低額提供義務は乱暴
高橋氏「社福法人に影響大」
日本共産党の高橋千鶴子議員は7月29日の衆院厚生労働委員会で、社会福祉法人に3億円超の「内部留保」があるとして、社会福祉法人法改悪案で新たに無料・低額の福祉サービス提供を義務付けることを批判し、同法案の撤回を求めました。
高橋氏は7月10日の参考人質疑での与党推薦の参考人発言をあげ、「ほとんどの法人で地域における公益的取り組みをすでに行っている」と指摘。制度のはざまのさまざまなニーズに応えるのが社会福祉法人の本旨という塩崎恭久厚労相の答弁に対し、「社会福祉法人の本旨は憲法25条の実施だ。制度のはざまが本来任務か」と追及しました。厚労省の鈴木俊彦社会・援護局長は「社会福祉法人の本分は社会福祉事業であり、維持し充実していただくことだ」と認めました。
高橋氏は、社会福祉法人の現況報告書の中に「福祉ニーズへの対応状況」の記載欄があるが、把握しているのかと質問。鈴木局長は「所轄庁どまりでデータがない」と答え、高橋氏は「調査結果を見もせずに義務化することはあまりに乱暴だ」と批判しました。
高橋氏は、介護事業を展開している大手株式会社トップ10が増収増益という資料を示し、同じ公費を原資としているのに本法案の適用ではなく、国は指導もしていないと強調。社会福祉法人は介護報酬引き下げと重なってダブルパンチとなっていることにもふれ「影響をみて必要な対策をとるのが先だ」「基本報酬を上げることで担い手を確保するのが本来やるべきことだ」と主張しました。
(しんぶん赤旗2015年8月3日付)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
七月十日の参考人質疑で、全国社福法人経営者協議会会長の磯彰格氏は、法人経営というものに今まで以上に襟を正していく、二つ目に、国民の皆様が感じておられる我々に対する誤解を解いていきたいと述べて、次のように発言されました。
ほとんどの法人で、大なり小なり、地域における公益的取り組みを既に行っております。
さまざまな背景があり、そのような取り組みを社会福祉法人は社会に対しアピールすることなく、つつましく実施してきました。その結果、国民から、地域のために社会福祉法人が必要な存在だと認識をいただけなかったのかもしれません。
何というか、悲壮感のようなものを感じました。
そこで、大臣に感想を伺いたい。
これまで議論されてきた社会福祉法人の地域における公益的取り組みというのは、そもそも行っている、地域に貢献していると思っておりますけれども、認識を共有するでしょうか。
○塩崎国務大臣 午前中にも申し上げましたけれども、多くの社会福祉法人においては、今御指摘をいただいた、参考人としておいでをいただいた磯さんのように、みずからの判断でいろいろなことをやっておられるんだろうと思います。
しかし、戦後長い歴史があって、事業法という、事業という言葉がなくなったということがあれども、なかなか、いろいろな意味でルール化がされていなかった、法的な枠組みがないままに来て、あらぬ誤解を招くようなこともたくさんあったわけでありまして、そういう意味で、今回法律としてお出しをさせていただいているということであります。
社会福祉法人は、言うまでもなく、社会福祉事業の中心的な担い手としての役割を果たすだけではなくて、営利企業など他の事業主体では困難な福祉ニーズに対応するということが求められる法人であって、社会福祉法に基づく公益事業として、地域の幅広いニーズに対応する取り組みを講じているということを我々もよく認識しているところでございます。
人口構造の高齢化とか地域社会の変化あるいは家族の変容、こういったものに伴って福祉ニーズが多様化、複雑化してくるということについては繰り返し申し上げているわけでありまして、そういう中で、むしろ社会福祉法人の役割は増しているのではないかというふうに思います。
こうした状況を踏まえて、何といっても、税の優遇措置が与えられているという公益性の高い非営利の法人としてのあり方を徹底して、その役割を明確化する観点から、地域における公益的な取り組みを行う責務を今回法律上規定するということとしたところでございます。
○高橋(千)委員 いろいろなことをおっしゃったので、まず一つ目の、認識を共有するかという点においては、多くの法人がみずからの判断でやられているという答弁だったと思うんですね。
それで、なぜ本法案が、二十四条の二項、「経営の原則等」に、地域における公益的な取り組みを改めて義務づける、今までやっていると言っておきながら、なぜそれを義務づけなければならないのか。お願いします。
○鈴木政府参考人 今回、二十四条二項の経営の原則に、地域における公益的な取り組みを責務規定として置いた趣旨でございますけれども、基本的には、社会福祉法人は、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、社会福祉事業の中心的な役割を果たすだけではなく、営利法人など他の事業主体では対応できない幅広い福祉ニーズに積極的に対応する、こういう位置づけで、その必要性もますます求められているわけでございます。
今先生おっしゃったように、先日の参考人もおっしゃっておられましたけれども、さまざまそういった取り組みをしておられる、しかしながら、それがなかなか国民の皆さんに御理解いただけていないということもございます。
したがいまして、今回の法律改正の中では、そもそも社会福祉法人の位置づけ、責務に内在しておりますこういった地域における公益的な取り組みについて法律上も明記をいたしまして、こうした取り組みが広く行われる、そういった努力義務もあるし、そういうこともやっておられるということを国民の目に見える化するという趣旨から、この責務規定を設けたところでございます。
○高橋(千)委員 内在していることを評価して支援をするというんだったらわかるんですけれども、見えるようにやれよ、しかも、それは無料、低額でやれという話ですから、全然方向が違ってくると思うんです。
それで、資料の一枚目を見ていただきたいんですが、これは四月十七日の社会・援護局福祉基盤課長通知、「社会福祉法人の「地域における公益的な取組」について」。
これは七月八日の本委員会で我が党の堀内議員が取り上げた文書そのものなんですけれども、なぜこの法案が成立する前にこのような通知を出したのかという議員の質問に対して、大臣は、「現行の法体系のもとでも、地域における公益的な取り組みについて、社会福祉法人の本旨に即して積極的に取り組むことが求められている」と答弁したわけです。
私、これは答えにはなっていないと思うんですね。だって、現行でできていれば何もあえて法改正をする必要はないわけですから。それを、法改正を待つまでもなくといって通知を出したということの意味は何なのかということなんですね。
それで、通知の中の真ん中ら辺に書いていますけれども、「社会環境等の変化に伴い、その位置づけは変化し、」「今日的な意義は、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的役割を果たすとともに、他の事業主体では対応できない様々な福祉ニーズを充足することにより、地域社会に貢献していくことにあります。」これは、今大臣が読み上げたこととほぼ同じ文章です。
それで、「「規制改革実施計画」においては、「一定の事業規模を超える法人に対して、法令等での義務付けに先駆けて」、法律が通るか通らないかを待たずにやれということですよね、「社会貢献活動の実施を要請する」こととされています。」と説明しています。
それで最後に、「このような取組を行うことは、法整備を待つことなく、社会福祉法人がその本旨に基づき果たすべき社会的使命です。」とまで言っている。
しかし、いつから社会貢献活動が社会福祉法人の本旨になったのか。その根拠は現行法のどこにありますか。
○塩崎国務大臣 社会福祉法人は、社会福祉法の第二十四条におきまして、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を行う存在として位置づけられておりまして、それに基づいて、先ほど来申し上げているように、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的な役割を果たす、そして同時に、地域におけるさまざまな福祉ニーズに対応するとともに、制度のはざまにございます多くの人々、こういった方々への支援を行うことが求められているというふうに考えております。
また、こうした公益的な取り組みは社会福祉法の第二十六条の公益事業として行うこととされておりまして、今回の改正におきましては、人口構造の高齢化、そして、地域社会や家族の変容に伴って福祉ニーズが多様化、複雑化する中で、社会福祉法人の役割がますます重要になってきていることを踏まえた上で、税制優遇措置が講じられている公益性の高い法人としてのあり方を徹底する観点から、地域における公益的な取り組みを行う責務を法律上規定するということにしたものでございます。
○高橋(千)委員 ちょっと今、局長に確認をいたしますけれども、根拠法は何かと私は聞いております。
二十四条を最初におっしゃいました。これは、主たる担い手として云々というのは、結局、例えば介護であれば介護報酬を受けて事業を担っている、そういうことを趣旨として言っていると思うんですよね。
今の、はざまというのは別な話ですよね。制度のすき間を担うというのを大臣がもし二十六条で読んだとするならば、その根拠になり得るのか。しかも、これを広い意味でなり得るとすれば、「経営する社会福祉事業に支障がない限り、」と書いている、そういう意味でよろしいでしょうか。
○鈴木政府参考人 ただいま大臣が御答弁申し上げたとおり、法律的な本旨の根拠でございますけれども、現行法の二十四条でございます。
この二十四条は、平成十二年のいわゆる社会福祉構造改革の際の法律改正で新設をされたものでございまして、その際、この二十四条に基づきます公定解釈といたしまして、これは種々の解説書等にも明記をされておりますけれども、社会福祉法人は、制度のはざまに落ちてしまった人々を救済していくために、創意工夫を凝らした福祉経営を行いつつ、社会福祉サービスの供給確保を中心に担う高い公共性を有する特別な法人類型である。こういうような趣旨につきまして、こういうような趣旨というのは、制度のはざまにいる方々に対して救いの手を差し伸べる、こういう趣旨につきまして、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を行う、こういう規定ぶりとしたものである。
したがいまして、ほかの主体ではできないような、制度のはざまにいるような方々の支援も含めて地域における福祉需要を満たす、これを本分とする存在として捉えられるべきものが社会福祉法人であり、それを社会福祉法上、二十四条においてこのように規定したというのが公定解釈でございます。
○高橋(千)委員 今、行いつつと言ったわけですから、解釈を読み上げましたけれども、それが主たる任務ではないでしょう。はざまをやるのが主たる任務なんですか。
○鈴木政府参考人 今御答弁申し上げたとおり、主たる任務は社会福祉事業でございます。
したがいまして、今回の法律の中でも、地域公益的な活動はあくまで責務として位置づけられておりますし、それから、社会福祉充実計画の検討の順位の中でも、地域公益的な活動を一番に置いているのではなく、やはり社会福祉法人の本分であります社会福祉事業を維持し、充実していく、これをまず第一に検討していただき、さらに財務的な余裕、地域のニーズがある場合に、本旨に基づいて地域公益的な活動に充てていただく、こういったことを法律上も位置づけておりますので、従来からの社会福祉法に基づく考え方を踏まえて今回の措置も講じたということでございます。
○高橋(千)委員 何か主たる任務が逆立ちしたような議論をしては絶対ならないと思うわけです。
やはり私は、本旨は憲法二十五条そのものだと思うんですね。社会福祉法人は民間法人であります。でも、憲法二十五条に基づく国と行政の担う仕事を実施している。だから、憲法八十九条の「公の支配」に属する法人として、行政からの補助金や税制優遇を受ける一方で、基本的に社会福祉事業のみを経営すべきという原則論のもと、所轄庁の指導監督を受けてきたというのが経緯だと思うんですね。この文章は、あり方検討会の報告書をそのまま読みました。
優遇されているところばかりが強調されているけれども、決してそうではない。だからこそ、社会福祉法第六十一条、「国及び地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めない」と定めているのではないでしょうか。ここはリンクしているんじゃないかと思うんですね。
だから、社会の環境が変わったからといって、それをなぜ社会福祉法人の本来任務と言うのか。しかも、補助金を受ける制度の対象外のことをやれという意味ですよね。公の支配に属しない慈善事業や博愛の事業をやるべしと言っているのと同じ、解釈改憲みたいなものになると思いませんか。
○鈴木政府参考人 社会福祉法人が事業をしていくに当たりまして、その全てを補助金に頼るということであると、それはそういうことではないと思います。
社会福祉法人は、補助金を初めさまざまな財源も活用しながら、しかし、自分の経営努力も含めて、さまざまな工夫をして地域の福祉ニーズに応えていく、これがやはり社会福祉法人の本旨でございまして、それについて、社会福祉法に先ほど御答弁申し上げたような形で位置づけられているということでございます。
したがいまして、そういったことを改めて今回法律上明定して、内在しているものを確認したということでございますので、今回の措置によりまして直ちに、例えば先生が今おっしゃいました社会福祉法六十一条との抵触問題といったものは生ずることはないものというふうに考えてございます。
○高橋(千)委員 昨年のあり方検討会の報告書では、非営利法人としての社会福祉法人について、「社会福祉法人、ボランティア、NPO、住民団体といった非営利組織は、1政府の失敗の補完機能、2市場の失敗の補完機能を担っている」と書いてあります。
政府の失敗というのなら、それを制度化せずに、社会福祉法人に転嫁をするというのはおかしい。制度のすき間がどうしてもあるというなら、なぜそれを無料、低額で行え、それが本来任務となるのか、到底納得できません。
しかも、参考人がそれぞれ語ったように、大臣も先ほど認めた、大なり小なり地域貢献を行ってきたとそこで認めているんですよね。なのに、それを何か責務規定にしなければならないというのはおかしいとさっきから議論しています。
そこで、四・一七通知にもあるように、毎事業年度終了後に所轄庁に届け出ることになっている現況報告書の中に、「地域の福祉ニーズへの対応状況」に記載しなさいということを求めています。だけれども、この対応状況というのは、今つくったものではなくて前からあるわけですよね。そうすると、取り組みの状況はどのようになっているでしょうか。
○鈴木政府参考人 今御指摘ございましたように、現在の仕組みにおきましても、毎事業年度終了後に所轄庁に現況報告書を届け出ていただいておりまして、その中には「地域の福祉ニーズへの対応状況」というものを記載するように求めているところでございます。
しかしながら、今の社会福祉法の仕組みにおきまして、今御指摘のあった「地域の福祉ニーズへの対応状況」、この資料、データについても実は所轄庁どまりでございまして、基本的に、自動的に国の方まで上がってくるような法律上の仕組みにはなっておりません。それ自体一刻も早く改善すべきことであり、こういったものについてきちんと整備をしていかなければならないというふうに思っております。
したがいまして、今の御質問に対する直接のお答えとしましては、国として、こういう具体的な全体の状況であるというものを直ちにお答え申し上げるものはございませんけれども、今回の改革におきまして、集計したデータについてデータベースをつくって、国としてあるいは各地域としてきちんとそれを国民、住民の前に御説明できるような仕掛けをつくろうということで、今回の法案を提案させていただいております。そういうことで御理解を賜りたいと思います。
○高橋(千)委員 結局、欄はつくっている、その書く欄は。みんなそれぞれ頑張っている。だけれども、それが結局、見てもいない、集計もしていない。わかっていないのに、もういきなりそれを義務化、皆さんは責務規定とおっしゃいますけれどもね。しかも、内部留保が、福祉充実残があれば地域公益事業に再投下せよというのは、余りにも乱暴ではないですか。
さっきから言っているように、六十一条は、肩がわりさせてはならないということと同時に、不当な関与を行わないと書いているわけですよね。不当な関与じゃないですか、実態もよくわからないでやりなさいと言うというのは。違いますか。
○鈴木政府参考人 まず、データとして自動的に国へ上がっていく仕組みがないので、これを改善するという点については御理解を賜りたいと思っております。
その上で、今回の仕組みについては、法人の財政状況にかかわりなく、とにかく義務として、例えば無料、低額による地域公益的な取り組みをやれということを規定したものではございません。
繰り返しになりますけれども、事業継続に必要な財産というものをしっかり適正に確保した上で、さらに財務に余裕がある場合について、そして地域にニーズがある場合にはまず社会福祉事業、そしてさらに財務的な余裕、地域のニーズがある場合に地域公益的な取り組みということで、あくまで法人の置かれた財政状況に応じて適切に措置をとっていただけるような仕組みを講じておりますので、必ずしも不当な関与といったことではないというふうに思っております。
○高橋(千)委員 それは、充実残があって余裕がある場合と、一般的に責務規定を置いた場合と、二種類あるじゃないですか。お金があってもなくてもやるべきだというふうに書いたわけですから、そのことを言っています。
それから、その余裕の中身がまだ決まっていないのに、そして今の、さっきから言っているように、仕組みがないんだ、まだ頑張ってやっている状態がわかっていないと。だったら、それをつくってから議論しなさいよと言いたいわけですね。
今わかっているのは、社会の誤解だとか世間の風当たりが強いと言っているけれども、それだってつくり出された議論じゃありませんか。
キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹の松山幸弘氏が、この方はあり方検討会の委員でもあるわけですけれども、二〇一一年の日経新聞に、「黒字ため込む社会福祉法人 復興事業への拠出議論を」とか、「純資産は十三兆円規模 優遇に見合う役割果たせ」というコラムが出発点で、「社会還元しなければ優遇受ける資格なし」とまで指摘をして、二年前に出された、特別養護老人ホーム一施設当たり平均約三億一千万のいわゆる内部留保があると言われ続けてきたわけですね。
だから、風当たりをつくってきたんですよね。みんながそう思っているわけじゃないですよ、お世話になっている方たちがいっぱいいるわけですから。全く逆立ちしていると思うんです。
確認をしますけれども、この調査は全数調査ではありません。また、明確な内部留保の基準がない中での調査ではあるけれども、そういう中で得られた結果は、実在内部留保額が多いと判定された特養は約三割であり、少ないと判定された特養は約五割であった。つまり、少ない方が多かった。間違いないですね。
○鈴木政府参考人 今先生の引用された調査については、そのような記述があったかと記憶しております。
いずれにいたしましても、この実在内部留保という中に、先ほどの質疑でもございましたけれども、実は、事業継続に必要な財産まで含まれる、例の三・一億の中にはそういうものも、現在事業に使っています土地建物の価額まで含まれるということでありまして、それ自体非常に、一定の限界のある、ある意味で不十分な調査であったろうと思います。そういう中で、さまざまメディアからの御指摘もありまして、社会福祉法人の財務運営に対する疑念が、これは事実として国民の皆さんの間に生じてしまったということだろうと思っております。
しかしながら、それに対してエビデンスを持ってきちんと反論するようなスキームが今の法制上ございませんので、これは、本当に真面目に事業を展開しておられる社会福祉法人の皆さんにとっても非常に不幸なことである、この状況を一刻も早く改善しなければならないということで今般の仕組みを御提案申し上げておりますので、その点につきましてはどうか御理解を賜りたいと思います。
○高橋(千)委員 明確な定義がないから、あるいは必要な財産まで含まれているから、法律をつくって証明していくんだと。
これは議論が逆立ちしていると思います。立法事実がない。それをきちんと証明する努力をしながら、法律が必要であれば別途検討していけばいいのであって、法律をつくって、しかも、議論の中では詳細なことは出てこないわけですよね、後で省令で落ちていくわけですから。それで、内部留保が実はないことを証明せよみたいな、そういう理屈は全く逆立ちしていると言わなければならないと思います。
さらに、これは特養ホームの数字なわけですよね。今数字がないのに、保育も障害福祉も、社会福祉法人全体が対象となるのはなぜですか。
○鈴木政府参考人 社会福祉法人の事業なり財務の状況をきちんと国民の皆さんに御理解いただくためには、やはり全国統一の、しかも、いろいろな事業の種類にかかわらず、しっかりした、客観化された、統一された基準のもとに、それぞれの法人が保有している財産の内容、内訳、そして事業継続に必要な額とそれ以外の額、こういったものをきちんと算出できることは必要だと思っております。
こういうものをきちんと実行するためには、やはり法制上の仕組みとしてこれを位置づける必要がございますので、今般、事業の種類にかかわらず、これを法制上位置づけて、それによりまして、全ての社会福祉法人につきまして国民の皆さんに御説明できるような形でデータをそろえていただく、こういった取り組みをしたいということでございます。
○高橋(千)委員 誤解が解ける、説明ができる時点になって、法人がもたなくなっているかもしれないですよね、このようなやり方では。本当にそれを指摘したいと思います。
資料の二枚目を見ていただきたいと思います。これは、介護事業を実施している大手株式会社の売上高及び営業利益の推移を、五年分の変化、これはグラフもちょっと調査室にお願いをしてつくっていただいたわけですけれども、よく聞く名前がベストテンに入っております。見てわかるとおり、増収増益をしているわけなんですね。
原本のみずほ銀行産業調査部の分析によりますと、例えば二〇一三年度の大手十グループの連結業績は、介護サービス利用者の増加や既存施設の入居率向上、拠点数の拡大等により、売上高は前年度比六・七%増の四千九百三十二億円を計上、営業利益については前年度比七・七%増の三百八十四億円を計上している。大手十グループのうち七グループが増収増益で、トップのニチイ学館は売上高千四百六十七億円、営業利益百二十八億円、これは過去最高を記録しているということであります。
そこで伺いたいのは、確かに税の扱いが違うとはいえ、原資は公費である、ここは違いはないわけですよね、なのに、株式会社が介護事業分野で利益をこんなにも上げているというのはなぜだと思いますか。また、社会福祉事業を担う事業者として、国は何も言えないのでしょうか。
○塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、民間の営利企業が福祉関係事業に参画をするかどうかということについては、介護保険の導入の際にさんざん議論をしたわけでありまして、その際から導入するということになりました。
介護保険は、基本的には民間活力も生かしたサービス提供が行われるものであって、介護報酬については、御指摘のように、株式会社の実態も含め、介護サービス事業者の経営実態等を考慮した上で報酬設定というものが、調査をした上で行われているわけでございます。
今般の社会福祉法人の見直しにつきましては、社会福祉法人の有する公益性と非営利性の性質を踏まえた上で行われるものであって、逆に、株式会社がもうけ過ぎじゃないかというお話を今いただいたわけでありますけれども、先ほど、これまた足立議員の際に局長から答弁したように、株式会社というのは株主による出資と持ち分がその本質であって、その特性を生かした効率的な事業運営が特徴であって、この効率的な事業運営を、社会福祉法人にもいい意味での影響をもたらしてくれるかという期待もあって導入したわけでありますけれども、株式会社に今度配当規制を課すとかいうようなことは、このような株式会社の本質からしてなかなか難しいわけでございます。
また、高齢化等に伴って福祉ニーズはふえる一方であり、また多様化も進むわけであって、これを踏まえて、営利法人を含めた多様な経営主体が参画する中でサービス供給の確保を図るということが政府としても担保をしなければいけない大事な要素であるわけであって、配当を制限した場合には株式会社の参入の阻害になるということにもなりかねないということで、政策的に難しいのではないかというふうに思います。
○高橋(千)委員 それは足立委員が質問したことであって、私は何も配当規制が云々なんてことは言っておりません。
まず、株式会社がなぜ介護の分野で利益を上げていると思いますかと聞いたんです。
○三浦政府参考人 御案内のとおり、介護保険のサービスの事業を展開している事業体といたしましては、先ほど来ございましたような社会福祉法人もございますし、また医療法人、あるいはこのような株式会社を含めた営利法人、多様な事業主体がございます。
そういう中で、やはり民間の経営努力というものもあろうと思いますし、何よりも、介護保険のサービス自体が高齢化の進展に伴いまして拡大しているという状況もございます。
それとあわせて、きょう委員のお示しいただいた資料というのは、まさに表題に書いてありますように、大手の株式会社ということもございまして、やはり、これは推測ではございますけれども、例えば規模の経済ですとか、そういうものも影響している可能性はあるだろうというふうに考えております。
○高橋(千)委員 まず、同じ原資なのに、なぜ利益を上げているのか、そこからちゃんと議論しなければだめだと思うんですね。
やはり、今ちょっとおっしゃっていただきましたけれども、スケールメリットというのがあるんだろうと。そのことについても、次の法案にも非常に関係してくる、社会福祉法人に対しても規模の拡大を求めているという議論がありますよね。
特徴があるのは、介護報酬が改定されれば、利益の上がる事業にシフトするわけですよね。点数が高い方にどんどん変えていく。二十四時間の方がよければそっちに行く。だけれども、社会福祉法人には使命がありますから、簡単には移せないわけですね。まして撤退なんて簡単にはできません。そこが決定的に違うと思うんですよ。もうからないと思ったら撤退もできるし、あるいは、もうかると思えば集中もできる。そこにやはり大きな違いがあるだろうと。
もちろん、持ち分の問題だとか、そうしたこともあると思うんですけれども、ただ、そこに対して国が何も言えないのかと言ったのは、具体的なことを言ったわけじゃなくて、だけれども社会福祉事業を担う事業者でしょうということを言いたかったわけなんです。
例えば、参考人質疑で、内部留保の調査の事務局を務めた明治安田生活福祉研究所の松原由美氏は、「一部の社会福祉事業に営利法人が参入しておりますけれども、それは、供給量確保と多様なニーズに応えるためでありまして、この事業で利益最大化だとか配当拡大を狙ってもらうことが本旨ではございません。社会福祉事業においては、営利法人であっても、非営利組織的考えに基づく経営が求められると思います。」と述べております。
これは当たり前のことですよね。大臣、いいですか。
○塩崎国務大臣 基本哲学としてはそのとおりだと思います。
○高橋(千)委員 そういうことなんですよ。最低そこを認めなければ、社会福祉事業を担っているんだから、そして原資は公費なんだから。そこを、だけれども民間企業だから何も言えないんだということを一方では言っておきながら、そっちに合わせなさいと、法人を。その議論がおかしいと言っています。
実際に、介護事業における虚偽の指定申請や不正請求などによる指定取り消し処分の七割から八割が営利企業なわけですよね。だから、やはり、イコールフッティングというなら、まずこういうところからきちんと正していくということが必要なのではないかと指摘をしたいと思います。
問いが非常に間に合わなくなっておりますので少し飛ばしますけれども、内部留保と並んでダブルパンチなのが、介護報酬引き下げの根拠となったいわゆる収支差八・七%という数字であります。
これについてはこれまでも指摘をしてきたところなんですけれども、全体では二・二七%マイナスと言われているけれども、介護職の処遇改善分などを引きますと四・四八%で、過去最大と言われているわけです。ですから、例えば特養一カ所でも月五十万以上の減収、それ一年分ですから、法人全体としては、いろいろな施設をやっていますので、数千万にもなる減収はざらにあるということです。
そういう中で、実は、収支差をはじき出した経営実態調査は、これは三月のデータだけで見ている。そうすると、これでは、ボーナスみたいな支出がないかわりに公費などの収入は入ってきていて、年間ではむしろプラスが立つ月なんだ、そこだけを切り出して調査したというなら、実態と違うのではないかということが一つ。
それから、報酬引き下げの影響は大きいわけですから、内部留保云々の前に、その影響があるやなしや、その実態を見て、三年を待たずに対策を打たなければならないわけで、まずそこをきちんとやらなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 今、介護事業経営実態調査の収支差についてお話がございましたけれども、今回の介護報酬の改定は、さまざまな要素を勘案して、総合的に判断をして改定をしたわけでありまして、当然のことながら、介護職員の処遇改善とか物価の動向、事業者の経営状況、それから地域包括ケアの推進の必要性等々、さまざまな要素がございました。
介護事業者の経営状況を把握するための調査というのは、直近の収支状況を報酬改定に反映させるために、改定の前年の三月時点の収支の状況を調査してまいりましたけれども、介護給付費分科会の委員等からは一年分の収支を把握すべきなどの御意見も頂戴をしておりまして、現在検討を進めておるところでございます。
○高橋(千)委員 検討を進めておるという答弁でした。だったら、これは一遍にやらないで、つまり、今の法案を一遍に施行しないで、この調査をきちんとやって、影響が出ないんだ、むしろ十分やっていけるんだというのであればわかりますよ。そうじゃなくて、片や内部留保もある、片や収支差もあるといって、一遍に、充実残を使いなさいというふうな議論をしないということを指摘したいというふうに思います。
それで、御案内のとおり、社会福祉法人は人件費率が六割から七割なわけですよね、前から議論されている。それで、加算は介護職のみであるために他の職種への加算を全くしないということはなかなかしにくいというのが現場の声です。ある施設長は、全体の三分の二くらいが介護職で、その他の職員には半分は少なくともアップしたいかなとか、そういうことをおっしゃっておりましたけれども、何らかの対策をとるためにはやはり身銭を切らざるを得ないということなんですよ。
そういう中で、担い手の確保が、その上さらに地域貢献もしなさいとなると、さらに困難になるのではないでしょうか。
○鈴木政府参考人 先ほども御答弁したとおりでございますけれども、今回の社会福祉充実計画を通じます地域公益活動についての取り組みは、何か、財源がないのに、そこを捻出してぜひともやらなければならないといった義務づけをするものではございません。あくまで、その法人の財政状況に応じて無理のない計画をつくっていただく、言葉をかえて言えば、その法人が保有している資産の使い道について説明する計画をつくっていただくということでございます。
したがいまして、今先生御指摘ございましたように、これによって、ある意味優先順位が一番高いとも言える担い手の確保が困難になるといったようなことはないものと考えております。
○高橋(千)委員 無理のない計画をつくるとか説明するとか、そういうこと自体が大変な負担になるということを指摘しています。
今だって、介護の職場を選んだ理由のトップは、やりたい職種、つまり、やりがいなんですよね。だけれども、慢性的な人手不足で、そのやりがいや仕事のおもしろみをわかる前にやめてしまうというのが実際のところである。
例えば、三対一の基準では到底対応できない、食事させ、トイレに行き、風呂に入れて寝かせるだけで精いっぱいだ、利用者を人間として扱うことができない、職員が少ないために夜勤明けの職員が入浴介助をしている、こういう実態がるる訴えられているわけですね。だから、お金は出ないんだけれども二対一の配置、それでも不十分だという中でやっている施設も多いわけです。
だったら、残ったお金を云々かんぬんと言う前に、むしろ、配置基準を厚くして基本報酬を上げることで担い手を確保することが、本来まずやるべきなのではないでしょうか。
○塩崎国務大臣 今、三対一、二対一の話がありましたけれども、介護施設につきましては、利用者の状態に応じて弾力的な対応を可能とするために、最低基準を設定して、入所者の数三人ごとに一人以上の介護・看護職員の配置を定めているわけでございます。
一方で、介護報酬につきましては、当該サービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定することになっておりまして、最低基準の配置職員数をベースに積み上げを行っているわけではございません。
例えば、要介護度が高い入所者に対しましては手厚く報酬が設定されているほか、二十七年度の介護報酬改定におきましても、重度の要介護者や認知症高齢者等に対し要した手厚い介護につきましては、各加算において評価の充実を行っているわけでございます。
さらに、今後、介護ニーズの拡大が見込まれる中で介護人材を確保するためには、参入促進、そして資質の向上、労働環境、処遇の改善のための取り組みを総合的に進めることが必要であって、介護職員処遇改善加算、この一万二千円相当の拡充を行うというのも今回の改定の際の大きな柱になっているわけでありまして、この運用の厳格化を図って、介護職員の処遇が着実に改善されるように、引き続き都道府県と連携しながらしっかりと運用してまいりたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 加算ではなく、私がきょう指摘をしたのは、本当に必要な配置をちゃんと国が認めるべきだということ、そこから始まって、処遇の改善というのがきちんと見積もられていくんじゃないかということを指摘しています。そういう立場に立たずに、余裕があるところは処遇改善に再投下してもいいよというふうな議論が若干あるわけですが、それはやはり逆立ちしているんだろうと言わなければならないと思います。
きょう、本当は、さっき浦野委員が質問をした国の責任と社会福祉法人の肩がわりの問題について、もう少し具体的に介護の問題で指摘をしたかったんですが、時間が来ましたので、やはり質疑は続行するべきであると重ねて指摘をして、終わりたいと思います。
――資料――
【資料1】「社会福祉法人の『地域における公益的な取組』について」(厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長通知)
【資料2】介護事業を実施している大手株式会社の売上高及び営業利益の推移