国会質問

質問日:2013年 5月 31日 第183国会 厚生労働委員会

生活保護法改悪案、締め出しの道具になる

(写真)質問する高橋ちづ子議員=31日、衆院厚生労働委

(写真)質問する高橋ちづ子議員=31日、衆院厚生労働委

 日本共産党の高橋ちづ子議員は31日の衆院厚生労働委員会で、生活保護法改悪案と生活困窮者自立支援法案について、生活保護から締め出す水際作戦と追い出しの道具になると追及しました。
 高橋氏は、与党と修正案を共同提出した民主党もこれまで、“水際作戦”につながるため保護申請時の書類提出の義務付けの削除を主張していたことを示し、なぜ削除しないのかと迫りました。提出者の山井和則議員(民主)は「政府は運用を変えないとしている」と答弁。高橋氏は「まるで政府のようだ。質問での指摘はなんだったのか」と批判しました。
 高橋氏は参考人質疑で、現在でも就労を迫ったり、扶養義務をたてにした受給抑制が横行している実態が出されたことを指摘。「別れた夫や縁を切られた子どもにまで連絡が行くのは困ると保護をあきらめる実態をこれまで多く見てきた」と述べ、扶養義務者に対する福祉事務所の調査権限の強化を削除するよう主張しました。
 さらに、高橋氏は一体で提出された生活困窮者自立支援法案は、生活保護を受けるべき人でもまず自立支援相談事業に回される危険性があると指摘。桝屋敬悟厚労副大臣は「(自立支援と保護で)しっかりと連携していく」と答えました。
 高橋氏は、この法案が、「低賃金でもとりあえず就労」「手当より仕事」など、働きたくても働けない実態を無視して押し付け、生活保護からの追い出しと水際作戦のツールとなると批判しました。
(しんぶん赤旗 2013年6月1日より)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 最初に一問、通告しておりませんが、大臣に伺いたいと思います。
 午前の参考人質疑、ごらんになっていないかもしれませんが、非常に重要な意見をそれぞれからいただきました。だからこそ、意見を受けて、もっと十分な審議をするべきではないか、このように思っています。
 特に、子供の貧困はとても大事なことです。あしなが育英会の緑川さんの陳述、大変すばらしい意見陳述でありました。貧困率の削減を明確にして大綱に盛り込むことは、政府の意思になりますので、大変重要だと思います。しかし一方で、やはり、削減をするためには、貧困率が下がるためには、具体的な施策が必要であります。残念ながら、それが民主党の政権交代の一つの大きなテーマでもあったはずであります。非常に残念に思っています。
 ただ、子供の貧困は子供の責任ではないし、学習支援も大変効果的です。しかし、本当に根絶するためには、やはり親の貧困状態を変えなければなりません。子育て世代に大変厳しい生活扶助基準の引き下げは、絶対にやるべきではありません。少なくとも、八月からというのは踏みとどまるべきではありませんか。

○田村国務大臣 貧困率という数字がひとり歩きするわけでありますけれども、なかなかこれは、今の御質問は非常に難しいんですが、貧困ラインというものを考えたときに、一人親の生活保護家庭がどういう状況かといいますと、実は、貧困ラインよりもこれは上に来ているんですね。
 ここがなかなか難しいところで、貧困率という考え方、相対的貧困率という考え方が、全体として、本当にどういう数字なのかと考えたときに、それだけではかるのは非常によろしくないであろうと我々は思っております。
 ですから、全体として、子供という意味からすれば、子供の家庭の状況ですね、本当に、例えば、収入があっても子供に使われていない、もしくは、子供に対する対応、こういうものが非常に厳しい状況の家庭においては、それを改善する努力をしていくということが、金銭だけではなくて、全体の、要するに、子供の貧困というものに対しての対応になっていくわけでございます。
 一方で、生活保護家庭のお話でございましたが、これは今まで、それぞれの見直しにおいて議論をいただいた上で、ねじれを直し、また、低所得者世帯との対比ということもございまして、そことの公平感というものも含めて対応する。一方で、物価というものに注目いたしまして、今まで、本来ならば物価等々で下げるべき余裕のあったものを、今回、適正化というような形の中で、適正化で引き下げられるということでございますので、ちょっと、論点が若干違うのかなというふうに思います。
 やはり、子供の貧困という意味は、金銭のみならず、しっかりとした対応をしなきゃなりませんから、学習支援でありますとか、いろいろなものの対応の中において、子供の貧困というものをなくしていくための努力をしてまいりたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 まず、大臣は、答弁の中で、家庭の全体の状況ということをおっしゃった。まさに、私が言いたかったのは、それなわけです。
 ですから、貧困の連鎖を断ち切るために、さまざまな学習支援ですとか、やるのは当然のことだし、子供に特化した支援も大いにやるべきです。お金だけの問題ではない、そのとおりです。
 だけれども、今政府が、この扶助基準の引き下げによって連鎖するもの、例えば就学援助ですとか、そういうことを全体に波及しないように何とか手だてをすると言っている。でも、それは、裏を返せば、全体に波及するということを認めているわけなんです。つまり、最低生活とはどういうものかということのラインを下げるわけです、この扶助基準を下げるということは。
 だから、単に生活保護世帯だけではなくて、子育て世代全体にもかかわる問題なんだという立場で指摘をしてきたわけで、せっかく子どもの貧困法案をみんなで成立させようとするのであれば、まずそこを踏みとどまるべきだという立場で指摘をさせていただきました。
 引き続いて、後のところでまた大臣にはお願いしたいと思います。
 そこで、まず、閣法修正案の提出者に質問をいたします。
 生活保護法一部改正案二十四条について、なぜ提案者はただし書き修正にしたのでしょうか。基本は義務規定となっていることに変わりはありません。二十九日の委員会でも、同じ民主党の長妻議員が指摘したとおりであります。削除をすべきではなかったでしょうか。

○山井委員 委員の御質問にお答えを申し上げます。
 政府案の第二十四条第一項、第二項については、さまざまな意見があったところではありますが、生活保護の申請は書面を提出して行うことが基本とされている一方で、事情がある方については、現在の運用でも口頭による申請が認められております。政府においては、今後もこうした運用を変えるものではないという旨の見解が示されました。
 こうしたことを踏まえ、国会の意思として、運用を変えるものではないということをより明確にするため、今回の修正を行ったものであります。
 高橋委員御指摘のように、運用を変えないことを明確にする方法としては、今回提出した修正案のような、ただし書きを加える方法のほか、御指摘のように、二十四条の一項及び二項を削除する方法もあり得るとは思います。
 今回の修正においては、既に閣法が提出されていることを踏まえ、閣法に対する必要最小限の手直しとして、ただし書きを加えるという形で対応をさせていただきました。

○高橋(千)委員 まるで政府のような答弁でありました。
 何も、政府の考えをしんしゃくして答弁する必要はないのではないか。長妻議員がこの場でつい一昨日指摘をしたことは何だったのか。また、皆さん自身が、何度も繰り返し、水際作戦のことをこれほど指摘しておきながら、修正案をわざわざ出しているのに、なぜ削除ということが提案されなかったのか、非常に残念でなりません。
 逆に、扶養義務については一切の修正がないのはなぜでしょうか。
 本日の参考人質疑でも、NPO法人もやいの稲葉剛さんが水際作戦の実際を紹介されました。親元に帰って、死んでも骨を拾わないと一筆書いてもらってから来い、こういう非情な実態が現場では行われているということが言われておりました。寄せられる相談の多くが、働けという問題と同時に、家族に養ってもらえという扶養義務の問題だということが指摘をされています。
 また同時に、貧困の連鎖を防止する、これは先ほど来、山井委員が何度も強調している子供の貧困の趣旨でもあるわけですけれども、子供がせっかく自立しても、将来、親の扶養という重荷を背負うことになる、こういう指摘もあるわけです。
 民主党さんは、この問題をなぜ修正しないのか、問題ないと思っているのか。

○山井委員 高橋委員にお答え申し上げます。
 私たちも、水際作戦は決してあってはならないものだと思っております。政府案においては、扶養義務者に対する通知や報告要求の規定が盛り込まれており、この規定により、要保護者が保護の申請をためらうことになるのではないか、そういう懸念があったわけであります。
 しかし、今回、二回の法案審議の過程において、この規定の対象は、今までどおり、極めて限定的な場合に限り、本当に保護が必要な人が保護を受ける妨げとならないよう慎重に対応する、つまり、従来の運用は変えないという旨の答弁が繰り返し政府からあったことを踏まえ、この規定の修正は行っておりません。
 私たちは、政府がその答弁に従って適切に制度を運用すると理解をしております。

○高橋(千)委員 ですから、与党じゃないんだから、そういう答弁をする必要は全くないんじゃないかなと思います。
 ここでも指摘をしているように、変わらないんだったら、わざわざ厳しく書く必要はないんですよ。報告まで求めるということ、そこまで言われたら、そのニュースを見ただけで、もう私は無理なんだ、別れた夫や縁を切られた子供にまで連絡が行っては絶対困るといって、無理して、保護を受けるのを諦める。そういう実態が、山井委員も随分聞いて、これまでも議論をしてきたのではなかったのかな、そのように指摘をしたいと思います。
 民主党政権のときに、世の中の生保バッシングを受けて、報告をさせるということを法定化することを検討していると、当時の小宮山大臣が答えたことが多分今に響いているんだと思います。
 あわせて、それとの整合性、調査権限を厳しくするかわりに、だったら、申請義務も法定せざるを得ないと内閣法制局が説明したということがこの間の答弁の中であるわけです。根っこはそこにある。民主党政権時代に言ってしまったこと、世間のさまざまな声に反応して言ってしまったこと。
 しかし、まだ、野党になったんですから、改めて見直すことだってできたのにと思って、重ねて指摘をしたい。非常に残念に思います。
 次に、自民党の提出者に伺います。
 昨年八月に成立した社会保障制度改革推進法には、附則として、「就労が困難でない者に関し、就労が困難な者とは別途の支援策の構築、正当な理由なく就労しない場合に厳格に対処する措置等を検討すること。」と盛り込まれております。
 この就労しない場合の「厳格に対処する措置」とは、どのような措置を考えていらっしゃいますか。

○高鳥委員 お答えをいたします。
 生活保護法は、生活に困窮する国民の最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することが、法律の目的として、法律上、明記されております。
 お尋ねの社会保障制度改革推進法の規定は、働ける方はその能力に応じて積極的に働いていただくことが必要であるとの趣旨で規定をしたものでございます。この規定は検討規定でございまして、具体的な対応については、政府において検討いただいているものと考えております。

○高橋(千)委員 この考え方がこの法案の根底にあるということが、改めて確認ができたと思います。非常に残念ですね。
 それが、どのように厳格化ということで具体化をされたのでしょうか。局長に伺います。例えば、調査権限の強化の中に、就労状況を調査するですとか、生活保護を抜け出した人の再々申請を厳格化する、こういうことが言われておりますが、どのようにするのでしょうか。

○村木政府参考人 就労できる方、それから就労できない方、それぞれの方に合ったやり方で支援をしていくということ、これは基本的なことだと私どもも思っております。
 基本的には、就労できる方の支援については、この法案の審議で申し上げているような就労活動促進費ですとか、勤労控除の引き上げですとか、就労自立給付金の創設ですとか、こういったことで行いたいと思っております。
 ただ、委員から先ほど御指摘もありましたように、今般の見直しの中で、働けるにもかかわらず就労活動をせず、複数回、保護の廃止を受けた、何度もそういうことが起こったという方については、もちろん急迫の状況である場合は除きますが、その後、申請があった場合には、審査時の要件確認をよりしっかりと厳密に行うということを検討しているところでございます。

○高橋(千)委員 失礼しました、提出者はこれでよろしいですので。
 私は、働ける方が、働けるのに、要するに、例えば、自分で仕事をやめて楽して生活保護を受けたいわという人は、多分、そういう人はもともと受けられませんよね。現行制度でも受けられません。そういうことを言っているのではないんです。
 いろいろな事情があって、働きたいけれども仕事がない、何度も何度も訓練を受けたり、ハローワークに行っているんだけれども、現実は仕事がない、そういう人たちに対しても、あなたは働けるんだ、稼働年齢じゃないかということで保護の要件を切るというふうなことがあってはならないという立場で指摘をしていますので、ここは一緒にしていただきたくないんですね。
 それで、きょう、特別部会の部会長代理である岩村参考人がおいでになって、特別部会の報告書の背景には、受給者がふえたことと、稼働年齢層の増加があって、生活保護だけでは無理であるという現状がある、それと、今私が質問した社会保障制度改革推進法が明確にあるということを述べました。
 そうすると、やはり意味合いが全然変わってきて、保護の一歩手前の方に応援をしますよとか、保護から支援すれば抜け出せる人に応援しますよという意味合いだけではなく、まず働ける人は働け、それは、厳格化によって受給抑制ということになるのではないか。いかがですか。大臣に伺います。

○田村国務大臣 まず、先ほど村木局長が申しましたことは、事情があって働けない方は、これは当然、病をお持ちでありますとか、そもそも、まだ生活習慣がしっかり戻らずに働けないという方々には、やはり生活訓練等々を受けていただいて、リズムを直していただいて、それで働けるような環境、それはモチベーションも含めてでありますけれども、そういう環境をつくらなきゃならないというのが、それは我々、今回の制度の中でもしっかり盛り込ませていただいておるわけであります。どう見ても、今委員がいみじくもおっしゃられましたけれども、生活保護を受けていた方がいいや、働けるし、働く意欲もないことはないけれども、だけれども生活保護の方がいいやなんというのはだめだという話の中でございますから、そこは誤解のないように、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。
 その上で、今のお話の中で、そもそも自民党の方針と今回の制度改革、これが相まつと、要は、生活保護の適用を受けられる方も受けさせないで働かせるというようなお話でありますが、働けるところがあって、その上で、働いた収入が基準よりも少なくない、それを超えられる方は、そもそも働いていただいたらいいわけでありまして、働けるというのは、先ほども言いました、本人にちゃんと働ける環境が心身ともに整っていること、それからちゃんと職がある、こういう状況ですよね、そういう状況の方々は、当然、働いていただければいいわけであります。
 ただ、一方で、職業がどうしても見つからない、その方の職業の能力というものとうまくマッチングができないというような中において、どうしてもこれは働く状況にない、そして、一方で、生活をするための糧がないということになれば、それは生活保護をお受けいただくことになるわけでありますから、そこは厳格に対応をしていくということでございますので、懸念のないような対応を周知徹底してまいりたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 ですから、最初に言ったように、どう見ても働けるのにという人はそもそも窓口でシャットされていますから、そういうことを議論しているのではないんだということです。
 それで、具体的に、今、生活困窮者自立支援法案の中で、自立相談支援事業、就労準備支援事業、就労訓練事業、いわゆる中間的就労、これらが提案をされています。
 まず、保護受給者も対象となるのか、伺います。

○村木政府参考人 生活困窮者自立支援法は、生活保護に至る前の段階の方を対象にした法律でございますので、基本的に、こちらの法律で行う事業は、生活保護の方々ではなくて、困窮者、おそれのある方々というふうに御理解をいただきたいと思います。
 生活保護受給者の方々への支援は、生活保護法の規定に基づいて、規定はかなり抽象的なものでございますが、同様の支援をほとんどの事業について行うことができると思います。
 なお、就労支援員等の事業については、今回、改めて生活保護法の方に規定をいたしました。それから、もう一つ、いわゆる中間就労等でございますが、これは法人の自主事業として行う事業として生活困窮者自立支援法でも創設をしておりますので、これらの事業は、生活保護法で対象にするということは今のところ想定をしておりません。
 ただ、生活保護法というのは就労支援等については非常にさまざまなことができる法律でございまして、今も予算事業でさまざまなことをやっておりますので、困窮者法でできた事業で生活保護の方々にも役立つ事業というのは予算事業の形で事業を行っていくことができますし、また、同じ事業なら一緒にやればいいじゃないかという声が必ず起こると思いますが、運用上、一緒にやるような工夫も考えていければというふうに思っているところでございます。

○高橋(千)委員 特別部会の報告書の中で、一つ一つについて生活保護受給者も受けられるようにすべきであると。そういうふうな流れの中でこれが出てきているのであろう。ですから、一歩手前の人だけではない、非常に密接な関係があるというのがまず一つあると思うんですね。
 その上で、自立相談支援事業、これは必須事業ですよね。これは、直営並びに民間団体への委託も可能となります。それで、その相談事業を行う相談員、非常に大きな鍵を握るわけですけれども、その資格、条件をどのように考えていますか。

○村木政府参考人 御指摘のように、この相談員というのは非常に重要な役割を果たすと私どもも考えております。
 具体的には、生活困窮者が抱える複合的な課題の評価、分析をし、個々人に合った個別の支援計画を策定して、必要に応じてほかの支援機関にもつなぐというようなことが求められるわけでございます。
 こういう支援内容を考えますと、今ある資格の中では、やはり社会福祉士などが要件としては一番近い資格かなというふうに思っておりますが、もちろん、こういう資格を持ってくださっている方を配置できるのが一番いいと思いますけれども、一方で、そういう方に限定をすると、今度は人材不足が起こるというようなこともあり得て、なかなか悩ましいところではございます。特に、必須事業にしておりますので、地域によってはこういう人材がいないということもあろうかと思っております。
 そこで、ぜひ我々も相談員の資質を確保したいと思っておりますので、研修内容については、我々国の方で中心になってカリキュラムもつくり、テキスト等も考えていって、一貫した養成ができるようにしたいと思っております。当分の間、養成そのものも、最初は特に、リーダーになる方々でございますので、国で直接に養成をしたいというふうに考えているところでございます。

○高橋(千)委員 相談支援事業は、住居の支援から就労の支援から中身がいろいろありまして、午前の部で埼玉の取り組みなども紹介をされて、いい面もたくさんあるわけです。全否定はしていません、もちろん。
 ただ、今言ったように、非常にこの相談員の仕事が重要である、そして、ある意味、これはさっき言ったように重なる部分がありますから、生保の決定にもつながる、かかわる、重大な仕事だと思うんです。そうすると、これをまさか民間に丸投げというわけにはいかないと思う。つまり、行政が必ず介在する必要があると思います。
 そして、そのためにも、例えば、ケースワーカーが今でさえいっぱいいっぱいなのに、その枠の中で分け合うのでは意味がないわけで、当然、ケースワーカーも、保護の現場も、そして相談員も、純増しなければとてもじゃないがやっていけない。どうですか。

○村木政府参考人 新しい自立相談支援事業については、民間委託ができることにいたしましたが、実施主体そのものは自治体でございますから、自治体としては、委託をする場合であっても、委託事業者をしっかり監督するということが必要になってまいります。
 また、生活保護法の方でケースワーカーがいるわけでございますが、こういった幅広いメニューを生活保護の受給者の方が使われる場合には、やはりケースワーカーがきちんとそこの支援の中心にいるということが大事だというふうに思っております。
 ケースワーカーの増員については、これまでも努力をしてまいりましたが、引き続きしっかり努力をしていきたい。また、新法については、こういう新しい業務ができるわけでございますから、そのあたりの自治体の体制、それから、民間委託がしっかりできるような事業の運営の仕方というところに工夫をしていきたいと考えております。

○高橋(千)委員 実施主体は自治体だけれども委託しているというのは、どの場合でもあるんですよね。それじゃだめなんです。単に監督するとかではなくて、保護の決定にかかわるような機微な部分は、ちゃんと行政が責任を持つ。しかし、それを、単に回り番ではなくて、ふやすという立場で明確にお答えいただきたい。

○村木政府参考人 今申し上げたのは、新しい生活困窮者支援法について申し上げましたので、生活保護受給者については、当然、ケースワーカーが責任を持ってやっていくわけでございますから、そこはケースワーカーの増員もしっかりやっていくということでございます。

○高橋(千)委員 全然、答えになっていないんですね。
 さっきから言っているでしょう。生活保護とかかわる、重なるんだと言っているのはどういうことかというと、相談の窓口で、自立相談支援をやる中で、保護が必要な方はつなぐと言っているわけですよね。そうしたら、保護の人はケースワーカーですというだけじゃないんです。そうでしょう。でも、その逆もあるでしょうが。保護を決定する前に、まずこちらに行ってくださいよとなりませんか。

○村木政府参考人 少し御質問の趣旨を私が十分理解していない部分があるのかもしれませんが、もちろん、生活困窮者自立支援法に基づく相談支援機関に来られた方が、生活保護を受ける資格のある人だということがわかれば、当然、これは保護につながなければいけないわけで、保護の部分は自治体が直接しっかりやっていかなければならないわけですから、そこのつなぎはぜひしっかりやりたいというふうに思っております。
 それから、今まで福祉事務所に来られた方々の中で、審査をした結果、保護に至らないという方もいらっしゃるわけでございますが、それをそのままお帰しするのではなくて、新しい事業でこの方々の支援ができるのであれば、そこにつないでいくという形で実施をしたいと考えているところでございます。

 ○高橋(千)委員 副大臣に質問を、今のところをもう少し明確にお話をしたいと思います。
 保護の部分はと言ったんですけれども、相談を受ける時点では、保護を受けるべき人かどうかわからない。だから、その時点では、私は、やはり行政が責任を持つべきだと言っているんです。つまり、自立相談支援事業の最初の窓口はやはり行政が責任を持つべきじゃないか、丸ごと民間に委託では困りますよということが一つです。
 それと、その逆もあるわけですよね。相談をしてつなぐというよりは、むしろその逆に、保護に行きたいんだけれどもという人を、いやいや、まずこちらにいらっしゃってくださいということになりませんか、自立相談支援をまず受けてくださいということになりませんかということを言っています。

○桝屋副大臣 先ほどからの議論を横で聞いておりまして、恐らく委員の御懸念は、今回新しく、第二のセーフティーネットとして生活困窮者自立支援制度の設計をいたしますけれども、これが大きな壁になって、生活保護に至らないケースが相談支援の中で出てくるのではないかという御懸念であろうかと思います。
 もちろん、制度として今回仕込みます生活困窮者自立支援制度は、生活保護の手前の段階で支援を実施することで、生活保護に至る前に生活困窮状態から脱して、生活を改善し、自立生活を継続していただくということを目的とするものでありますが、委員からもお話がありましたように、生活保護受給者の方の就労に対するアプローチも、それはあるんだろうと思います。
 生活困窮者自立支援制度と、それから生活保護。生活保護は、先ほどから何度も話が出ておりますように、保護が必要な人には確実に保護を実施する、この生活保護制度の基本的な考え方は何ら変わらないわけでありますから、要は、先ほどから議論が出ておりますように、保護の要件を満たしている方は、福祉事務所に保護を申請し、受給することができるということでありまして、やはり委員が言われるように、しっかり連携をしていくということだろうと思います。
 一方、では、この自立支援制度の窓口を担当する人が、全部、ケースワーカー経験者とか、あるいは直接のお役所の職員でなきゃならぬかというと、私は、必ずしもそうではない。
 今でも、例えば社会福祉協議会の職員であったり、あるいは社会福祉法人のさまざまな、いわゆる社会福祉法人の役割として地域福祉を担っておられる方、そうした方々が住民の相談を受けて福祉事務所へ連携をするということは大いにあることでありますから、むしろ、そうした取り組みをしっかりしていきたい、そういう趣旨だということを、今後、その旨、自治体に対して周知徹底をして努力してまいりたいと思っております。

○高橋(千)委員 やはり、ここら辺はうまくかみ合わないのは当然なんです。
 なぜかというと、さっきから議論している、働ける人は働くのが当然なんだという議論なんですけれども、実際には、私が一昨日の質問の最初に言ったように、若いからといって、稼働年齢だからといって、即、働けるんだから保護は受けられないよという機械的な対応をしちゃいけないよということを指摘しました。そのとおりだと副大臣はおっしゃいましたよね。だけれども、そういうことが現実に行われているんですよ。
 例えば、交通事故に遭って、車椅子になって、半身不随になって、保護の現場に行ったら、あなた働けますかと言われているんですよ。そういうことが現実に行われています。
 また、秋田の練炭自殺も、札幌の白石の餓死の事件も、政府の訓練制度を受けて、訓練をやっている最中に、間に合わなくて亡くなっているんですよ。
 訓練を受けている、求職活動をしている、だけれども仕事にたどり着いていないんです。それを、こういうメニューを用意したから保護はやらなくていいよということにならないかということを指摘しているんです。
 それは、最初に言っているように、最初のこの法案の意思が、やはり就労可能な人は可能な限り生活保護を利用させない、この精神が基本にあるんですよ。だけれども、それは、皆さんが思っていることと現場が違う。本人の事情と、本人が働けない、もちろん働きたいと思っているんですよ、思っているけれども、現実、今働けていないことと、やられていることが合っていないから、こういう指摘をしています。
 次に続けますけれども、いわゆる中間的就労は、労働基準法、最低賃金法の適用除外となりますか。

○村木政府参考人 いわゆる中間就労ですが、これは、対象者の就労能力の向上に合わせて、非雇用型と雇用型、両方の段階をつくることを考えているところでございます。だんだんにステップアップをしていくという形を考えております。
 非雇用型については、これは訓練でございますので、対象者の同意を得て、個人ごとの就労支援プログラムに基づく就労訓練として実施をされますので、労働基準法や最低賃金法などの労働関係の法令は適用されないということでございます。
 また、これは労働ではありませんので、所定の作業日、作業時間に作業に従事するかどうかというのは労働者の自由であり、また、対象者に対して、作業時間の延長や作業日以外の日における作業指示を行うことはできない、こういったルールになろうかと思います。
 それから、雇用型は、当然でございますが労働基準法上の労働者であることから、基準法や最低賃金法などの労働関係の法令が適用されます。
 いずれにしても、双方、非雇用型という看板をかけたから労働法令が適用されないということではなくて、労働者性がないかどうか実態を見きわめて、労働者性がある場合にはきちんと労働法令を適用しなければならないと考えているところでございます。

○高橋(千)委員 低額であっても一旦就労、これが、五月二十日の全国係長会議、あるいは昨年の特別部会の中にも資料として出されております。「切れ目のない就労・自立支援とインセンティブの強化について」という形で書かれております。保護開始直後から集中的な支援、それでもだめなら低額でも一旦就労、めどが立たなければ、本人の意思を尊重しつつ、職種、就労場所を広げて就職活動を基本とすると。
 ですから、本人が、本当に短時間だけれども、少しかかわっていきたいんだ、そういう希望をかなえるための社会的就労あるいは福祉的就労、これは当然大事なことだと思っています。ただ、現実に、それが当たり前になっては絶対困るわけですよね。最低賃金を払わなくてもいいんだ、あるいは労働法を守らなくてもいいんだというのが、今とりあえずないからということになっては絶対困る、ここをきちんと担保するものが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○村木政府参考人 中間就労というのは、いろいろな準備訓練をした上でも一般就労につくことが難しい方のコースとして考えております。
 ですから、十分に働けるのにそういう中途半端な、例えば、労働法令の適用のないようなところで働いてほしいと決して思っているわけではない。逆に、我々は、できるだけ安定した仕事、いい仕事についていただきたい、それを一緒に探すという努力をしたいと思って、制度を組んでいるわけでございます。そういう意味では、それ以上の力があるのに、訓練過程で非雇用型においてというようなことはないようにしたいと思っております。
 雇用型、非雇用型の振り分けは、御本人の意向を踏まえて、相談機関の側で御本人の状況を評価した上で決定をするということになります。
 それから、就労訓練事業については、この認定を行うのが都道府県でございますので、そこがしっかり事業者から報告徴収をするとか、それから、自立相談支援機関が事業所訪問等によって支援の状況を定期的に確認をするとか、対象者が不満があった場合にはすぐに相談ができる体制をつくるというようなことにしたいと考えております。
 いずれにしても、そういうプロセスが必要な方の訓練として運用をしたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 報告徴収ですとか、当然、どの企業にでもというわけではないのだからとおっしゃいます。でも、大概、そういうところに参入してくる企業は、最初から悪意を持ってというような、あるいは書類上でおかしいよということには絶対ならないわけでありますから、大概そういうのは当然クリアする企業であろう。
 だから、むしろ、それが当たり前にならないように、低賃金で、労働法を守らなくてもいい就労が手に入るよということにはならないように、これは重ねて指摘をしたいと思っています。問題は、そういう就労があるよということで、保護の脱却あるいは保護に入らなくてもいいということではだめだということをさっきから指摘をしています。
 一月十六日の特別部会で、NPOの代表として参加をしている藤田孝典委員が詳細な意見書を述べていらっしゃいます。非常にどれも大事な指摘で、それぞれ取り上げたいなと思ったんですけれども、私は、それを読んでいてあっと思ったのは、案の案の段階でこの意図がはっきり書かれていたんだなということがわかったんですね。
 つまり、藤田さんは、新たな水際作戦のツールとならないように歯どめを明記すべきである、こういう指摘をしていて、生活保護制度の見直しと相まって、就労可能な人が可能な限り生活保護を利用することなく、自立できるように、この表現を問題にしています。この表現を探したんだけれども報告書にはなくて、案の案の段階、一月十六日の前の案に明確に書かれておりました。ですから、ある程度中和されたというのはあるんですよね。そこまでは書いていない。
 だけれども、そもそも自民党の選挙公約は、手当より仕事でありましたよね。生活保護、手当より仕事だと。だけれども、さっきから言っているように、同列に選べる立場に受給者がないのに、仕事は嫌だけれども、保護はもらいたいわ、そういう状況ではないのに、あなたは働けるんだからだめよということになってはいけないということ。そこが、やはりここに、思想に流れているんではないかということなんです。
 ですから、この自立支援戦略が保護の見直しとセットで出てきた、このことによって生保からの脱却、我々的に言うと追い出しですね、そして水際作戦の強化のツールになってはならない、笑っていらっしゃいますが、もちろんそうではないとおっしゃると思いますが、大臣のお答えをお願いしたいと思います。

○田村国務大臣 自立相談支援事業で、水際対策になるんではないかというような御懸念があられたんだと思います。
 そもそも、いろいろな生活の状況を見て、中間的就労にいたしましても、何らかの就労についていただく。それで収入が、要は生活保護の基準よりも上回れば、当然、それは自立になるわけでありますが、下回って他に資産がない、もちろん扶養していただく方もいないということになれば、これは当然、生活保護を受ける基準をクリアするわけでございますから、生活保護を受けていただきながら、それは生活困窮者事業ではなくて、これも関連しておりますから、生活保護の中での就労訓練という話になるのかもわかりませんけれども、それを受けていただきながら、基準に足らないところは保護を受けていただくということになるわけであります。
 一方で、生活保護を受けておられる方も、軽度な就労というような形から入っていただく中におきまして、生活のリズムを整えていただいて、だんだんなれてこられて、それからステップアップをされて、最終的に生活保護基準をクリアする収入を得られるようになれば、そのときには生活保護から脱却をいただくということでございますから、そこのところを明確にちゃんと運用できるようにするのが、我々がやらなければならないことでございますので、今御懸念の部分が顕在化していかないように、我々、しっかりと周知徹底をしてまいりたい、このように思っております。

○高橋(千)委員 セットで出されたから問題だと指摘をしています。
 終わります。

質問の映像へのリンク

http://www.youtube.com/watch?v=mw5QbubcaOw&list=PLrB7SAgyEZKKxdYAFtF3dzau-ftYrJhVk&index=1

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