賃金格差の状況把握を/高橋議員 女性活躍推進法案で指摘
日本共産党の高橋ちづ子議員は12日の衆院内閣委員会で、女性の登用促進のため雇用主に状況把握や行動計画策定などを求める女性活躍推進法案について質問しました。
高橋氏は、事業主が行う状況把握の「必須項目」として(1)採用者に占める女性比率(2)勤続年数の男女差(3)労働時間の状況(4)管理職に占める女性比率―が規定されるのに、「賃金格差」は必須にも任意にも入っていないと指摘。「(賃金格差が)状況把握で入らなければ改善計画や課題にも出てこない」と批判しました。
高橋氏はまた、昇格者の95%以上が転勤しており、事実上「転居をともなう転勤」が昇給の要件となっている社会保険診療報酬支払基金の事例を紹介。同基金採用時の男女比が5割でありながら、女性管理職は1割程度にとどまり、男女雇用機会均等法で禁止されている「間接差別」にあたるのではないかと指摘しました。
厚労省の安藤よし子雇用均等・児童家庭局長は、「個別の事例については発言を控えるが、法令違反があれば適切に対処したい」と答えました。
高橋氏はさらに、行動計画策定指針に盛り込む事例に「勤務地限定正社員」などをもりこむのかと質問。「勤務地、労働時間、職種を限定することは新たなジェンダー格差につながるとの指摘もある。多様な正社員が女性活躍の切り札とみるのはおかしい」と主張しました。
(しんぶん赤旗 2014年11月13日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうから本委員会で審議入りした本法案が、今国会、成立はほぼ不可能ではないかという風向きになってまいりました。
この局面、この限られた質問時間では到底網羅できるものではありませんが、我が日本共産党は、ことし十月二十一日、「女性への差別を解決し、男女が共に活躍できる社会を」という政策提言を発表しております。来年は、女性差別撤廃条約批准三十年です。成立云々以前に、曲がりなりにも女性の活躍をうたう本法案の審議を通して今後の政府の取り組みに生きることを期待して、質問したいと思います。
法案は、一人一人の女性が希望に応じて個性と能力を十分に発揮できるという女性の活躍実現のために、国、地方公共団体を含む事業主が、一つは状況の把握を行い、二つは課題を分析、三つは目標を設定するとともに、四つは指針にある効果的取り組みを参考に自社の課題解決に必要な取り組みをまとめた行動計画を策定、公表するという枠組みになっております。
その状況把握、一番最初のところですが、四つの必須項目、一つ、採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率、これを省令で規定し、なお、任意項目を規定するというふうになっております。
これは、労働時間の状況ですとか、管理職の登用ですとか、そういうのは、なぜこれを必須にしたかというのは、これまで言ってきたことからもよく推察できるんですけれども、では、なぜ賃金格差について必須にも任意にも盛り込まなかったのでしょうか。
○安藤政府参考人 状況把握につきましては、先生先ほど御指摘のとおり、四つの必須項目として把握すべきところと、労働政策審議会における議論でそのような結論が出ているところでございます。
我が国の男女間の賃金格差の要因を分析いたしますと、最も大きな要因は男女間の職階の違いでありまして、次いで、男女間の勤続年数の違いとなっております。男女間の賃金格差の二つの一番大きな要因でございます、いわば管理職に占める女性比率と勤続年数の男女差について、必須項目として把握、分析を行うことにより、これらに係る課題を解消するための取り組みが各企業で行われる、ひいては男女間の賃金格差の縮小につながるものと考えております。
必須項目のほか、各社の実情に応じて把握することが効果的と考えられる任意項目につきましては、法案が成立した後、施行に向けて労働政策審議会において議論を深めることとしております。
○高橋(千)委員 もう一回、局長に質問したいと思います。
資料の一枚目に、男女間賃金格差の要因と国際比較というのがございます。先ほど答弁にあったように、一番の要因が職階であるという話がありました。確かに、左を見ますと、賃金格差の要因、一〇・三ということで、一番大きい格差があるわけなんですね。それで、国際比較、これは七一・三%で、韓国が最低なわけですけれども、しかし、この間、韓国が精力的に取り組んでいるということは本会議でも指摘をされたとおりであって、非常に、最下位クラスであるということが明らかであると思います。
だけれども、これは、労政審の中で厚労省が、雇用均等・児童家庭局自身がつくった資料でございまして、さまざまな要因を解消していけば、諸外国と同じ水準になれる、あるいはそれ以上になれるということをしっかりと指摘していると思うんですね。
ですから、一つ一つの課題、やはり、一つじゃないんです、一つや二つではないんですね、それらをしっかりと状況把握に盛り込まなければ、課題にもならないし、解決にもならないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○安藤政府参考人 女性の活躍に関する現状につきましては、各社各様でさまざまでございます。その中で、把握すべき項目も各社で異なっていることが考えられます。
その中で、共通の必須項目を選定する場合には、設定する場合には、これが余りにも多い項目でありますと、極端に企業にも負担になって取り組みが進まないということも考えられます。そうした中で選定をして、多くの企業に共通する課題として選定をされたのが、この四つの必須項目であるというふうに考えております。
○高橋(千)委員 正直、ちょっと驚きました。余りにも多い項目と。あれこれではなく、この男女賃金格差というのがやはり最前線で議論されなきゃいけないわけでしょう。きょうもさんざんそういう議論があったと思います。その問題意識がやはり大きく指摘をされなければならないのではないかと思います。
大臣、先ほどから御自身の言葉で熱弁を振るっておられたのを見ておりました。ぜひ大臣にお答えいただきたいと思います。
男女賃金格差は、全体でいいますと、女性の二人に一人が非正規労働者という総合的な問題はございます。ただ、同じ職場の中でも、やはり、コース別雇用管理区分など、さまざまな問題がございます。単に勤続年数が短いから、要するにM字カーブの問題だとか、そういう話に矮小化してはならない、こう思うんですね。その問題意識はあるのかどうか、大臣に伺います。
○有村国務大臣 高橋委員にお答えをいたします。
もとより、厚生労働省所管の労働基準法におきまして、男女同一賃金の原則、第四条、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」というふうに明確に書かれておりますし、この労働基準法の精神にのっとり行政なりあるいはそういう指導がなされるもの、そうしていかなければならないというふうに思います。
○高橋(千)委員 ここで厚労省が所管していると言っちゃえば、この法案の意味そのものがなくなっちゃうんですよ。審議会の中でも使用者側はさんざん、労基法四条に書いているからいいんだ、そういう議論をしてきました。それを踏襲してはならないんだ。だから、わざわざこの内閣委員会で女性が輝くという法案を出しているんじゃないですか。それで同じ議論では、やはり済まないですよね。
大臣、手を挙げましたけれども、もしあったら。
○有村国務大臣 高橋委員の御主張は理解できる、共感できるところがございます。ただ、どこを根拠にどのような発言をしているかということに、根拠規定を明確にするというのも大臣の務めなものですから、ここを根拠に進めていかなきゃいけないということで、そもそも私どもが持っている法案ではなくて、厚労省さんがお持ちの所管でございますから、そこは事実として申し上げられることに何のそごも感じておりません。
ただ、委員がおっしゃるように、長時間労働とかあるいは賃金格差、これは差異によるもの、職位によるものという御答弁が安藤局長から、厚労省からございましたけれども、やはり女性の就労ということで収入が上がっていくように、特にぎりぎりのところでやっていらっしゃる一人親家庭の方にも温かい目が向くようにという問題意識は当然持っておりますし、そこに省庁横断的な横串を貫きたいという思いも当然強く持っております。
○高橋(千)委員 ここだけ議論しているわけにいきませんので、もう一度、大臣に後で登場していただきますので、少し具体の話をしていきたいと思います。
労政審の雇用均等分科会の「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築について」、つまり、この法案のいわゆる指針の基礎となることを検討した分科会の報告の中では、「雇用管理区分ごとに把握する必要性についてさらに議論を深めることが適当である。」こういうふうにされたわけですね。つまり、宿題になっているんだと思います。そこを本当に前に踏み込んでいただきたいと思います。
そこで伺いますが、ことし七月一日施行で、男女雇用機会均等法施行規則が改正されました。そのうち、間接差別となり得る範囲の見直しがされましたが、その具体的内容と理由について簡潔にお願いします。
○安藤政府参考人 男女雇用機会均等法では、性別以外の事由を要件とする措置であって、ほかの性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度不利益を与えるものとして男女雇用機会均等法施行規則で定めている措置を合理的な理由なく講じることを間接差別として禁じているところでございます。
以前は、施行規則で定める措置として、総合職の募集、採用について、転居を伴う転勤に応じることを挙げておりましたが、今回の男女雇用機会均等法施行規則の改正により、総合職の限定を外すとともに、募集、採用に加え、昇進、職種の変更を措置の対象に追加する見直しを行ったところでございます。
間接差別については、平成十八年の男女雇用機会均等法改正の際に、今後、「機動的に対象事項の追加、見直しを図る」ということが附帯決議として盛り込まれていたところでございまして、平成二十年十月から、労働政策審議会雇用均等分科会におきまして公労使で議論を重ねた結果、間接差別については、その禁止範囲について、事業主側に予見可能な範囲とすべきという意見があった一方で、総合職に限定する必要性はないといった御意見もありました。
こうした意見を踏まえて、今回の改正に至ったものでございます。
○高橋(千)委員 最初にお話しした賃金格差の根っこにあるものの一つを、今議論を始めております。
資料の二枚目に、厚労省の広報資料をつけておきました。「男女雇用機会均等法で禁止している「間接差別」の対象範囲が拡大します」ということで、大変わかりやすい資料になっております。雇用管理区分自体が本当は間接差別という指摘もされているし、ILOや国連女性差別撤廃委員会からも、たびたびこの枠組みの解消を勧告されているということをまず指摘しておきたいんですね。
とはいえ、今回の施行規則の改正は、やはり現場の声に応えたものだと思っております。総合職だけの非常に限定した募集、採用のときだけ、転居を伴う転勤について要件としていたものを、全ての労働者、しかも、募集、採用、昇進、職種の変更ということで広げたということは、まさに現場の声に応えたものかなと思っております。
そこで、一つ具体の話をしたいと思うんですが、採用時にはほぼ男女比が五割である社会保険診療報酬支払基金は、課長以上の管理職側に占める女性の割合は、二等級まで行きますと一割程度になってしまいます。これは、長年にわたり昇格者の選考に当たって転勤調べを行って、実際に昇格した職員の九五%以上が実際に転勤しています。つまり、事実上、転居を伴う転勤が昇給の要件となってきたわけです。
そうすると、これはまさに、今回禁止された間接差別に当たるのではないでしょうか。
○安藤政府参考人 個別のケースについての判断についてはお答えを控えさせていただきたいと存じますが、労働者の昇進に当たりまして、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするというのは、間接差別となるおそれがある措置の一つとして厚生労働省令で定められているところでございます。これが間接差別と認められるには、転勤を要件とすることに合理的な理由がないということ、これがさらに要件になるわけであります。
合理性の有無につきましては、個々の事案について個別に検証する必要がございまして、法違反の事例を把握した場合には都道府県労働局においては適切に指導をやっていく、こういうことになっております。
○高橋(千)委員 支払基金は、民間法人とはいえ、診療報酬、レセプトを扱う、つまり厚労省の医療政策そのものを支えるお膝元であります。そういう意味でも国の責任は大きいし、全基労、全国社会保険診療報酬支払基金労働組合が繰り返し国にも要請してきたもので、十分承知をしている問題だと思うんですね。ですから、これは個別案件だからお答えにならないというのはわかってあえて質問しておりますので、その点は本当に合理的理由があるかないか、しっかりと見ていただきたいと思うんです。
というのは、基金は、全基労の訴えに対して、二等級昇格者の配置に当たっては、全国四十七都道府県に展開する全国広域的な組織なんだ、それから、ポストは支部ごとに定数が定められているから、要するに希望者と同じ定数なわけじゃないんだと言っているし、三つ目には、管理監督者としてのキャリア形成、人材育成、能力開発及び支部間の人事交流による職場の活性化が必要であることから必要なんだと答えているわけなんです。ことしの六月なんですけれども。
ところが、この間の人事異動で二等級の昇格者状況を見ますと、それぞれの支部に、支部というのは要するに各県に一つずつあるわけですけれども、昇格ポストがあいているにもかかわらず、わざわざ遠距離の転勤先に異動している。宮城から栃木、神奈川から兵庫、石川から山形、京都から徳島というようにであります。
つまり、昇進適齢期に対して必要なポストがないということではなく、あっても遠距離転勤をしなければならない。これを本当に合理的な理由があると言えるのでしょうか。これは一般論でよろしいですので、お答えください。
ポストがあるにもかかわらず、遠距離転勤と昇給、昇格がセットになって、これが結果として女性の割合を下げることになっている。こうした問題を、やはり状況を把握し、課題として解決するべきではないでしょうか。
○安藤政府参考人 一般論としてというお尋ねでございましたけれども、遠距離転勤を昇給、昇格の要件とすることが間接差別に当たるかを判断するための合理性の有無につきましては、今おっしゃられましたようなケースにつきましても、さらに、人材育成のあり方や組織運営上の人事ローテーションの必要性など、個々の企業の実態を踏まえて個別に判断されるべきものであると考えております。
こうした考え方につきましては、男女雇用機会均等法及びこれに基づく省令において示されているところでございまして、法令に基づき、まずは、個々の企業において、転勤が合理的なものであるように、そのような運用をしていただきたいと考えておりますが、都道府県労働局において法違反の事例を把握した場合には適切に指導してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 私、今、大変控え目な質問をいたしましたよね。要するに、一般論である、しかも、状況を把握し、課題として解決すべきではないかという問いであります。つまり、個々の事情、ちゃんと状況を把握すればよろしいんじゃないでしょうか。
○安藤政府参考人 個別のケースにつきましての取り扱いについてお答えするのは控えさせていただきたいと思いますが、そのようなケースがありました場合には適切に対応してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 間接差別として対象になるおそれがあると認めているわけですね。
そのときに、その状況把握もしない、それは個々の事情だからといったら、前に進まないじゃないですか。おそれがあるのを訴えて証明しなければ前に進まない、それではだめなんだということで問題提起をしていますので、しっかりとお願いをしたいと思います。
資料の三枚目を見ていただきたいと思うんですが、これは、実は支払基金の単身赴任者がどれだけの距離を異動しているかを調べたものであります。
一番多い方が百五十九人、これは百キロから三百キロの異動でありますけれども、一番遠くて千五百キロ以上。どのくらいかといいますと、大体ですが、仙台から博多間になります。それが六人。そして、千百キロが、東京―博多間くらいになるんですが、これが四十四名もいるわけなんですね。
私がここで問題にしているのは、要するに、女性差別はだめだといって、男性だけが遠距離転勤をやればいいなんということを言っているのではないんです。ここは本当に、単身赴任の比率は、下についているように、五七・四%に上るんですね。そうすると、ワーク・ライフ・バランスもあったものじゃないんですよ。
単身赴任の方は、待つ人もいないことから、長時間労働になります。これが本当に現場の実態です。また、一旦単身赴任が始まったら二十年以上も転々としている、こういう人もたくさんいらっしゃるんです。これは、逆に言うと、全国に支部があるんだから、もう少し希望が生かされるはずじゃないかと思うんですね。だから、こういうことが実態としてある。
それを、あくまで一般論で伺いますけれども、単身赴任をできれば避けられるように努力する、あるいは単身赴任であっても長期間にしないということはやはりこれから大事なことだと思いますが、大臣に伺います。
○有村国務大臣 高橋委員にお答えをいたします。
基本的には、民間の就労関係については厚労省の御担当ということをまず申し上げた上でなんですが、高橋委員の問題提起としての、単身赴任をなるべく、男女ともに、可能であれば避ける、あるいは長時間の労働にしないということは重要かどうかと私の認識を問うていただきました。
私は、やはり可能であれば、それを避けるような方策があるのであれば、大事な価値観だというふうに思っております。
特に、待っている人がいないから長時間になるというふうな現場の声だというふうに御紹介をいただきましたけれども、結婚されたカップルが、単身赴任を前提としてどちらかが赴任をしてしまうと、やはり物理的にばらばらに住んでいるというところで、子供が授かりにくくなるという制約も受けます。
そういう意味では、私自身、女性活躍担当として、また少子化担当として、企業の方も含めて、官民問わずですが、ぜひ二十代から三十代の妊娠力がある方々のカップル、結婚されたカップルに関しては、単身赴任を前提としない、単身赴任が当たり前というふうにならないようにしていただきたい、特に、結婚したばかりとか子育て世代というところにはそこを御配慮いただきたいということを内外で申し上げております。
そういう意味では、高橋委員の問題提起に対して、私も共感すること大だということを明確にさせていただきます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
今の大臣の答弁をぜひ踏まえまして、今度は山本副大臣に伺いたいと思うんですけれども、前回の均等法改正のときにも、実は、法の理念に仕事と生活の調和を明記せよという指摘をしましたし、争点となりました。
ただ、雇用均等分科会では、やはり使用者側は、性別による差別以外の異なる観点を均等法に入れることは趣旨が曖昧になるので賛成できないという指摘をして、そもそも定義が曖昧とまで主張をしているんですね。しかし、これが、その根っこにある考え方が、やはりさまざまな間接差別につながっているのではないかと思うんですね。
ですから、本当に、そういう議論を踏まえて均等法を見直しましょうということが、平成十八年、二〇〇六年の改正時の附則において施行五年後の検討規定が設けられ、議論を重ねてきたわけですね。でも、結果として、さっき紹介したような施行規則の改正や指針の一部改正などにとどまって、法改正に至らなかった。なぜでしょうか。
○山本副大臣 プロセスにつきましては、今御説明いただいたとおりでございますけれども、十八年の男女雇用機会均等法改正法の附則に定められた施行五年後の検討規定に基づきまして、労政審で平成二十四年十月から十一回にわたりまして議論がなされました。
性別を理由とする差別の禁止、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止、セクシュアルハラスメント対策、ポジティブアクションの効果的推進方策、法の履行確保、男女間賃金格差等々、多方面にわたり法の施行状況等について検討を行ってまいりました。
こうした公労使の三者における議論の結果といたしまして、間接差別の禁止範囲を拡大する省令改正を、先ほど局長の方から説明させていただきました省令改正を行うとともに、セクシュアルハラスメントの予防、事後対応の徹底に向けた指針の改正等に取り組むことが適当とする報告が平成二十五年九月に取りまとめられたわけです。
厚労省が決めたというよりも、ここの公労使のところでしっかりと決めていただいたわけでありまして、この結果を踏まえて、厚労省において省令改正などの措置を行って、本年七月にこれを施行したところでございます。
今後とも、男女雇用機会均等法令の施行状況等を勘案しながら、必要に応じて検討を行って、その結果に基づいて必要な対応はしっかりと行ってまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 非常に残念に思いますね。
それぞれの規則の改正ですとかが、それはプラスに働いていると思いますけれども、抜本改正をやはり私たちは求めていきたいと思うし、そのための議論も、非常に貴重な議論を積み重ねてきたと思うんです。
資料の四枚目に「昇進意欲と「やりがい」」というふうな資料、これは八月二十六日に武石委員、公益委員の方から出された資料ですけれども、「一般社員の昇進希望の職位と「仕事のやりがいスコア」」ということで、これは、役付でなくてもよいというのは男性より女性がちょっと多いけれども、でも三割ですよね。だけれども、係長あるいは課長と上っていくに従ってやりがいは増しているということで、決して女性がやる気がないわけでもないし、あるいは能力がないわけでもないんだということがさまざまな角度から議論されてきたと思うんですね。やはりそこをもっと踏み込んでほしかったなということで、これは重ねて要望をしたいなと思っております。
そこで、やはり均等法が乗り越えられなかったことがこの法案に反映しているんですね。そのことをやはり指摘しないといけないなと思うんです。
均等法のポジティブアクションについて、雇用均等分科会の議論において、労働者側は、男女間格差解消を解決するために集計したデータに格差があった場合は、事業主は数値目標を設定し、取り組むことを義務化してはどうかと提言をいたしました。大変似た議論ですよね。使用者側は、各企業の実情に応じて行う現行の方法が理にかなっていると述べて、公益代表からも、企業にはそれぞれの実態、それぞれの課題が違うので、実態に合った取り組みがポジティブアクションだと考えている、こういうふうな議論があった。
そうすると、今回、本法案においても、数値目標を、一律の項目の設定を義務づけるのではなくて、事業主が選ぶという点について、業種によって、事業主によって多種多様だということとか、経営判断の一環である、そういう答弁まであって、結局、これは均等法改正に踏み込めなかった議論を踏襲しているものだと言わざるを得ないんです。これでは、やはり実効性があるとは思えません。
それぞれ公表する項目も違う、ばらばらだ、これをどうやって客観的に評価するのか、どうやって実効性を持つのか、伺います。
○有村国務大臣 お答えいたします。
高橋委員がおっしゃるように、働く場面での女性の活躍を実現するためには、企業などにも当然コミットしていただくことが極めて大事だというふうに私も思います。
その上で、どのように企業がコミットしていただくかという上では、強制的なものというよりも、やはり主体的な取り組みを加速していただく、みずからの意思で、みずからのスタッフとみずからの企業の思いでやっているというふうに御認識をいただくことが民間セクターでも大事だというふうに思っております。
そして、企業など、あるいは地方自治体、国もそうですけれども、行動計画が策定されて取り組みが促進されることは、これまでにはない女性活躍推進のための実効的な仕組みであるというふうに私どもは考えております。
数値目標に関しては、一律、これをやってくださいというふうに義務づけるのではなく、そもそも、厚生労働大臣とそれから安倍総理の御議論のもとで、定量的なもの、目標をつけていただくということも、最後、強いリーダーシップ、粘り強いリーダーシップでやっていただいたということに、担当の大臣としてもありがたいと思っております。
やはり、どのような現実を見据え、いかなる目標を設定し、それをどのようにプレゼンしていくのか、また、その見え方に対して、その団体なり企業なりがどのように社会に投げかけていくのかということ自体、その団体なり企業なりの経営判断なりあるいはこれからの姿勢ということを示す大事な指標になりますので、実効性という意味では、そのいい例ということをどんどん御紹介して、こういうやり方もあるんだということの好例を皆様に積極的に広報することによって触発を広げていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 どこに横串が入って全体としてそれが引き上がっているのか、何が引き上がっているのか、何が課題なのかというのがやはり見えてこないなと思っております。さらにこれは議論を続ける必要があるのではないかなと思っています。
そこで、最後に一問伺いたいんですが、行動計画策定指針に盛り込む先進事例、今少しお話がありましたけれども、あるいは、効果的取り組みとして勤務地限定正社員などを積極的に推奨する立場なのでしょうか。
勤務地、労働時間、職種などを限定して働くことは、新たなジェンダー格差につながっていくという指摘もございます。実際、ことし八月二十六日の雇用均等分科会の中でも、先ほど紹介した武石先生は、勤務地限定社員が、賃金は正社員に比べて八五・七八%と非常に低いし、昇進の上限が最初から設けられている、これは六割の企業で設けられている、教育訓練の機会も少ない、そういう限定正社員の声を紹介して指摘をしておられます。
こうした賃金、処遇などの実態も見るべきだし、これで、それぞれのところで、やりました、限定正社員をふやしましたということで、働きやすい職場になりましたとなっては困るんです。多様な正社員が女性の活躍の切り札と見るのはおかしいと思いますが、御意見を伺います。
○有村国務大臣 我が方のスタッフが先生と意見交換をさせていただいたときに、この分野は厚生労働省の所管の内容であるということは先生も御承知の上だということで私は報告を受けておりますが、基本的に、多様な正社員ということが切り札だという発信を私自身あるいはうちのスタッフがしたことはございませんけれども、やはり、地域限定社員という勤務地を絞った働き方は、育児や介護の事情、転勤が難しい方などに対して、就業機会を提供したり、あるいは就業の継続を可能とする面で、希望していらっしゃる方々もいらっしゃるという前提もあるかというふうに思います。
委員が御指摘されましたような御懸念ということが払拭されて、女性活躍にも資するものとなるように、今後も厚生労働省で取り組みが進められることを期待いたしますし、その経過を見守った上で、適切なときに、私も適切なタイミングで発信をしたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 一言だけ。
均等法は、一九八五年、労働者派遣法とセットで生まれました。今回は廃案になると思いますけれども、やはり、そのときに絶えず女性のニーズとか多様な働き方という形で女性を切り札にして、しかし現実は差別なんですよ。そこに本当に切り込んでいかなければだめなんだということを指摘して、発言を終わります。