「個人の期間制限」に穴
高橋氏「直接雇用を原則に」
日本共産党の高橋千鶴子議員は5月27日の衆院厚生労働委員会で、新たに導入する個人単位の期間制限(最大3年)について、臨時的・一時的業務に限るという派遣労働の原則を担保するものにはならないとただしました。
高橋氏が、個人単位の制限は企業側が求めてきたものであることを指摘し、なぜ3年にしているのかと質問したのに対し、塩崎恭久厚労相は「派遣の固定化を防ぐ」などと説明しました。
高橋氏は「禁止されている派遣労働者の特定につながる。使い勝手のいい派遣労働者を選別したいという派遣先の論理が優先される」と強調。その上で、期間制限といっても、派遣される課を変えたり「クーリング(中断)期間」を置けば「何年でも延ばせることになる」と指摘しました。
厚労省の坂口卓派遣・有期労働対策部長は、有期雇用のプロジェクトについて、労働契約法の場合と同様に最大10年まで認めるほか、クーリング期間も1年契約の場合は労働契約法では半年だが、派遣の場合は現行の3カ月でよいとする考えを述べました。
高橋氏は「制限といっても穴が開いている」と批判。こうした背景には、「常用代替防止を原則とし、臨時的・一時的業務に限って『例外』として認めてきた派遣労働を次々と拡大してきた矛盾がある」と指摘し、「直接雇用を原則とする立場に立ち戻るべきだ」と強調しました。
(しんぶん赤旗2015年6月1日付)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
まず、今回の法案の大きな特徴の一つに、派遣期間制限を個人単位と事業所単位という二つのカテゴリーにして、一定の条件のもとに基本的に上限をなくしたというのがあると思います。これは、労政審の建議をまとめる際、使用者側からも、業務ごとの制限ではなく、個々の派遣労働者ごとの就労期間の制限とすることとされたものであります。しかし、労働者側は反対であったと思います。
大臣に伺いますが、なぜ個人ごとの派遣期間制限にしたのでしょうか。
○塩崎国務大臣 現行制度における期間制限については、一つは、いわゆる専門二十六業種、きょうは随分これについての議論が行われましたが、これに該当するかどうかが実はわかりにくいという指摘がございました。それから、業務の専門性が時代とともに変化をするために制度が不安定であるといった指摘がなされているところでございまして、平成二十四年の労働者派遣法改正法案に対する国会の附帯決議においても、わかりやすい制度となるように、速やかに見直しの検討を開始することが求められたと思っております。
こうした背景から、今回の改正案では、わかりにくいという指摘がある業務単位の期間制限を廃止し、働く人に着目をした、よりわかりやすい制度として、個人単位と派遣先の事業所単位の二つの期間制限に見直すこととしたところでございます。
○高橋(千)委員 大臣、全然答弁になっていませんからね。
わかりにくいというのは、前段におっしゃったのは専門業務の話でしょう。それは、この間ずっと一〇・一ペーパーで議論してきた。そのことを今言っているのではないんです。
だけれども、後段のところは、個人ごとの派遣期間制限になぜしたのか。その方がわかりやすい、逆に言うと、わかりにくいということでなったという話なんですけれども、何でこんな議論が急に出てきたのかということなんですね。
十五日の本委員会で公明党の伊佐委員が、個人ごとの派遣期間制限が派遣労働者の保護につながるんだという質問をされました。では、どちらの側からこの考えが出てきたのかと思うんですよね。
さっき言ったように、労政審の中では使用者側から出てきているわけです。建議に先立つ、あり方研究会、平成二十五年八月二十日の報告書の中にも盛り込まれましたし、規制改革会議は十月に、「有期雇用派遣労働者に対する個人レベルの期間制限は、規制改革会議の主張に沿ったものであり、堅持されるべき」としていた。つまり、労働者側は反対しているけれども、使用者側はどっちも、派遣元も先もこれは歓迎しているんですよ。そこから来ている。
なぜかというと、結局、大臣はいつも、これまで事業所単位だったと表現していますが、業務単位ですからね、業務単位ということでの期間制限しかなかったわけですよね。それがはみ出せば、つまり、一人が三年でなくても、六カ月だったり五カ月だったり一年だったり、足していってはみ出せば、要するにオーバーしちゃう、そこで雇用契約申し込みをしなさいと。そういう、期間制限に触れるよということがあって、これは非常に厄介だな、だから個人単位にした方が楽だ、わかりやすいし被害が小さい、そういう使用者側の論理ではなかったんでしょうか。
保護ではないと思いますが、お答えください。
○坂口政府参考人 お答えいたします。
今委員御紹介いただいたような、使用者あるいは有識者の会議等の経過があったということは事実かと思っておりますが、ただ、最終的な形で労政審で御議論をまとめていただいた形は、先ほど大臣が御答弁しましたような形での、個人単位も含めての期間制限ということをパッケージで、しかも、その業務単位の期間制限についても、業務単位の方は単に廃止して人単位の個人単位に移ったということだけではなくて、事業所単位の期間制限ということも残した上で、わかりやすくした形で、個人単位の期間制限とパッケージで期間制限を設けたということでございます。
○高橋(千)委員 さっき紹介した、個人単位にしたのは保護のためであるという議論のときの坂口部長の答弁は、三年という個人単位の期間制限によってキャリアアップにつなげていただく、節目節目にちゃんと自分のキャリアの見詰め直しをしていただくと答えています。確かに、省庁でも三年というのは一つの異動の節目だ、それが一つの参考になりましたなんということを説明を受けたこともありますけれどもね。
だからといって、三年でキャリアアップということではなくて、課を横滑りしていることもあるわけですよね。なぜ三年ごとの期間制限がキャリアアップにつながるんですか。
○坂口政府参考人 お答えいたします。
前回の答弁の中でもそのようなお答えをしたかと思っておりますが、まず、この三年の個人単位の期間制限というのは派遣労働者の固定化を防止するということでございます。
その意味では、今御紹介もいただきましたけれども、いわゆる正規の方々のキャリア形成、あるいはそういった人事の異動ということも、二年から数年というようなタームで、キャリアを積むに当たっていろいろな仕事を移り渡ってキャリア形成を図っているということもございます。ということで、やはりこの三年という形で課でくくって一つの見詰め直しをしていただくということが、この派遣への固定化を防ぎ、かつキャリア形成にも資するということで考えたということでございます。
○高橋(千)委員 見詰め直しとか、本当にずっと答弁を聞いていて驚いたんですよね、いつからそういう議論になったんだろうと。一方では、臨時的、一時的と言っている。
実際に、三年で何でキャリアアップなの、横滑りするじゃないかと言ったときに、一回では難しいかもしれないけれども、いろいろなところを回って経験を重ねればそれはキャリアアップにつながりますという説明を私は受けたんですよ。そうすると、本当にこれは、何度もきょうも指摘されているように、臨時的、一時的が原則と幾ら書き込んでも、完全に、やろうとしていることが矛盾しています。書いたからこそ、さらにこれを自己否定していることにもなります。大臣、その意味、おわかりでしょうか。
○塩崎国務大臣 先ほど個人単位の期間制限のことについて私から説明申し上げたときに、やはり、課をかわるということはそれなりに新しい分野を学ばないとなかなかできないということが、私もサラリーマンをやっておりましたが、課というのはやはり全然違うときが多いわけでございまして、そういうようなときに備えて、このキャリア形成支援制度をしっかりと持っているかどうかを確認した上で派遣元を許可するということにしているわけでございますし、三年目の節目節目の際にやはりステップアップをするというきっかけとしても、この三年ごとの自身のキャリアについて考える機会として、固定化防止をするということが私どもの考えでございます。
○高橋(千)委員 固定化防止とおっしゃるんですけれども、個人の派遣期間を制限するというこれまでにない考え方なわけですよね、期間を管理するという。これまでは、派遣事業者が期間制限に抵触しますよと言わなきゃいけなかった。だけれども、もう個人だから、誰さんはこの三年間きちっと働いてもらったわ、次は別の部署に行ってさらに働いてもらう、これは派遣労働者の特定につながるのではないか。派遣法が禁止している特定につながりませんか。
○坂口政府参考人 今委員御質問ございました特定目的の行為というのは、いわゆる派遣先がその派遣労働者の特定をしないようにということで法律で努力義務を課し、指針でも一定の、してはいけないということで書いておるということかと思います。
今回の個人単位の期間制限の派遣労働者ということについては、個々の派遣労働者について、一定の同じ職場での課についての継続的な就業を制限するということでございますので、派遣先が、ではAさんがいい、Bさんがいいというようなことを指定することを規制しているということではないということでございますので、課単位の期間制限ということ自体が、特定目的を制限している、派遣労働者の特定を制限しているということと相反することではないということで考えているところでございます。
○高橋(千)委員 これまでは、その業務に派遣労働が必要だ、それはあくまでも臨時的、一時的ですよ、最大でも三年、そういう考え方だったから、その三年の中に何人派遣労働者が入っているかというのは、本来は派遣先は関知しない。だから、雇いどめがあっても、自分たちはリストラしたんじゃないんだ、派遣契約打ち切りなんだ、そういうことを言ってきたわけですよね。それが、派遣労働の間接雇用ということの最大の問題だったと思います。
だけれども、それを特定したいという使用者側の要望が非常に強くて、事前面接の解禁ということも一度は議題に上りました。しかし、今それを、労政審を経て、結局は今回盛り込まなかったわけですよね。
やはりそこを本当に大切にしなければ、結局、使い勝手のよい、とても有能な人はずっと派遣で働いてもらいたい、そうじゃない人は契約が切れればそれで気持ちよくお別れできる、そういうことになってはならないというために議論してきたんだということを強く指摘したい。これは当然否定するとは思いましたけれども、特定につながるということを一つ指摘しておきたいと思います。
そこで、最大三年といっても、初めから三年間の契約を結ぶとは考えにくいと思います。有期雇用契約だってそうですよね。さっき大臣もお話しされました。今専門業務をやっている人だって三カ月だったり、そういう人が多いですということを言っていると思うんですね。そうすると、半年とか一年契約を反復して契約することを意味していると思うけれども、どう考えますかということと、それを反復雇用していても三年継続してというのは、どういう場合にそれをカウントしますか。
○坂口政府参考人 お答えいたします。
今委員の方からありましたように、現実の有期派遣労働者の実態、あるいは、今回も三年を上限としての期間制限ということが盛り込まれ、その対象となるということから考えると、まさに委員御指摘のように、三年を超えるような派遣契約というのは一般には想定しにくいというような状況になるのかなと思っております。
したがって、これまた委員御指摘のような形で、短期と申しますか、一定の期間を定めた派遣契約が反復されるというようなことが起こってくるということかとは思いますけれども、派遣契約が短期で反復されるという場合についても、現実には三年の期間制限ということを当てはめてまいるわけでございますが、これにつきましては、現行制度におきましても同じような問題は生じるわけでございます。
この点については、現行制度でも、直前に受け入れていました労働者派遣の終了と新たな労働者派遣開始との間の期間が三カ月を超えない場合については、継続して労働者派遣を受け入れているものとみなして取り扱って、この期間制限等についても当てはめているということがございまして、今回の改正後の期間制限のあり方についても、こうした現行制度のありようということも踏まえて、労政審において議論していただき、はっきりさせたいということで考えております。
○高橋(千)委員 現行の派遣制度の期間制限の場合に、三カ月が今いわゆるクーリング期間である、だから、それを超えない間があいたとしても、例えば間が二カ月だったとしても、それが繰り返していたら全体として継続して三年と見るんだ、そういう趣旨だったと思います。
そこで、労働契約法の改正の際に、五年以上反復雇用した際の無期転換ルールを定めました。そのときも質疑でただしたんですけれども、そのときもやはりクーリングというのはあるんですよね、有期。これは、一年契約なら半分の半年、ただし、半年契約ならその半分の三カ月というふうな形でクーリング期間を置けば、何年でも有期契約を結べることになるんじゃないか、そういうことを指摘しました。
問題は、その有期の場合の半年と、今回の派遣の場合は三カ月なわけですよね。だけれども、今回想定しているのは、派遣労働者だけれども有期労働者なわけです。そうすると、このクーリングはどうするんですか、有期に合わせるんですか。どのように考えるのか。
○坂口政府参考人 お答えいたします。
今委員の方から御指摘がございましたように、労働契約法の無期転換ルールにおいてのいわゆるクーリング期間というものにつきましては、これを認めない場合には同一の企業で再雇用を希望する労働者の方の職業選択の幅も狭められてしまうというような問題の観点から、認められることとされたということで承知しておりまして、また、そういった無期転換ルールを導入する効果と労働者の雇用機会の確保のバランスを図って、審議会での建議を踏まえた形で、原則六カ月ということで、先ほど委員御指摘のような形になっておるかと承知しております。
一方で、先ほど私の方で御紹介しました、現行制度の労働者派遣制度におけます三カ月といういわゆるクーリング期間ということについてでございますけれども、これも、常用代替等の趣旨に鑑みて、同一の業務についての二つの派遣労働との間の空白期間というものがどの程度の長さであれば継続していないと認めることが適当かということを御議論いただいた上で設定をしたというものでございます。
このように、クーリング期間の考え方は、それぞれ考え方もあって、経過もあってという形で定めておるということでございますので、一義的に労働契約法に基づくクーリング期間に合わせるということは考えておりませんで、今回の改正法案により新たに法的に義務づけることとされている期間制限に関するクーリング期間のあり方につきましては、やはり、どちらかというと従来の労働者派遣の制度におけるクーリング期間ということを踏まえながら、今後、労政審において議論を深めていただきたいということで考えております。
○高橋(千)委員 ちょっとびっくりしたんですが、そうすると、二つの期間が、有期雇用派遣労働者なのに二つの概念があるということですか。
○坂口政府参考人 これは、個人単位の期間制限も設けられるということはございますけれども、今回の期間制限は、事業所単位と個人単位の期間制限、二つの期間制限ということをあわせて全体として期間制限の制度を設計しているということもございますので、そういった全体のこの派遣制度における期間制限のあり方ということを、従来の考え方を踏まえながら私どもは考えてまいりたいということで考えております。
○高橋(千)委員 全く理解できませんね。二つの考え方が並び立つと。
どちらも、結局、上限を決めながら、クーリングを置けばずっと働かせるということが可能になる制度であるわけですから、これは非常に慎重に検討する必要があると思うんですね。
それで、だけれども、有期雇用派遣労働者ですから、何度も聞きますけれども、三年を一回延長してもう三年となったときに、いよいよ無期転換の対象となり得る場合もあると思いますけれども、これを確認します。
○岡崎政府参考人 御指摘のように、労働契約法につきましては、派遣労働者にも当然適用されます。
したがいまして、最初三年で、もう一回更新したときが三年ということであれば、これで六年を超えますので、その期間中に無期転換を申し入れれば、その六年目が終わった段階で無期契約に転換する、こういう形になります。
○高橋(千)委員 確認をしました。
ただし、実際には、政府がつくった制度で無期転換をやるのは嫌だということで、途中でいろいろ契約を切られるとか、さまざまなことがあるのかなと思っておりますが、そういう趣旨でつくったわけではないわけですから、ここはしっかりと生かしていただきたいと思っています。
ただ、さっき言った労働契約法の改正のときに、期限の決まった研究やプロジェクトなどは最大で十年まで延長できると改正されたわけですよね。派遣法の有期プロジェクト業務については、業務取扱要領により三年以内と書かれているわけです。そうすると、今回の法改正に当たっての研究会の報告書では、今言ったように、終期が明確であれば三年に限定する理由はない、この規定を変更することも検討してよいと提言を出されている。これも横並びで考えているのか。
いろいろいろいろ、節目節目とか言っているそばから、最初から五年でいいんじゃないかとか、そういう議論がされているということなんですよね。これはどう考えますか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
今の委員御質問の、期間制限との関係での有期プロジェクト業務に関しての派遣ということでございますが、この点につきましては、その後、労働政策審議会においても御議論がされて、労働政策審議会の建議の中におきましても、「有期プロジェクト業務に係る派遣については、終期が明確である限り派遣期間を制限しないことが適当である。」という形で建議がなされておるということで、私どもとしましては、この建議を尊重した取り扱いということを考えておるということでございます。
○高橋(千)委員 ということは、五年もありということですよね。
○坂口政府参考人 終期が明確である限りは、これまでの三年以内という制限は考えないということでございます。
○高橋(千)委員 結局、制限といっても、本当にいろいろな角度から穴があいているということが改めてわかったかなと思っています。
そういう中で、今回、特定有期雇用派遣労働者という名称が初めて規定されたわけであります。その趣旨、簡単にお願いします。
○坂口政府参考人 特定有期派遣の関係でございますけれども、特定有期雇用派遣労働者でございますが、これは、今回の改正法案におきまして、いわゆる雇用安定措置を設けるという規定を設けたところでございますけれども、その対象者の限定という規定の中でこの特定有期雇用派遣労働者ということを設けたということでございます。
具体的には、これは、雇用安定措置の努力義務の対象者としまして三種類の対象者を規定するということにしておりますけれども、このうち、派遣先の同一職場で一年以上仕事をする見込みがある派遣労働者につきまして、委員お尋ねのこの特定有期雇用派遣労働者ということを法律上定義したというものでございます。
○高橋(千)委員 努力義務であっても一定の雇用安定措置を設けた、それ自体は確かに一定意味があるかもしれません。
ただ、二十五年の十一月七日の労政審で、派遣業界のオブザーバーがこう言っていますね。「少なくとも派遣法には努力義務と規定されていて、禁止されていない」、つまり、皆さんが言うところの努力義務というのは、禁止じゃないんだ、法律違反ではないんだということで軽視されている、これが実態だと思うんですね。
だけれども、片や期間制限が来ましたよと言われ、片や雇用安定措置は努力義務ですよ、これは間尺に合わないわけなんです。私たちが、期間制限を厳密にやれとよく言いますよね。でも、そうすると、期間制限が来たから切られちゃうじゃないかという議論になっちゃう。それを、厳密にやって切られればいいという話をしているんじゃないんです。本来は、最初に言ったように、業務に必要なところにだけ派遣労働者を入れてきたものが、どんどんその必要な業務を膨らませてきてしまったから、それが本当に当たり前の働き方になる方がふえてきた中で起こっている矛盾なんだ、このことを本当に認めなければ、だからこそ派遣労働者の保護という名前もつけて、そこに歩み出したわけですからね。
ここを、本当に書きましたと、書いただけで、努力してくれたからいいんですというわけにはいかないんです。大臣、そこは意味わかりますか。
○渡辺委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○渡辺委員長 速記を起こしてください。
塩崎厚生労働大臣。
○塩崎国務大臣 これまで、努力義務の対象者としても、その努力義務が履行されてこないというようなことがあって、今回、それがきちっとされるようにということで特定有期雇用派遣労働者を初めて規定したということで、御指摘をいただきましたが、これがきちっと履行されるようにしていかなければならないというふうに思っております。
○高橋(千)委員 私が言いたいのは、本当に、原則を書くじゃなくて、原則に戻れということを言っているんです。直接雇用がもともと原則で、例外だったのが、例外の方が原則になっちゃった、逆転しているから今起こっている問題だと指摘をしたい。
それで、今回、前国会で修正案が出されて、それを取り込んだ形で、附則の第二条第二項に、「雇用慣行が損なわれるおそれがある」場合、要するに速やかに見直すということが書き込まれましたよね。この「雇用慣行が損なわれるおそれ」とは、具体的にどういうことを意味していますか。
○塩崎国務大臣 今、附則第二条第二項、「雇用慣行が損なわれるおそれがある」というのは具体的に何を指すんだ、こういうことでございますけれども、この御指摘のケースについては、正社員が派遣労働者に取ってかわられる常用代替が言ってみれば常態化する、そういうような状況を想定しているものだというふうに我々は解釈をしております。
○高橋(千)委員 もう少し数字的なイメージで言ってくださいますか。
○坂口政府参考人 お答えいたします。
この規定につきましては、法律の規定においても、正社員と派遣労働者の数の動向などを踏まえというような規定をしております。私どもとしましては、こういった正社員あるいは派遣労働者の数の動向というようなものについて、いろいろな統計データ、事業報告等も含めてデータを集めた上で、労働政策審議会等の意見を踏まえながら判断をしていくということを考えております。
○高橋(千)委員 これはすごく大事なことなんですよね。何にもイメージが湧かない。今いる派遣労働者が例えば百二十七万人、これが倍くらいになるという意味なのか、置きかえと言っちゃったから、もうがばっと今の正社員の半分くらいを言っているのか、大分違いますよね。
だけれども、そこをまずはっきりさせてほしいと思うんですが、一番おかしいと思うのが、要するに、派遣がふえたら、派遣が正社員に置きかえになったら制度を見直す、平たく言うとそういう意味ですよね。これは、何度も何度もふえるんですかと質問した方がいらっしゃるので、多分そういうふうな項目を書いたと思うんですけれども、日本型終身雇用が本来の雇用の形と思っているからこういう表現にしたということになるわけですよ。
そうすると、多様な働き方を認めるとか、派遣労働者のニーズがあるとか、キャリアアップするからいいんだと言ってきたことと完全に矛盾するんです。つまり、政府が言うような派遣労働者なら、本当はふえてもよいと言わなきゃならないんですよ。なのに、ふえたらやはりまずいと言っているんです。これは根本的な法律の欠陥だと思います。修正したことで全く矛盾しているんです。違いますか。
○坂口政府参考人 この点につきましては、先ほど来大臣等も答弁しておるような形で、私どもとして、それぞれの働く方のニーズに沿って多様な働き方を推進していく、そのような道をいろいろな形でサポートしていくという考え方に変わりがあるということではございません。
ただ、前国会での御議論等も踏まえながら、もともとこの派遣法につきましては、検討規定ということで、施行後三年を目途とした形での施行状況を勘案した検討を加えての、必要があると認めるときにはという形での検討規定があったわけでございますけれども、先般来の臨時国会等の御議論を踏まえて、その上で、こういった、先ほど申し上げたような形での常用代替が常態化するというような状況になれば、これは日本の雇用慣行が損なわれるということも考えられるので、これにつきましては、もともとあった検討規定にかかわらず、速やかに検討を行うということで整理をしたということでございまして、多様な働き方を推進するということとの関係でのそごはないものと考えております。
○高橋(千)委員 徹底審議か、さもなくば廃案を求めて、終わります。