国会質問

質問日:2014年 10月 23日 第187国会 災害対策特別委員会

土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域指定について

土砂災害警戒区域指定/国の支援強化訴え
衆院災害対策特委で高橋氏

 日本共産党の高橋ちづ子議員は23日の衆院災害対策特別委員会で土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域指定について国の支援強化を訴えました。
 全国で52万カ所を超える土砂災害危険箇所のうち警戒区域や特別警戒区域は約35万カ所となっています。今国会で審議中の土砂災害防止法改定案では、区域の指定に必要な危険箇所の基礎調査について都道府県に調査結果の公表を義務づけています。
 高橋氏は、国交省が東日本大震災を踏まえた土砂災害対策として「被災地域における基礎調査に要する経費の地方負担分の軽減につとめる」と明記していると指摘し、「この立場で臨むべきだ」と求めました。警戒区域指定率が12%の北海道や、今年度で5割にも届かない広島県の実態をあげ、「箇所数も多く、体制的財政的に厳しい自治体もある。(調査結果を)公表しても円滑な指定ができなければ大変だ。どのように支援するのか」とただしました。
 財政支援について上野賢一郎国交政務官は「交付金でしっかり措置していきたい」と答弁しました。
 高橋氏は、会計検査院が国交省所管ダムの維持管理調査で重大な不備を指摘していることを示し、防災の観点から農水省所管や電力会社のダムなどについても対策を強めるべきだと要求。山谷えり子防災担当相は「他省にも働きかけていきたい」と答弁しました。
(しんぶん赤旗 2014年10月24日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 質問に先立ちまして、本日、十月二十三日は、新潟県中越地震から十周年であります。二〇〇四年十月二十三日十七時五十六分、マグニチュード六・八、最大震度七の地震により、六十八名が死亡、重軽傷者は四千七百九十五名にも上りました。改めて、心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
 中山間地での大地震という新たな課題を突きつけました。新潟県によると、震源地に近い地すべり危険箇所は二百九十九カ所指定しておりましたが、うち百九十五カ所、実に六五・二%が崩れたということに大変驚きます。
 多くの教訓を残し、制度の見直しにもつながりました。ぜひ、八月の広島土砂災害も含め、今後の防災、減災に生かしていくことができるように、強く求めたいと思います。
 さて、資料の一枚目を見ていただきたいんですけれども、国土交通省は、広島の土砂災害を受けて、「土砂災害危険箇所における警戒避難体制の緊急点検について」、これを九月二日に発出し、十七日に、ここにある、その緊急周知の実施状況を公表いたしました。
 これは、全国の市町村のうち、危険な場所の位置について九九・九%が周知している、しかし、避難経路については二四%しか周知していない、こういうふうに読めるわけですね。
 私、広島の被災地を歩いていた日にこの記事を見て、非常に驚きました。つまり、一〇〇%に近いくらいの人が知っている、でも、知っていても避難経路がわからないのなら、これは困ったことだ、どうなるのかということを思ったわけです。
 そこで、国土交通省に確認しますが、これは実は、知っているという意味ではなくて、周知を始めたという意味、あくまでも緊急点検でありますからね、どういう意味なのかを、具体的に、しかし簡潔にお願いしたいのと、これを今後どう活用するのか、伺います。

○池内政府参考人 お答えいたします。
 今般の広島市での土砂災害を受けまして、危険箇所の周知を行うよう九月二日に都道府県に要請を行いました。
 その結果、土砂災害危険箇所もしくは土砂災害警戒区域を有する市町村のうち、九九・九%の市町村が危険な箇所の位置について住民への周知の取り組みを開始したとの報告を受けております。
 一方、避難場所、避難経路等の避難体制についての周知が十分でない市町村があることから、今回の結果を踏まえまして、危険箇所の位置の周知、避難体制等の充実について、引き続き都道府県に対して要請を行っていきたいと考えております。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 今、開始したというところに力を込めましたので、まだ、始まったんだ、九九・九%が知っているというわけではないということで、しかし、大事なことですので、住民に対する周知、下の方に書いているように、ホームページや回覧板、いろいろな手段を使ってやっていくんだというふうなこと、また、二枚目には都道府県別の内訳もつけておりますので、ここは徹底をお願いしたい、このように思います。
 さて、八月二十日未明の広島の土砂災害、七十四名が犠牲になり、土砂災害においては、過去三十年間で最大の犠牲となりました。
 これを受けて、本日この後の本会議で審議入りする土砂災害防止法の改正案が提出されておりますし、既に全国の自治体でも、さまざまな警戒区域の指定や計画の見直しなどが取り組まれていると思います。
 よく指摘されるのは、土砂災害危険箇所というのが全国五十二万五千三百七カ所あるのに対して、警戒区域、特別区域などに指定されているのがまだ三十五万四千七百六十九カ所にすぎないということが指摘をされ、広島でも、指定が非常におくれているということが言われているわけなんですね。
 しかし、それはなぜなのか。住民が抵抗するからなんだとか、そういう話だけにしてはやはりならないと思うんです。
 そこで、まず伺いますが、警戒区域指定に必要な基礎調査、これは砂防予算の中でどのくらい見ているのでしょうか。

○池内政府参考人 お答えいたします。
 基礎調査につきましては、防災・安全交付金により措置しているところでございます。
 防災・安全交付金につきましては、個別事業ごとではなく、地方公共団体が策定されます計画ごとに予算を配分し、計画に位置づけられた事業の範囲内で地方公共団体が自由に交付金を充当することができる仕組みとなっております。このため、防災・安全交付金にかかわる計画の一部として実施されている基礎調査の予算については、切り分けられておりません。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 交付金になったことで使い勝手がよくなったとか、いろいろなことはあると思うんです。ただ、やはり、施策をするためには、どのように使われているのか、そこを把握しなければできないと思うんですね。
 資料の四枚目に、「砂防関係予算の推移」、これをつけておきました。砂防関係予算、左から、直轄、補助、計となっていて、二十六年度は九百五十五億五千百万円。しかし、これも、社会資本整備総合交付金にかかわる部分は外に出ているので、極端に減っているように見えるわけですよね。でも、実際は、そうではないということで。
 基礎調査の予算については、平成二十一年度は百三十二億まであったわけですけれども、その下がない。つまり、どのくらいになったかわからない。防災・安全交付金で出していることにはなっているんだけれども、実態は、つかまれていないということなんですね。
 今回、土砂災害防止法の改正案では、基礎調査の結果について公表することを義務づけております。しかも、それが芳しくなければ国が指導するとまで言っているんですね。なのに、実際にはどれだけかかっているのかがわかっていないというのはいかにも問題であるということで、基礎調査がどれだけできているのか、実態把握、目標を明確にして、また、それにかかわる財政支援も引き上げるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○うえの大臣政務官 委員御指摘のとおり、基礎調査の実態というものを的確に把握し、目標を明確にする、その上で進捗管理を行うということは、極めて重要だと考えております。
 そのため、これまで、都道府県ごとの基礎調査の実施数を把握しておりましたけれども、今後は、さらに、その実施目標、それからその進捗状況につきまして、しっかりと把握し、公表させていただきたいと考えています。
 また、基礎調査を推進する都道府県につきましては、防災・安全交付金により、積極的に支援をしてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 積極的に支援と、具体的なことをおっしゃらなかったんですけれどもね。
 国庫負担割合については、私の手元にあるだけでも、広島市を初め、北海道釧路市、余市町、埼玉県議会、北海道議会などで、増額を求める意見書が出ております。
 また、平成二十三年七月の国土交通省水管理・国土保全局砂防部が出しております「今後の土砂災害対策の方向性」、この中でも、東日本大震災を踏まえて、観測体制などいろいろ書いている中で、「基礎調査等の迅速な実施のために一時的に財政負担が増大することを念頭に、被災地域における基礎調査に要する経費の地方負担の軽減に努める。」と明記をされているわけです、既に三年前に。
 この立場でやっていくんだということの確認をしたい。

○うえの大臣政務官 基礎調査は非常に大事でございますので、その早期実施を促すという観点から、国として、できることをやるということで、まずは、所有する地形データの提供等々を行っていきたいと思います。
 財政支援のあり方につきましては、いろいろな議論があろうかと思いますが、一方で、既に実施をしていただいている都道府県とのバランス等も考慮しなければいけませんので、その点も含めまして、十分に検討してまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 これからは、義務づけになって、ますます自治体の責任が問われるわけですよね。それで、国は、それこそさっきも、口は出すけれどもという話がありましたけれども、市町村だけが責められることになってくるわけですよ。やって、公表したらしたで、どうしてくれるんだということになるし、しなければしないで、国からも責められる。そこを本当に進めるためには、もっと力強い支援が必要であります。
 八月二十六日付の北海道新聞、これは資料の三を見てください。「「警戒区域」ハードル検証」というふうにあるんですけれども、警戒区域の指定率が、北海道が全国で一番悪いんですね。一二%になっております。そして、危険箇所の多い順が載っているんですけれども、札幌を皮切りに、八月に死亡事故がありました礼文、そこも、危険箇所二百三十九のうち、指定はゼロなわけですね。
 下の方を読んでいっていただくと、調査が終了しながら指定に至っていない箇所も多いことや、費用や時間がかかり過ぎるということが、やはり大事な指摘だと思うんです。
 急遽聞き取りをしてみたんですけれども、例えば、一〇〇%だと言われている青森県は、危険箇所数の調査を、昨年を既に上回って、ことしの六百八十六カ所を足すと、一一七%基礎調査をやったことになります。新潟県も、今年度を足しますと、一一八%なんですね。
 ところが、広島県は、今年度の予定は千二百カ所もあるが、それでも五割にいかない。まして北海道は、二割にいかない。ようやく二割というところまでしかいかないんです。やはり、圧倒的に広くて多いということがあると思います。調査経費は百二十万、日数が二十日間かかっているということです。体制的にも、財政だけでなく、人的体制という点でも非常に大変だと思います。その上で、基礎調査を終了しているけれども、未指定が八百二十三件。広島では、二千五百五十九件残されております。
 なので、さっき言ったように、ここを支援していくと同時に、公表した後、円滑な指定に移行できなければさらに大変なことになるわけですが、どのように支援していくんですか。

○うえの大臣政務官 委員御指摘のとおり、調査の後に警戒区域の指定ということになるわけでございます。現在、都道府県におきましては、住民説明会を鋭意開催していただきまして、地域住民の皆さんの御理解を得られるように努めているところでございますが、そのために、一方で、時間を要しているという面もございます。
 私どもといたしましては、市町村長さんあるいは住民の皆さんに、この法律の趣旨というものを十分に御説明いたしまして、区域指定を少しでも早められるように努力をしてまいりたいと考えています。
 そのため、区域指定がおくれております都道府県に対しましては、先進事例を幅広く提供したり、あるいは必要に応じて専門家を派遣して、そうした面で幅広く支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。

○高橋(千)委員 先ほど読み上げた国交省の資料の中でも、保全対象が五戸以上の土砂災害危険箇所に限ってみても、整備水準はまだ二割であるという点で非常におくれているけれども、財政的にもさまざまな困難があるということを指摘しております。ですから、住民の理解を得るということの前提に、やはり国として、本当に、危険箇所への理解を進めることや、あるいは移転の際の要件緩和、支援というのは、思い切って取り組むべきではないか。
 また、自治体の方からは、警戒区域に指定されたときの住宅の補強というふうな提案もされておりますけれども、そうしたことも総合的に議論をしていくことと、きょうは時間がないので言い切りにしますけれども、開発規制を厳格にすると同時に、開発者の任務をどう見ていくのか、そうした課題もしっかりと整理をして、何か住民が抵抗するからというだけの話にしないようにお願いをしたいと思います。
 次に、資料の五枚目、これはきのうの東京新聞ですけれども、会計検査院が初めてダムの維持管理について調査を行ったと。これは、十月二十一日、国土交通大臣に改善処置を要請した件について報じています。
 「防災ダム 治水低下」というふうにコメントがあるんですが、国直轄と補助ダムの二十三道県百六カ所を調査したときに、いわゆる百年間土砂が堆積しても大丈夫だということが基本で設計されていることになっているんですが、計画容量を大きく上回って、六十年でもうオーバーしているところが二十カ所以上あるというふうなことが報道されています。
 ただ、土砂のことだけではないんですね、今回点検したのは。実際の報告には、資料の六にその内訳をつけてありますが、どこが指摘されたのか、どこの県のどこのダムが指摘をされたのかということをつけてありますけれども、計測が三年以上もやられていないとか、修繕が三年以上やられていないとか、それから、先ほど来ずっと通報とか連携のことが議論されているにもかかわらず、ダム堤のところに備えられている地震計とダム管理者に情報が来る自動情報装置が接続されていないなど、いずれも、維持管理に重大な不備が指摘をされているわけです。そうすると、災害の大きさによっては、ダムが洪水調節機能を果たせないばかりか、逆に、被害を大きくする場合もあるということにならないでしょうか。
 国土交通省としての受けとめと、今後の対応を伺いたいと思います。

○うえの大臣政務官 国土交通省が所管をいたしますダム、多目的ダムにつきましては、一般的に、洪水調節容量、利水容量、そして堆砂容量を確保しているところでございます。
 堆砂容量につきましては、原則、百年間で堆積すると見込まれる容量を確保しております。また、土砂が洪水調節容量の部分にも堆積することも考慮いたしまして、その洪水調節容量のところには、一般的には二割程度の余裕を見込んでいるところでございます。
 今般会計検査院の方から御指摘をいただきました、ダムの洪水調節容量内に堆砂があると指摘された百六のダム、議員御指摘のとおりでございますが、これにつきまして、現在、精査中でございます。
 ただ、今し方申しましたように、その洪水調節容量にはあらかじめ一定の容量を見込んでいるというようなこと、あるいは、既に堆砂対策を実施しているダムもあるというようなことがございますので、そうした点を考慮いたしますと、今後堆砂対策を新たに検討し着手すべきダムにつきましては、極めて限定的だろうというふうに認識をしているところでございます。
 いずれにいたしましても、先ほど御指摘のあった、会計検査院の指摘の中の維持管理の点での不備等につきましては、これは道府県管理のダムということになりますが、そうした面につきましても国交省としてしっかりと見ていきたい、そして促していきたいというふうに考えているところでございます。

○高橋(千)委員 最後に、この問題で大臣に見解を伺いたいと思うんです。
 今答弁があったんですけれども、確かに、ダムの計画容量ということは、大概のところで、見込みが甘いんじゃないかとかいろいろな議論があります。ただ、今それを議論しているんではないんです。できることがあるだろう、指摘されていることをどう受けとめるのかということを言っているんですね。
 この新聞の絵を見てもわかるように、水につかっていない斜面のところからもう既に土砂が堆積していって、底から水平に上ってくるわけではないんだ、そうすると、見えているところを処理していけば、維持管理というのは、もっと楽に、お金をかけずにできるんではないか、こういうことも改めて思ったわけです。脇から攻められてきて容量が狭まっている、そういう指摘が今あったわけです。まして、計測は三年以上やっていないとか、そうしたことは非常に重大ではないかと思うんです。
 ですから、放置しておいては災害を大きくすることにもなるんだという視点で、今回は、国直轄と補助ダムという国土交通省所管の、極めて限定的で、かつ大きなダムが対象でありました。しかし、実際には、農水省所管ですとか電力会社のダムなど、さまざまなダムがあります。やはり、こういう視点で、全体に展開して点検、維持管理対策を強めるべきと思いますが、一言伺います。

○山谷国務大臣 会計検査院が国土交通大臣に対しダムの維持管理に係る改善処置を要求したことは承知しております。
 ダムのような大規模構造物について適切に点検、維持管理がなされることは防災対策上重要と考えておりまして、農林水産省所管のダムや電力会社のダムなどについても同様だと考えております。
 このため、会計検査院の改善処置の要求の趣旨を踏まえ、これらのダムなどの点検、維持管理が適切になされるよう、関係省庁に働きかけてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 終わります。

 

――資料――

【資料1】土砂災害危険箇所等の緊急周知の実施状況について

【資料2】土砂災害危険個所の周知内容(都道府県別)

【資料3】北海道新聞 2014年8月26日付

【資料4】砂防関係予算の推移

【資料5】東京新聞 2014年10月22日付

【資料6,7】会計検査院資料

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