国会質問

質問日:2013年 5月 16日 第183国会 東日本大震災復興特別委員会

水産特区、漁民に「混乱」広げるな

(写真)質問する高橋ちづ子議員=16日、衆院震災復興特別委

(写真)質問する高橋ちづ子議員=16日、衆院震災復興特別委

 日本共産党の高橋ちづ子議員は16日の衆院震災復興特別委員会で、宮城県で水産特区を拙速にすすめたことで漁民に混乱を招いているとして、事の経過を検証し国の責任を果たすよう追及しました。
 4月10日に宮城県から桃浦かき生産者合同会社の特区申請が出され、17日に県漁協、全魚連が意見提出しています。高橋氏は、4月4日に協議会が一度開かれただけであり拙速すぎると指摘。県のアンケートでは、漁民のほとんどが「特区」に反対しており、区割りのための県の調査では目的の説明もしていないなどの声があることを知っていたかとただしました。
 根本匠復興相は「漁業者の皆さんと話し合い、理解を得られるよう努力したと承知している」と答弁。高橋氏は、「県の意見をうのみにしているだけだ」と批判しました。
 高橋氏は特区の適用について「特区に入らない漁業者も含めた地区全体の復興の姿を示すことが必要」と水産庁長官通知で求めていることに言及。本川一善水産庁長官は「合同会社が雇用を40人増やす」などと答弁するにとどまり、地区全体の復興の姿を示すことはできませんでした。一方、「国は浜全体の資源、漁場の管理に責任を持ち、万全を期した措置を講ずること」との委員会での付帯決議を踏まえ、今後も報告の聴取など、国の責任を果たしていくと答えました。
(しんぶん赤旗 2013年5月24日より)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 八日の参考人質疑で、二人の参考人から水産特区についての意見が出されました。
 石巻魚市場社長の須能氏は、対立のまま実行すれば、現場で衝突などの悲劇を生み、本来の目的と違った結果を招くと指摘しました。みやぎ県民センターの綱島氏は、手続に瑕疵があると指摘をいたしました。残念ながら、今も浜の混乱は続いており、拙速だったという感は拭えません。
 まず、水産庁に伺います。
 五月十四日の宮城海区漁業調整委員会の決議では、県の区割りに条件つき同意となりました。これは、宮城県漁業石巻地区支所からの要望とは異なる区割りであることから、当該漁場の秩序に無用の混乱が生じないよう、必要な県の関与を行っていくこととして、指摘をされていた航路については、県漁協の要望については航路も含め尊重し、適切に処理してほしいとの意見が出されております。
 このような指摘がされた背景について、農水省の認識を伺います。

○本川政府参考人 御指摘のとおり、その一つ前の四月二十四日の宮城県海区漁業調整委員会におきまして、委員の方々から、例えば航路につきましては、二百メートル以上の航路幅が確保されていない県の漁業計画は違法ではないかと。これは百五十メートルの確保ということになっておりました。それから、航路が曲がっており航行に危険である旨の指摘があった、こういうふうに承知しております。
 これに対して、先ほど御指摘になった五月十四日の海区漁業調整委員会におきましては、宮城県の側から、桃浦地区の隣接浜の震災前の漁業実態を考慮して、もう既に百五十メートルで運用されていたといったようなこと、そういうようなものを踏まえて区割りを行ったことであるとか、航路を利用する一般船、定期船はほとんどいない、あるいは、漁場内における漁船の移動にも、いかだの間を移動しておられるので支障はないのではないかといったような見解が表明されたと承知しております。
 このようなことが委員会の答申の背景にあったというふうに承知しております。

○高橋(千)委員 今、四月二十四日の議論を紹介されたんですけれども、それを踏まえて、本来の案は、漁場計画案は漁業法に照らして審議した結果認められない、こういう案があった。その上で今回の答申になったわけですから、決してもろ手を挙げて賛成ではない。今おっしゃった二百メートル、百五十メートルの話も、協議会の中ではるる、漁協からの反論はされている、そういうことを踏まえて今、質問しています。
 それを受けて、結局、海区の畠山会長は、地元紙、河北新報に対して、県がつくる修正案を見たいと発言しております。つまり、今の提案も含めてみんな了承したという意味ではないのだ、修正案を期待しているという意味に当然受け取るべきだ。記事の見出しも、条件つき同意となっていますから、まさか、このまま何の修正もなく進むという意味ではないと私は思いますが、いかがですか。

○本川政府参考人 海区漁業調整委員会は、漁業権の免許に当たっての県の諮問機関でございますので、その答申を受けて県が適切に判断していくということになると思っております。

○高橋(千)委員 多分これは、県と海区との関係だから、それ以上国は踏み込まないんだというふうな趣旨でおっしゃっているんだと思うんです。次にまた伺うことがありますので、次に進みます。
 大臣に、四月十日にこの特区の申請が出され、十七日には県漁協、全漁連からも意見が出ています。協議会は、四日に一度開かれたのみです。これで二十三日に認定されております。拙速過ぎるのではないか。
 関係漁民の理解が本当に得られたと思っているのか、伺います。

○根本国務大臣 宮城県から申請のあった漁業法の特例に関する復興推進計画、これにつきましては、認定に必要な要件を満たすということで、農林水産大臣の同意も得られたので、二十三日に認定をいたしました。
 この復興推進計画については、昨年九月以降、宮城復興局、復興庁が、宮城県と意見交換や計画の事前調整を行ってまいりました。そして、宮城県は、昨年十一月下旬から地域協議会直前の本年三月下旬まで、県漁協や地元漁業者に赴いて、漁業権特区についての理解を得るための努力を重ねてきたと考えております。
 今いろいろお話がありましたが、国としても引き続き宮城の水産業の復興をサポートしていきたいと思っておりますので、被災地の漁業の復興のために、県や漁業者など、地域一体となった取り組みをお願いしたいと考えているところであります。

○高橋(千)委員 基本的に、今の答弁は、四月二十五日の本委員会の質問に対する答弁と同じなわけですね。
 私が質問したのは、関係漁民の理解が得られたと感じているのかということを質問しました。プロセスが、十分な時間があったとか農水大臣の同意が得られたとか、そういうことを、いわゆる形式的におっしゃっているだけなんですね。
 ここに、県が行ったアンケートの写しがございます。マル・バツで賛成、反対とつける欄はないわけです。なので、反対という意見がなかったかのように言われております。だけれども、ほとんどの方が特区に反対だと書いておる。また、特区の区割りを了承した覚えはない、このように書いているわけです。なぜそうかというと、何の説明もなく洋上調査に連れていかれて、後になって、それは区割りを決めるものだったんだと。そんなことは一言も聞いていないということを非常に強い口調で皆さんがおっしゃっているんです。
 そういうことを踏まえた上で、十分な理解が得られたと思っているのかということを指摘しています。このような経過があったことを御存じでしょうか。

○根本国務大臣 私は、宮城県において、漁業者の皆さんとさまざまな話し合いを行って、そして理解を得られるように努力してきたものと承知をしております。

○高橋(千)委員 だから、だめなんですよ。県の言い分を聞いているだけだから、それはそうなったということになるじゃないですか。
 これは、特区法の審議をするときから私は指摘してきたことです。住民の意見を尊重してと一行書いたけれども、どうやってそれを酌み尽くす体制をとりますかということを何度も聞いてきました。そのときは政権が違っていましたけれどもね。首長さんから意見を聞けばいいんだということを言って、推進したい人の意見を一方的に聞くだけではそうはならないわけなので、だから指摘をしています。
 水産庁にもう一度聞きますけれども、平成二十三年の十二月二十六日の水産庁長官の通知一五六三号に、計画について、地元の漁協による漁業権管理では対応が困難と考えられる理由にも触れながら詳細に記載することが必要であるとあります。地元漁協では困難、この理由はありますか。

○本川政府参考人 この復興推進計画によりますれば、この桃浦地区は震災によりカキのいろいろな施設であるとか住居が破壊し、当初、その桃浦地区のカキ養殖の再開を希望した方は、十九名の中で三名しかおられなかった。この三名の方々も少人数での再開のリスクを懸念しておられて、他の地元漁業者は高齢で後継者もいないといったような、なかなか養殖の再開を決断できないという状況でございました。また、住民の多くが桃浦地区を離れたということで、カキむきの人材もなかなか確保できないというようなことで、桃浦地区の漁民のみでは、必要な養殖施設などの整備、人材の確保を行うことは困難な状況にあったということが書かれております。
 こうした中で、従来の地元漁協による漁業権管理のもとで個々の漁業者が再開をするというのはなかなか選択ができない、地元漁協の管理下では選択ができないということで、漁民グループと民間企業が連携した法人をつくって再開をしていくという選択がなされたというふうに承知しております。

○高橋(千)委員 後継者がいないとか被災が深刻だというのは、これはもう宮城県全体の問題なわけですよね。
 そういう中で、私が今指摘したのは、長官の通知ですよ、担当がかわっているかもしれませんけれども。自分たちが通知で出している中身は、漁協による漁業権管理では対応が困難と。
 漁業権管理ができませんかということを聞いています。ほかの漁業者が桃浦の周りにもいっぱいいて漁協で管理をしているのに、ここだけ管理ができない、そういう理由がありますかと聞いています。

○本川政府参考人 繰り返しになりますが、十九名の中で三名の方、その方々も非常に不安に思っておられた。そういうことで、漁協が管理をするということは、その漁協管理下のもとで、個々人が免許を受けて、個々人が漁業権を行使するという形になるわけでありますが、それでは再開が困難であったというふうに判断をしたということでございます。

○高橋(千)委員 既に漁協に加盟して再開しているじゃないですか。再開が困難だといったって、特区が認定される前に再開しているんです。そんなのは理由になりませんよ。
 同じ通知で、特例の適用が想定される法人だけでなく、地元の漁協のもとで養殖業を営む漁業者も含めた、要するに、特区が適用される人以外の人も含めて、当該地元地区の全体としての復興の姿を示すことが必要であると。
 これは全然、復興の姿を示されていませんが、どう判断されましたか。

○本川政府参考人 これも、宮城県の復興推進計画によりますと、桃浦地区の復興の具体的な全体図につきまして記載されております。
 民間企業の技術、ノウハウなどを生かし、カキ養殖生産から加工、販売まで一貫した取り組みを行うために設立されたこの合同会社によって六次産業化などの取り組みをやる。これを通じて漁業生産をまず増大させる。震災前は大体二億弱だったものを、一・五倍にして、三億にする。それから、地元漁民の生業の維持を図っていく。個人経営から法人経営へ。それから、非参加の漁民の方についても生業の維持に支障がないようにしていく。さらには、雇用機会の創出を図るということで、合同会社に参加されている十五名の方の雇用、さらには、加工などでさらに四十名の雇用を図る。
 このようなことが全体図として、復興推進計画に記載されているということでございます。

○高橋(千)委員 四十名の雇用を図る、それはいずれそうなるかもしれません。それはしかし、今の合同会社の話でしょう。地元地区全体の復興の姿はどうやって描くんですか。生産量が増大するんですか、全体として。

○本川政府参考人 先ほども申し上げましたが、地元漁民の生業の維持という項目で、非参加の漁民の方にも生業の維持に支障が生じないようにするということで、例えば、区割りをめぐっては、非参加の方の意向を最大限尊重して区割りを行うといったようなことにしておりますし、今は漁業をしておられない方についても将来的に区割りを行える、そのような形で非参加の方々にも漁業権が設定できるように区割りをする、そのような工夫がされていると承知しております。

○高橋(千)委員 今、合同会社に入らないけれども続ける意向がある方はたった一名であった、しかし将来のことも含めて一部漁場を確保しましたよ、それだけの話なんです。せっかくのこれだけの通知を出しておきながら、自分たちが指示したことに対して何の回答も得られないで認可をしている、それが実態ではありませんか。復興の姿は全然見えてきません。
 九月一日が免許の更新で、免許は知事の権限であります。しかし、そのための五要件は、特区法に基づくものです。国会が決めたことです。水産庁として、免許の基準にかかわってどのような指導を県に求めたのか、具体的に伺います。

○本川政府参考人 御指摘のように、復興特区法の第十四条では、この特区の免許をするに当たって五つの要件を課してございます。一つは、事業を開始する具体的な計画を有する者であること、技術的能力を有する者であること、社会的信用を有する者であることといったような五つの要件が課されております。
 これにつきまして、この要件の趣旨、解釈につきまして、水産庁の方から宮城県知事に対して、復興特区法に基づき漁業権の免許をする際に知事が特に留意すべき事項として通知をさせていただいておりまして、まず、復興特区法の成立と同日の平成二十三年十二月二十六日、それから、同意をさせていただいたことしの四月二十三日、そのような指導通知を発出しまして、指導させていただいているということでございます。

○高橋(千)委員 次に、農水副大臣に質問しますけれども、大臣にもよく聞いていただきたいと思います、次の質問を。
 今紹介をした免許の基準にかかわっての通知、これにはこのように書いています。衆参の特別委員会において、「国は浜全体の資源・漁場の管理に責任を持ち、万全を期した措置を講ずること。」との附帯決議がなされたことを踏まえ、今後、必要に応じ、国として復興特区法の規定に基づく報告の徴収や措置の要求等を行うこととしています。
 ですから、もう認定したし、国の手は離れたということではなくて、免許を与えるに当たっても要件を満たすこと、また、その後も国としてきちんとフォローアップしていくんだということを言っていると思うんですが、その点について確認をさせていただきます。

○本川政府参考人 まさに御指摘のとおり、同意をした、あるいは認めたからといって、それで終わりではございません。国としても、必要が生じれば、復興特区法に基づく報告の徴収あるいは措置の要求を行うというような万全なものを期していきたいということでございます。
 これらとは別に、附帯決議を踏まえまして、今回私ども、同意するに際しましては、復興庁に対して、引き続き連携協力してやっていきたいということを確認すると同時に、復興庁による認定後は、先ほども申し上げましたように、県に対して、漁業秩序の無用の混乱を生じさせないために必要な関与を行うように、通知でもお願いしているということでございます。

○高橋(千)委員 ようやっと、附帯決議を踏まえということで答弁があったかと思います。
 この議論の中で、前にも言いましたけれども、私は、十四条、漁業法の特例を削除する修正案を出しました。やはり、全漁連なども、少なくとも附帯決議においてここをしっかり確保してほしいということを強く要望されて、与野党が一致してこの附帯決議がなされたわけです。だから、初めてのいわゆる特例という形でやるわけですね、漁業法を変えると。そういうことでの今回の決議だったわけですから、それを本当に重く見て、しっかりとフォローアップをしていただきたいと思っております。
 そこで、桃浦かき生産者合同会社に対して、宮城県がどのくらいの直接、間接の補助をしていますか。

○本川政府参考人 昨夜、宮城県から聞き取ったところによりますと、合同会社に対しまして、一つは養殖用資機材等緊急整備事業という、二十四年度の九月補正で県単独事業で措置をした事業から、二億四千四百万円の交付決定がなされております。それからもう一つは、養殖業再生事業という、これも同じく平成二十四年九月補正で県単独事業で措置した事業から一億五千九百万、合計で四億三百万円の交付決定がされていると聞いております。

○高橋(千)委員 今、トータルで四億三百万円と言いましたけれども、もとの事業は、養殖用資機材緊急支援費は三億九千万円、県単の事業で。それで、養殖業再生支援費は二億六千万円。六億五千万の予算なんですね。そのうち四億三百万円が桃浦に使われている。これは余りにもいびつですよ、十五人プラス、仙台水産を加えると十六人の会社に。そういうことなんです、実態は。
 ですから、本来であれば、これだけの支援ができるのであれば、私たちは最初から言ってきました、漁業の再生のために国が直接支援をするべきだと。それだけの支援ができるのであれば、本当は自立して十分な再開ができるんですよ。仙台水産と合同会社をつくってもいいです。別に、漁業法の仕組みの中で、七人以上の生産者がいるわけですから、当然、参入はできた。つまり、特区を要しなくても十分な参入ができたということになるではありませんか。
 まして、先ほど紹介した通知の中では、公的融資などによって自力での再開が可能となる場合には特例の対象とならない、わざわざそういう指摘をしておきながら、県は、通知なので法的拘束力を持ったものではない、こういうことを協議会の場で言っています。そこまで言われて平気なんですかということを改めて指摘させていただきます。
 残念ながら時間が来ましたので、これまでの経過を踏まえて、大臣にもう一言伺いたいと思います。
 復興庁として、やはり、こうしたプロセスを含めて、十分な検証が必要ではなかったか。これは拙速過ぎるということを私は指摘してきましたけれども、そうじゃないというのであれば、改めてもう一度見直すべきだと思うんです。漁業法の第一条には、漁業の民主化を図ることを目的としています。そういう立場に立って検証していただきたい。一言お願いします。

○根本国務大臣 この特区法に基づく復興推進計画、これは、先ほどお話をいたしましたが、認定に必要な要件を満たすと認められて農林水産大臣の同意を得られたことから、二十三日に認定したところであります。
 今、水産庁長官からのさまざまお話がありましたが、今後の桃浦におけるカキ養殖の取り組みの復興状況あるいは特区制度の効果について、復興庁、宮城復興局としても、適切にフォローアップをしてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 終わります。

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