国会質問

質問日:2013年 6月 13日 第183国会 東日本大震災復興特別委員会

サテライト高校の充実を

(写真)質問する高橋ちづ子議員=13日、衆院震災復興特別委

(写真)質問する高橋ちづ子議員=13日、衆院震災復興特別委

 日本共産党の高橋ちづ子議員は13日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、福島第1原発事故で立ち入り禁止区域になった高校が他校に間借りなどして授業を行う「サテライト高校」の実態を取り上げ、子どもや教職員の要望に応えた支援を求めました。
 福島県内のサテライト高校は9カ所、886人が在籍しています。高橋氏は、子どもたちの教育費や宿舎、交通費などの実態をつかみ、生活支援を行うよう要請。教職員に対しても「通勤時間や負担、勤務地の配慮や手厚い職員配置が求められる」と強調しました。
 根本匠復興相は「子どもたちの高等教育の場が適切に確保されるよう文科省と連携しながら適切に対応する」と答弁。下村博文文科相は「今年度は7人の教育復興支援加配をしている。福島県、各自治体の教育長、首長の意見を百パーセント反映できるよう努力していきたい」と述べました。
 高橋氏は双葉郡の協議会ではサテライトを休止し、中高一貫校をいわき市に設立することなどが議論されていることを指摘。「おとなの都合ではなく、子どもにとって最善の道を子どもの要望もしっかり受け止めて決定すべきだ」と述べました。
 根本復興相は「関係者が議論を重ねて合意形成をはかることが重要」とのべました。
(しんぶん赤旗 2013年6月24日より)

 

―― 議事録 ――――――――――――――――――――――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 五月二十七日の委員派遣で、いわき明星大学の中にあるサテライト校を視察いたしました。双葉郡内の三つの高校、富岡、双葉、双葉翔陽の生徒さん百八十三名が現在学んでおられます。本委員会での参考人質疑の際に、大熊町の商工会会長の蜂須賀礼子さんが、ぜひサテライトの実態を見てほしいと訴えたことがきっかけでありました。ただ、実際は、時間が非常に少なくて、十分実態をつかめたとは言えません。でも、大事なことである。だからこそ、そういう思いを込めながら、きょうは、サテライト、避難している子供たちの学びの場について質問させていただきたいと思います。
 まず、資料の二枚目に、今紹介した双葉郡内だけではなくて、県内のサテライト校の在籍数を示しました。これは、一番左に書いている学校名が、もとの高校の名前であります。その隣がサテライト、今のいわき明星大学など幾つか書いてあって、何らかの避難区域を抱えている双葉郡、相双地区の計八高校から、現在九カ所、八百八十六人がサテライト校に在籍をしていることになります。ただ、このうち富岡高校は、静岡県三島も含めて四カ所に分散をしています。一年前は千九十五名、そして震災直後は千四百六名でした。でも、震災前は二千三百九十三名の子供たちがこの高校にそれぞれいたということを見れば、多くの生徒たちが避難先でそのまま転入するなどして移っていったということが読み取れるかなと思っております。
 まず、今現在サテライトで学んでいる子供たちの教育費ですとか宿舎、交通費などに対する支援がどのようになっているのか、簡潔にお願いします。

○山下政府参考人 お答え申し上げます。
 被災した生徒等が安心して学ぶことができるよう、必要な経済的支援を行うことは重要であると考えております。このため、東日本大震災で被災し、経済的に就学困難となった生徒に対して、平成二十三年度の第一次及び第三次補正予算におきまして、被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金、これは全額国庫負担でございます、これを創設し、高校生に対する奨学金事業等の支援を実施しているところでございます。
 また、サテライト高校等の通学用のスクールバス及び宿舎費等に要する経費につきましては、国費でございますけれども、震災復興特別交付税の算定項目に含まれておりまして、こうした措置も踏まえまして、福島県においてサテライト高校に通う生徒の通学支援や宿泊施設の確保に関する事業を実施しているところでございます。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 現時点では、国庫負担による特例交付金ですとか震災復興特別交付税という形で措置がされていて、それを、福島県がその実情に合わせて支援をしているという中身だったと思うんですね。
 例えば、食費が一律二万五千円だ。当初は、魚の切り身、おかずがそれだけしかなくて本当に貧弱だったというのが、声を上げていって改善をされたということも聞いています。ただ、例えば土日に親元に帰る際の欠食、当然、いないんですから食事は食べないわけですけれども、その分も含めて一律徴収をされているとか。
 やはり、二重に避難をしている、親元も避難をしているし、自分も宿舎にいる、そういう中での特別な負担というふうなことがあるわけですね。そういうことも含めて、実態把握などをされているのか、伺いたいと思います。

○山下政府参考人 先生御指摘の、親元からサテライト校に通うことができない生徒の就学のための経費あるいは食費、こういったことについて、これは、先ほど申し上げましたように、福島県において、例えば通学費補助事業あるいはサテライト校宿泊施設支援事業というものをやっているわけでございますけれども、この運用について、私どもの方で詳細は今、申しわけございません、ちょっと把握できておりません。

○高橋(千)委員 きょうは下村文部科学大臣にもおいでいただいていますので、後の質問のときにぜひお答えいただきたいと思いますので、今の、聞いていただきたかったなと思うんです。
 やはり、子供たちが今、四人部屋の寮生活だったり、帰省するのも仮設住宅。ですから、本当にどこに行っても狭くて、遠慮しながらの生活であります。私たちが行った明星大学というのは、三校入っていて、それぞれに確かに職員は配置されているんですけれども、合同の保健室なんですね。ですから、唯一、子供たちが逃げることができる場所であっても、そこがほかの学校の子供たちと一緒である。だから、本当に泣く場所が欲しいんだというのが子供たちの本音だということを養護の先生方がおっしゃっているんですね。そういう実態をやはり踏まえていただいて、特別な環境なんだということにどう応えていくかというのをぜひ後でお答えいただければと思います。
 それで、資料の一枚目に戻っていただいて、今、双葉郡の五校の生徒を受け入れる中高一貫校を新たに設立するんだということが協議をされています。現在のサテライト校は、その間は暫定的に休校とする。要するに、両方とり合うだけの生徒さんがいないという現実があるわけで、双葉郡の教育復興ビジョンの骨子案の中でそれが示されたというのが報道であります。
 私たちが伺ったときは、この設置場所、どこに置くのかということがまだ決まっておりませんで、いわき市という報道があったんですけれども、ただ、双葉郡内に学校がなくなるということは、もう双葉の子供がいなくなるということに直結するわけですよね。そういう自治体の大変複雑な思いを感じることができました。ただ、帰還の時期については、同じ双葉郡内といっても、まるっきり自治体によって違うということがございます。
 そういう中で、今、双葉郡の教育復興協議会がどこまで進み、文部科学省としてはどのようにかかわっているのか、伺いたいと思います。

○大木政府参考人 お答え申し上げます。
 福島県双葉郡の教育復興につきましては、双葉郡八町村が、国、県、大学等の関係機関の協力も得つつ、郡の今後の教育のあり方について中長期的視点から協議を行う福島県双葉郡教育復興に関する協議会において議論を行っているところでございます。
 この協議会でございますが、昨年の十二月からこれまで七回開催をされておりまして、中高一貫校の開校やカリキュラム内容を含め、郡の教育復興全般について議論を重ねているところでございます。この六月中を目途に、教育復興ビジョンを取りまとめる予定と承知をいたしております。
 文部科学省といたしましても、従来から、協議会に職員を派遣し、創造的復興教育の取り組みについての事例紹介を行うなどして協力を行っているところでございますが、協議会から教育復興ビジョンが示され次第、必要な支援について検討してまいりたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 中高一貫校というのは、特別な今の状況の中で双葉の町村から出てきた要望でありますので、それ自体に私がどうこう言うつもりはないんです。また、ここに建てるべきだということも、非常に微妙な問題ですので。
 ただ、本当に、自治体の皆さんがよく考えて、それぞれで役割分担しながら、ぜひ建てていきたいというふうなことをおっしゃっていますので、よくそこを踏まえていただければありがたいかなと思っております。
 それで、肝心なことは、やはり子供にとって何が一番大事なのかということだと思うんですね。避難生活が続く中でも、最善の努力で、やはり学びの場が確保されるべきではないかと思います。
 サテライトに学ぶ子供たちは、何度も避難を繰り返してきました。二〇一一年の五月に、第一原発から三十キロ圏内にある九つの高校と飯舘村にある相馬農業飯舘高校、この高校が、全県で二十六の高校の教室や体育館を間借りしてのサテライト方式で学んでおりました。体育館をボードで区切っただけという、学びの場とは到底言えない学校だったわけですけれども、ただ、自分の学校で卒業できるという説明を受けていたわけですね。
 ところが、避難準備区域の解除などに伴ってサテライトの集約が発表されて、翌年、二〇一二年の四月に、富岡高校を除いて、さっき言った二十六あるというのが一つに集約をされたわけです。ですから、何度も避難をしていた子供たちが、今度は自分も親元を離れて、寄宿舎に入ることを余儀なくされた。ですから、そういう経過の中で今があって、今度もまた子供たちが翻弄されることを非常に残念に思うわけですね。そこを本当に大事に捉えて、来年の春には、サテライトに入学してサテライトから卒業する子供たちも出てくる、そういう状況にいるわけであります。
 それで、復興大臣にまず伺いますけれども、今後の復興計画に大きくかかわってくることであります。子供たちの将来にかかわる問題であるけれども、だからこそ今が大事なわけであって、今の環境を本当に最大限学びやすい環境にするためにも力を尽くしていただきたいと思いますけれども、復興庁としても立場を伺いたいと思います。

○根本国務大臣 震災後、双葉地区、相馬地区内の生徒の学習の場を確保するために、福島県教育委員会が、保護者の希望などを踏まえて、県内の他地域の高等学校の施設等を使って教育活動を行っている、これは先生御指摘のとおりであります。
 国においても、先ほど来答弁がありましたように、さまざまな支援に努めているところですが、復興庁としても、これからも双葉郡の子供たちの高等教育の場が適切に確保されるように、文科省と連携しながら適切に対応していきたいと思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 そこで、下村大臣に伺います。
 先ほど子供たちの声も紹介をしましたけれども、教職員も被災者であります。家族がばらばらになっている中で、片道二時間から二時間半の通勤をしている先生、あるいは、要するに教科の関係だと思うんですけれども、三時限目までは会津で授業をするんだけれども、五時限目からはいわきで授業をしている、そういうびっくりの実態などもございます。こういう中で、先生方は、子供たちの思いを受けとめながら、よりよい環境づくりということでも頑張っていらっしゃる。
 そういう意味で、通勤時間ですとか経済的な負担、勤務地の配慮、あるいは手厚い職員配置、こうしたことでの手当てということが一層求められると思いますけれども、いかがでしょうか。

○下村国務大臣 私は、大臣に就任してすぐ視察に行ったところが福島でございまして、三学期が始まったその日に、今先生から御指摘がありました、いわき明星大のサテライト校にも行ってまいりました。ここには三つの高校が入っておりますが、三つのそれぞれの校長からもお話をお聞きしましたし、また、ずっと県の教育長も同行されておりましたし、関係の自治体の局長もおられましたので、現状の話についてはよくお聞きしました。
 また、三日前には、原賠ADR時効消滅法が国会で成立をしていただいたということもありまして、すぐ、福島県知事初め、この関係の双葉郡の自治体の長や教育長にもいろいろとお話をして、地元の要望は最大限、国としてバックアップをしていきたいというふうに思います。
 ただ、今御指摘の教職員の人事、これは、個々の事情を踏まえた上で、任命権者の権限と責任において判断されているものでございます。福島県において、人事配置に際して、教職員の勤務環境に配慮しつつ、教職員個人の意向を踏まえながら対応を行っているというふうに聞いているところでございます。
 また、高等学校の教職員配置については、サテライト校における教員の増配置を行うため、今年度は、福島県の申請どおり、七名の教育復興支援加配も行っているところでございます。
 私としても、福島県それから各自治体の教育長あるいは首長の意見を一〇〇%反映できるように努力をしていきたいと思いますが、第一義的には、それぞれの任命権者である自治体の判断するところであるというふうに思います。

○高橋(千)委員 一〇〇%というお言葉が出ましたので、大変ありがたく思っております。
 この間、加配を繰り返し行ってくださっていたこと、また、サテライトに対しても七名の加配があるということをおっしゃってくださったことは大変感謝を申し上げたいと思います。確かに、任命権者も県であるということは当然承知の上で質問をしています。ただ、全体の合理化の流れの中で加配をするということをしてきましたので、自由に配置をできるというほどの余裕があるわけではなかったり、そもそも休校しているので定員は足りている、最初はそういうしゃくし定規的な対応がされてきたという中でのそういう要望があって、少しずつ改善をされてきたということだったと思いますので、ぜひ、先生方の実態もつかんでいただいて、また応えていただければありがたいかなと思っております。
 その上で、やはり今後の復興計画を決めるに当たっては、子供たちと親が、期間の見通しが見えないので帰らないとか、あるいは、避難先の学校に転入してようやくなじんだ、そういうような率直な声も聞こえております。ですから、子供が帰らないと町が復興しない、当たり前のことです。だけれども、大人の都合ではなく、やはり子供にとっての最善な道を選ぶ必要があろうかと思います。
 復興計画、学校をどこにということも含めて、決めるときには、やはり子供や保護者の要望をしっかり受けとめて、そういう意見を聞く場を大いに設けて進めていく必要があると思うんですけれども、これは下村大臣と根本大臣にそれぞれ伺いたいと思います。

○下村国務大臣 先ほども政府参考人がお答えさせていただきましたが、地元の双葉郡の教育長の方々がお集まりになって、これから地域におけるよりよい教育をどう根づかせていくかということの一つとして、中高一貫の学校も考えられているということでございます。
 私も、三日前に双葉郡に行ったとき、広野町の町長から、特にこの問題については強く要請をされました。また、富岡町の町長にお会いしたり、南相馬市の市長にお会いしたり、それから飯舘村の村長にお会いする中、それぞれ共通の要望や、あるいは地域によって個々にそれぞれ異なった要望もあるということをお聞きしました。
 この中高一貫教育についても、できたら、やはりふるさとにできるだけ、首長の立場からすれば、あるいは教育長の立場からすれば、子供たちに戻ってもらって、もう一度この地域を、ふるさとをぜひ若い人たちの世代によって引き継いで、さらに活性化してもらいたい、そういう思いの中で中高一貫学校の創設を考えておられるのではないかと思います。
 これは、施設整備等、金銭的な部分は国がしっかり応援をしていきたいと思いますが、まずは、地域の復興復旧については、やはり地域の方々がどう自立して自分たちで町を、地域をつくっていくか、その中で学校教育をどう位置づけるかということが、長い目で見るとやはり一番大切なことであるというふうに思います。また、その協議会の中には文科省の役人も入っておりますから、常時いろいろな話をお聞きしながら、最大限、国としてやれることはやっていきますが、まずは地元自治体が連携して、それぞれコンセンサスが得られるような、そういうフォローアップをさせていただきたいと思います。

○根本国務大臣 今、文科大臣から答弁がありました。
 復興庁としても、双葉郡の教育復興、これについては、協議会において、今、今後の教育のあり方についての中長期的観点から協議を実施しておりますが、文部科学省や福島県とともにこの協議会に協力をしております。
 大事なのは、この双葉郡の教育復興に向けて、関係者が十分議論を重ねて合意形成を図ることが重要だと思います。復興庁としても、文部科学省と連携しながら、適切に対応していきたいと思います。

○高橋(千)委員 残念ながら時間が来ましたので終わりますけれども、お二人の大臣に、その声を踏まえてという答弁をいただいたと思います。
 教育復興協議会でも、子供の会議を開いて、それを受けた後の三月三十一日の協議会の様子を見ますと、やはり子供たちの声を踏まえた学校や授業運営が本当に参考になるとか、子供たちが学校規模の確保について大変重視しているということで、何かちょっとそれまでの議論と違う議論をしているなということをすごく感じました。
 きょうは、もう少し紹介したいことがあったんですけれども、やはりそこが基本なんだろう、どこにということよりも、子供たちの声を踏まえた環境づくりということをまずはお願いしたいということで、ここで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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