日本共産党の高橋ちづ子議員は衆院災害対策特別委員会で23日、災害対策基本法改定案についてただしました。
高橋氏は、指定緊急避難場所と指定避難所の法定について、避難場所と勘違いして犠牲者が出たり、洪水の際冠水して避難所までたどり着けないなど具体的事例をあげて、どう進めるのかと質問。原田保夫内閣府政策統括官は、「市町村で災害の種類ごとに指定することになっており、防災マップ作成時は住民と一体となって進め、防災訓練・防災教育などを行い周知徹底を図る」と答えました。
高橋氏は災害対策基本法の災害の定義に、「放射性物質の大量の放出」とあることから、福島第一原発事故も入る認識でよいかと質問。原田氏は、「該当する」とのべたものの原発災害については特別法で対応すると答弁しました。
高橋氏は、地方自治体から、災害法体系の一本化を求める声があがっていることを紹介。福島原発事故においても被災者であることに変わりないのに「原発は東電が対応」など、現場に混乱を招いたことを指摘しました。西村康稔防災担当副相は一本化については難色を示しましたが、現場の混乱を招いたことを認め、「今後統一的な対処が必要。人員、指揮など現場の混乱を招かないよう手を打つ」と述べました。
(しんぶん赤旗 2013年5月27日より)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
最後の質問になりますので、よろしくお願いいたします。
最初に、災対基本法で、今回、第四十九条に、指定緊急避難場所、そして指定避難所を法定いたしました。
二十一日の参考人質疑でも、釜石市の野田市長が、防災センターという名前が誤解を生んでいたんだ、市民も、日ごろから避難訓練を行っていたこともあって避難場所と勘違いをして、私もそこを見てきましたけれども全壊で、大きな犠牲があったということが述べられました。
ですから、今回、あらかじめ指定をし、そして同時に周知をしていくということが本当に大事だと思うんですね。
例えば、九州の方のある都市で、水害の調査に行ったときに、公民館に立派なハザードマップが飾ってありまして、そのときのハザードマップの浸水想定地域とそのときの水害がぴったり一致していたんですね。ぴったり一致していたんだ、よかったなという話にならないで、市民はそこにハザードマップがあることを誰も知らない、何の役にも立たなかったということがございました。
また、ある中国地方なんですけれども、避難所とみんなに周知をしている場所が、洪水でまるっきり冠水をしておりました。ですから、誰も行けません。
そういうことなんですね。災害の種類によって、当然高台でなければいけない場合と、地震だからすぐ近くの方がいい場合と、さまざまある。ですから、今回の法案は、種類の違うごとに指定をするということも書いているんですね。これは、書くのは簡単なんだけれどもやるのは非常に大変であるということで、どのように進めていくのか、お願いいたします。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
現在、各市町村で、地域防災計画で定められております避難所につきましては、その多くが震災を念頭に、被災者が一定期間避難生活を送る場所として定められているというものでございまして、災害の危険が及ぶことが想定される地域に立地するものなど、津波とか洪水等の災害の発生時に緊急避難場所としてはふさわしくないものも存在している、そういうのが実情でございます。
そういった中で、今回の法改正におきましては、緊急時の避難場所と、それから一定期間避難生活を送る場所としての避難所を区別した上で、緊急時の避難場所につきましては、災害の種類ごとにあらかじめ指定緊急避難場所として指定するという仕組みを設けております。
あわせて、今回、市町村において、災害が想定される区域や、避難場所、避難経路、避難情報の入手、伝達方法といった主要な内容が盛り込まれた防災マップを災害の種類ごとに応じて作成するという規定も設けております。これらにつきましては、仕組みだけではなくて、この仕組みがどういうふうに運用されるかが大切だということにつきましては先生の御指摘のとおりだと思います。
このため、例えば、具体的に申し上げますと、防災マップの作成につきましては、これは行政が決めるという仕組みにはなっておりますけれども、実態上は、市町村と住民が一体となって取り組む、そういうことを通じて、避難所と避難場所の違いであるとか、あるいは、災害ごとに避難すべき場所が異なることについての理解を深めて、住民の意識の向上を図っていく、そういった取り組み。それから、さらに申し上げますと、ふだんから住民に対して、こういった仕組みの趣旨の徹底、それから、緊急時の避難場所や避難所の所在地情報の周知といったことも大切でございますので、こういったことにつきましては、防災訓練あるいは防災教育というのが大切な役割を担うのではないのかなというふうに思っております。
こういったことにつきましては、市町村段階で徹底されることが大切だと考えておりますので、これから国としても積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 今御紹介いただいた、住民が一体となって防災マップをつくる、釜石なんかは、まさにその過程にみんなが参加をしているわけで、だからこそ自覚がある。同時に、想定内ではないよということも防災教育の中で徹底されていたということが今回の釜石の奇跡につながったということはあったかと思います。
逆に、陸前高田の保育所の先生方は、津波の、本当にフラッシュバックしてくる、そういう子供たちを見ながら、本当に緊張して避難訓練を繰り返し行っています。それで、今全壊してしまって、実は仮の保育所なものですから、みずからいろいろなルートを通って、避難場所にここがいいんじゃないかという空き地とか施設を見つけると、そこの持ち主にお願いをして決めておく、そういうマイ避難場所みたいな形の取り組みをしています。やはりそれは、それぞれが一番よく知っている、道をよく知っているということもありますので、本当にそういう知恵が生かされていって、日ごろからそこが徹底されていくようになればいいなということで、引き続き御意見を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
そこで、大臣に伺いますけれども、国の責務に、住民の命と財産を守る、このように明記した災害対策基本法ですけれども、これは、やはり防災、減災、そして復旧復興、あらゆる過程での災害対策の基本を備えているということでは、いろいろな法律がありますけれども、関連した法律がいろいろあるけれども、そういう意味では上位法である、この認識でよろしいでしょうか。
○西村副大臣 お答えしたいと思います。
災害対策基本法は、御案内のとおり、その「目的」におきまして、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方団体その他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧、防災に関する必要な対策の基本を定めるということでありますので、まさに御指摘のとおり、この災害対策基本法が、その名のとおりでありますけれども、我が国における災害対策の基本であるということであります。
一方、地震とか水害とか土砂災害等、その災害の種類、特性に応じて、当該災害固有の対策が求められるものがありますので、これらについては個別法により対処することが適切である。この基本法と個別法が相まって、全体として災害対策法制を構成しているというふうに理解をしておりますので、基本法ではあるんですけれども、上位とか下位とかという概念には当たらないんじゃないかというふうに思います。
○高橋(千)委員 そうなんでしょうか。ちょっと正直、残念な答弁だったなと思います。
それぞれの法案があって、参考人質疑の中で、一本化するべきだという泉田参考人からの意見があって、そうはいっても災害の種別がと、いろいろありました。
しかし、災害の基本は、今副大臣おっしゃったように、住民の命と財産を守る、それが国の責務である、その上でいろいろな出方があるということで当然法律はあるんですけれども、しかし、基本法がやはり上位法であるという位置づけがしっかりしなければ、そのたびにすき間が出てきて、予測できなかった事態に対してまた法律をつくらなきゃいけないということになる。
本来は、基本法の中に基本的な施策、考え方というのが備えてある、そういうふうな立場であるんじゃないかな、私はそういうふうにつくられたと思うんですが、違うんですか。
○西村副大臣 御指摘のとおり、災害対策基本法がこの法体系の中の中心にあることは間違いないんですけれども、それにほかの個別法がつながって全体としての法体系を形成しているというふうに理解をしております。
それからあわせて、ちなみに言えば、復興については大きな規定がこの対策基本法には入っておりませんで、基本的には、防災それから復旧、それを通じて復興につなげていくということで、個別の法律でいろいろ復興のことが書いてありますから、そういう意味では、中心ではあるんですけれども、横にいろいろな法律が広がっているというふうに理解をいたしております。
○高橋(千)委員 中心ではあるけれどもと。でも、そこが本来上位法の位置づけなんじゃないかと私は思うんです。そこをはっきりしないから、やはりいろいろな問題が出てくるし、指摘がされるのではないかなと思うんですね。
図らずも副大臣がおっしゃったんですけれども、復興ではないとおっしゃいました。そうすると、今回、もう一つの大規模災害からの復興法は、まさしく復興の枠組みを書いたものなわけですね。だけれども、大規模災害なわけですよね。特定大規模災害と特定大規模災害等という定義がございます。そうすると、それ以外の災害についての復興の枠組みについてはどうなるんですか。そこに本当は災害対策基本法が備えていなければならないんだと思うんです、私は。ところが、それは復旧の、直後の話だけですよと。復興になったら大規模災害だけですよというわけじゃないわけでしょう。そこはどうなんですか。
○西村副大臣 復興については、従来から、災害対策基本法においては、目的とか定義に直接的な規定はありません。ないわけですね。
ただ、その規模にかかわらず、災害が発生したときには、速やかに、復旧及び被災者の援護を図り、災害からの復興を図るという規定がありまして、復旧、被災者の援護から復興につなげていくところまでの規定で、そこから先は細かい規定はないわけであります。
こうした規定を受けて、いわゆる復旧についてはそれぞれ、例えば公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法を初めとする個別法がありますし、それから援護についても災害救助法があるという、そこのところはちゃんと規定があるわけですね。
今回、御指摘の大規模災害からの復興に関する法律を用意いたしました。他方、中小の規模の災害からの復興については、こうした個別の法律による復旧あるいは被災者の援護を通じて復興が図られる。さらに言えば、土地区画整理法とか再開発法なんかで面的に復興を図っていくということになっております。
○高橋(千)委員 大臣に伺いますけれども、私が本会議で質問した趣旨は、まさにそこにあるんですね。細かい法律はいろいろあるんだけれども、やはり基本的な考え方が基本法にあって、復興の道筋がちゃんと書かれているということが大事だと思っているからなんです。
それで、大規模災害からの復興法は、本会議で質問したとおり、災害を受けた地域における生活の再建及び経済の復興であると理念が書かれました。それは被災者一人一人の復興、再建を意味するんですよと大臣は明言をされたと思うんです。
だけれども、災対基本法の方は、速やかな施設の復旧、被災者援護、災害からの復興とあるんですが、被災者援護までにとどまっているわけですね。だから、中小の災害の復興についても、被災者一人一人というのがちゃんと明記されればよかったなと私は思っているんです。同じ書き方でよかったのにと思うんです。そういう趣旨で質問をさせていただきました。
大臣、もう一回。
○古屋国務大臣 今、副大臣から答弁させていただいたとおりですけれども、中小規模の災害からの復興については個別法による。具体的には、例えば、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法だとか、激甚災害に対処するための特別の財政支援に関する法律であるとか、土地区画整理法あるいは被災者生活再建支援法、職業安定法、中小企業信用保険法等々、こういうことで個別的に対応しているんですね。
ですから、そういう意味で、今、西村副大臣から申し上げたような答弁に、説明になったということであります。
○高橋(千)委員 ですから、大規模災害の場合は、そういういろいろな法律を踏まえて復興の道筋を書いているわけじゃないですか。だから、それを全部書くというんじゃなくて、基本的な考え方は一緒ですよねということを聞いているだけなんですよ。それを何か、言っては非常に都合が悪いことがあるんでしょうか。
ただ、本会議では、一応、大臣は、含めとおっしゃいました、被災者の一人一人の再建を含めとおっしゃいましたから、私は、それを違うと言っているんではないと思いますけれども、よろしいですよね。要するに、災対基本法の基本理念も、被災者一人一人の生活再建を図っていくということを意味しているんだということでよろしいですよね。
○西村副大臣 御指摘のとおり、今回の改正案の中で、基本理念の中に、繰り返しになりますけれども、「災害が発生したときは、速やかに、施設の復旧及び被災者の援護を図り、」この後ですけれども、「災害からの復興を図ること。」という、その委員御指摘の気持ちは、理念はここに入っておりまして、大臣が先般お答えをしたとおりであります。
ただ、個別の復興につなげていくところはこの法律の射程の外でありまして、つなげていくところまではあるんですけれども、個別の復興は別の、個別法の体系によるというところであります。
○高橋(千)委員 ぜひ、今後に向けてもう少し整理をしていただきたいと思います。気持ちは含まれているというお答えでありました。
それで、災害の定義なんですけれども、見直しをするたびに少しずつふえております。
ただ、第二条第一号の「政令で定める原因」として、放射性物質の大量の放出というものがあります。これは政令に落とし込んでいるんですけれども、政令のトップに出てくるのが、この「放射性物質の大量の放出、」とあるわけですね。
ですから、基本的には、福島第一原発の事故もこの災害基本法の範疇の中に入っている、この考え方でよろしいんですよね。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
原子力災害につきましては、概念上、災害対策基本法の災害に該当するということではございますけれども、その特殊性に鑑みまして、別途、原子力災害対策特別措置法が制定されているということでございます。
したがいまして、災害対策基本法と原子力災害対策特別措置法は、一般法と特別法の関係にあるというふうに解するのが相当かと思います。
○高橋(千)委員 ここもちょっと、なぜこうなのかなと思うんですけれども、特殊性があるというのは私たちが言ってきたことです。ですから、当然、事業者の責務があり、国の責務があって、特別な対策をとらなきゃいけない、情報をとらなきゃいけない。
ですが、被災者という点では、泉田知事がおっしゃったことは、要するに、被災者がいて、避難所をつくらなきゃいけない、あるいは仮設住宅をつくらなきゃいけない、支援をしなきゃいけないという点では、自治体のやることは一緒なんだよと。つまり、被災者の視点では同じなんだと。当然、特殊性によっての特別な法律が必要なのは当たり前なんです。結局、そこが整理されていないから、今回の東日本大震災と原発事故の発災当初は大変な混乱がありました。
要するに、福島の皆さんは、東電から賠償があるんだから、これは救助法の対象になりませんよとか、そういうことがさまざま現場であったわけであります。だけれども、それは、今すぐ東電が一から十まで面倒を見てくれるわけではなくて、後からそれはついてくるというか、申請しなければ出てこないわけであって、その直後において被災者であるという点では一緒なんですね。そこにすき間があってはならない、そういう意味での体系をちゃんと意識してほしいということで指摘をさせていただきました。それはよろしいですよね。
○西村副大臣 法体系上の整理は、先ほど説明のあったとおりでありますけれども、御指摘のように、今回の東日本大震災のときに、現場でいろいろな混乱があった、特に指揮命令系統で混乱があったことは我々も十分認識した上で、そうした混乱がないよう今後は統一的な対処が必要だということ、これは十分に認識をいたしております。
去年修正をした防災基本計画とかさまざまな議論の中で、人員をどういうふうに配置するのか、指揮命令系統をどうするのか、輸送の手配をどうするのか、こうしたことについては、措置内容を集約していき、必要な合同の会議の運営をするなど、そういった効率的な運用に努めてきておりますので、先ほどもありました、さまざまな、それ以外の災害、武力攻撃事態のようなこと、あるいはインフルエンザみたいなことも含めて、法体系上どう整理するかは、これは十分な研究、検討が必要だと思いますけれども、現場での混乱はないように、これはさまざまな手を打っていきたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 お願いします。
政府の地震調査委員会が、南海トラフを震源とする巨大地震の発生確率の予測について、これまで、東海、東南海、南海、この各領域に分けてきた従来の方法を見直して、全域で統一した確率を算出することを決めたとされています。今月中にも発表するということが報道されておりますけれども、直前予知が可能な巨大地震、そういうことで個別に対策法をつくってきたんですけれども、逆に、今専門家の間では、単独では起きないよ、セットで起きるよということが随分指摘をされているわけです。そういう意味での、対策法も一元化が必要なのではないかということが各方面から指摘をされています。
それに対する認識と、さらには、もう既にどこでも起こり得るよね、この間、起こってきた災害もかなり、起こらないよと言われてきたところで起こっているよねというふうなことが指摘されている中で、地震対策法の、個別法の一本化ということについて、大臣の見解を伺いたいと思います。
○古屋国務大臣 お答えをいたします。
全国対象、そして地震予知を前提に、警戒宣言発令後から発災までの災害応急対策に関する特別の措置を定めた大規模地震対策特別措置法が定められておりまして、現時点においては、技術上の観点から、地震予知に必要な地震観測体制が整っている東海地震のみが対象とされているところであります。
一方、議員立法で、東南海・南海地震については、その災害の特性を踏まえた、災害予防対策を中心に必要な措置を定めた特別措置法が定められており、これに基づき、地震防災対策の推進が図られているというところでございます。
現在、南海トラフ地震に一体的に対応するため、与党において議員立法の検討が精力的に行われているものと承知をいたしております。
私も、実効ある対策につながる法的枠組みが整備されることを期待いたしておりまして、一方では、大規模災害については、一般対策としての災害対策基本法に加えて、それぞれの災害の種類や特性に応じた個別法も整備をされていますけれども、それぞれが有機的に組み合わされていけば個別法も有意義なものになるというふうに考えております。
○高橋(千)委員 東海地震しか予知できないというところからもう飛び出していかなければならないということを指摘して、また今後お願いしたいと思います。
ありがとうございました。