改悪派遣法の成立強行/衆院本会議 自公などが歴史的暴挙
「常用代替防止」覆す/高橋議員が反対討論
派遣労働の期間制限をなくし、「正社員ゼロ」社会に道を開く労働者派遣法改悪案の採決が11日の衆院本会議で強行され、自民党、公明党などの賛成多数で可決・成立しました。日本共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党は反対。国会周辺には多くの労働者が駆けつけ、歴史的暴挙に抗議し「悪法は実施させない」と訴えました。
衆院本会議で採決された改悪案は、衆院通過後、参院で施行日を9月1日から30日に変更するなどの修正をしたため、改めて衆院に回付されたもの。衆参両院での審議では、「正社員への道を開く」などとした政府の論拠は破綻し、塩崎恭久厚生労働相がまともに答弁できなくなるなかで、数を頼んで押し通したものです。
日本共産党の高橋千鶴子議員は反対討論で、「『臨時的・一時的』『常用代替の防止』としてきた派遣労働の大原則を根底から覆す重大な改悪だ」と批判しました。
法案の狙いは、派遣労働者に直接雇用への道を開く「労働契約申し込みみなし制度」(10月1日施行)を発動させないことにあると高橋氏は指摘。「派遣切り」防止から生まれた「みなし制度」について、「施行のたった1日前に本法案が施行され、手にするはずの直接雇用の権利を『なかったこと』にされる。こんなことが許されるのか」と糾弾しました。
さらに、施行日まで20日間しかなく、まともな施行などできないと批判。改悪案が昨年2度も廃案になったうえ、今回も審議中に与党が法案を修正したことについて「政府・与党が自ら欠陥を認めたからにほかならない」と指摘し、法案は廃案以外にないと主張しました。
(しんぶん赤旗2015年9月12日付より)
――討論――
まず、今般の台風十八号による豪雨災害などで被害にあわれた皆様に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。今後も被害の拡大が心配されますが、政府は、人命最優先に万全の体制・対策をとるよう要請するものです。我が党としても全力で取り組んでまいります。
私は、日本共産党を代表し、「労働者派遣法の一部を改正する法律案」の回付案に対し反対の討論を行います。
参議院での修正案の中心は、九月一日の施行日を三十日にすることであり、その他は、制度の周知を徹底する内容などです。そもそも政府・与党は、九月一日を過ぎても何の提案もせず、九月八日の委員会採決の直前に修正案を提出、野党には質疑どころか案文を検討する余裕さえ与えず採決に至るという異常な運営でした。また、塩崎厚労大臣はたびたび答弁不能となり、審議が何度も中断されました。八日の委員会においても、正社員化への実効性をたずねる質問などに対し、「考え方の違い」という言葉で答弁を避けました。このことは、まがりなりにも与野党が積み重ねてきた議論さえ否定するもので、断じて許されません。
反対する最大の理由は、本法案は「臨時的・一時的」「常用代替の防止」としてきた派遣労働の大原則を、根底から覆す重大な改悪であり、参議院での修正によっても何ら本質を変えるものとはならないことです。
第二に、「労働契約申し込みみなし制度」を発動させないことが、本法案の動機となっているということです。二〇一二年民主党政権での改正の際、「みなし規定は削除せよ」という経済界と自民党の圧力の中、みなし規定の施行日は三年後まで見送られました。その間に今回の法改正が準備され、「事実上の廃案」という指摘が当時からありました。それが今、現実のものになったのです。
〇八年のリーマンショック時は、与野党なく、派遣切り防止、雇止めされた労働者の救済にとりくみ、派遣労働者の保護へ舵をきったこと、その中から生まれたのが「みなし規定」だったはずです。だからこそ、自民党政権になっても規定そのものを削除はできませんでした。
しかし本法案は、専門二十六業務の廃止や期間制限を実質なくすことで、みなし規定発動の根拠を消してしまいます。みなし規定の発動を心待ちにしていた派遣労働者は、三年待たされた挙句、十月一日施行日のたった一日前に本法案が施行され、手にするはずの直接雇用の権利を「なかったことに」される。こんなことが許されるのか。満身の怒りを込め、糾弾するものです。
第三に、施行日まで二十日間というのは極めて短期間であり、過去に例のないものです。施行までに必要となる政省令・指針は、法案や労政審建議で示されている四十一項目と、参議院での修正案と附帯決議三十九項目に対応したものが必要となります。労政審、パブリックコメントを経て、まともに施行準備が整うなどと、言えるはずがありません。
最後に、本法案は昨年二度も廃案になった上、さらに二度の与党修正がされたことは、政府・与党自ら法案の欠陥を認めたからにほかなりません。
本法案は、職安法四十四条「労働者供給業の禁止」の例外としてはじまった労働者派遣を、「例外」ではなく「一般的」な働き方に逆転させる、派遣法制定以来の大改悪であります。その上、新設された個人単位の期間制限は、派遣先による派遣労働者の特定、選別につながり、派遣法違反そのものです。
また、専門二十六業務の廃止により、三年後の雇止めが宣告される派遣労働者が相次いだ問題について、労政審でも「経過措置を設ける」とされたにもかかわらず、政府はなんらの対策も示さないばかりか、法律が雇止めを生み出すという事態を、見て見ぬふりをしていることは断じて許されません。
以上、法律によって雇用不安をつくりだし、派遣労働を一般化・恒久化させておきながら、わずかな可能性にすぎない雇用安定措置やキャリアアップ措置をもって、「派遣労働者の保護」を語る資格などあろうはずもなく、本法案は廃案以外にないことを指摘して討論を終わります。