衆院委公聴会 労働法制改悪に批判
全労連、連合代表の公述人/高橋議員質問
衆院予算委員会は9日、2015年度予算案に関する中央公聴会を行い、労働法制改悪への批判や貧困と格差を是正する予算への転換を求める意見が公述人から相次ぎました。
全労連の小田川義和議長は、「残業代ゼロ」制度に対して「総人件費抑制の方策として使う企業が増えることを強く懸念する」と指摘。派遣法改悪について「臨時的一時的な業務に限定する担保として、派遣先企業が派遣を使い続けることへの規制がない。『生涯ハケン』、常用代替がまん延していく危険性がある」と強調しました。
連合の高橋睦子副事務局長は、「労働者保護ルールが脅かされている。臨時的一時的業務に限ることと、均等待遇という、派遣のルールが確保されていない。労働時間制度(残業代ゼロ法案)は、過重労働や過労死の増加を招くことになる」と批判しました。
白梅学園大学の無藤隆教授は、子ども・子育て新制度に関して「質の高い保育者が、質の高い設備のなかでしっかり教育することが重要だ」として、保育士への経済的処遇の引き上げと研修機会の確保が必要だと公述しました。
質問に立った、日本共産党の高橋千鶴子議員は、安倍政権が狙う「残業代ゼロ」制度や派遣法改悪が、賃金や非正規雇用の広がりにもたらす影響を指摘しました。
子ども・子育て新制度そのものには反対だと表明しつつ、新制度の予算5100億円や、職員の配置基準は十分なのか質問。無藤氏は、予算について「十分ではない。国の財政を頭に置きながらも(内閣府の)子ども・子育て会議で1兆1000億円を提案してきた」と表明。配置基準についても、「国際的にみると、日本の基準は、保育士に対する子どもの数がいちじるしく多い。配置基準の改善に踏み込む必要がある」と指摘しました。
(しんぶん赤旗2015年3月10日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、四人の公述人の皆さん、大変お忙しい中、本委員会に出席いただきまして、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。
思いのほか時間が短いなと思って聞いておりましたので、簡潔に質問して、簡潔に受けていただければと思います。
最初に、無藤公述人に伺いたいと思うんですけれども、子ども・子育て支援の来年度予算、五千百億円が画期的だというお話でありました。非常に遠慮がちではないかと思っております。
そもそも、一兆一千億円が目標であったのではないか。特に質の充実の部分、量と質、両方叫ばれてきました。そこの部分では、三千億ないし四千億について、まだ財源も明らかにされていない中でスタートをして、今こういう事態になっております。
そうした点では、まだまだ不十分な点があるのではないかと思いますし、多様な保育という中で、私たちは、質の担保というときに、単に、おっしゃいました、お給料を上げていくというだけではなくて、配置基準、小規模であってもきちんと人が配置される、そこも担保されることがやはり絶対大事ではないかと思っておりますので、それも含めて御意見をいただければと思います。
○無藤公述人 おっしゃることは、全くそのとおりだと思います。
量的な拡充に加えて質を上げていくために、では五千億で十分かといえば、十分ではないわけですね。一兆一千億近い額を子ども・子育て会議では提案してあります。それは一〇〇%すばらしいというわけでは決してなくて、やはり国の財政の中でできる限界というのを頭に置きながらも提案してきたわけですので、そういう意味では、ぜひ一兆円超というところを目指していただきたいというふうにお願いするわけです。
その中でできることを幾つか既に申し上げましたけれども、当然ながら、その中でどうやって保育の質を担保するか、確実に最低限の質を確保し、さらにその質を上げていくための仕組みを組み込むか、これが重要だと思います。
それは、幼稚園、保育園、認定こども園、あるいはそれ以外の保育の事業があるわけですけれども、どういったものであっても確実にその質を保証できる仕組みにしていただきたい。したがって、それに対する行政的な監査等もしっかりと行っていただきたいと思います。
また、配置基準というのは、結局、例えば、一人の保育士さんが何人のお子さんの面倒を見るかといったことや、特に保育所の場合には夕方等長い時間ですので、そこで保育士が少なくなり過ぎても困りますので、そういう意味では配置基準の改善が必要です。
私の話で国際標準と申し上げましたけれども、国際的に見ると、日本の基準というのは、大人、つまり幼稚園教諭や保育士に対する子供の数が著しく多いということです。それでもしっかりやれているという意味では、日本の保育者の皆さんはすぐれているんですが、やはり限度があるのではないか。
これから質を上げるためには、配置基準の改善に踏み込む必要がある。これも、来年度若干踏み込んでいただけるんですけれども、十分とは私は考えてはおりません。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
党としては新制度そのものには反対をしておりますし、直接契約制度ですとか、公的保育の後退という点でさまざまな意見があります。でも、その中で、質的拡充ということがこれほど叫ばれたこともなかったと思っておりますので、やはりそこを諦めずに、きちんと物を申していくということが必要だと思っておりましたので、ぜひこれからもお願いをしたいと思っております。
続きまして、小田川公述人に伺いたいと思うんですけれども、今国会でも格差が大きな争点になっております。私は、やはり格差が拡大している、それを本当に是正するための鍵となるのが賃金であり非正規雇用の是正、これが非常に重要ではないか。先ほどの陳述の中でも強調されたのではないかと思っております。
そこで、今話題となっている残業代ゼロ制度についてですけれども、これは実質賃下げ策になるのではないか。時間ではなく成果で評価される働き方だと盛んに強調されます。しかし一方、成果主義賃金制度や裁量労働制という制度は既にあるわけで、また、成果を求められるがゆえに過労死を生むような長時間労働になっている、そういう現場の実態があると思うんですね。
そのことをよく御存じの小田川公述人から、ぜひ御意見を伺いたいと思います。
○小田川公述人 労働時間管理をしないということになりますと、結果的に、所定内とか所定外とかという概念がなくなってくるわけでして、言えば、割り増し賃金である所定外賃金を払う必要性がなくなっていく、その義務を負わなくなっていくということだと思います、使用者にとっては。
ということになりますと、実質賃下げということよりも、全体として総人件費そのものを抑制する方向に向かいやすくなっていくと思いますし、そのための方策として使う企業がふえていくことを強く懸念しております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
まさに総人件費抑制のツールになるのではないかと思っております。また、当然、指摘された過労死を生み出す危険をはらんでいるかと思っております。
もう一点、派遣法についてなんですけれども、政府はよく、生涯派遣と言われるのはレッテル張りだというふうに言うんですね。しかし、やはり、今回の法案は、人をかえれば、あるいは部署をかえれば、ずっと派遣でいられる。これはもう生涯派遣そのものじゃないか、私たちはこのように思っております。
今回、前国会で廃案になったにもかかわらず、改めて派遣法が提出される。その際に、前回公明党さんが提出された修正案を法案の中に盛り込むと言っているわけですね。
私は、これは非常に矛盾にならないかと思うんです。つまり、原則に派遣は臨時的、一時的なものだというふうに書くんだけれども、それを担保する仕組みが全然ないじゃないか。あるいは、派遣がふえた場合、何らかの不都合があった場合、見直しをする、こう言っているわけですけれども、そもそも政府がニーズがあるんだとか言ってきたこととも矛盾をするのではないか、そもそも派遣法の欠点をみずから認めたことになるのではないか、このように思うんですけれども、小田川公述人の御意見を伺いたい。
○小田川公述人 派遣法の問題は幾つかの点があろうかと思いますけれども、おっしゃいますように、臨時的、一時的な業務に限定をするというその担保は、二つの方向でやらなければいけないというふうに考えております。
一つは、派遣元会社における、登録型のような派遣のあり方について規制なり見直しが必要。一方で、派遣先企業で、派遣労働者を受け入れる側の規制といいますか制約が必要。今回出されるであろうと思われます法案の中身を拝見いたしますと、派遣先企業で派遣労働者を使い続けていくための規制というものがないというふうに思っております。
したがって、おっしゃいますように、臨時的、一時的業務に限定をするというふうに言ったとしても、それは派遣元に対する規制で終わる可能性が非常に強くて、結果として、生涯派遣労働もしくは常用代替としての派遣労働が蔓延をしていくという危険性を強く持っていると思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
そこで、佐藤公述人に伺いたいと思うんですが、たくさん論点がございましたので、ちょっと絞って伺いたいと思うんです。
法人二税の一部を国税にして、代替として個人への住民税や固定資産税を強化する、その際、応益負担という原則でというふうなお話をされたのかなと思っております。
ここで、全体の法人税は今減税するべきだ、その財源は赤字でも外形標準課税だというのは、逆に、この法人をめぐる課税というのが果たして応益と言えるのだろうか、これが一点です。
それから、法人二税を国税にする、それは法人二税が地方で格差があるからというふうなお話をされたんですけれども、ただ、雇用の問題もございますとおっしゃいました。つまり、地方自治体と、地域の企業の雇用や地域産業の問題からいっても、ここは簡単に国税でいいという話にはならないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤公述人 まず、ここで申し上げたかったのは、法人二税の比重を下げるというのは、別に国税化しろというわけではなく、もうはっきり言って、減税していきましょうということになると思います。つまり、それぞれの地域において、企業に対する税負担というのを抑え目にしていくということです。
企業優遇じゃないかと言われるかもしれませんけれども、でも、企業の仕事は雇用を生み出すことでありますので、税負担を下げることによって雇用拡大の機会を提供する、こういうことは必要だと思います。御指摘のとおり、単に地方二税を国税に置きかえただけでは企業の税負担というのは減りませんので、雇用促進の効果にはなかなかつながりにくいかなと思います。
外形標準課税なんですけれども、もちろん、一方では、法人税を下げるというときに代替財源が必要になってきます。いきなり固定資産税だ、個人住民税だというわけにはいきませんので、まずはできるところからということで、今回は、法人税の課税ベースの拡大、それから外形標準化の強化というのが図られたわけです。
外形標準課税は、実際、今のところ一億円以上ということになっていますので、応益課税に即しているかと言われると、本来の趣旨からは少しずれているのかなというのが私の印象です。
○高橋(千)委員 なぜこういう質問をしたのかといいますと、もちろん、外形標準課税については非常に大きな反対の意見があるからというのもあるんですけれども、やはり地域では、企業を誘致するときにたくさんの減税措置をいたします。
ただ、企業が立地するときに、最低賃金が安いからと、そこに張りついて選んで、要するに、人件費のコストが安いということを売り物にして誘致する場合もあるわけですよね。だけれども、撤退するときに何の権限もない、地方自治体には。やはりそういう関係はおかしいんじゃないか。そのことがいろいろ見直しをされて、諸外国、アメリカの一部にもあるし、ヨーロッパにもあるし、もっと地方自治体との関係で、物を言える権限をやるべきじゃないかということを議論してきましたので、その点でどうなのかなということで意見を述べさせていただきました。
もし何かありましたら、補足で、いいですか。
○佐藤公述人 まさに、ちょっと腹の立つ話としては、地方が一生懸命補助金を出したり減税をして企業を誘致したのに、さくっといなくなるというのは実際あるんですね。幾つかの事件があります。
ただ、一つ考えるべきは、これから地方創生だ、地域経済の活性化だというときにやはり考えるべきは、自分の地元に根差してくれる企業とか産業をどうやって育成していくか。外から持ってくるというのはある種ギャンブル的な性格があって、一発大きい工場を誘致すると雇用が一気にふえるというのはいいんですけれども、でも、そういう企業というのはなかなか定着してくれないわけですね、やはりどこか労働コストの安いところがあれば、そっちへさくっと行ってしまうわけなので。
やはり、自分たちの地元の中からどうやって有力な産業を育成していくのか。それは農業かもしれません。では、そのために自治体は何ができるのか、そこを考えていく必要があるのかなというふうには思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。大体一致しているかなと思っております。
最後に、小田川公述人にもう一点伺いたいんですが、最低賃金に地域格差が非常にある、その上でやはり全国一律でなければならないんだという点の重要性について、最後、補足していただければと思います。
○小田川公述人 日本の最低賃金の現状を見るときに幾つかの問題点があると思いますが、その一つは、額自体が非常に低くて、生活保護の水準を下回るような水準になっているという問題が一つ。そして、御説明を申し上げましたけれども、地域間格差がこの間非常に広がっているということだと思います。
最低賃金の低い地域に企業が進出をするという時代ではもうないのではないでしょうか。全体としていえば、近くに消費地があって、その地域に企業が進出をするという状況は強まっているわけでして、必ずしも賃金の低さが雇用の機会をふやす要因にはもうなっていないと考えております。
したがいまして、御説明でも申し上げましたけれども、現状は、むしろ、近場の賃金水準の高いところに労働力が移動をしている、社会的な人口減が起き始めているというところにこそ、今は問題意識を持つべきだというふうに考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
改めて、全国一律最低賃金、ぜひ実現をしたいと思います。
きょうはこれで終わりますけれども、貴重な御意見、ありがとうございました。