株式運用拡大の論拠崩す
衆院厚労委 年金積立金で高橋氏
日本共産党の高橋千鶴子議員は2日の衆院厚生労働委員会で、公的年金を縮減する一方で、公的年金積立金約140兆円の危険な株式運用拡大を進める安倍政権の姿勢を批判しました。
高橋氏は、公的年金が収入の全てという高齢者が6割に上るもとで、「特例水準の解消」などによる年金削減で年金生活者の消費が落ち込み、地域経済にも影響を与えていることが民間銀行の調査でも指摘されていることを示しました。
塩崎恭久厚労相は、「景気動向はさまざまな要因で規定される」と年金削減を正当化。高橋氏は、日銀の分析でも2013年度以降、消費動向が落ち込んでおり「高齢者の所得は景気に影響を与えるものだ」と述べると、塩崎氏は否定できませんでした。
高橋氏は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率を高めている問題について「運用による積立金の増減によって給付が増えたり減ったりするものではないはず」とただしました。厚労省の香取照幸局長は、「利率の絶対的水準があるわけではない」と認めました。
高橋氏は、「年金給付の確保が株式運用拡大の理由にならない」、「急速に株式やインフラ投資など、より投機的なものを増やそうとするのは問題だ」と批判しました。
(しんぶん赤旗2015年9月3日付)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
確定拠出年金法が先週採決され、参議院に送られるのがあすの本会議で確定をすることになりますけれども、今後の年金制度の見直しに関係すると思いますので、その質問で残した部分から始めたい、このように思っております。
大臣にまず伺いたいと思うんですが、確定拠出年金法案は、老後に向けた個人の自助努力を行う環境を整備することを目的としている、このように答えているわけですよね。
法案の土台となった企業年金部会における議論の整理によると、「おわりに」のところで、「我が国においても、老後所得保障の柱は公的年金ではあるが、私的年金の役割が必然的に高まる中で、公的年金の中長期的な給付調整が不可避であることを踏まえれば、むしろ積極的にそのあり方について普及・拡大を図る観点からの議論を深めていく必要がある。」とまとめているわけです。
つまり、私的年金はふやしましょう、そして、公的年金は、柱のはずであるけれども、今後デフレ下でもマクロ経済スライドで削減をしていくことや、支給開始年齢の先延ばしなど、給付は今後も減っていくことが前提で、国民には自助努力で補完せよ、そういう趣旨なのかなと思っておりますが、いかがですか。
○塩崎国務大臣 今回御採決を賜った確定拠出年金法案は、企業年金の普及拡大を図るとともに、老後に向けた個人の継続的な自助努力を支援するということを目的にしたものでございまして、法案化に当たって議論が行われた社会保障審議会企業年金部会では、ライフコースや働き方の多様化などに対応いたしました個人の自助努力の仕組みが必要であって、公的年金の中長期的な給付調整が行われる中で、公的年金を老後生活の柱としつつ、これを補完する企業年金制度等の重要性が高まる、公的年金と私的年金を組み合わせて老後の所得確保を図るという先進国共通の傾向などの視点を踏まえて議論が行われたというふうに承知をしているわけであります。
このように、今回の法案は、企業年金制度等を取り巻くいろいろな状況変化がございますが、それらを勘案して立案したものでございまして、御指摘のような公的年金の個別の政策を念頭に置いたものではないというふうに思います。
○高橋(千)委員 中長期的な給付調整ということをおっしゃっているわけですよね。だから、企業年金は、そもそも公的年金を補完するものである。ですから、よりよい老後といいましょうか、所得保障をもう少し豊かにしたいとか、さまざまなことはあり得るんだと思うんですよ。だけれども、柱は公的年金だと言っているときに、給付調整が不可避であるということを前提に置いているのは問題だと言っているわけです。
これは、大臣が、予算委員会の私に対する答弁の中でも、公的年金だけで賄えるとは思っていない、それは前提としていないという答弁をされました。その上で、足りない、しかも、これからだんだん調整していくんだからということがまず念頭にあって、やはり補完をしなくちゃいけないなという議論が始まっているんじゃないかということを指摘させていただいたんです。
私が反対討論でも述べたとおり、国民年金法は第一条に憲法二十五条第二項の理念を明記しているわけですね、国の責任を明記している。そういう立場からいっても、公的年金を諦めるというんですか、そういうことはやはりあってはならないということを言いたいと思います。
それで、きょう議論したいのは、これ以上公的年金を縮減することが何をもたらすだろうかということ、もう一つは、結果として、成長戦略である私的年金、保険の活性化や資産投入による株価対策、こうしたことにほかならないのではないかということです。
まず参考人に聞いていきますけれども、現在、公的年金あるいは恩給が収入の全てという高齢者世帯はどのくらいでしょうか。
○姉崎政府参考人 お答えをいたします。
私どもの方で国民生活基礎調査という調査を実施しておりますけれども、この調査の中で各種世帯の所得の状況について調査をしております。
お尋ねの、公的年金、恩給が収入の全てという高齢者世帯の割合につきましては、平成二十六年で五四・二%というふうになっておりまして、直近三年間を見てもおおむねこれと同様の水準になっているということでございます。
○高橋(千)委員 今、二十六年度の数字をいただいて五四・二%、若干割合が下がっているかなというふうに思いますけれども、収入の八割以上、ですから、ほとんど年金に頼っているという方が大体七割くらい、そしてほとんど年金だけだという人が六割近いというのがこれまでも議論してきた中身ではないかなと思っているんですね。ですから、そもそも、確定拠出年金をやったときは、自助努力でふやしましょうという話なんですけれども、その自助努力の余力のない人たちがいるということではないかと思うんです。
国民年金の受給者は三千百九十六万人、平均月額は約五万円にすぎません。厚生年金保険、老齢年金の受給平均月額も平成二十五年度が十四万八千四百九円で、五年間で見ると八千円減額している、こういう状況だと思うんです。そうすると、当然、そのもととなる標準報酬月額、つまり現役世代のお給料が少し下がってきていると思いますが、いかがですか。
○香取政府参考人 お答え申し上げます。
年金額のベースになりますのは、御案内のように、標準報酬月額ということになります。いわゆる毎勤統計の数字とは若干違いますが、年金のベースになる数字ということで申し上げますと標準報酬月額になります。
標準報酬月額は、平成二十年度の後、リーマン・ショック等で一旦落ち込みましたが、その後微増の傾向にございまして、一番底が平成二十一年度末で三十万四千百七十三円、その後少しずつ回復しまして、二十五年度末で三十万六千二百八十二円となって、二十六年度末は、速報値でございますが、三十万八千三百八十二円、そういう傾向になってございます。
○高橋(千)委員 これも資料をつければよかったんですが、この五年間の間に二度減が立っておりますね。今この瞬間は、やはりアベノミクス効果もあって若干上がったということだったと思うんですが、年金の資料の評価としては横ばいということではないかなと思っております。
それで、昨年の十月の十五日の本委員会での質問で、年金を一番最初にもらうとき、新規裁定といいますが、所得代替率は五割を超えているけれども、年々これが下がっていくだろう、長生きすればするほど年金は減っていくという指摘を私やりました。そのときの香取年金局長の答弁は、それはもともと想定された基本的な制度の仕組みそのものという答弁をされたわけですね。私、正直、平然と答弁されたので衝撃だったわけです。ほとんどの人はそういう理解をしていなかっただろうと。
つまり、平成十六年、二〇〇四年の改正というのは百年安心と言われたわけで、保険料ともらう年金のバランスを百年かけてとっていくんだという話の中で、その中で所得の半分は保障しますよと言っていたんだけれども、保障するのはもらう瞬間だけだった、どんどんどんどん減っていくんだということをそのときに改めて指摘をさせていただいたわけです。
しかも、昨年の財政検証でも、経済が上向き、かつ厚生年金にパート労働者がどんどん入ってくる、それから高齢者の就業人口がどんどんふえてくる、そういう改革が前提であれば大体想定どおりということで、逆に言うと、そうならなければもう計算が成り立たないということを示していたというふうに思います。
それで、資料の一枚目を見ていただきたいんですけれども、これは男女別の、あるいは年齢別公的年金の収入割合を見ています。これを見てみると、総体的に公的年金の収入自体が少ないということがわかると思うんですが、その上で、上が男性で下が女性ですけれども、男女の差が大きいです。男性は二百万以下が五五%、女性は百万円以下が六割強に張りついている。ですから、男女の賃金格差が生涯の年金格差になっているということはこれまでも指摘したことだと思うんですね。
政府は、専ら、現役世代と高齢世代の格差を何とかしなければと、要するに、年金をもらい過ぎだから現役世代の負担が大きいという構図ばかりを強調します。だけれども、現役世代の中の格差、そもそも非正規労働者が今や四割と言われる現在、年金給付額のもととなる標準報酬月額、給料を上げていかなければやはりこの現実を変えられない、そう思いますが、それがまず大きな課題だと思いますが、大臣の認識を伺いたい。
○塩崎国務大臣 おっしゃるとおり、給料が上がっていくということが年金にとってもプラスであるということは間違いのないことでありまして、それがゆえに、経済の活性化を絶えず図っていくということは年金にとってもプラスだというふうな理解だというふうに思います。
○高橋(千)委員 まずそのことを確認していきたいと思います。尾ひれがつかなかったのでよかったなと思っておりますけれども。
こうした中で、今年度最初の年金支給日が六月十五日でした。漏れた年金情報問題でちょっと関心がそっちにぐっと行ってしまったんですけれども、この日は、初のマクロ経済スライドが適用されたという日であります。
そこで、資料の二枚目を見ていただきたいんですが、ことし二月十五日付の産経新聞です。この冒頭を読みますけれども、「日銀は、賃金や物価の上昇分より年金額の伸びを低くする「マクロ経済スライド」が平成二十七年度から初めて導入されることなどを踏まえ、公的年金の支給額の抑制が景気や物価に与える影響を新たに分析する方針だ。」と言っている。真ん中のところに、この間、特例水準の解消などで実質目減りをしてきたという中で、「年金生活者の消費が鈍っている可能性がある」という指摘をしていて、一番下の段の真ん中のところに、「年金生活者の消費意欲の低下も影響している」、つまり景気の伸びにですね、そういう記事がありました。
それで、私、実は日銀に、調査をするというので、何かやっているんですかと聞きました。そうしたら、いやいや、出せるものはありませんと言われたんです。それで参考となる資料としていただいたのが、三枚目の三井住友信託銀行の調査月報というものであります。これが今紹介した記事と基本的に同じ考え方だなと思っているんですね。
総務省の家計調査をもとに出したグラフが下にありますけれども、二〇一四年度の消費支出で見ると、勤労者世帯は〇・一%の減に対して、高齢者世帯が〇・九%も落ち込んでいる。やはり、賃金を受け取っておらず、年金で生活している高齢者の影響が見落とされていたと指摘をしている。つまり、消費がなかなか回復しませんね、その影響は年金生活者の消費動向がありますねということを指摘しているわけですよね。
これは、考えれば当たり前というか、高齢化が進んでいるわけですから、地域の経済の担い手、買い物をする人の割合が、高齢者がふえてきているわけですよね。一割から二割というふうな指摘もあるわけです。だから、私自身、こういう問題を指摘したことはあったんですが、民間銀行のレポートでもこうした指摘が出たことというのは重要ではないかなと思っているんです。
そこで、この認識が一緒でいいですかということを大臣に伺いたい。つまり、高齢者の消費動向がやはり景気指標に影響を与えますよねということ、それから、昨年度は、年金は実質減ということで、増税もありましたし、それはやはり影響はありましたよねということは共通の認識でよろしいでしょうか。
○塩崎国務大臣 私も日銀出身なものですから、実際に聞いてみました。
基本的には、マクロ経済政策をやっているのが中央銀行でありますから、年金の問題だけに特化して何かやるということはあり得ないだろうと思います。しかし、高齢化が進む中でどういう影響が特に個人消費を中心に出てくるのかということは、恐らくそれは絶えず研究をしているし、最近、やはりこのところ高齢化はどんどん進んできていますし、これからも進むという意味においては、確かにそういうことは中央銀行は考えていくだろうというふうに思いました。
景気動向はさまざまな要因によって規定をされるわけであって、御指摘のような点が景気にどのように影響をしたかという点については、そう簡単に決めつけるわけにもなかなかいかぬなというふうに思うわけで、逆に、特例水準を解消してマクロ経済スライド調整を実施するなどの措置が講じられなかったら、将来世代の給付を削って現在の高齢世代の給付に充てていることにほかならないわけで、将来への不安から、今度、逆に、社会全体の消費が冷え込むというような可能性すら考え得るというふうに思うんですね。
むしろ、年金制度というのは、現役世代からリタイアされた世代への所得移転を行うということであるわけでございますので、労働力人口が減少する中で、女性や高齢者の労働参加を促進するなどによって、分配の原資となる経済全体の持続的な成長を図ることが重要でありますし、若い世代の方々のお給料が上がる、つまりこれは経済が成長するということでありますから、ますますもってアベノミクスは重要だということで、それを機能させていかなければいけないということにおいて、さまざま、新たなことを含めて、これからさらに経済を強くするために頑張らなきゃいかぬなということを改めて思うところでございます。
○高橋(千)委員 せっかく一致できるところから議論を進めていったら、いきなりアベノミクスは重要だという議論になっちゃったので、非常に残念に思っていますが、そこは分解してやはり一つずつ議論していきたいと思うんですね。
それで、四枚目に、日銀が、本当にシンプルなんですけれども、資料をつくってくださったんです、私がしつこいものだから。
今おっしゃったように、特例水準の解消で、一三年度の下期からマイナス一%、一四年度マイナス一%、一五年度マイナス〇・五%、マクロ経済スライド、年金改定率ということで、今年度は〇・九%でプラスが立っていますが、昨年度と一三年度がマイナスだということで、この下の表が、今得られる資料ではこれですということで出してきたのが内閣府の消費動向調査ということで、一三年度のまさに特例水準の解消でがっと下がったときからぐっと下がっているということがちょっとリアルに出てきましたねということです。
これはカラーじゃないのでちょっと見にくいんですが、それまでは年金所得の方たちはある程度は購買力があったんだけれども、やはり実質、年金が下がってしまったことで購買力が、他の所得、給与所得のある人、事業所得のある人と比べても残念ながら下がっているねということは見てとれるということで、日銀の皆さんと認識を一致させたところなんですね。
そういうところからまず議論をして、若い人の所得を上げることが大事だよねということと、高齢者の所得がやはり景気にも影響を与えますね、そこは一致できると思うんです。そうですよね。いいですよね、そこは。
その上で、では、本当に間に合うかどうかという議論をしていきたいなと思うんです。
ここを違うと反論されますか。いいですよね、ここ。大臣、進めてよろしいですか。違うと反論されますか。日銀に聞いたと大臣おっしゃっているんですから、よろしいですよね。
ということで、進めたいと思います。
そこで、年金給付とGPIFの関係であります。年金積立金の運用の問題であります。
国民年金、厚生年金保険も、いわゆる確定給付型であって、運用次第で、つまり運用でうんともうけたとか、あるいはうんと穴があいたとか、そういうことで将来の給付額が減ったりふえたり、つまり連動したりということはないという理解でよろしいですか。
○塩崎国務大臣 公的年金は、将来の保険料水準を固定した上で、積立金の活用を含めて、おおむね百年程度の財政均衡期間を通じて年金財政の均衡が保たれるように年金額の水準を将来に向けて調整していく仕組みというのがマクロ経済スライドということで、百年先まで見通したものということで今回仕組んだわけでありますが、この仕組みにおいて、一般論としては、人口構造とかそれから就業構造などの長期間の動向と同様に、長期間の年金積立金の運用実績、これが将来の年金額の水準に影響を与えることはあり得るわけであります。
なお、年金額は、物価または賃金の変動に応じて改定される仕組みとなっておりまして、単年度の運用実績を理由として年金額が改定されるものではないということであります。
年金積立金は将来の年金給付のための貴重な原資でありますから、その運用は、年金財政上必要な運用利回りを確保するという、私ども何度もここで御説明しておるようなことでございまして、法律で、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行うこととされているわけでありますから、今後もしっかりと適切な運用に努めてまいりたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 五年ごとの財政検証をやっているわけですから、例えば就業構造に大きく変化があったとか、そういうさまざまな条件をきちんと見てやる制度になっているわけですよね。だから、それが、今大臣がおっしゃったように、単年度の運用でどうにかなることはないのだということをまず確認しました。
それで、実はそのことをことし二月二十七日の予算委員会で総理に伺いました。というのは、総理がアベノミクスで二十五兆円もふえたんだということをおっしゃったので、もっとふえたんだという答弁でありましたけれども、年金資産がふえたというふうにおっしゃるので、そうすると年金受給者に還元されますかという質問をしました。答えはノーであって、実際には約百四十兆円の資産運用残の中に溶け込んでしまっているわけですよね。
だから、アベノミクスで年金もふえるかのように誤解を与えてはならないということがまず言えると思うんですが、問題は、私が言いたいのは、積立金は将来約束した年金が払えるようにつじつまが合っていればいい、損していいという意味ではないですよ、つまり、とんとんであればいいという意味だと思いますが、間違いありませんか。
○香取政府参考人 つじつまが合うという日本語が適切かどうかというのはちょっと申し上げかねますが、今大臣から御答弁申し上げたように、年金制度は、現在であれば、百年間の収入と支出の均衡を図り、その間の経済変動や人口変動等々を予測し織り込んで、全体として均衡がとれるというふうになっておりますので、その意味では、長期的な収入と支出の均衡がとれているという状態にあるということが重要だということになります。
その場合に、積立金は、今のその収入、支出の関係でいえば、いわば収入、入りに相当するものになります。前にこの場でも御答弁申し上げましたが、年金制度は、そもそも、先ほど先生の御質問にもありましたように、保険料は賃金で決まります。賃金はその時々の経済の状況で決まります。賃金の水準で年金が決まりますので、給付が決まりますので、いわばどういう経済動向になるかによって年金の水準が決まってくるということになります。
ということになりますと、積立金の運用に関しては、基本的には、その時々の経済の状況を適切に反映する、つまり、成長しているときにはきちんとその成長の果実を年金がとるということがやはり必要だということになります。そういう観点で、年金の運用については、一定の財政検証のもとで必要な運用利回りを設定し、その利回りが安全、確実に確保できるという形で運用するということになります。
その意味でいいますと、長期的に均衡がとれているということがもちろん必要ですが、そのときに、年金の積立金の運用というのは、将来の年金給付を確保していくという観点では非常に重要な要素ということになりますので、積立金の原資及び運用益は文字どおり将来の給付の原資ということになりますので、いわばそういう観点で必要な運用利回りを確保するということを安全、確実に長期的に行っていくというのが運用の要諦ということになろうかと思います。
○高橋(千)委員 おっしゃったことはそのとおりなんですけれども、この間の議論で、今予定利率が云々とおっしゃったと思うんですが、私が言っているつじつまというのは、どういう表現をすればうまくはまるかなというのでちょっと困ったんですけれども、要するに、今、積立金を極端にふやさなければならないとか、とても厳しい状況にあるとか、そういうことではなくて、長い目で整っていればいいという意味で指摘をしたわけであります。
一九九九年十一月二十四日の厚生委員会の矢野年金局長答弁、これは自主運用に積立金を変えたときの答弁ですが、例えば、予定利率の四%を達成できなければ年金財政がおかしくなるということではないと言っている。それはどういうことかというと、物価が落ちついていれば、運用利回りが四%を達成できなくても、収支見通しは基本的には関係ない、実質的な運用利回りと賃金と物価上昇の相対的な関係が維持できれば年金財政に影響がない、それが自主運用の一つの目標になるだろうとおっしゃっている。
だから、今、経済に合わせてということで、よく言われるのが、国債だけだと経済が成長したときは云々という話をされたわけですけれども、そういうこともあって、今のように経済が落ちついていれば、極端にふやさなければならないということではないし、四%とらなくてもいいという議論をしてきたという、これは基本は同じだと思いますが、どうですか。
○香取政府参考人 同じことになるんですが、この間、GPIFの運用利回りが過去十年たしか二・数%で、例えば、世の中のほかのいろいろなファンドが四とか五とかで回っているときに、あるいは外国のファンドが五で回っているときに二は低いではないかという議論がありましたが、御案内のように、この間、日本はデフレだったので、賃金、物価はマイナスだったということがあります。
申し上げたように、年金制度の給付は物価、賃金で決まりますので、その意味では、それに対してどれだけスプレッドがとれているかというのが問題ということになりますので、絶対的な運用水準は、ある意味では重要ではないということになります。
他方で、例えば物価が二%で動いている、あるいは賃金が二%で成長しているときに、〇・数%の国債のみで運用するということになりますと、それは結局、いわゆる運用負けをすることになって、実質的な積立金が目減りをするということになります。となれば、ある程度成長軌道にある状況の中では、それを前提に年金の運用水準を考えるということになります。
現在の財政検証では、賃金の名目成長率プラス一・七%、いわばその時々の経済水準に対してそれだけのスプレッドをとるという形でお示しをしておりますので、非常に成長が低い段階であれば、それを前提にスプレッドを考えるということになりますので、その意味では、例えば四なら四という絶対的な水準で運用を評価するということではないという意味では、確かに御指摘のとおりかと思います。
○高橋(千)委員 そういうことなんですよ。これまではデフレの水準だったから無理にしなくてもいいわけでしょう。だけれども、これからは、必ず上がると皆さん思っているわけじゃないですか。必ず上がるから、うんと上げなきゃいけない。だけれども、それが今回のポートフォリオの国内株と外国株を五割にまでする理由になるのかということとは、やはり私は違うだろうということを言いたいわけなんです。
ちょっと細かい話をしていたら、もう時間の紙が回っておりまして、またしても問いを残してしまったわけなんですけれども。
ですから、長い目で見ればとんとんになればよいということを盛んに大臣はおっしゃるわけじゃないですか。つまり、リスクをとって大丈夫なのか、何兆円も赤字が出たらどうするのかと言うと、それは長い目で見ればいいんだとおっしゃる。だけれども、ふやさなきゃというときには、いやいや、経済は成長するからふやさなきゃいけないと言っていることは、ある意味、ちょっと相反していると思うんです。
やはり、長い目で見ればいいということであれば、何も今、急速に株の方向に、あるいは、株だけではありません、きょう質問したかったんですけれども、短期運用の枠で五%、インフラ投資やプライベートエクイティーや不動産その他運用委員会の議を経たものということで、より投機的な方向に振れようとしている。そういうことに対しても、やはり問題があるのではないかと指摘をしたいと思っています。
運用委員会の議論の中には反対意見もありました。「現行のポートフォリオと比べて、今回の変更案は明らかに大幅な変更である。 私は結果として導き出されたこの数字について、国民が理解し、納得することはないだろうと思っており、その意味において、年金制度に対する信頼を揺るがしかねないということで、反対をさせていただきたい。」こういう意見もあったわけですね。
だけれども、この議論だって公開されていないわけですよ。議事要旨しかないということでは到底国民が理解できるはずはないだろうということを指摘して、また時間になってしまいましたので、次の機会にしたいと思います。
ありがとうございました。
――資料――
【資料1】性別・本人の年齢階級別・本人の公的年金年金額階級別 構成割合
【資料2】「年金の目減り 影響を分析へ」(産経新聞2015年2月15日付)