医療保険改悪法案審議入り
衆院本会議 高橋議員「国の責任を放棄」と批判
医療保険制度改悪法案が14日の衆院本会議で審議入りし、日本共産党の高橋千鶴子議員は、「社会保障を国民の『自助』や『共助』にわい小化し、個人と家族に責任を課すもので、憲法25条が定める国の責任を放棄するものだ」と批判しました。
法案は、国民健康保険(国保)の財政運営を市町村から都道府県に移す計画です。高橋氏は、「国保は3500億円を超える一般会計からの繰り入れで維持されている。財政基盤の強化をいうなら国庫負担を元に戻し、財政支援を拡充することこそ求められる」と強調。自治体に広がる乳幼児医療助成を支援すべきであり、助成実施の自治体に対する国庫負担減額のペナルティーはやめるべきだとのべました。
都道府県が市町村ごとに標準保険料率を示すことについて、「一般会計繰り入れなどの努力を否定し、保険料値上げにつながるものであってはならない」と指摘。塩崎氏は「保険料率は市町村がそれぞれ定める」と認めた上で、「(自治体からの)一般会計の繰り入れは相当程度低下する」とのべ、保険料値上げを招く危険が明らかになりました。
高橋氏は、入院ベッド削減の「地域医療構想」や、医療費目標を定める「医療費適正化計画」と併せて、医療費抑制の責任を都道府県に負わせるものだと批判しました。
保険外診療を増やす「患者申し出療養」の創設について高橋氏は「安全性の不確かな医療が出回り、新たな治療や薬が保険外に留め置かれる危険がある」と指摘。後期高齢者医療の保険料の特例軽減の廃止、入院食費の値上げなど負担増についても「医療にアクセスできない人を増やしかねない」と中止を求めました。
(しんぶん赤旗2015年4月15日付より)
――議事録――
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する質問を行います。(拍手)
二〇一二年、民主党政権時代に、自公民三党合意によって、社会保障と税の一体改革法が成立しました。翌年にプログラム法、昨年は医療介護総合法が成立しましたが、本法案は、これら一連の法律と一体のものです。
我が党は、こうした改革は、社会保障を国民の自助や共助に矮小化し、個人と家族の責任に課すもので、憲法二十五条に規定された国の責任を放棄するものであると厳しく批判してきました。
一九六一年、全ての市町村で国民健康保険事業が実施され、国民皆保険制度が確立しました。市町村は、地域住民の医療を守るため、努力を払って国保制度を築き上げてきたのです。
しかし、歴代の政権による相次ぐ国庫補助の引き下げによって、国保財政は極めて厳しい状態が続いてきました。
三百六十万を超える保険料滞納世帯、そのうち、短期証や資格書の交付は百四十万世帯を超えています。全日本民医連が加盟医療機関の患者を調べただけでも三十二人もの方が、保険証がないために治療がおくれ、亡くなっています。高過ぎて払えない国保料がこのような事態を招いているとは思いませんか。
高過ぎる保険料は、国民が必要な医療を受ける最大の障害となっています。保険料引き下げを求める運動が各地で取り組まれ、今回、財政支援の拡充三千四百億円が措置されたのも、こうした運動を一定反映してのものです。
しかし、なお、国保財政は三千五百億円を超える一般会計からの繰り入れで維持されているのが現状であり、国保の財政基盤の強化を言うなら、国庫負担をもとに戻し、さらなる財政支援の拡充こそ求められるのではありませんか。
地方自治体が住民の健康を守る事業として取り組んできたものに乳幼児医療費助成制度があります。
まず、この十年間でどれだけの県と市町村が取り組むようになったのか、具体的にお答えください。また、こうした自治体独自の取り組みをどう受けとめていますか。
ことし二月の国と地方の協議の場でも、検討を進めるべき課題として挙げられたのが、乳幼児医療費無料化など地方単独事業に係る国庫負担の調整措置の見直しがあります。住民に喜ばれる子育て支援策として拡充を進めてきた地方の努力に対し、減額という形でのいわゆるペナルティーはきっぱりやめるべきです。答弁を求めます。
今回の法案の最大の特徴は、国保の財政運営を市町村から都道府県に移管することにあります。
都道府県は、年度ごとに市町村から国民健康保険事業費納付金を徴収し、市町村に対し国民健康保険給付費交付金を交付することになります。都道府県が、給付費等の見込みを立て、市町村ごとに納付金の額を決定し、さらに、市町村の保険料の決定の際目安となる標準保険料率を示すとされています。
今、多くの市町村は、一般会計からの繰り入れを行い、保険料率の上昇を防ぐための努力をしています。標準保険料率の設定が、こうした努力を否定し、保険料の値上げにつながるものであってはなりません。見解を伺います。
また、あくまで市町村が決める保険料率に都道府県が口を挟むものではないと考えますが、見解を伺います。
本法案には、医療費適正化計画の見直しが挙げられました。
都道府県は、医療介護総合法に規定された地域医療構想と整合性が図られる医療費適正化計画を定め、医療に要する費用の目標を定めなければなりません。もともと医師不足で病棟閉鎖状態など医療資源が不足している現状が追認され、医療の過疎化や医師不足を固定化することになりませんか。
全国知事会は、現行の計画では医療費の見通しとしているものを目標とすることに強い懸念を表明しています。
結局、医療費抑制策を都道府県の責任に負わせるものではないのか。お答えください。
次に、患者申し出療養の創設について質問します。
この制度は、医療をビジネスチャンスにしようとする安倍内閣の成長戦略と結びついて、規制改革会議から持ち出された議論です。申し出療養に期待する患者もいる反面、安全性の不確かな医療が出回ることや、事故の責任を患者に負わせる危険性があることも指摘しなければなりません。
難病団体の代表は、こうした制度の創設が、かえって新たな治療や薬が保険外にとめ置かれ、難病法からも対象外となることに懸念を表明しています。
患者申し出療養が想定しているのはどのような医療か、また、どのくらいの疾患数になるのか、お答えください。
逆に、保険診療適用への道が遠のく、あるいは閉ざされることがあってはならないと思いますが、見解を伺います。
健康保険法の改正について質問いたします。
中小の事業所の医療保険である協会けんぽに対する国庫補助は、当分の間一六・四%とされました。しかし、財務省からの圧力もあって、本則規定は、一三%から二〇%の範囲内で政令で定めると、引き下げも想定された規定となっています。
報酬水準が約三百七十万円で推移しているにもかかわらず、協会けんぽの平均保険料率は、リーマン・ショック後、八・二%から一〇%に引き上げられ、中小企業の従業員に重い負担となっています。
むしろ、上限の二〇%の国庫負担にすべきではありませんか。お答えください。
今回の法案がさらなる国民の負担増につながる点も重大です。
紹介状なしで大病院を受診する場合などの定額負担の導入、入院時食事療養費の一食二百六十円から四百六十円への引き上げ、後期高齢者医療制度の保険料の特例軽減の廃止など、重い負担のために医療にアクセスできない人をふやしかねず、やめるべきであります。
最後に、一体改革という名での消費税増税が社会保障充実のためでは全くないことは明らかです。国民皆保険制度の原点に立ち返って、一連の医療制度改革を抜本的に見直すことを求め、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 高橋千鶴子議員から、八問のお尋ねを頂戴いたしました。
まず、国保の保険料についてのお尋ねがございました。
国保は、全ての被保険者がひとしく保険給付を受ける可能性があり、被保険者全体の相互扶助で支えられるものであることから、世帯の所得等によって応分の保険料を負担していただく必要がございます。
ただし、国保には低所得者が多く加入する等、構造的な問題を抱えていることから、これまでも低所得者の保険料軽減措置等を講じてきました。
また、保険料の滞納者に対しては、納付相談を行い、分割納付などのきめ細かな対応を行うことなどにより、個々の滞納者の実情に応じた対応を行っています。
今回の改革においても、毎年三千四百億円の追加的な財政支援を行うことにより、国保の財政基盤の強化を図るとともに、保険料の伸びの抑制などの負担軽減につなげ、保険料を納めやすい環境を整えてまいります。
国保に対する財政支援についてのお尋ねがございました。
国保は、さまざまな構造的な課題を抱え、厳しい財政状況にあることから、保険給付費等に対する五〇%の財政支援を維持するとともに、低所得者が多い自治体に対する財政支援や高額な医療費への財政支援を行うなど、これまでも累次の財政支援策を講じてきました。
今回の改革においては、さらに毎年三千四百億円の追加的な財政支援を行うことにより、国保の財政基盤の強化を図り、国民皆保険を支える国保を安定化させたいと考えております。
地方自治体が実施している乳幼児医療費助成についてのお尋ねがございました。
乳幼児等の医療費の助成を実施している都道府県と市町村の数の推移について、助成対象別に平成十七年から平成二十六年までの十年間で比較をしますと、通院の場合、就学前までとする都道府県が四十六から三十三、それ以上も対象とする都道府県が一から十四、十五歳までとする市町村が、二千四百十五、約九九・九%から千五百三十八、約八八・三%、それ以上も対象とする市町村が、三、約〇・一%から二百四、約一一・七%。
入院の場合、就学前とする都道府県が四十五から二十三、それ以上も対象とする都道府県が二から二十四、十五歳末までとする市町村が、二千四百十五、約九九・九%から千五百二十四、約八七・五%、それ以上も対象とする市町村が、三、約〇・一%から二百十八、約一二・五%となっております。
この十年間の各自治体における乳幼児等の医療費助成の取り組みは助成対象が拡大する傾向となっておりますが、各自治体の財政状況等を踏まえ、各自治体において適切に判断されているものと受けとめております。
国保の国庫負担の減額調整についてのお尋ねがありました。
地方単独事業により窓口負担が軽減される場合、一般的に医療費が増加するため、限られた財源の公平な配分の観点から、増加した医療費分の国庫負担を減額調整しております。
この国庫負担の調整措置の見直しについては、地方団体からの要望もあり、現行制度の趣旨や国保財政に与える影響等を考慮しながら、引き続き議論していく必要があるものと認識をしております。
国保の標準保険料率についてのお尋ねがございました。
今回の改革では、将来的な保険料負担の平準化を進める観点から、都道府県は市町村ごとの標準保険料率を示すとともに、各市町村が都道府県の示す標準保険料率を参考にそれぞれの保険料率を定めることとしております。
また、毎年三千四百億円の追加公費を投入するなどにより、一般会計からの繰り入れの必要性は相当程度解消するものと考えていますが、各市町村においては、今後とも、収納率の向上や医療費適正化の取り組みを行うとともに、保険料の適切な設定に取り組んでいただきたいと考えております。
患者申し出療養についてのお尋ねがありました。
患者申し出療養の具体的な医療の内容や疾患数について現時点でお答えすることは困難ですが、例えば、国内未承認の医薬品等が対象となると考えています。
また、保険収載に向けた実施計画の作成等を医療機関に求め、安全性、有効性等の確認を経た上で、将来的な保険適用につなげてまいります。
協会けんぽの国庫補助率についてのお尋ねがありました。
協会けんぽの国庫補助率は、平成二十六年度までの期限を区切って一六・四%としていましたが、今回、期限の定めをなくして補助率の安定化を図ることとしております。
協会けんぽの財政状況は、なお厳しい状況であるものの、リーマン・ショック直後に比べると改善してきており、現時点において国庫補助率を二〇%に引き上げるような状況にはないと認識をしております。(拍手)
○副議長(川端達夫君) 厚生労働大臣から、答弁を補足したいとの申し出があります。これを許します。厚生労働大臣塩崎恭久君。
〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 六番目の問いにお答えをすることができませんで、大変失礼をいたしました。補足をさせていただきたいと思います。
医療費適正化計画についてのお尋ねでございました。
今回の改正により都道府県が設定する医療費の目標は、今年度以降都道府県が策定をする地域医療構想と整合性を図ったものとすることとしております。
地域医療構想は、二〇二五年時点における各地域のあるべき医療提供体制の実現に向けて策定されるものですので、医療費の目標によって医療の過疎化や医師不足を固定化するとの御指摘は当たらないと考えております。
また、医療費の適正化については、国、都道府県、保険者が、それぞれの役割を果たしながら推進していくものと考えております。
都道府県には、地域医療構想に基づく医療提供体制の整備や、予防、健康づくりの取り組みを保険者に促すなどの役割を担っていただきますが、国においては、都道府県や保険者の取り組みに係るガイドラインを提示するなどの責務を果たすこととしています。
大変失礼いたしました。(拍手)
――動画――