処分場選定で国批判 / 高橋議員 データ精査求める
日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は6日の復興特別委員会で、福島原発事故によって発生した8000ベクレル超の浄水発生土(水道水をつくる過程で発生)や稲わら、たい肥など、「指定廃棄物」の最終処分場の候補地選定について、「(指定廃棄物処分の)国の責任の持ち方が一方的なものであってはならない」と厳しく指摘しました。
宮城県の処分場候補地は、栗原市、大和町、加美町の3自治体ですが、住民が強く反対しています。高橋議員は、いずれも水源地や地すべりなどで候補地としては不適切だとのべ、不適地のなかからよりましな場所を選ぶという国のやりかたを批判しました。
高橋議員は処分場の必要面積を算出する前提の指定廃棄物の量について、宮城県畜産部が出した汚染稲わらの量と環境省のデータに900トン近い差があると指摘。また、加美町の処分場の必要面積が昨年の2・64ヘクタールから今年2・5ヘクタールに縮小しているのは「面積に合うよう処分量を合わせたのではないか。宮城県の数字を精査すれば必要面積は変わるはずだ」とのべ、実態をしっかりつかむべきだと要求しました。環境省は、宮城県畜産部のデータを精査し、その結果を踏まえたいと答弁しました。
(しんぶん赤旗 2014年11月8日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
竹下復興大臣にまず一問お願いいたしたいと思います。
東電福島第一原発事故により発生した八千ベクレルを超える浄水発生土や稲わら、堆肥など、いわゆる指定廃棄物と呼ばれるものについて、今、宮城や栃木県を初め、最終処分場の候補地選定をめぐって大問題になっていることを御存じでしょうか。
宮城県の候補地の一つとされている加美町は、一級河川鳴瀬川の上流にあり、一級河川で、しかもその流域が一つの県内で完結している、これは全国でここだけなんです。この豊かな水の恵みとおいしい米を誇る地域で、候補地の一つになっただけで、まだ何も始まっていないのに、西日本の卸業者から、もう米は扱えないと言われたり、百年続く菓子種のお店が取引を断られるというような風評被害が起こっております。
また、栃木県の塩谷は、県内候補地は一つだけと指名をされて、名水百選の町でなぜと怒りの声が上がっているのは、皆さんも承知のことかと思います。
両県も被災地であり、復興の大きな足かせとなっています。住民合意なしで進めるべきではないと思いますが、見解をお願いいたします。
○竹下国務大臣 おっしゃいますように、指定廃棄物の最終処分をどうするかというのは、まだ我々が乗り越えなければならない大きな課題でございます。
正直に言いますが、誰も喜びません。私のうちの隣に来てほしくない、これは、人間である以上、誰も、素直な感情であります。しかし、国家あるいは社会を形成していく上で、どこかにつくらなければならない施設であるということも、これはぜひ御理解をいただきたい。
どこへ候補地を持っていっても、もろ手を挙げて賛成していただける方はいない。しかし、その覚悟の上で、政治が果たしていかなければならないのは、その上でもやはりどこかにつくらなきゃならぬという思いを我々は持っておりますし、そのことはやり遂げていかなければならない。これが大前提である、こう思っております。
しかし、先ほどからお話にございますように、複数回にわたって、説明会を開きたい、あるいは現地調査をしたい、ボーリング調査をしたい、いろいろ申し入れても、相当丁寧なプロセスでお話をされているのではないかなと拝察をいたしておりますが、地元の方々からさまざまな御不安や御懸念が示されまして、現地調査が予定どおり進んでいないということは、承知をいたしております。
復興を進めるに当たりまして、また、この最終処分場をつくるに当たりまして、地元の皆さん方の御理解を得ていくということは極めて重要なことでございますので、指定廃棄物の処理につきましては、担当は環境省でございますけれども、引き続き地元からの御意見や御疑問に丁寧に答える、その上でしっかりとした対応をしていかなければならない。
ここはだめ、ここはいいと我々が言うべきことではなくて、丁寧にお話をした上で、御理解を得るということをぜひともなし遂げていかなきゃならぬ、こう思っております。
○高橋(千)委員 誰もが、どこかにということは理解しているんです。だから無体に、ただ自分のところには持ってこなきゃ、ほかでどうにかなればいい、そんなことを言っているところはどこもありません。だけれども、そのプロセスに問題があるんだ、だから指摘をしているのであります。
資料の一枚目に、ポンチ絵ですけれども、これが、根拠となる放射性物質汚染対処特措法の概要であります。
放射性物質による環境の汚染への対処について、廃棄物処理について、これは左の真ん中に囲みでありますけれども、警戒区域などの特別な管理が必要な地域内の廃棄物、その指定を受けた廃棄物、あわせて特定廃棄物というんですけれども、この処理は国が実施するとあります。
また、二枚目に資料、同じものをつけてありますが、これは地元紙、河北新報に載った環境省の広告であります。「環境省からのお知らせです。」。
この中で、これは全面広告ですが、「宮城県内各地の三十ヵ所以上で保管していただいています。」「これらを県内一ヵ所に集約して、責任をもって処理を進めます。」とあるわけです。
まず確認しますが、各県で出たものはその県に最終処分場をということは法律の中には書かれていないと思いますが、確認します。簡潔にお願いします。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の放射性物質汚染対処特別措置法では、国が指定廃棄物の処理をするということが定められてございます。
各県の処理ということに関しましては、特措法に基づいて閣議決定をされております基本方針がございます。この基本方針の中で、指定廃棄物が排出された都道府県内において当該指定廃棄物の処理を行うことという規定がされているということでございます。
○高橋(千)委員 確認をされました。
法律、つまり私たちが立法府で議論しているときには、ここまで議論していないんですね。さっき林委員の質問の中で指摘がありましたけれども、議員立法だからと言っているけれども、基本方針は閣議決定なんです。本当に国が責任を持っているんです。そのことをまず確認させていただきました。
その上で、宮城県では、候補地を三つに絞り込み、八月から、文献調査ということで、事実上、詳細調査に入りました。また、十月八日には加美町の現地調査、これは町長に知らせずに入ったということで町が大変反発をいたしました。今、実際にボーリング調査まではできていないという状態になるんですけれども、副大臣に伺います。
三つとも不適地であっても、候補地になった中から選ぶと聞いているんですね。それはあんまりじゃないか、全部不適地ということがあり得ないのか、伺います。
○小里副大臣 お答え申し上げます。
宮城県におきましての三カ所の候補地でございますが、これは、安全性や危険性の度合いといったところをスクリーニングした上で、その上で水源からの距離や植生自然度などの項目によって総合評価をした結果として選定されたもの、絞り込まれたものであります。
したがって、基本的には、三カ所の候補地の中から最終的な候補地を確定できるものと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 小里副大臣、ぜひ政治家としての答弁をしていただきたいと思うんですね。
つまり、三つ絞り込んだので、いろいろやったので、いろいろ詳細調査で問題が出てきても、その中からよりましなものを選ぶというのが今の構図なんですよ。
ですから、例えば栗原市の市長なんかは、別に賛成しているわけじゃないけれども、自分のところに調査が来れば必ず不適地だと思う、そういう意味で受け入れているんですね。だけれども、不適地だけれども、三つの不適地の中からよりましなのを選ぶというのが今の構図なんです。そこが矛盾なんですよ。
栗原市の深山嶽は岩手・宮城内陸地震の地割れの傷跡が残った山の中です。もう一つの大和町の下原、これは陸自王城寺原演習場の緩衝地帯であって、自衛隊の誤射による着弾もあった場所なんですね。しかも、沖縄の負担軽減ということで実弾演習場が移転をしてきて、そのために住民の方たちが先祖代々の土地を手放した。そこが候補地となっているんです。そして、今お話しした加美町は、ダムをつくるために採石した跡地であります。その砂利はもろ過ぎて使い物にならなかった。そういう地盤なんですね。
これは本当に象徴的なことだけ言いました。もっとたくさん問題があるんですが、いずれも、景観もあり、水源地や地すべりなど不適地だと言える場所ばかりなんです。これで、最初からその中から選ぶんだというのでいいのかということなんです。
候補地となった自治体との折衝の中で、雪が降る前に調査を終えて、来年から着工したいと環境省が述べたといいます。そういう建設ありきの進め方では到底納得できません。いかがでしょうか。
この広報には、市町村長の総意として知事が受け入れ表明を行ったとしていますが、今でも反対がある、総意だととても言える状態ではありません。その認識を含めて、もう一度伺いたいと思います。
○小里副大臣 建設ありきではないか、また、総意とはどういう意味なのか、お尋ねでございます。
宮城県内の指定廃棄物は、現在、県内三十六カ所に一時保管をされております。不安定な状況で保管をされておりまして、これをぜひとも早期に堅固な施設で安全に処理することが求められております。
環境省としましては、雪が降る前にボーリング調査を終えないといけないという状況を勘案しながら今進めているところでございます。雪解けを待って調査を再開するとなると、全体のまた進捗、候補地の選定作業が大幅におくれてしまうおそれがあります。決して建設ありきの説明を行ったものではないということを御理解いただきたいと思います。
また、市町村長の総意だとしているところでございますが、これは経緯を簡単に申し上げますと、前後で通算七回の市町村長会議を開催しております。その中で、昨年の十一月に選定手法を確定いただきまして、一月に候補地を提示し、その後また候補地と国、県とのいわゆる五者協議を四回重ねてまいりました。八月四日の市町村長会議において、さまざまな意見を村井知事が取りまとめられた結果として、県内市町村長の総意として詳細調査を受け入れるとの報告をいただきました。これを重く受けとめて、環境省において対応しつつあるところでございます。
先ほど大臣からもありましたように、全体としては、これは必要な施設であるということは理解をされております。しかしながら、それを受け入れることになるかもしれない候補地にとっては、大変な風評被害を初め、これを受け入れることについては大変な御心配がある、このことには本当に思いをいたさなければならないわけであります。そういった中で事を進めていくための、苦渋の結論として、総意があったということでございます。
村井知事も苦渋の決断というような言葉を使っておられたと思いますが、自分の選挙はさておいても、全体のためにこれを進めていくんだという村井知事の御覚悟も受けとめながらこれを進めているところでございます。
○高橋(千)委員 もう十一月ですから、いつ雪が降るかわからないんですよ。実際にそれがわかっていて、しかも、雪が降る地域だとわかっていてこういうことを言っているというのは、それは、建設ありきと言われるのは当然なんですよ。
段取りを踏んできたのは十分知っています。だけれども、結局、反対意見もありました。加美町だけじゃないんですよ。別に栗原だって賛成なんて言っていません。三市町一遍に調査するのでなければ受け入れられないと言っているんです。そのほかにも反対意見はありました。あえて採決をしていない、そういう経過を踏まえていることを、総意があったと、いかにもみんなが認めたみたいに広報するのは問題ではないかとあえて指摘をさせていただきました。
そこで、資料の三枚目を見ていただきたいと思うんです。
これは環境省の資料ですけれども、「宮城県における計画処分量及び施設設置に必要な面積」、つまり、どれだけの面積が必要かということを考えるときのデータなわけですね。
これは、問いにする時間がなかったので言っちゃいますけれども、今ある保管量、指定廃棄物が四千九百五十五・三トンである。そして、計画最終処分量が八千七百トンである。それで、なぜ計画最終処分量というのが上回っているかというと、結局、今八千ベクレルに達していなくても、焼却することによって濃縮されて入ってくる量も踏まえているんだということが下の小さな字の説明の中に書いてあります。
それで、その次のページを見ていただくと、第五回の市町村長会議の中で出された資料ですが、丸で囲んでありますけれども、環境省が宮城県からいただいた資料をもとにつくった四千九百五十五・三トンの内訳であります。一致しています。
ただ、左を見ていただきたいんですね。これは、宮城県がその後、例えば畜産課などが新たな調査を行って、これまで、昨年の八月の時点ではない、一目でわかると思います、いろいろな自治体に実は汚染稲わらがあるというデータを出しています。これを単純に引くと、九百トン以上の乖離があるわけなんですね。
このことは、我が党県議団が申し入れも行っており、事は必要面積にかかわる重要事項です。実態をきちんとつかむ責任があると思いますが、伺います。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、現在、宮城県における指定廃棄物の処理施設の必要面積を算定するに当たりましては、保管量として四千九百五十五・三トン、計画最終処分量として八千七百トンという数字を使ってございます。
この数字でございますけれども、一つは、放射性物質汚染対処特措法に基づきまして環境大臣が指定をしました指定廃棄物の量というものがございます。また、これも先ほど御指摘ございましたけれども、二十五年八月でございますが、環境省が宮城県に公式に依頼をいたしまして、調査を実施していただきました。それによって得られた廃棄物の量のデータを用いてございます。
お尋ねのございました農林部局の調査結果につきましては、現在、宮城県におきまして内容を精査しているというふうに承知しておりますので、まず、私どもとしては、県による精査の結果を確認したいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 精査をしているということであります。その結果をしっかりと出していただきたいと思うんです。
そこで、十月に加美町の質問に対して環境省が答えた文章を見ますと、保管量をもとにした必要面積は二・五ヘクタール、それで、保管量は、今、さっきから言っている四千九百五十五トン、合計八千七百トン、ここから算出をしています。しかし、昨年は二・六四ヘクタール必要と言っていたんです。今は二・五ヘクタール。一年たって、なぜ縮小したんでしょうか、面積が。
それは、当時の保管量は七千三百五十二トン、計画最終処分量九千九百トンで見ていたからです。なぜ一年で保管量が減ってしまうんですか。これは、二千三百九十七トン減って、面積が〇・一四ヘクタール縮小できたことになるんですよ。これは重要な問題なんです。
何かといいますと、加美町に行った、田代岳に行った方はよく御存じだと思いますが、四角いバケツのような地形をしております。そこに、かつ、鶴の首と言われる細い道があるんです。それを足し合わせてようやっと二・五ヘクタールになる。全然足りないじゃないかと町が指摘していた。だって、本当は二・六四ヘクタール必要だったんですもの。それに合わせるかのようにしているように思うんです。でも、今言ったように、精査をしたらまた量がふえるんじゃないですか。違いますか。
徹底的に精査して、必要面積、これは大前提ですから、改めて示していただきたいと思います。いかがですか。
○高橋政府参考人 今御指摘のございました数値の変更につきましては、もともと宮城県で決めております選定手法の中で、最新の保管量に基づいて計算を行うということになってございます。それに基づきまして、最新のデータを用いて修正をしたということでございます。
いずれにしましても、先ほど御指摘のあった新しいデータも含めて、精査をきちんとやっていきたいと思っております。
○高橋(千)委員 ということは、必要面積が変わることもあり得る、要するに、足りないということもあり得るということですね。
○高橋政府参考人 まずは精査の結果をきちんと評価してまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 お認めいただいたと思います。
こうやって、一つ一つのデータがやはり正確じゃないんですよ。だから言っているんです。ただやみくもに嫌だ嫌だと言っているのではない。誠実じゃないんです。さっきから言っているように、国が責任を持つと言ったけれども、その責任の持ち方が、国が一方的にやるという意味では困るんです。そういうふうに履きかえてはならない、だから指摘をしている。ここは非常に重大な問題ですので、明らかにしていただきたいと思います。
そこで、町村長の皆さんの中には、やはりそうはいっても、八千ベクレル未満の廃棄物もたくさんあって、これは手をつけられずにいるんですね。これは、処分場ができたからといって、何の解決もいたしません。というのは、環境省は、それは市町村で一般廃棄物としてやれと言っているんです。これでは一向に解決いたしません。
特措法の見直しも含めて、どうするつもりなのか、伺いたいと思います。
○高橋政府参考人 指定廃棄物に該当しない八千ベクレル以下の廃棄物でございますけれども、これにつきましては、従来と同様の処理方法で安全に処理ができるということでございます。それに基づきまして、多くの市町村で努力をされまして、処理が進んでいるというふうに認識をしてございます。
また、処理が滞っている、特に農林業系の副産物につきましては、処理費用を補助する事業もございます。そういうものによりまして、関係省庁と連携し、あるいは県と連携をしながら、処理の進展に向けて取り組んでございます。
ただ、まだ地域で理解が得られず、処理が滞っている地域もあるということも承知をしてございます。これにつきましては、ホームページなどを活用して、処理の安全性をまずわかっていただく、その周知を行うということに加えまして、処理に困っておられる自治体と連携をいたしまして、住民の方々への説明会などに私ども職員とか専門家を派遣するというようなことで、住民の理解を得られるよう積極的に努力をしてございます。
こういう取り組みを通しまして、廃棄物の適正処理が一歩でも進むように一層努力をしてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 きょうは終わります。
――資料――
【資料1】平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法の概要