日本共産党の高橋ちづ子議員は10日の衆院災害対策特別委員会で、災害対策基本法改正について、被災者の実態にあわせて住宅再建の支援などを見直すよう求めました。
高橋氏は生活再建の第一歩である、り災証明書が初めて法定されたとして、家屋の被害状況だけが基本となっている被害認定について、「液状化」など被害の実態に合わせた内容にすべきだと指摘。古屋圭司防災担当相は、「住家以外に市町村長の裁量で被害の種類を書き込めるようにしている」と答えました。
高橋氏は災害救助法の応急修理は所得要件を撤廃し一部損壊を認めるべきだと提起。桝屋敬悟副厚労相は「総合的に検討していきたい」と答えました。
高橋氏は、半壊以上は「被災者生活再建支援法に入れるべきだ」との議論が中央防災会議でもあったと指摘し、法改正のこの機に見直すべきだと強調しました。
仮設住宅の住み替えについて、「県外から帰還する等は認めるが、原則、次は恒久住宅」という桝屋氏に対し、「避難が長期化し、子ども、介護等事情も変わる。原則ではすまなくなる」として柔軟な対応を求めました。
(しんぶん赤旗 2013年5月14日より)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。きのうに引き続いて、よろしくお願いいたします。
災害対策基本法は、昨年に引き続く改正でありますが、初めて基本理念が定義されるなど、大幅な改正でございます。
しかし、基本法の第三条「国の責務」についてでありますが、「国は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみ、組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。」この肝心な部分はさわっておりません。これは非常に重要だと思っております。ぜひ大臣には、この責務を遂行するという決意も込めて、この後の質問に御答弁をお願いしたいと思います。
それで、きょうは最初に、被災者の生活再建の第一歩である罹災証明の問題ですが、これは九十条の二に初めて法定がされました。
自然災害の定義は多岐にわたります。今回も地すべりや土砂崩れなどが新たに定義に加わったわけでありますけれども、自然災害にはいろいろあるということ、それと同時に、被害の実態も非常に多様であります。
ところが、依然として、罹災証明書に書き込む内容は、全壊、半壊といった家屋の被害状況のみが被害認定の基本となってまいりました。東日本大震災でも、液状化など宅地被害などが非常に大きな課題となったわけでありますから、被害の実態がちゃんとわかる、そしてそれがその後の支援の大きな物差しになっていく、一助になっていく、そういうものであってほしいなと思っているんです。
ですから、今回、法定されるということが大きな契機になると思いますので、その中身と運用について実態に合わせたものにすべきだと思いますが、大臣に伺います。
○古屋国務大臣 お答えします。
今回法制化をします罹災証明書の証明事項については、罹災証明書が、被災者生活再建支援金や住宅の応急修理といった住宅被害に着目した被災者支援措置の適用に多く活用されております。また、かねて市町村において交付されてきている罹災証明書においても住家の被害状況が一般的に証明事項に含まれているという事実を踏まえて、これを必須の証明事項といたしております。
一方、不動産の被害など、住家以外の被害について一律に罹災証明書の必須の証明事項とすることについては、これらの被害に着目した全国的な公的支援制度が乏しい中で、被害調査にかかわる事務等に時間を要するなど、被災自治体に過大な負担を与えることになると考えています。
しかしながら、市町村によっては住家以外の被害に着目した支援制度を独自に創設することも考えられるところでありまして、今回の改正法におきましても、こうした地域の創意工夫を発揮することができるように、住家以外の被害で市町村長が定める種類の被害についても証明事項にできることとしております。
○高橋(千)委員 市町村長が判断をすればできるということは、前にも一度私は質問したことがあるんです。ただ、そこをもっと踏み込んで、例えば各自治体の活用の方法を交流するですとかお知らせしていくですとか、そういうふうにしていくことも含めて、私は質問させていただきました。
やはり、確かに今までは、被災者生活再建支援法のように住宅の支援の物差しになるからということであったわけですけれども、現実には、減税ですとか、あるいは医療、介護の減免措置とかも今回図られましたし、いろいろな形で活用されるわけですよね。そうしたら、被害は非常にあるんだけれども、うちというところだけに着目すると半壊にもならないわ、しかし土台は崩れているわということが今生起をされているわけですから、各地では既に始まっているその取り組みも大いに認めていくという立場で柔軟に活用していただきたいということ。
むしろその方が、ありのままを出せばいいだけの話ですから、家屋はもちろん書くけれども、ありのままを書いていくということで大いに検討していただきたいと思いますが、もう一言、よろしいですか。
○古屋国務大臣 今回の改正において、今私が申し上げましたように、それぞれの地域の創意工夫を発揮することができるように、市町村長が定める種類の損害については証明事項にできることとしている、私は、これはしっかり前進をしたというふうに考えております。ぜひそれは御理解いただきたいと思います。
○高橋(千)委員 わかりました。では、市町村の取り組みは前進したというふうに評価をされていると。まずそこから出発して、いろいろな被害に合った支援制度というのが実際どうなっていくかということをまた今後の議論に生かしていきたい、このように思います。
それで、今回、災害救助法の所管を内閣府に移す、その理由は何でしょうか。
○古屋国務大臣 お答えいたします。
災害救助法は、その制定以来厚生労働省が所管をしてきました。各省庁横断的な施策の総合調整を行う内閣府が災害救助法を所管することにより、同法による救助の実施に当たり、例えば、応急仮設住宅の供与については、住宅施策や関連業界との連携の観点から国土交通省、福祉施策の観点からは厚生労働省、あるいは、被服、寝具その他生活必需品の給与または貸与については経済産業省、学用品の給与については文部科学省など、関係省庁との連携を一層強化して対応していくことが今度は可能となるわけであります。
それから、内閣府が従来から所管をしている被災者生活再建支援法に基づく支援金の支給とあわせ、避難段階における救助から生活再建の支援に至るまで、被災者支援の実施を内閣府に一元化して、国と地方公共団体間の事務及び連絡体制を簡素化するということが可能になると考えております。
このように、災害救助法を厚生労働省から内閣府に移管することは、防災行政を迅速に進めていく上でメリットは極めて大きいというふうに判断をいたしております。
○高橋(千)委員 災害直後の救助や救援、あるいは避難所の設置など、そういう当面直面する課題から一貫して、防災から復興までを内閣府が全部所管する、しかも各省庁との連携もやっていくんだということで、メリットが大きいという答弁だったと思います。私は、制度の中でもメリットをぜひ生かして整理をしていただきたいということで、きょうは質問したいなと思うんですね。
それで、資料の一枚目を見ていただきたいんですが、被災者生活再建支援金の東日本大震災における被災三県の支給実績がございます。一番左端、基礎支援金。十七万百二十世帯が百万円の基礎支援金をもらっている。加算支援金は、約半分になります八万六千四百三十八世帯。つまり、ここが唯一、全部もらって自力再建をなし遂げた、そういう世帯というカウントになるのかなと思います。
ただ、実態は、その右側にありますように、家屋の被害、全壊、半壊、一部損壊まで入れますと七十六万一千百二十一世帯。これだけの数があるということでは、実際にこの支援金を使っているところが全体ではまだ二割強程度になっているということが読み取れるのかなと思うんですね。
その上で、めくっていただきまして、災害救助法の応急修理と被災者生活再建支援法の比較であります。これは救助法が、厚労省の所管なんだけれども今度は内閣府に移るわけですよね。制度の仕組みが法定受託事務と自治事務とか、かなりの違いがございます。
問題は、その次です。三枚目を見ていただきたいんですけれども、災害救助法の応急修理、これは対象となる被害が半壊以上となっております。そして、所得要件もあるわけですね。ところが、被災者生活再建支援法は、〇七年の改正によりまして所得要件を取っ払いました。そういう経過があるにもかかわらず、何でこっちは残っているのかということを私がずっと言い続けてきたということであります。
これに対して、〇八年の十一月の本委員会のときに、自民党の当時の佐藤勉防災担当大臣が、総合的な検討をしたいということをおっしゃいました。
いよいよもって、所管が一つになるということで、ここを整理していく必要があると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
災害救助法は、十月から我々内閣府防災に参りますけれども、現在は厚生労働省が所管をしております。
災害救助法、被災者生活再建支援法は、先生御提出の二ページ目に目的がそれぞれ書いてございますけれども、まさに発災直後の応急的な救助をやるのが災害救助法、それからもうちょっと進んだ段階で被災者の生活再建を担うのが被災者再建支援法ということで、それぞれ目的が違います。それぞれの目的に応じて、具体的な制度設計も違ってきている、そういうふうに理解をさせていただいております。
○高橋(千)委員 今の答弁を聞いていただいたと思うんですが、目的が違うんです。
発災直後の必要な救助をする、その範囲の中で応急修理というものがございました。だから、所得要件はなかったんです。
もともと、災害救助法の応急修理には所得要件はありませんでした。それが、二〇〇四年の中越地震のときに、非常に大規模な災害があって、支援をしなければならないからということで所得要件を新潟県がつけたんです。それをオール・ジャパンにしてしまったというのが経過なんですね。
だから、何で半壊以上なんですか。むしろ、応急修理だからこそ一部損壊が使えて当然じゃないかと私は思うわけです。
この3の方の下を見ていただきたい。これは大変厳しいことを書いているんです。「応急修理の活用により、当面の住居は確保できることから、仮設住宅の入居対象とならない」。これは中越のときに大問題になりまして、そのことを知らないで使っちゃった。使っちゃったら、えっ、仮設に入れないんですかと。だったら、ちょっと考えるべきだったということになるんですよ。
たった五十二万円の現物給付を活用したことによって、何年も可能な仮設住宅に入れなくなる、それはちょっと厳し過ぎるんじゃないか。
ということは、この制度を活用すべきは、五十二万円と支援金を足してこれで自力で再建が可能なんだ、すぐにもできるんだという条件のある人と、五十二万円の範囲で十分間に合う程度の本当に一部損壊、そういう人にこそ使われるべきなんだ。つまり、そこだけ修理をすれば十分に暮らしていける、そういう人に使われてこそ制度の本当の趣旨なんです。
どうですか、もし可能であれば、桝屋副大臣、せっかくおいでいただいているので。
○桝屋副大臣 ちょうど委員の議論の最中にここへ座ったものですから、御指名をいただきました。
住まいのことに関しては、ちょうど業務を移管するわけでありますから、委員の指摘等も踏まえて、今後総合的に検討しなきゃならぬと思っている次第でございます。
○高橋(千)委員 副大臣には実は次の質問を用意していましたので、急に振りましてごめんなさい。
ただ、いい形で引き継いでいただきたいし、一緒に知恵を出していただきたいと思うんですね。
昨年の中央防災会議の防災対策推進検討会議においても、やはりこの応急修理の事務が大変煩雑である、逆に、だから半壊世帯以上は支援法に入れてしまえばいい、そういう意見があったんです。そういうことも踏まえて、私は建設的な提案をしております。
ぜひ、大臣に、検討すると一言お願いいたします。
○古屋国務大臣 この支援法ができたその趣旨というのがありますので、その趣旨からすると、対象を広げていくということは、正直言って制度の根幹にかかわる話なものですから、やはり慎重な対応が必要だなというふうに考えております。
高橋委員がいつもそのことを主張しているのはよく承知をいたしておりますが、我々としては、今申し上げたように慎重に対応すべきである、こういう考えです。
○高橋(千)委員 私が主張したのは、応急修理が一部損壊で使えないのはおかしいということ、まずそこを整理していただきたい。そして、半壊以上は支援法に入れるべきだ。こうすると、全然何の支援も受けられない人がかなり救われてくるんですね。
最初の表にあるように、半壊世帯というのは二十三万を超えています。そのうち応急修理を使えたのは八万六千八百七十三件なんです。つまり、これは所得要件があるし、年齢要件もあるんですよ。とてもじゃないが対象にならないんです。
そうすると、半壊といったって、改修には何百万も実際にはかかるわけでしょう。そこに何の支援もないというのが実態なんだ。そこをよく見ていただいて、一本化するメリットとさっき大臣せっかくおっしゃいましたので、そこを検討していただきたいということで要望をしたいと思います。
そこで、桝屋副大臣にぜひお伺いをしたいと思いますが、昨日、仮設住宅の住みかえ問題を質問いたしました。もちろん、仮設というのは本来長く住むところではありません。とはいえ、公営住宅がまだできておりません。実際にできているのが数百という単位なんですよね。それで、土地計画の問題などもあるので、何年もかかるということが現実にあるわけなんです。
そういう中で、何年もかかる間に、子供さんが進学をしたりとか、ばらばらに暮らしていた家族が親の介護で一緒に暮らさなきゃいけないとか、さまざま事情がある。それは当然、その事情を踏まえて自治体が判断できるということに整理したらいかがかなと思うんですが、どうでしょうか。
○桝屋副大臣 この点につきましては、応急仮設住宅、昨日の本会議で大臣と委員が議論されておられる姿を見ておりました。昨日も大臣が答弁をいたしましたけれども、応急仮設住宅の入居につきましては、先般、被災地において、今委員からお話がありましたが、災害公営住宅等の恒久住宅が不足する場合などにつきましては、原則として、特例法に基づきまして、一年ごとに延長できる取り扱いを自治体に周知しているところでございます。
一方で、今委員からお話がありました住みかえに関する話でございます。
この住みかえに関しましては、災害救助法に基づく被災者の転居先としては、これは恒久住宅が想定されているわけでありますから、昨日も大臣が御答弁しましたけれども、基本的には難しいと考えているところでございます。
ただし、具体的な状況を言いますと、福島県から他県に避難された被災世帯が福島県内に帰還される場合は、これは帰還促進の観点もございまして、住みかえを可能とする取り扱いをしているところでございます。昨日、大臣が御答弁申し上げたとおりのことでございます。
○高橋(千)委員 その福島県からやはり出ているんです。若い世帯は一度はもう住みかえをしちゃっている。そして、高齢の親子、九十代と七十代の親子、とてもじゃないが面倒を見なきゃいけないので、三世帯が一緒に暮らそうと。そうすると、今までは三世帯ばらばらでした。ばらばらだったので、それぞれ六万ずつの救助の支援金が出ております。それが一世帯になると、九万円の家賃なんだよ、九万円の家賃なんだけれども、一度目の住みかえが終わっちゃったところには出ませんよとなって、その親子の分六万円しか出ない。これは、飯舘村から福島に避難している方の事例であります。
そうすると、十八万の補償をするより九万の方が半分で済むじゃないか、効率的じゃないかということを現場は言っているんだけれども、いや、原則一回ですというふうな対応がされている。でも、やはりそういうことは柔軟でいいじゃないか、その方が実態にも合っているし、別にむやみにお金を使えということを言っているんじゃない。そういうことをぜひ考慮していただきたいという話なんです。
○桝屋副大臣 今委員から具体的なお話もございましたが、昨日も本会議で大臣が答弁しましたように、やはり、災害救助法の応急仮設住宅の大原則、ここは基本的には変えることは難しいというふうに思っております。
今委員がおっしゃったように、さまざまなケース、私どもの方にもいろいろなケースの声が寄せられているわけでありますが、災害救助法の原則ということは、これは貫いていかなきゃならぬと思っている次第でございます。
○坂本委員長 高橋君、時間も経過していますから、簡潔に願います。
○高橋(千)委員 時間ですので、大臣にもう一言と思いましたが、要望にとどめます。
今、この原則を曲げないとおっしゃると、矛盾が起きます。もう承知していると思うんですが、本当に高台移転が可能なのは八年後とかそういうことが言われていて、では八年間仮設に住むんですかということが当然問われてくるんですね。そうしたときに、今言ったようなみなし仮設を、住みかえを考えるということが、現実的な対応として求められることになるんですね。そこを大いに考えていただいて、それは原則では済まない事態が今起こっているし、これからもっと表面化してきますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。
終わります。