずだったのに、こういう事態だということを御説明いただいたと思います。
それで、二〇一三年七月のタンク漏えい問題が起こった際に、鋼板の接合部をパッキンで埋めてボルトで締めたフランジ型であったこと、そのパッキンの耐用年数が約五年しかなくて、全タンク約千基のうち三百五十基がそういう型であったこと、また水位計もなければ、防水のための堰も非常に低かった、排水弁も開いていたなどの管理体制が厳しく指摘をされて、そのために溶接型タンクに移していくということが確認されていたと思っております。
そこで、現在、溶接型への移しかえがどのくらい完了して、解体済みは幾らなのか、またその残りはどうなっているのか、お答えください。
○田中政府参考人 お答え申し上げます。
二〇一三年八月のフランジ型タンクから高濃度汚染水の漏えいという事案がございました。それを踏まえまして、フランジ型タンクから溶接型タンクへの切りかえを精力的に進めてきておりまして、現在までに約百二十基のフランジ型タンクを使用停止といたしておりまして、そのうちの四十基が解体済み、残りの八十基は解体中ないしは解体待ちということでございます。
その結果、浄化処理を行った水を貯蔵しておりますフランジ型タンクの数でございますけれども、約百二十基、そのタンクの容量が約十万トンというのが現状でございます。
○高橋(千)分科員 まだ百二十基、十万トンが残っているという答弁でございました。
そこで、廃炉・汚染水対策関係閣僚会議、昨年六月十二日で、このときに、東電福島第一原発の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ、これが決定をされております。その中で、ここの部分、今の部分について、「高濃度汚染水を処理した水の貯水は、二〇一六年度早期までに、全て溶接型タンクで実施する。」というふうに書かれております。ところが、今、溶接型タンクの建設が汚染水の増加に追いつかず、結局フランジ型のタンクに処理途中の汚染水を貯蔵すると今月十五日の原子力規制委員会の検討会で東電が説明したと聞いております。極めて深刻な事態ではないでしょうか。
結局、今、解体に向けて、報告がありましたけれども、併用を続けるのでしょうか。このような事態を大臣はどのように見ておられるのでしょうか。
○林国務大臣 福島第一原発に設置されていますフランジ型タンクを溶接型タンクに置きかえる作業に時間を要していることは事実であります。一方で、日々発生する処理済み水のタンク容量を十分に確保する必要があることから、フランジ型タンクの使用を暫定的に継続するということにしております。
貯蔵するのは高濃度汚染水を浄化処理した後の水であることに加えまして、万が一の漏えいにも備え、タンクエリアには既に二重の堰の設置や堰のかさ上げなどの対策を実施していることから、万一の流出時の危険性については大幅に低下しているというふうに考えております。
溶接型タンクへの置きかえ作業につきましては、安全を最優先に、可能な限り早期に進めるよう東京電力に指導してまいります。
○高橋(千)分科員 政府参考人でよろしいんですが、ちょっと確認をしたいと思います。
今大臣が、浄化処理した後の水を入れているんだ、暫定的なものであるということでありました。まず、解体の目標を確実に持ち続けているのか。つまり、私が聞いたのは、併用を続けるんでしょうかと聞きました。大臣の答弁は、暫定的だとおっしゃったので、やめるという目標はいつまでなのか、あるいはちゃんと持っているのかを確認したいということと、浄化処理した後の水とおっしゃいましたけれども、規制委員会は、更田規制委員長代理が、処理途中の汚染水ではなくて、ALPSの処理水を移送するべきだという指摘をしているんですね。多分、今おっしゃった、処理した後の水というのは、セシウムの処理はできているけれども、ALPS処理水ではないというふうに認識をしておりますが、そこの確認をしたいと思います。
○田中政府参考人 まず、溶接型タンクにフランジ型タンクを置きかえていくという作業については、方針としては全く変わっておりませんで、現時点で、ロードマップにあるような目標も、これは断念をしているということではなく、できるだけ早期にということで進めてまいりたいというふうに考えております。
それから、今御指摘がございました、ストロンチウムの処理が終わっていない水の扱いということについては、御指摘のとおり、二月十五日に開催された原子力規制委員会の検討会でも議論があったということでございます。
これにつきましては、規制委員会の方からも、当面、ストロンチウム処理水を受け入れることはやむを得ないけれども、ALPS処理水が、今現在、フランジ型タンクの方に受け入れられるような仕様に実は配管がなっていないものですから、その設備工事を進めるべきだという指摘があったというふうに承知をしておりまして、私どもといたしましても、溶接型タンクの容量の確保、それから汚染水発生量の抑制のためのさまざまな措置も含めまして、引き続き東京電力をしっかりと指導してまいりたい、そのように考えております。
○高橋(千)分科員 この問題はここで言い切りにしますけれども、やはり大臣、今答弁がありましたように、本来であれば、ストロンチウムの処理ができてあった水でなければという指摘があったにもかかわらず、今、やむを得ないという形で処理途中の水を入れているんだということ、そのことをやはりきちんとお認めいただいて、非常に極めて深刻な状況だと思うんですね。二〇一六年の早期に全部溶接型に移していくというそもそもの政府の決定自体に到底間に合わない。諦めてはいないけれども、間に合わないということは明らかだと思うんです。そうしたことをやはりきちんと指摘をさせていただきたい。極めて深刻な事態ではないかと思っております。
きょうはもうこれ以上はこの問題は言いませんけれども、東電は、本当は凍土壁が昨年から動いていればこの問題は解決してあって、タンクの不足も本当はなかったんだとおっしゃるんですね。だけれども、凍土壁の問題自体も規制委員会から繰り返し指摘をされてきた、そういうこともあったわけです。そうした点で、果たして国が前面に出ると言うだけの役割を果たしてきたんだろうかということを、私はちょっと一言指摘をしておきたいと思っております。
そこで、次の問題に移りたいと思います。核燃サイクルの問題であります。
林大臣は、昨年十一月に六ケ所村の再処理工場などを視察されて、核燃サイクル推進は変わらない、この立場を記者団に表明をされました。事故後経産大臣が同施設に入るのは初めてだと聞いておりますが、再処理工場は来年上期に稼働を目指すということで二十三回目の延期を発表しており、また、MOX工場はその翌年、二〇一八年上期を目指しているとされています。
この間、核燃サイクルをめぐっては、「もんじゅ」に対する規制委員会の勧告や今国会提出の新認可法人をめぐっての問題など、何かと注目されていることがあり、大臣もこの施設を視察されたと思っているわけですけれども、私はやはり、核燃サイクル推進ありき、これはだめだということを最初に指摘をしておきたいと思います。
私自身はもちろん地元ですので、建設当初、建設というのは、再処理工場ではなくて、低レベルの埋設の前のところから何度となく現地に入っているわけですけれども、昨年十月にも我が党衆参の経産部会の議員とともに行ってまいりました。
そのとき、何より驚いたのは、使用済み核燃料貯蔵プール、これが、受け入れ容量が三千トンなわけですけれども、既に三千三百八十九トン、これは単位にウランをつけるのを省略しますけれども、入っている、受け入れていますということだった。ということは、既にあふれている、超えているじゃないかと思ったんですね。だけれども、実は超えている分は、四百二十五トン、アクティブテストで使用しているので、在庫量は三千トンを若干切っている、そういう説明でありました。
その内訳を資料の二枚目につけておきましたけれども、これは各原発の使用済み燃料の管理容量と貯蔵量、そして何年の余裕があるかということと、そのうち六ケ所の再処理工場の使用済み燃料プールに入っている貯蔵量を書いております。ですから、どこの原発から六ケ所に来ているのかが一目でわかる仕組みになっておりますけれども、トータルで二千八百四十九トンということです。
これを見ますと、もとの原発のところにもプールはあるわけですけれども、十年以上余裕があるというところもあれば、最短で二・三年など、逼迫状況がわかるわけですよね。
そこで伺いますけれども、まず、六ケ所村の使用済み燃料プールはほぼ満杯なんです。これ以上受け入れることはないと思いますけれども、確認をしたいと思います。
○多田政府参考人 お答え申し上げます。
まず、ちょっと事実関係で何点か申し上げたいと思います。
今先生御指摘の再処理工場、それからMOX燃料加工工場の竣工時期、何度か予定がおくれているというのは御指摘のとおりでございますが、六ケ所の再処理工場につきましては二〇一八年度上期、そしてMOX燃料加工工場は二〇一九年度上期というのが最新の竣工予定でございます。
それから、今お尋ねいただきました使用済み燃料、六ケ所村の日本原燃が保有する使用済み燃料プールの状況でございます。
お配りいただきました資料にございますが、二千八百四十九トンでございますが、これは恐らく、上に書いてございます九月末の時点。下に参考と二行ついておりますが、こちらの方に二千九百六十四トンという数字が書いてございます。こちらの方がより新しい数字となっております。
そのことを申し上げた上で一言申し上げますと、ことしの一月に日本原燃が原子力規制委員会の方に届け出を行っております再処理施設の使用計画というものでございますが、この中で、二〇一六年度から二〇一八年度までに、さらに二十四トンほどの使用済み燃料を受け入れることとしているというふうに承知をしております。
ただ、いずれにいたしましても、この使用済み燃料の貯蔵という問題が大きな課題であることは御指摘のとおりでございまして、政府といたしましても、昨年の十月六日でございますが、最終処分関係閣僚会議を開催いたしまして、使用済燃料対策に関するアクションプランというものを策定し、事業者に対しまして「使用済燃料対策推進計画」というものを策定するように要請をし、昨年の十一月にその報告があったところでございます。
○高橋(千)分科員 年度を間違えていました。ありがとうございます。
先ほど御紹介いただいた二千九百六十四トン、これは六ケ所再処理工場に行ったときにこの数字を確認しております。いただいておりますが、内訳で経産省からいただいたものがこれだったので使わせていただきました。お断りしておきます。
それから、二十四トン受け入れるということで、多分、あきがある以上は受け入れるという意味なのかなと思って今聞いておりましたけれども、実は私、この質問は現地でもしているわけなんですね。普通、入れ物が満杯だったら受け入れませんと、シンプルなことを聞いたつもりだったんですが、絶対そういうシンプルな答えは返ってこないわけです。そのかわりに言われたことは、再処理の後、MOX燃料を使うプルサーマル計画、これが進むことを期待しているというものでありました。
そこで、資料の三であります。電事連が二〇〇九年に発表したプルサーマル計画、これを十六基から十八基で進めていきたいというその内訳であります。そのいただいた内訳に私の事務所の方で少し細工をさせていただきましたけれども、今、新規制基準適合性審査申請済みの原発に青いラインを引いております。それから、プルサーマルの実績のある原発、これがいずれも偶然にも三号機なんですけれども、高浜の三号機、伊方の三号機、玄海の三号機、そして、事故に遭った福島第一原発の三号機だということであります。
ただ、この実態からいきますと、計画はほとんど進んでいないということで、再来年、再処理工場が稼働する前に新しい計画を策定すると聞いてございます。
そこで、資料の四を見ていただきたいんですけれども、核燃サイクルのそれぞれの過程で、保管中のプルトニウムがどのようになっているのかという資料であります。海外に再処理委託した分が三十六・九七四トン、これは分離プルトニウムの計算になっておりますけれども、国内が十・八三五、合わせて現在四十七・八トン。核分裂性プルトニウムで換算しますと三十二トン、先般大臣がお答えになっていた数字であります。こういう状況である。
来年七月に日米原子力協定の期限を迎えるわけですが、利用目的のない余剰プルトニウムは持たないとしてきた約束から見ても、余りにも多過ぎると思います。
再処理してプルトニウムを分離することはやめるべきと国際的にも批判が出ていることは、二月五日の予算委員会で我が党の藤野議員も指摘したところであります。大臣は、その藤野議員への答弁の中で、再処理工場から毎年四トン分離されるのに対して、これがまずフル稼働した場合という計算ですけれども、同じく全国の十六基から十八基の計画で使った場合は、五・五トンから六・五トン利用するので、着実に減っていく、このような答弁をされました。
ただ、これは引き算しますと、一・五トンから二トンくらいが若干、要するに、消費が供給を上回るという部分はその部分ですよね。でも、残っている、今滞留しているプルトニウムを引き算していきますと、単純に計算しても二十年ぐらいかかるんじゃないかということなんですよね。だけれども、政府としては、利用目的があるんだからいいんだという立場なのか、それとももっと新設をしたり、あるいは今俎上に上っていない軽水炉をプルサーマルに転用する、そうしたことも念頭にあるんでしょうか。
○林国務大臣 今、高橋委員が御指摘のとおり、十六から十八基の原子炉で、MOX燃料として年間五・五トンから六・五トン、核分裂性プルトニウムを利用することにしているわけですけれども、六ケ所再処理工場がフル稼働した場合、年間四トン強の核分裂性プルトニウムが発生するわけでありまして、この計画が適切に実施されれば、プルトニウムの利用量が発生量を上回る。現在保有しているのは三十二トンでありまして、これは着実に減っていくことになるわけです。
そこで、そもそも核燃料サイクルに関する諸課題は、短期的に解決するものではありませんで、中長期的な対応を必要としております。したがって、その一つであるプルトニウムの利用についても、核燃料サイクルの推進やその進捗の中で、中長期的な視点に立って着実に進めていくことが大切であるというふうに考えております。
今後とも、我が国は、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則のもと、プルトニウムの適切な管理と利用を行っていきます。
○高橋(千)分科員 そうすると、今の答えは、それでよいという立場かということに対してのイエスだったと思うんですね。結局二十年くらいかかりますよね、単純計算すれば。それでもよい、利用目的があるんだからとおっしゃっている。だけれども、十六基から十八基のめどが今全く立っていないわけですよね。だから、そこも含めてやっていくんだという表明だったと思いますので、大変遺憾に思っております。
やはり、既に、プルトニウムをふやす路線からは撤退するべきだと国際的にも注目をされている中で、また、安倍総理が核セキュリティーサミットでも最小化を発言している中で、まだ依然としてこうした路線であるということは非常に残念だなと思っております。
そこで、もう一つ、最終処分の問題なんですけれども、二〇〇〇年に制定された最終処分法によって、NUMO、原子力発電環境整備機構が設立されて、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けて検討を進めてきたわけです。しかし、いまだ受け入れ自治体はあらわれておりません。
昨年五月に、政府は、新たな基本方針を閣議決定して、国が科学的有望地を提示するといたしました。その一つとして、海底処分が俎上に上り、総合資源エネルギー調査会、放射性廃棄物ワーキンググループのもとに、沿岸海底下等における地層処分の技術的課題に関する研究会が一月二十六日から立ち上がっています。
そのときの資料、資料といいますか記事が資料の五番にあるんですが、福島民報の一月二十七日付、「沿岸海底下処分のイメージ」ということで、三百メートル以上の深さであること。そうはいっても、地上施設があるわけですよね。そこから坑道を引っ張っていくわけですけれども、海岸から二十キロ以内の距離であるということをイメージされているということをるる議論がされたわけであります。
そこで、その整理の中で、海底下処分の場合、土地利用に関する制約が小さいことが大きな利点という整理がありました。つまり、海は誰のものでもない、権利交渉が比較的容易という考えからなんでしょうか。
ちょっと時間の関係で、二つ続けて質問します。
権利交渉が比較的容易という考えからなのかというのが一点。そして、そういう理屈で、理論上でいいますと、青森県の六ケ所村の近傍、延長上の海洋、こうしたことも選択肢からは排除されないということなんでしょうか。お願いします。
○多田政府参考人 お答え申し上げます。
二点いただきました。
まず、今回の沿岸海底下について研究会を始めたわけでございますけれども、先生御指摘のような観点から始めたものではございません。そこは明確に申し上げておきたいと思います。
総合資源エネルギー調査会の中で議論を重ねる中で、廃棄物の輸送時の安全性確保の観点からは海上輸送が前提だろう、その海上輸送を前提といたしますと、港湾からの陸上輸送の距離ができるだけ短い方が好ましい、こういった御意見がありまして、沿岸部がより適性が高いといった議論がなされてきているところでございます。
他方で、沿岸部は、個別の地点ごとに詳しく見る必要はございますけれども、一般的には地下水の流れが比較的緩やかである、あるいは隆起速度が比較的小さいといったことが期待できる面があります。
しかしながら、その一方で、沿岸部の場合につきましては、長期的に海面のレベルが動くことをどういうふうに考えるか、それから、塩水の影響を考慮する必要がある、こういった課題も指摘されているわけでございまして、私どもといたしましては、幅広い選択肢を確保するといった観点から、専門家の方々によります研究会を設けて、そして、あくまで海底下を含みます沿岸部で処分を行う場合の科学技術的な課題とその対応策を検討していく、こういうことでお願いをしているところでございます。
先生が御指摘いただきましたように、海底下の場合、土地利用に関する制約が小さいといった指摘も確かにあるわけでございますが、今申し上げましたように、今回の研究会は、選択肢を広げる観点から、あくまで沿岸部の場合の科学技術的な課題は何であるか、そしてその対応策はどうなのか、こういった点を検討するためのものでございまして、そうした趣旨であるということが一点。
それからもう一点、青森県の六ケ所村の近傍、沖合ということはどうなのかという点でございます。
私ども、海底下かどうかにかかわりませず、今回の科学的有望地の議論の中では、個別具体的な地点についての検討は一切行ってございません。
ただ一方で、青森県との間におきましては、青森県を最終処分地にはしないという約束を歴代行っておりまして、これを遵守する考えに変わりはないということを申し上げておきたいと思います。
○高橋(千)分科員 沖合だろうとそれは同じだということを確認させていただきました。
時間が来ましたので、これで言い切りにいたしますけれども、これまでも手を挙げる自治体は全くなかったわけなんですね。それで、国が適地をこちらから提案するんだと。それに伴って、これまでにない、交付金とは違う新たな支援措置、例えば国立の何かとか、そういうこともいろいろ俎上に上っていると聞きました。
しかし、私は、本当にこの問題は矛盾の先送りでしかないと思うんですね。やはり一つ一つ解決していかなければ、それなのに、再稼働をどんどん進めて、とりあえず当座のところを見えなくする、先送りするという考えは本当にやめるべきだと思っております。
伊方原発の再稼働に当たって、安倍総理が、万が一事故があったときには国が責任をとるということをおっしゃいました。だけれども、万が一起こってからは、幾ら責任をとったって、今だってそうですよね、今だって福島の問題では、国が前面に出て責任をとると言っています。でも、取り返せないものがあるんだということを考えれば、この再処理、再稼働、そしてサイクル路線はきっぱりとやめるべきだということを御指摘して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
――資料――
【資料1】「汚染水の発生量倍増」河北新報2015年12月19日
【資料4】「平成26年における我が国の分離プルトニウムの施設内移動量・増減量及び施設間移動量」(内閣府)