【関連】国会質問「危険ドラッグ問題」(2014年10月17日)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、三人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただき、大変ありがとうございました。時間が大変限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。
まず初めに、秋元参考人に伺います。
私、実は、十年以上前に、秋元さんが週刊文春で江川紹子さんと対談をされた、御自身の経験を語られたものを読ませていただきました。ちょうどそのときに精神保健福祉士の資格を取られたということであったと思います。御自身の経験を通して同じ苦しみを抱えている方を援助される、本当にそこに強い説得力が出てきますし、当事者にとって、受ける人たちにとって非常に大きな力になると思いますので、本当に貴重な活動に取り組まれていることに敬意を表したい、このように思います。
私、八月四日に委員会があって、国の対策を伺ったときに、依存症回復施設をもっと強めるんだと国が言っているわけですね。質を高める、そのために研修もするというふうなことを言ったのに対して、そうはいったって、現実の実態は民間団体であるダルクにかなり頼っているのに、どうも上から目線じゃないかということを指摘したことがあるんです。
実際、埼玉県立精神医療センターの成瀬先生などは、雑誌の中で、ダルクができることには限界があります、そのことを理解した上で、ダルクを核とした回復支援のネットワークを築いていくことが必要です、いまだに一民間リハビリ施設であるダルクの孤軍奮闘が続いています、このように指摘をされておりました。
ですから、秋元さんがそうなんだと言うのはなかなか難しい立場だと思いますけれども、でも、東京ダルクは東京精神保健福祉センターと連携して取り組んでいるわけですよね。そういうこともぜひ御紹介いただければと思うんですが、どうでしょうか。
○秋元参考人 ありがとうございます。
私はここ十五年ほど東京都の精神保健センターなので、主に家族が多いのですが、精神保健センターに薬物の相談の電話があって、その相談の電話があった御家族が実際に来所をされて、面接していろいろ聞き取りをして、いろいろな専門家の方々をそこにお呼びして、僕が聞いたその方に関して、その本人のことに関して、これをどういうふうに効果的に支援したらよいのかというのを、午後の時間帯、大体二時間とか三時間かけて話し合って、その話し合った結果を御家族に伝えて、御家族としてしかるべき治療につながれるように、本人は本人として、ダルクなり医療機関なりにつながれるようなことというのを精神保健センターの中でやらせていただいております。
そしてもう一つは、先ほどから和田先生の資料にもございましたが、東京都の精神保健福祉センターでもSMARPPという認知行動療法をやっております。
薬物依存症、危険ドラッグの方が非常に多いんですが、危険ドラッグの使用者があのような行政機関に来て、そこで認知行動療法のプログラムに参加できるというのは、非常に僕としては画期的なことといいますか、やはり、薬物を使った方というのは、端っこに追いやられて、居場所といえば病院の保護室や刑務所だというのがあったんですが、彼らのような本人がそのような行政機関の中に入って、そこで自分の回復治療に取り組めるというのは、これは非常に大きな取り組みではないかなと思います。
そこにも去年から参加させていただいて、ダルクはダルクの活動として、やはりダルクなりの回復への導き方があります。行政機関で行うSMARPPなんかはSMARPPとして、やはりその人に応じた回復支援のあり方というのがあります。そこら辺は、自分の中で何か一つの主義とか一つの思いとかというのに余り凝り固まって支援することなく、やはり、当事者、その人主体で支援をしていくということを常々考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
先ほど、最初のプレゼンのときに、ダルクのやり方になじまない方もいるという表現をされていましたけれども、そういうさまざまな、行政であり民間施設であり、ネットワークがあるし個性があるという中で、全体として支えていくことができたら、依存症対策を強めることができたらいいなと思って今聞かせていただきました。ありがとうございます。
次に、飯泉参考人に伺いたいと思うんですけれども、まさに危険ドラッグは、販売であれ製造であれあるいは使用であれ、広域に動くわけですから、関西広域連合、まさにその名のとおり広域の対応をされているということはとても貴重だと思いますし、きょうお話しされました、国が一律でやらなければならないことと、地方の努力だけでは限界があると述べられたことは、非常にわかりやすいし、重要な御提言だったかなと思っております。
その上で伺いたいなと思うんですけれども、今まで出てきたこととも関連をするんですけれども、徳島県でも条例をつくって、そして販売店はなくなったんだというお話をされました。本当に、これが各県に広がっていくことと、国の体制、両方必要だと思うんですが、いずれにしても、一律にやったとしても、やはり都道府県に期待される分野というのはありますよね。
例えば、今回の一斉取り締まりにおいても、都道府県の薬事監視員が活躍した部分が大変ございます。また、ずっとお話しされている精神保健福祉センターの体制ですとか、いろいろな意味で県に期待される部分というのは大きいと思うんですよね。
そういう点で、それが十分担保されているのか、まあ、行革の流れもあるんですけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。
○飯泉参考人 やはり我々地方公共団体の役割というのは、使わせない環境づくり、そして使わない人づくりという、つまり、この未然防止といった点がまず重要ではないかと思います。
例えば、啓発といった観点が後者になるわけでありますが、では、免許を持った人が、二次的な、テロ行為と先ほどは申し上げたところでありますが、例えば多くのこうした事故を起こしてしまう。であれば、免許センターであるとか、あるいは免許の更新のときに、しっかりとその危険性を打ち込んでいくという形もとらせていただいているところでありますし、やはり、事前に察知をする。そして、県民の皆さんからの通報というのも重要なこととなりますので、本人自身あるいはその周囲の御家族の皆さん方が、何かそうしたものをやっておかしいといった気づき、あるいは、そうしたものをやっているんじゃないか、こういった気づき、これを通報していただく、いわゆる危険ドラッグ一一〇番、これも徳島県としてはフリーダイヤルで設けさせていただいております。
あと、我々地方公共団体として重要なのは、ダルクの皆様方、民間団体の皆さん方はよくやっていただいておりますが、いわゆる回復対策ですね、復帰対策、こうした点について、やはり我々行政とそして医療機関と民間団体が三位一体になって親身に対応していく、こうした点が重要になるかと思いますので、やはり国の、国一律での規制といったものと、そして事前防止の点と、そして不幸にしてそうしたものに手を出してしまった人たちの回復、復帰対策、こうしたものをしっかりとかみ合わせる必要がある、このように考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
おくればせながらかもしれませんが、国も、今回そうした点で予算を拡充するということで今概算要求をしておりますので、ぜひ後押しをして、都道府県の取り組みも支えていけるようにできればいいなと思っております。
次に、和田参考人に伺いたいと思います。
きょう非常に強調されましたこと、よくわかります。検査の体制、やはり同定なしに規制をするということの難しさの問題、受け皿がなくやっていくということで、やはり、今起こっていることに何とか対応したいという気持ちで国会も議論をしてきましたけれども、しかし、本当に受け皿がないということをちゃんと捉えて対応していかなければ大変なことになるということではないかなと思って、非常に貴重な機会をいただいたかと思っております。ありがとうございます。
そこで、まず一つは、先ほど和田先生自身が紹介されましたけれども、例えばSMARPPなどの依存症回復プログラムに今正当な診療報酬がついていないという問題。やはりそれが、治療の現場で、一千六百以上も精神病院があるにもかかわらず、本当に四つしか受け入れているところがない、そこに偏在しているというところにある。もちろん、そこの受け手の教育というのが必要だということも非常に大事だと思うんですが、プログラムなどに対して、例えばマルメではなくとか加算が必要ではないかとか、そうした要望も現実に出されているわけですよね。そういう意味で、正当な診療報酬が必要だと思っておりますが、どのようにお考えでしょうか。
○和田参考人 診療報酬の話になりますと、実は随分前からアルコール依存症と薬物依存症に対して重度加算というものをつけてもらいたいという要望がずっと出されていたと思います。ところが、残念ながら、薬物とアルコールをパッケージとして要求してきたわけですが、ことごとく毎回認めてもらえなかったようです。
ところが、前回になりますか、前々回になりますか、初めて薬物とアルコールを分離して、それぞれ分けて重度加算をお願いしますという申請をしたら、アルコールが通りました。薬物は落とされました。ということで、そういう現状で今薬物は何の加算もありません。
しかし、これは病院から見ますと、正直言いまして、本当に言葉は悪いんですが、手間暇かかるのは薬物の患者さんなんです。また、なかなかルールも守ってもらえない方がいたり、そういうことがあって非常にやりにくいのも事実です。だけれども、私たちから見ると、そういう意味で、やはり大変な患者さんを診ることに対してこそ重度加算をつけてもらいたい。
そういう意味では、本当に、薬物関連精神障害者を診ていく、それに対する重度加算というものはやはり絶対必要だと思います。それがないと、そういう患者さんを診ていこうという病院がふえないという現実があります。
また、SMARPPについても、これは精神保健福祉センターは基本的には相談業務の場所ですから、いわゆる診療報酬に関係ないところが多いわけです。だけれども、これを病院でやるとなると、やはり診療報酬がないと、そこに人を割こうということができません。
ということで、ぜひこれは、SMARPPにしても、あるいは薬物関連患者を診る、それ自体に対しても、やはり診療報酬の問題が一番大きいかなと思っています。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
アルコールがよくて、なぜ薬物がだめなのかということで、ちょっと聞いてみたら、やはり薬物依存の患者というのは結局自分が悪いみたいな、そういうすみ分けがあったように聞いております。
でも、先生自身がおっしゃっておりますけれども、薬物依存というのは精神障害のあれで、たまたまそれが薬物だったんだというふうなことをやはりきちっと整理をしていって、これは何としてもかち取る必要があるのかなというふうに思っております。
もしその点でもう一言あれば伺いたいのと、最後に、家族の支援とか、いわゆる出所後の支援ということは絶対必要だと思っております。御意見ありましたら一言お願いいたします。
○和田参考人 アルコールとそれ以外の薬物はどう違うんだという話、全くこれはいつも出てくる話です。やはり、薬物をやってはだめだというのにやったおまえが悪いだろう、この論理は非常にわかりやすいです。私もそう思います。ただし、なんです。医者から見ますと、あるいは医療従事者から見ますと、原因を問わず、やはり病気になった方々を診るのが医療従事者の仕事だと私は思っています。簡単に言うと、あなたは殺人犯だから診ませんよなんという、そんなばかな論理はないわけです。薬物も全く同じです。原因は、それはいろいろあるでしょう、だけれども、そこでいわゆる精神障害というものになれば、それを診るのが精神医療です。私たちは、原因で患者を診ているわけではありません。ところが、診療報酬の話になると、全然話がひっくり返ってしまいます。
ただ、そこでももう一つ私は考えていただきたいのは、どうもこれまで日本は、薬物問題というと覚醒剤ばかり考えてきたわけですよ。だけれども、今まさに法の網を抜けた脱法という問題が出てきています。これは法に触れないわけですね、そこに本質があると思いますけれども。それ以外に、抗不安薬、睡眠薬の依存がどんどんふえているんです。これは違法でも何でもありません、犯罪でもありません。病院にかかることによってそういうものを処方されて、逆にそれに依存するという、とんでもない事態が起きているわけですよ。そういう患者にも保険を適用しないのかとむしろ言いたいくらいです。
ですから、やはりその辺のことは、もう一度、診療報酬というところは犯罪性ということだけで考えるのではなくて、今何が起きているか、そういうことを含めて考えていただきたいと思います。
それから、最後になりますが、家族です。本当にこれは、正直言いまして、薬物に依存している最中の御本人は、なかなか自分以外のことを考える余裕もなくて、場合によっては、ひたすら薬物を使ってハッピーなのかもわかりません。しかしその一方で、一番困っているのはやはり御家族です。もう本当に、その方々の心労、あるいは経済的負担は並のものではありません。
そういうことで、そういう方々に対して、まず御家族の態度を、あるいは気持ちを和らげる。それによって、薬物を使っている本人自身の対応も変わってきます。そういうことで、やはり家族を救うということが非常に重要だと考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 終わります。ありがとうございました。