国会質問

質問日:2015年 4月 24日 第189国会 厚生労働委員会

医療保険制度改悪法案

保険適用こそ拡大を
衆院厚労委 高橋議員「申し出療養」を批判

 日本共産党の高橋千鶴子議員は24日の衆院厚生労働委員会で、医療保険制度改悪法案で保険外診療を広げる「患者申し出療養制度」の創設について、安全・有効性が保証されないと追及し、必要な医療の保険適用こそ進めるべきだと求めました。
 同制度は、安全性の審査を現行6カ月から6週間に短縮。前例があれば2週間に短縮します。高橋氏が「あまりに乱暴だ」と批判すると、厚労省の唐沢剛保険局長は「問題事例は期間にこだわらずご審議いただく」と言うだけで、安全性や有効性が後退することを否定できませんでした。承認さえされていれば実施されていなくてもよいことも認めました。
 高橋氏は、難病患者らが保険適用を待ち望んでいることを強調し、現行の先進医療の保険適用が2014年の診療報酬改定の際は8件ときわめて少ない現状を指摘。「申し出療養によって保険収載(適用)が後退したり、未承認薬が一躍使われるようになることはあってはならない」とただしました。
 塩崎恭久厚労相は「保険収載につながるよう引き続き取り組む」と答弁しました。
 高橋氏は、臨床研究指針、原則からみても申し出療養が「研究といえない“実験”に成り下がってはいけない」と強調。必要な医療は国民だれもが受けられるように、保険適用の拡大へ「しっかり検討を重ねるべきだ」と求めました。
(しんぶん赤旗2015年4月25日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、朝から随分、患者申し出療養についての質問が集中をしておりますが、若干はダブるところもあるんですけれども、ほとんどダブらないので、続けて質問をさせていただきたいと思います。また、大事なことですので、ぜひお願いをしたいと思います。
 厚労省は、混合診療の全面解禁については、一つに、安全性、有効性の問題、二つに、先進的な医療が保険外にとどまり続け、医療格差が生じてしまう、こういった理由で否定をしていると思います。これは、十七日の本委員会で、我が党の堀内議員の質問に対しても塩崎大臣が明確に答弁をされたところであると思います。
 そこで、午前の阿部委員も同様の趣旨の質問をされていますけれども、医薬品は、臨床試験で有効性と安全性を確認し、国による承認審査を経て初めて医療に供されることが原則である。ですから、未承認薬を使用して行う患者申し出療養はあくまで例外である、このことを確認させてください。
○塩崎国務大臣 今般の患者申し出療養というのは、国においてその治療法の安全性、有効性をまず確認する、それから、保険収載に向けて、医療機関に実施計画の作成を求めて、国において確認をするとともに、実施状況等の報告も求めるということとしておりまして、無制限にいわゆる混合診療を解禁するものではないということを申し上げておきたいと思います。
 また、医薬品等については、保険診療において使用するに当たっては、薬事承認を得ていただくことが原則であることは議員御指摘のとおりでございまして、困難な病気と闘っている患者において、薬事承認までの間に、国内で未承認の医薬品等を安全性、有効性を確認しつつ迅速に使用したいという強い思いがあって、そういった思いを受けて今般の患者申し出療養の創設を法案に盛り込んでいるものでございます。
○高橋(千)委員 あくまで例外であるということに対して、そうだというお答えがありませんでした。
○塩崎国務大臣 今の全体の趣旨が例外という意味でございます。
○高橋(千)委員 全体の趣旨がなどと言わずに、はっきりお答えをいただければいいと思うんですね。まず確認をさせていただきました。
 そこで、資料の一枚目を見ていただきたいと思うんですが、保険外併用療養費制度について、これは平成十八年の法改正により創設されたという説明書きがございます。このときに、特定療養費制度から範囲を拡大して、保険診療との併用が認められている療養、これが二つあるというので、保険導入のための評価療養と導入を前提としない選定療養、この二類型を決めて、そのうち、右側にさまざま、先進医療云々かんぬんということで分かれていて、この時点で混合診療が実質解禁されたと理解しております。
 そこで、通告してありませんが、基本的なことなので局長にお答えをいただきたいと思います。
 まず、きょうは取り上げませんけれども、大病院への紹介状なしで受診の定額負担を求める、これは選定療養の義務化と説明をしてあります。この義務化という形での扱い方は初めてなのかなと思いますが、それを一つ確認したいということと、今回の患者申し出療養はこの囲みの中のどこのカテゴリーに入るのか、お願いします。
○唐澤政府参考人 まず最初のお尋ねの、大病院の外来の定額負担は、こちらは、選定療養のある大病院の初再診というのがございますけれども、これを義務化するという方向で考えているものでございます。
 それから、患者申し出療養でございますけれども、現在、評価療養と選定療養がございますけれども、評価療養の中の一つの類型として患者申し出療養を創設するということを考えているところでございます。
○高橋(千)委員 ということは、第三のカテゴリーみたいな説明を受けていたんですが、違うんですか。
○唐澤政府参考人 大変申しわけございません。
 保険外併用療養費制度の一つの新しいカテゴリーということで、評価療養とは別の、患者申し出療養、選定療養という、三つのカテゴリーにするということを考えているところでございます。
○高橋(千)委員 ですから、第三のカテゴリーということであります。
 なので、例外というものが非常に広がってきたということをやはり指摘しなくちゃいけないと思うんですね。ですから、今回の大病院の問題も、選定療養が義務化という形で盛り込まれたということで、派遣法じゃないんですけれども、原則の例外だったものがだんだん例外が原則になってくる、こうなってはならないということで、やはり議論していきたいなと思うわけです。
 そこで、中医協で示された「患者申出療養の枠組みについて」、これによりますと、患者は、患者申し出療養を受けたい場合、かかりつけ医と相談し、窓口機能を有する特定機能病院に申し出を行います。かかりつけ医は、「患者が有効性・安全性について理解・納得した上で申出するための支援を行う。」とあります。
 かかりつけ医といっても、大変定義が曖昧であります。その患者さんが日常よく診てもらっている、そういう医師だと思われるわけですけれども、だからといって、その方が専門医とは限らないわけですよ、もう当たり前の話で。まして、聞かれるのは、まだ保険収載されていない未知の薬の話ですよね、外国ではポピュラーかもしれませんが。そのかかりつけ医がどうやって有効性、安全性を納得させることができるんでしょうか。
○唐澤政府参考人 もちろん、先生御指摘のように、かかりつけの先生が全ての領域に精通しているわけではございませんので、まあ、御自身のお詳しいところは御説明できるかもしれません。
 私ども、かかりつけの先生にお願いをしたいと考えておりますのは、一つは、その患者さんをずっと診ていただいておりますので、その診ている患者さんの症状を踏まえて、現在の治療法ではなかなか限界があるというようなことについて、もし仮にそういう状況であれば、そういうことをきちんと相談に応じてお話をしていただくということもございます。
 それから、これまで先進医療では、実施の医療機関で患者さんの相談を受け付ける部署というようなものを実は求めておりませんでしたけれども、患者申し出療養は、患者さんからお話が出てまいりますので、臨床研究中核病院ですとか特定機能病院などに患者さんに応じる専門の部署を設置していただくということを考えております。そういう専門の部署のところにかかりつけの先生がきちんと紹介をする、こういうようなことをかかりつけの先生にお願いできないかと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 となると、あくまでも専門の部署につなぐ役割だと。
 だとすれば、責任の所在というのはどうなるのかなと思うんですよね。つまり、「有効性・安全性について理解・納得した上で」と書いているわけですから、先生の説明を聞いて私はいいと思ったのにという議論になって、どこに責任がありますかということに必ずなりますよね。それはどう整理されますか。
○唐澤政府参考人 これは内容にもよると思いますけれども、一義的には、やはり説明の責任は臨床研究中核病院なり、あるいは特定機能病院なり、がん拠点病院なりというところがきちんと説明をしていただくということだと思います。
 これはもちろん、単に説明するだけではございませんので、何度かきちんと資料なども用意をしていただいて、そしてそれを記録にとっておいていただくというようなことが考えられるのではないかというふうに思っているところでございます。
 その上で、かかりつけの先生に御相談できるかどうか、それぞれの御専門もあるのでそこまではちょっと申し上げられませんけれども、説明をきちんとしていただくという責任は、やはり実施の医療機関のところで患者さんにきちんとしていただくということが一番の基本であろうというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 ですから、手続の問題と、実際に起こり得るであろう事態に対する答えがないんですよ。だって、いきなりのところで書いちゃっているわけですからね。それはやはり先生だって困りますよ。そうでしょう。
 だって、患者さんは、とにかく必死で情報を得たい、何らかの助かるものを得たいと思っているわけですから、外国の情報をさまざまな形で得ておりますから、普通のお医者さんよりも逆にその点については非常に詳しくわかっている場合もあるわけですよね。ですが、どっちも実際には見たこともないという中での議論から始まっていくわけですから、そこは、かかりつけ医はやはりあくまでつなぐだけであるというふうに明らかにした方がいいと思いますよ。
 そこをまず確認したいのと、あわせて伺いますけれども、窓口機能のある特定機能病院に申し出を行ったときに、臨床研究中核病院に共同研究を申し入れる、そういう格好になるわけですよね。そのときに、今度は臨床研究中核病院が、患者が申し出をした、それが起点であることを書類で添付することになっております。
 では、その書類に何を書くんですか。
○唐澤政府参考人 かかりつけの先生の役割は、やはりつないでいただいて、紹介をしていただくことが一番大きな役割だというふうに考えております。これは、いろいろな医療関係団体の皆さんの方なんかにはお願いしなきゃいけないと思いますけれども、高度な医療の先進的な内容でございますので、その内容を全部説明するということはなかなか難しいということですので、やはりつないでいただくのが一番重要な役割だろう。
 それから、添付の書類でございますけれども、やはり丁寧に、きちんと御納得の上で署名をしていただいている、きちんと同意をしていただいているということが明らかになるということを確認しなければなりませんので、もともとは患者さんが出発点という制度でございますから、まず患者さんの署名入りの申請書でございますとか、それから患者さんと臨床研究中核病院などの面談の記録、そしてインフォームド・コンセントに関する書類など、こういうような書類を添付していただいてはどうかということを考えているところでございます。
○高橋(千)委員 今の答えを聞いていても全然わかりませんよ。また納得が出てきた。何に納得するんですか。何に納得して署名するんですか。
○唐澤政府参考人 これはもちろん、医学の内容ですからいろいろな専門的な内容があると思いますけれども、例えば現状の治療方法であるとか、あるいは新しい治療方法との効果の比較であるとか、あるいは予想される副作用であるとか、そういうような事柄について、もちろん、保険収載前のものでありますから、それについてもきちんとお話ししなければなりませんけれども、そうしたことについて、もちろん専門が全部わかるわけではありませんけれども、できるだけわかりやすく患者さんにお話をしていただくということが一番重要ではないかと考えております。
○高橋(千)委員 何か全然前に進まないと思うんですよね。わかりやすくと。わからないじゃないですか、それで。どうして納得する、有効性、安全性。さっきから言っていること、全く説明になっていないと思いますね。
 それで、聞きたいのはこういうことなんです。
 現行の先進医療の場合は、先進医療及び施設基準の制定等に伴う実施上の留意事項及び届け出等の取り扱いについてという基準がありまして、「万が一不幸な転帰となった場合の責任と補償の内容、治療の内容、重篤な有害事象等の可能性、費用等について、事前に患者及びその家族に説明し文書により同意を得ること。」また、「補償の有無については、先進医療の実施に伴い被験者に生じた健康被害の補償のための補償金、医療費、医療手当」、交通費とかですね、「支給がある場合には、「有」と記載する」。
 つまり、当然これは民間保険になると思いますけれども、先進医療の場合は、医療機関が申し出をしているので、医療機関の方でそういう保険に入っている場合もある、そのことをちゃんと知らせた上で、納得して、有害なことがあるかもしれないけれども、かけてみたいといってサインする場合もあるよねという話ですよ。だけれども、今回は患者が起点ですからね。そこの整合性ですよ。
○唐澤政府参考人 今先生から先進医療の詳細な御紹介をいただきましたけれども、一番大きな問題としては、やはり有害事象が発生した場合の対応ということになろうと思います。
 これは、先ほど来、治験や、今先進医療のお話がございましたけれども、きちんとあらかじめ契約を明確にしておいた上で、実施機関の方で保険に加入する等の必要な補償の措置を講じておくということが必要ではないかと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 今やられている先進医療でも、半分くらいですよね、実際に保険に入っているのは。そういう状態である。その中で今回の、まして患者申し出に踏み込むということは、非常な、担保がないという中だと思いますね。
 それで、大臣に一言、感想でいいですので、ちょっと伺いたいと思うんです。
 そういう状況なので、今、保険の世界では先進医療特約が大はやりです。ホームページを見ますと、いろいろな民間保険が、先進医療あるいは自由診療がこれから始まるということで、そこに多額なお金がかかりますのでぜひどうぞということを宣伝しております。
 例えば、アフラックにも先進医療特約があるんですね。これは、特約だけは入れない。当然、入院保険というベースなものがありまして、EVERなるものがあって、それに加入した上で先進医療特約をつけるんですね。驚く中身なんですが、月々の保険料は九十九円です。月々九十九円。それで最大二千万円まで補償なんですって。何でこんなに安いんでしょうね。
○塩崎国務大臣 通告いただいていないものですからよくわかりませんが、保険というのは、プールがあって、そのリスクのプールの中で値段は決まってくるわけでありますので、それがどういうプールなのかよくわからないので、どうしてそういう値段になっているのかはよくわかりません。
○高橋(千)委員 通告がないので、感想ということでお聞きしました。でも、すぐには想像がつかないなということでそういうお答えになったと思うんですね。もちろん、私もわかりません。だけれども、これは結局、ほとんどリスクが発生しないということなんじゃないかなということと、医療機関とか製薬会社とセットで契約料を取れば、患者さんから取る特約料が九十九円でも別に構わないのかな、ペイするのかなと。
 そういうことで保険業界がさまざま動いているということは、やはり本当に気持ちはわかる、治りたいという気持ちはわかるけれども、しかし、規制を緩和する部分と、カバーしようということで民間保険が拡大する部分だけでは、本当に大変なことになるんだよねということを重ねて議論していきたいなと思うんです。
 患者申し出療養の申請を受けてからの承認が原則六週間、余りに短か過ぎるじゃないかというのは繰り返し各委員からも指摘をされました。
 先進医療の原則は六カ月でありますね。未承認の抗がん剤、再生医療、医療機器の三分野は、臨床研究中核病院で保険診療との併用を認める最先端医療迅速評価制度というのがあります。これだって私は早過ぎると言いました。でも、三カ月ですね。
 今回は原則六週間ですから、その半分なわけですね。余りにも早過ぎないか。しかも、承認は、会議ができない場合は書類の持ち回りによる審査でもいいんだと言っている。余りに乱暴じゃないですか。
○唐澤政府参考人 六週間、早過ぎるではないかという御指摘でございます。
 もちろん、問題がある事例については、全体会議を開催して、必ずしもこの期間にかかわらずに御審議をいただくこととしておりますけれども、この六週間という御議論が行われたものの背景には、非常に重篤な状態にある患者さんという方がいらっしゃるということで、できるだけ早くこれに対応できるようにするという観点、それから、実施機関を臨床研究中核病院ということを要件にするという観点、そういう観点から六週間というものを設定しているわけでございます。
 ただし、何度も申しますように、この六週間でできない場合は、この期間に必ずしもこだわらずに、しっかりと安全性について御審査いただきたいと考えております。
○高橋(千)委員 まず、二つ言いたいんですよね。
 原則だけれども、間に合わなければ延ばすよというふうな話、それは、三カ月の最先端のときもそういう議論をしました。でも、大枠が、原則が六週間をちょっと延ばすのと、三カ月をちょっと延ばすのはやはり違いますよね。そういう意味で、急いでいるということなんですよ。これは結局、官邸が早く早くということを言っているからなわけですよね。
 重篤な状態があるというのであれば、先ほど来議論がされているように、重篤な場合があり、ほかに何の手だてもなくて、どうしてもやってみたい、そういう極めてレアケースという形で、条件を決めてやるというふうにしたらいいんじゃないかと私は思っているんです。それでも治験の分野の中で可能じゃないかなと思っているわけですけれども、そこはやはり早過ぎるということを重ねて指摘したい。
 それで、あわせて、患者申し出療養として前例のある医療は、身近な医療機関でもよいとなっております。これは、前例を取り扱った臨床研究中核病院が実施体制を個別に審査するというわけですね。
 でも、これは、昨年十一月五日の中医協で、公益委員の印南氏が、前例があるの意味というのは、既にほかの医療機関で申請して承認されていることだけでよい、つまり、実際に医療行為をやっていなくてもいいということを聞いているんですね。これに対して医師会の副会長の中川俊男氏は、前例とは、当然、実際に実施したということが前例と理解するべきだと発言している。私も当然そうだと思います。そうしたら、医療課企画官の佐々木さんは、そうじゃない、患者が起点なので、それにこだわってしまうとできなくなっちゃうということで、やっていなくてもいいということを言うんですね。
 だから、承認されただけで実施されていない場合も含まれる、これはもう何でもありになっちゃうじゃないですか。ちなみに、これを言った印南氏は元厚生省出身ですけれどもね。
○唐澤政府参考人 このときの中医協の議論は、ちょっと余り整理されていない御議論になったんじゃないかというふうに私は受けとめておるんですけれども、実際的に、前例が全くなくて次のケースを実施するということが、本当にどのぐらいそういうことが起こるんだろうかということを実は私は考えているところでございます。
 それで、起こりそうなこととして私どもが考えておりますのは、例えば、先進医療で今実施をされているもので、普及をしていなくて、患者申し出療養で出てきた。そして、患者申し出療養で出てきて、これは患者申し出療養としては一例目になりますので、臨床研究中核病院経由で出てこなければいけないんですけれども、その出てきたものを準備中の段階で次の例が出てきたというふうな、ある特殊なケースではないかというふうに思っておりまして、基本は、やはり実施例というものを踏まえて考えていくことが基本であるというふうに思っているところでございます。
○高橋(千)委員 そのときの議論は整理されていなくて、ある特殊なケースだとおっしゃいましたけれども、きのう説明を、ちゃんともう一回確認して、そうだということだったので言っているわけなんですよね。でも、特殊なケースだけれども、やはりそうだということをお認めになったと思うんですよ。
 これはやはり、どういう場合があるのかということを整理しておいた方がいいと思うんですね。これは、そうはいっても、一旦認めてしまったということになれば、承認しただけでオーケーよということになりかねない。何度も言いますが、患者申し出がやはりキーワードになってやっていくんだということになると思うんです。
 それから、それにちょっと関連するのでここで言ってしまいますけれども、阿部委員が午前中に出した資料で、先進医療の対象にならないけれども一定の安全性、有効性が確認された医療ということで、適格基準の対象外の患者というのと、先進医療として実施されていない医療ということ、二つ例を挙げていますね。
 このときの、このときのというのは十一月五日の中医協のときに中川氏が指摘をして、もう一つ追加されていますよね。つまり、先進医療をもう既にやられている、やられているんだけれども身近にそのやられている医療機関がないという方、まさに待っている人ですよ、待っている人を救うためにそれも対象にするということで、もう一つ加わっていますよね。確認をします。
○唐澤政府参考人 今御指摘いただきましたように、先進医療がなかなか普及していないという実情がございまして、先進医療の対象になっているんだけれども普及しないものにつきましても、この患者申し出療養の中で申請として出てくるのではないかというふうに、カテゴリーとして考えているところでございます。
○高橋(千)委員 確認をしました。
 そこで、資料の二枚目を見ていただきたいと思うんですが、現在、保険導入を目指す先進医療技術Aのカテゴリーですけれども、どういうふうになっているか。二十一年の六月三十日、九十の先進医療技術からスタートをして、診療報酬の改定のたびに保険導入をどうするかという議論がされるわけですよね。二十二年四月には八、二十四年には二十三と少し伸びて、二十六年改定では八。毎回削除がある。現在、六十の先進医療技術が進行しております。
 実績報告が下にありますけれども、四百六十九の施設で実施をされ、患者数は二万二千七百二十六人。二百三十二億円、これがかかった医療費ですけれども、自己負担分は七二・六%、百六十八億六千万円。ですから、さっき、医療費はどうなるのというときに、こういうのが数字としては出ているのかなと思っております。
 それで、資料はこれ以上配っておりませんけれども、先進医療会議に、一つ一つの医療技術についての内訳が書いてありますよね。やはり、一つ一つ見ていくと、実施機関が一つしかないとか二つしかないとか、極めて少ない現状であります。
 実際に、その対象、本当はその先進医療を受けることができるというか、同じ疾病であるんだけれども、そこにたどり着かない患者というのは一体どの程度だと思われますか。
○唐澤政府参考人 なかなか人数を申し上げるのは難しいんですけれども、現実問題として、先進医療で、今先生のお配りいただきました資料のように、なかなか実施機関数がふえていかないという問題がございます。
 それで、この先進医療の中にはもちろんいろいろな技術や医薬品が並んでおりますけれども、そういうものがなかなか普及をしていきませんので、現実的には、例えばこれをお使いになりたいという方で地方在住の方の中には、なかなか御利用できない方が大半ではないかというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 ここら辺も、一回、どのくらいいるのかというのを調べていただくことができますでしょうか。
○唐澤政府参考人 患者申し出療養ということで、患者さんの御希望ということが今回の制度でベースでございますので、どういう調査方法がいいかはちょっとまた検討させていただきますけれども、課題として考えさせていただきたいと思います。
○高橋(千)委員 次に、資料の三枚目ですけれども、きょうも少し紹介されておりましたけれども、いわゆるドラッグラグ解消のための未承認薬、適応外薬解消に向けての検討会議で、学会や患者団体等から要望を公募して、欧米の六カ国いずれかの国で承認されていること、そういう外国で一定のエビデンスがあるというものに対して、当然、さっきお話ししたように、患者さんや学会などは研究をしているわけですから、ぜひ日本でも開発してほしいという要望を募っているわけですよね。
 その結果とその後の取り組み状況、それから、問題は、この中から結局、では患者申し出療養をお願いしますというふうになっていくのかしらということ、二つお伺いします。
○唐澤政府参考人 まず、ドラッグラグ解消のための未承認薬、適応外の解消の会議でございますけれども、これまで三回に分けまして開発要望の募集をしております。
 最初は、平成二十一年に公募をいたしました要望が三百七十四件、それから次が、平成二十三年に公募をいたしまして、これは第二回でございますが、二百九十件の要望がございました。第三回は、平成二十五年から随時募集という形で行っておりますが、これまで八十件という要望が寄せられているところでございます。
 この寄せられた要望のうち、平成二十六年九月末までに、検討会議において医療上の必要性が高いと判断をされ、企業への開発要請あるいは開発企業の公募、こういうものがなされたものは二百八十八件というふうになっておりまして、この二百八十八件のうち合計百八十四件が承認に至っているという状況になっているところでございます。
 これは、未承認薬、適応外の対象の薬剤、医薬品というものは、比較的、医療上の必要性も、それから要望も当然でございますが強いものでございますので、患者申し出療養で御使用になりたいという御希望がある可能性が高いというふうに思っておりますし、また、患者申し出療養の中でも非常に御要望の強いものについては、逆にこちらの会議の方に要望として寄せられるというようなこともあるのではないかと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 そうすると、未承認薬の、何とか早くドラッグラグを解消しようという努力をしてきた、その中でやはり難しいというところが、さっきも議論があったんですけれども、また申し出療養に手を挙げる、こういうことに当然なってくるだろうということを今お答えになったと思うんです。
 それで、今私が指摘をした二つの流れがあるわけですけれども、まず先進医療についても、極めて細い流れです、だけれども保険収載を確実に目指しておりますので、わずかですが広がってはきているわけですよね。
 これは私はいつも指摘しているんですけれども、脳脊髄液減少症の患者さんたちが、ブラッドパッチの治療が先進医療に載っかった、これは言ってみれば、七割は自己負担なんだけれども、それでも三割の部分は保険がきく部分があるからとすごく期待して、もう少しで自分も使えるんじゃないか、あるいは保険に結びつくんじゃないかと期待している。
 だけれども、なかなかそこまでたどり着かないです。なぜかというと、症例数が不足している、子供さんの診断なんかは全く集まってこない。医療機関が不足をしているということや、生活保護の方たちは先進医療のそもそも権利がないですので、そういうことで、事情がある人たちが先進医療からはじかれているわけなんですよ。
 そういう中で、細々とだけれども確実に目指してきた流れがやはり後退することがあってはならないと思うんです。
 それから、今言ったように、未承認薬だけれどもきちんとそれをルートに乗せていく、保険に結びつけようということでやってきたものが、もう最初からそれは難しいやと外れて、最初から手を挙げる、そういうことになっては困る。やはり、今ある仕組みを充実させて、確実に保険に結びつけていくことを優先すべきではありませんか。
○塩崎国務大臣 現行の先進医療については、医療機関に対しまして、将来的な薬事承認に向けたロードマップの作成を求めているわけでございまして、保険収載に必要なデータやエビデンスの集積に資するように努めているわけでございます。保険収載につながるよう、しっかり引き続いて取り組んでまいらなければなりませんので、今のような、なかなかたどり着かないというお話を頂戴しましたが、引き続き、これは保険収載につながるように取り組まなければならないと思います。
 その上で、今回の患者申し出療養は、先ほど来少しお話が出ていましたけれども、先進医療を地方の身近な医療機関で実施する、あるいは、先進医療の適格基準対象外の患者に対する治療、それから、先進医療ではない国内未承認の医薬品等の使用についての申し出が行われることが想定をされるわけでありまして、このような申し出に対応できる仕組みを創設することによって、困難な病気と闘う患者の思いにもしっかり応えてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 もう一度重ねて伺いたいと思うんですが、だって大臣、もちろん、今の答弁、否定されなかったと思うんですよね、保険収載に向けて頑張っていくと。だけれども、それを審議するための専門医ですとか、とり合いになっちゃうわけですよ。それで、さっき言ったように、忙しくて書類でもいい、そういうことになっちゃったら、やはり正規のルートよりも申し出の方が楽だよねということになってはならないということをやはり重ねて言わないといけないと思うんです。
 がん患者や難病患者、あるいは難病にさえなれない希少疾患の患者さんらが、欧米の医療、医薬品情報などを本当によく勉強されていて、日本でも使いたいと要望されています。だけれども、そういうときに、有効性、安全性を納得の上でと言うけれども、実施していない医療機関と、ネットで懸命に調べてくる患者と、同じテーブルに着いて議論をしている状態なわけですよ。そこをどう安全にやっていくかということが問われると思うんです。
 臨床研究指針、原則というものがあるはずです。午前に阿部委員もヘルシンキ宣言について触れておりましたけれども、一九四七年のニュルンベルク綱領、六四年のヘルシンキ宣言、重ねてそういうことが確認をされてきた。第二次世界大戦中に強制収容所の囚人に生物医学実験を実施した医師や科学者らを裁くための規範として、このニュルンベルク綱領が起草をされたわけですよね。
 米国の生物医学及び行動学研究の対象者保護のための国家委員会、ベルモント・レポート、これは基本倫理原則として三点、人格の尊重、恩恵、正義をうたっています。その前提として、診療と研究の境界、それは、実験的であったとしてもそれが自動的に研究の範疇に入ってはいけない。つまり、本当に、ちゃんとした原則を守って、研究であって実験に成り下がってはならないんだよということを重ねて指摘をしているんだと思うんです。
 そういう中で、この間ちょっと議論してきますと、臨床研究中核病院は、そういう高い倫理性を備えて、しかも未知の分野にも挑戦できるような資格を持った病院なんだということをおっしゃるんですよ。だけれども、医療法に規定されて、法改正をしたのは今月の四月一日です。そして、それに基づいて新たな基準をつくっている。だから、まだ一つも指定されていないんですよ。十五あると言っているけれども、まだ本当の要件は備えていないんです。しかも、この大事なときに数々、名の知れた大学病院の信頼を失墜する事件が続いている。
 今度の患者申し出療養が、ひょっとしたら、政府が鳴り物入りで始めた臨床研究中核病院そのものに傷をつけるのではないか、そういう指摘をしている人さえもいるくらいなんですね。本当にそういう自覚があるんでしょうか。
○二川政府参考人 臨床研究中核病院についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、医療法で臨床研究中核病院が指定をされまして、臨床研究につきまして特に力を入れていくといった病院を日本の中で指定していこうということでございます。
 要件といたしましては、体制がとれているかということとあわせて、臨床研究の実績があるかどうか、何件あるか、論文数がどれだけあるか、そういった要件をきちっと精査いたしまして承認をしていくということでございます。これにつきましては、書面審査に加えまして実地調査もした上で、審議会にお諮りをして承認をする、こういった手続を踏むものでございます。
 この四月に施行されたところでございまして、申請の受け付けをしているところでございます。今後、指定をしていくというところでございまして、しっかりしたところを指定していくといった基準になっておるかと思っております。
○高橋(千)委員 決して拙速であってはならないと重ねて指摘をしたいと思います。
 大臣に一言、もう一回確認をさせていただきたいんですが、薬害の教訓からいっても、過剰宣伝や誘導的な勧誘などがあってはならない、ここを徹底して約束をしていただきたい。
 それから、やはり自由診療であるため、適正価格というものがないと聞いたんですね。だから、どんなにお金を弾んでもという患者心理はあるかもしれません。でも、それだったらもう本当に言い値の世界になって、そういうのに応えられる人しか結局は医療に結びつかないんですよ。そうすると余りにもレアケースになって、保険収載を目指す、それは口だけになっちゃう。絶対、保険までたどり着きませんよ。さっき言ったように、症例が積み上がらないとだめなんですから。
 その点で、やはり一定の基準を設けるべきだと思いますが、いかがですか。
○塩崎国務大臣 今、誘導とか過剰宣伝、それから価格の問題について御指摘をいただきました。
 もともと、この患者申し出療養は、患者が本当に治療内容などを理解して納得した上で申し出を行わなければならないのであって、かかりつけ医あるいは主治医などが患者からの相談を受けて、それに支援をして成り立つということが大事だというふうに私は思っていますし、そのように説明をしてまいりました。
 国への申請をするに当たるときに、患者の申し出によることを明らかにするということが、先ほど、申請書類に何を書くんだという話がございましたけれども、御本人が申請をするわけでありますから、当然のことながら、患者さんの署名入りの申請書であり、そしてまた、患者と臨床研究中核病院の面談記録とかインフォームド・コンセントの書類とか、そういった適正に申し出てきたということがわかるような書類もしっかりと添付をするということでなければならない。そういうことによって、誘導的な勧誘とかあるいは過剰宣伝も防ぐようにしなきゃいけません。
 また、実施計画自体をつくるのは臨床研究中核病院でありますから、ここがやはりしっかりしていなきゃいけないということも同時にあるわけで、さらに、会議体が、患者申し出療養に関する会議がございますから、そこでもやはり、根拠のないもの、あるいは保険収載につながりそうもないようなものを出してきたら、それはだめだということになるというふうに思います。
 それと、適正価格でございますけれども、これについても、保険外の部分の医療費について、患者と医療機関の合意によって決定されることになると思いますが、問題は、現行の先進医療と同様に、社会的に見て妥当、適切な範囲の額であるということが必要であって、これを外れるのはやはり許されないというふうに思います。そういうことになれば、患者申し出療養の申請の際には、保険外部分の医療費額について必ず提出を求めるということになるということであります。
 今後、今御指摘いただいたようなこと、先ほど来からも議論が出ておりましたけれども、そういうようなことを防止する方策も含めて、しっかりと議論をさらに続けてまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 最後の、適正価格については確認をさせていただきます。
 その他の部分については、さっき指摘をしたように、今あるルートをしっかりと検証を重ねていくということが先じゃないかということをやはり言わなきゃいけないですよね。十五、十五と言っているけれども、さっき局長が認めたように、まだ受け皿となれる臨床研究中核病院は誕生していないんだということをちゃんと言っておきたいと思いますので、そこは重ねて指摘をいたします。
 それで、時間があと残り少なくなってしまったので、一問だけ医政局に伺いたいと思うんです。
 実は、この間の質問の中で、地域医療構想と医療費適正化計画をリンクさせる問題を質問しました。そして、それは、地域医療構想の策定のためのガイドラインが三月に示されたということ、それから、第一回の病床機能報告制度、これは毎年やるわけですけれども、今集計中であるという答弁があったと思うんです。
 その中の一枚の資料をつけておいたんですが、4のところを見ていただきたいんです。「地域の実情に応じた慢性期機能及び在宅医療等の需要推計の考え方」ということで、囲みのところを読みますけれども、要するに、慢性期機能の医療需要については、医療機能の分化、連携によって、今入院している方たちも一定数は在宅に行くんだと。
 それで、その星印の在宅というのは、居宅、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム云々ということで、介護施設が対応可能な受け皿となることを想定しているということで、何度も、介護報酬が引き下がって介護施設が立ち行かなくなるという議論がされているにもかかわらず、これが受け皿になるということを想定しているということが一つ。
 これが医療介護総合法の、まさに医療から介護へ、介護から地域と自宅へという流れがしっかりここに書かれているじゃないかということを指摘したい。
 そのうち、どういう目標を持つかということで、これは下に書いてあるんですが、パターンのAまたはBを選びなさいと書いているんですね。
 これは要するに、医療圏をつくるんですけれども、全国最小値、どこかというと当然長野ですね、これは後ろにつけておきましたけれども、長野は今、受療率が一二二ですよ。そこを目指せということで、最大のところもぐっと矢印を引っ張っていて、そういう目標をつくれということを言っている。あるいは、圏域ごとに、一遍にはいかないから、中央値、めくっていただくと中央値二一三とあります、まずはそこを目指せというふうなことで、結局は、数値目標を持つというのはこういうことじゃないですか。
 長野を目指せと号令をかけてぐっと受療率を絞っていく、それで、適正化、このくらいお金が浮きますよという計画を持つということなんだ、そういうことですよね。
○二川政府参考人 地域医療構想につきましては、各医療機能ごとに需要を推計し、その需要に応じた医療提供体制を各地域において講じていくということでございます。
 医療機能といたしましては、高度急性期、それから急性期、回復期、慢性期とございます。
 最初の三つの機能につきましては、医療資源投入量というものをはかって、どのぐらいがその基準になるかという基準点、ガイドラインでお示しをしたところでございます。
 一方、慢性期といった機能につきましては、医療資源投入量を厳密にはかっていくことが現在のところ困難でございますので、一定の方につきまして、在宅医療等で対応が可能な方もいらっしゃるであろう、こういうことでございまして、慢性期機能の病床数は、委員御指摘のとおり、地域差が相当あるわけでございます。そういった中には、在宅あるいは介護施設等で対応できる患者さんが一定程度いらっしゃるであろう、こういったことの考え方が成り立つといった考え方に立ちまして、こういった目標を示させていただいているところでございます。
○高橋(千)委員 いろいろ言ったけれども、否定をしなかったと思います。
 結局、今、介護が立ち行かなくなると言っているけれども、介護あるいは居宅、最後は自宅で何とかせいという話が全体のラインであって、長野を目指せと、受療率の成績表がもう出ておりますから、これを、数値で目標を持てと号令を今かけているわけです。
 結局、おとといも言いましたけれども、昨年の経済財政諮問会議、産業競争力会議で、都道府県の権限強化、強制的手法を強化してこの適正化を進めていけ、要するにベッドを減らして地域医療構想の中で達成していけという号令がかかっている中で、これはかなり厳しいことが想定されますよね。
 この続きをどうしてもやらなければならない、到底承服できないということを指摘して、終わりたいと思います。

 

――資料――

【資料1】保険外併用療養費制度について

【資料2】先進医療Aの状況、先進医療の実績報告について

【資料3】検討会議における検討の進め方

【資料4】地域の実情に応じた慢性期機能及び在宅医療等の需要推計の考え方

【資料5】療養病床の都道府県別の性・年齢階級調整入院受療率(間接法)

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