年金削減に歯止めを / 高橋議員 「マクロ」適用やめよ
日本共産党の高橋ちづ子議員は15日の衆院厚生労働委員会で、年金積立金の株式運用拡大を狙う政府の姿勢を批判し、マクロ経済スライドによる年金の目減りに歯止めをかけるよう求めました。
高橋氏は、年金の株式運用によって、大きなリスクを背負い、株価対策の道具にされかねないと指摘。「安全かつ効率的に行う」「市場の価格形成や民間の投資行動等をゆがめない」とした年金運用の基本方針を「変えてはならない」と迫りました。塩崎恭久厚労相は「指摘された基本原則はまったく変えない」と答えました。
高橋氏は、年金給付にマクロ経済スライドを適用すれば、政府が約束してきた現役比50%の給付水準も守れないことを指摘。厚労省試算によると、年金の給付水準は、受給開始後しばらくは現役比50%程度であっても、その後低下し、90歳時点では40・4%に落ち込むことを示し、「長生きすればするほど年金は減っていくことになる」と追及しました。
厚労省の香取照幸年金局長は「(給付が)下がっていくのは、制度の仕組みそのものだ」と認めました。
高橋氏は、特に基礎年金の減額率が大きく、3割にも及ぶことをあげ、マクロ経済スライドの適用をやめるよう求めました。塩崎厚労相は「年金の持続可能性を担保するうえで必要」としつつ、「基礎年金の水準が低下するという認識はある」と答えざるをえませんでした。
(しんぶん赤旗 2014年10月16日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、塩崎大臣に初めて質問をさせていただきます。大臣の最も得意分野である年金の運用などについて、株には全く御縁のない私ではありますが、質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
第二次安倍内閣が発足したのは九月三日ですが、前日、塩崎厚労大臣就任が報道されるや否や市場は反応し、二日午前から株価が上がり始め、三日には七カ月ぶりの高値を記録しました。大臣が、世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人、いわゆるGPIFの改革と、公的年金の株による運用拡大を唱えていることに期待をした反応だと思われます。
経済評論家の山崎元氏は、ダイヤモンド・オンラインのコラムで、塩崎氏の株式運用はうまいと書いておりました。大臣の個人の資産ポートフォリオを見たことがあったそうで、大変バランスがよい、そこで、どなたかは存じ上げませんけれども、別の閣僚のポートフォリオに対して、塩崎さんに投資を見習った方がいいとコメントをしたことがあったそうであります。それだけの運用通でありますから、市場が期待することはさもありなんというふうに思うわけであります。
そこで、大臣は就任前、新GPIF法改正を今国会で成立させると言っておりました。これ自体は先送りになったわけですけれども、基本ポートフォリオの見直しについては、既に六月二十四日の日本再興戦略において、「適切な見直しをできるだけ速やかに実施する。」と決定されておりますし、秋にも前倒し実施などと報道されておりました。
ですから、その中でさまざまなことが言われておりまして、例えば国内債券六割、この比率を二割は株式に移すということも言われていたりするんですけれども、そういうことも含めてどんなポイントがあるのか、伺いたいと思います。
○塩崎国務大臣 まず第一に、誤解を解かないといけないのは、私は運用が得意でも何でもなくて、小学校ぐらいに生前贈与をしてもらった株を持っているというだけが中心でありまして、私自身、みずからの意思で株式を買ったということは、日本銀行に入って、持っていると必ず株式欄というのを見るようになるから、おまえ、買えと上司に言われて、一銘柄だけ最低金額で買ったことがありましたけれども、それ以外は私は能動的に買ったことは全くございません。ということで、ダイヤモンド・オンラインにお書きになった方は、よほど、よくわかっていらっしゃらない方がそういうことを言った。
もっと大事なことは、私が言っているGPIF改革は、株の比率をふやせだのというようなことは一度たりとも言ったことはございません。私は、どうやって国民の年金の大事な資産を安全で効率的に運用するか、翻して言えば、今までのが効率的じゃなかったということを申し上げているわけであって、それを国民の視点から国民の利益のために見直していくべきだということを言っているだけでございます。それに伴って、当然必要なのは、分散投資をするからにはリスク管理がきちっとできるガバナンス体制がなければいけない、こういうことで言っているわけであります。
今御指摘の改訂日本再興戦略では、基本ポートフォリオについては、「適切な見直しをできるだけ速やかに実施する。」というふうにされているわけでありまして、年金積立金の運用は、必要な利回りをしっかりと確保しつつ、分散投資によって今申し上げたようにリスクを抑えていくことが重要であって、デフレからの脱却、適度なインフレ環境への移行など長期的な経済、運用環境の変化に即して、基本ポートフォリオの見直しについてしっかりとした検討を速やかに行うこととしたものでございます。
株式運用比率を含む基本ポートフォリオの具体的な見直し内容については、財政検証の結果を踏まえて、GPIFにおいて検討を行っているというふうに私は承知をしております。
○高橋(千)委員 一つ一つ反論していると時間がありませんので、次の続きの中でお話をしていきたいと思うんです。
株式がこれほど反応するということはどういう意味か。それは、大臣就任前にさまざまなことをおっしゃっていた、きょうも既に午前の部で出ていたわけですけれども、そこに反応したのではないかということであると思うんですね。
少しずつ聞いていきたいと思うんですけれども、そもそもGPIFが委託されている基金が今、百二十七兆円。これを一%でも動かせば一兆二千七百億円。これは、東証一部市場の一日当たりの売買代金の、動いていますからあれですけれども、きのうでいうと半分に迫るくらいの大きな規模なわけですね。もしこれが十倍の一割であれば、日本の貿易収支赤字の一年分に迫る規模である。ですから、市場に与えるインパクトが大きいのは当然だと言わなければならないと思うんです。
ことし三月に認可された中期計画は、「年金積立金が被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の年金給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら被保険者の利益のために長期的な観点から安全かつ効率的に行う」のを基本方針としている。これは大臣も総理も何度も答弁をされていることと同じことだと思います。
また、積立金の運用に当たっては、「市場規模を考慮し、自ら過大なマーケットインパクトを蒙ることがないよう努めるとともに、市場の価格形成や民間の投資行動等を歪めないよう配慮」するということが強調されております。やはり、ここの原則というのは変えないというのが大事だと思うんですね。
そこで伺いたいのは、違うと言ってくださればそれでいいんですよ。政府の一部門である公的年金が企業の大株主になる、こうなってしまうとやはり利益相反になるという指摘があります。経営に口出しをする、一方では、その経営にかかわる制度を厚労省としてつくったりしているわけですから。そういう指摘がございます。また、運用を投資会社に委託するのではなく、GPIFが直接投資するインハウス運用になれば、重要な情報に接し得るインサイダー投資の直接的な主体になりかねない、こうした指摘もあるわけであります。
大臣のお考えを伺いたいと思います。
○塩崎国務大臣 先ほど先生御指摘になった基本原則は全く変えません。これは何度も言ってまいりました。
それで、今、インサイダー投資等々のお話、御指摘がありましたが、資金運用においては、御指摘のとおり、利益相反の防止というのが極めて重要でありまして、一般的には職員等のコンプライアンス規定によって担保するものだというふうに理解しております。年金積立金の運用についても、厚生年金保険法等において関係者のコンプライアンスの徹底について規定が定められております。
厚生労働省の運用担当職員に対しては、全力を挙げてその職務を遂行しなければならない義務とか、あるいは秘密保持義務が課されておりまして、これらの義務に違反した職員は責任を負うということになっています。
また、GPIFについても、その役職員に対して同様の義務が課されているほか、理事長や理事は受託者責任を負っているため、善管注意義務、忠実義務が当然課されておりまして、これらの義務違反があった場合には責任を負うということになっています。
年金積み立ての運用について、利益相反の防止も含めたコンプライアンスの確保は重要であると考えておりまして、我々、当然、新しいGPIFはそういった利益相反防止の仕組みをしっかりと取り入れたガバナンスを確立しなければいけないというふうに思っております。
なお、GPIFの株式運用は、民間運用機関に運用委託して行っているものでありまして、GPIFみずからが直接運用をすることは認められておりません。
〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕
○高橋(千)委員 最後のところ、認められておりませんとおっしゃったわけですけれども、これについても、例えば米沢運用委員長などが発言をしているだとか、さまざまな報道があるわけです。ですから、否定していただきたいということを言いました。
やはり利益相反に対して、大臣も非常に慎重であるべきだというふうな答弁をされた。すごく大事なことだと思うんです。個々の議案に対する判断を管理運用法人として行わないということ、要するに、株主権としての権利を行使しないということがこれまでも言われているわけですね。だけれども、企業との対話、もっともっと積極的に情報を得るべきではないかという議論が盛んにされてきたから、そこをあえて指摘させていただきました。
そこで、大臣は、もちろんこれは年金を守ることが優先ですから株価対策ではないというふうにおっしゃっているわけですね。
これについては、例えば九二年の宮沢内閣のときに、公的年金の積立金、当時二兆八千億円、株価対策に投入された株価PKO、平和維持活動をもじって価格維持活動と呼ばれたそうでありますが、二の舞になるのではというふうな指摘もあるわけです。
こういう投入の仕方というのは、やはり即効性があるけれども一時的ではないか。当然、一時的には上がるんだけれども、買いがとまると、株価がだらだら下がってきたり、外国人投資家にも狙われやすいという指摘がございます。
十月四日付の毎日新聞で、日本総研の西沢和彦上席主任研究員が、「企業価値を高めるわけでもなく、成長戦略に位置づけるべきではない。」こういう指摘をしているんですね。これと同じ趣旨のことを、実は麻生財務大臣が、六月三日の財務金融委員会で我が党の佐々木憲昭議員の質問に対して、やはり株というものは会社の実体が伴っていないと、要するに企業の価値が上がっていかないと安定したものにならぬと答えていて、やはりそういうのが基本なんじゃないかなと思うんですけれども、これは認識は一致できるんでしょうか。確認です。
○塩崎国務大臣 冒頭、PKOの話でスタートをされた御質問で、この問題について申し上げれば、こういうあらぬ誤解を招かないために、やはりどこの国も、こういった国の年金資金などの運用機関というのは、政府からの独立性というものを一定程度配慮してつくっているんですね。ですから、そういうことは、これからそういう誤解を招かないようにしていかなきゃいけないというふうに考えています。
この年金積立金の管理運用は、さっきも申し上げたとおり、厚生年金保険法に基づいて専ら被保険者の利益のために安全かつ効率的に行うものであって、PKO、いわゆる株価の維持操作など被保険者の利益以外の他事考慮をすることは法律で禁止をされているわけであります。
ですから、今後とも引き続き法令に基づき適切な運用を行うとともに、独立性、自主性というものを今後改革の中で実現していきたいというふうに思っております。
〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕
○高橋(千)委員 昨年の十一月の公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議、この報告書の中では、「各資金は、」各資金というのは今GPIFが持っている「各資金は、コストをできる限り抑える観点から委託手数料等の縮減に努めて」いると評価をしているんですね。その上で、「その結果、かえって十分な情報を得られず、」私がさっき言った話ですよ、企業に、もっと情報を得ようという話、「十分な情報を得られず、貴重な運用機会を逃している」「金融・資本市場の発達を阻害する要因になっている可能性がある。なお、より高度な運用を行う結果、手数料を含むコストが上昇することもあり得る」と言っているわけですね。
つまり、今、次のGPIFの報酬をどうするのかとかいうことが非常に議論になっているわけでありますけれども、本当に情報をもっともっとつかんで動き、企業と株価の状況をつかんで的確にリターンを得ようとするならば、もっとプロでなければならない。だから、手数料も、当然、今までではない、思い切ったものをやるべきなんだという趣旨で述べているんだと思うんですね。このときの有識者会議のメンバーが、米沢委員長を初め三名が今のGPIFの運用委員会に入っている、こういう状態なわけです。
でも、私は、そこまでしてハイリスクなかけを、つまり、手数料をうんと弾んで、そして本当のプロを採用して絶えず株の動きを見ていなきゃいけない、そこまでしてやる必要があるんだろうかと思うんです。
今でさえ分散投資をしています。ことし四月に日本株の運用先を見直しして、その委託先の七割は外資系会社十社。これはほとんど米国ですが、こういうふうになっているわけです、既に。つまり、国内株でありながら、顔ぶれはメード・イン・USA、こういう状態になっている。
これが事実かどうかということをまず確認したいのと、その上で、やはりここまでリスクをとる必要はない、要するに、ここまでやっているんだから、もうこれ以上は必要ないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○香取政府参考人 御答弁申し上げます。
先に運用機関の入れかえに関して御説明申し上げますが、御案内のように、今大臣からも御答弁申し上げましたが、GPIFは、国内外の運用受託機関に運用を委託するという形で資金運用を行っております。
これは定期的に見直しを行っているわけでございますが、基本的には、国内、国外を問わず公募を行って、その公募に応募した運用機関の中から選ぶ。これは、GPIFにおきまして、それぞれ、GPIFの専門的な見地から、投資方針でありますとか運用のプロセス、組織、人材、コンプライアンス、あるいは今回御議論がありました株主議決権行使の取り組み等々精査をしまして、かつ運用手数料も含めて、総合評価を踏まえて運用委員会で御審議をいただいて決めるということになってございます。
今回、結果として外資系の運用機関の増加がありましたけれども、これは、そのような見直しの結果ということでございます。
それから、役職員の報酬の話でございますが、これも今大臣から御答弁ありましたように、GPIFとしては、あるいは私どもとしては、年金財政として必要な運用利回りを確実に確保する、かつ、同時にできるだけリスクを抑えていくということを行っていくということでございます。
したがいまして、これは株式だけではなくて国債あるいは外国債等も運用しておりますので、広い意味での市場環境の変化を確実に押さえて、機動的で効率的な運用を行うことが必要だということ、特に、長いデフレから脱却をして、名目で経済成長をするという形で運用環境が大きく変わっておりますので、そういう中で、市場の運用を確実に行っていくという観点で必要な人材の確保も必要であろうということで、このことは、どのような運用方針で臨むかということにかかわらず、いわばハイリスク・ハイリターンのためにそういう人を雇うということではないということでございます。
御指摘にあった閣議決定でも、高度で専門的な人材確保ができるように、職員数、給与水準の弾力化を行うということになってございますし、私ども、今回運用の見直し、あるいは財政検証に当たって設置いたしました専門委員会の報告におきましても、運用の専門組織としてふさわしい、高度な専門性を持った質の高い人材の確保と育成をしていくべきということになっております。
ちなみに、運用手数料でございますが、私ども、GPIFは、史上最大、先ほどありましたように非常に大きい基金を持っているということで、実は運用手数料が〇・〇二%という水準でございます。これはもう世界最低水準の低コストの運用。通常、米国等の大規模年金基金ですと〇・四%程度、皆様方がお買い求めになる個人の運用ですと一%から最大三%ぐらいの手数料でございますので、非常に低い運用手数料で基本的には賄って運用を行っているということでございます。
以上です。
○高橋(千)委員 年金の次の議論がもう一つありますので、ちょっとここは残念ながら問いを飛ばしたいと思うんですが、一言だけ指摘をして次に行きたいと思うんです。
要するに、今までは、デフレのときは安定的な国債でやってきたんだ、だけれども、デフレから脱却する過程で、物価が上がって賃金が上がって、それは望ましいんでしょうけれども、運用が追いつかないとだめだからと、そういう答弁を大臣も、あるいは総理もされてきたと思うんです。
だけれども、資料の二枚目を見ますと、運用利回りから名目賃金の上昇率を引いて初めて年金財政上の実質的な利回りというのを計算する方法になっているわけですね。そうすると、下が財政計算上の前提なんです。ですから、下はプラスが立っています。でも、上の方は、自主運用を始めて十三年間ほとんどマイナスである。賃金がマイナスであるから何とか利回りが上がってきた。
だから、ここで利回りを上げることも大事かもしれないけれども、それ以上にやはり実質の賃金のところを上げていく、そこに本当に力を入れていくというのが大事なんじゃないか。要するに、物価が上がったところに運用が追いつかないなんて心配をしている段階ではないのだということを指摘しておきたいというふうに思っております。
この問題は引き続いて、次の国会にも出されるということですので、次の機会で質問したいと思います。
そこで、実際の年金給付がどうなっていくのか、局長、少し簡潔に答弁をお願いしたいと思います、答弁がちょっと長過ぎるので。
資料の三枚目につけておいたんですが、これは非常に面倒くさい計算なので、仮定の数字、要するに、来年の四月どうなるかという話なんですよ。仮定の数字を入れるしかありません、まだ数字が出ておりませんので。
そこで、うちの事務所で計算をしてみたわけですけれども、上は物価上昇率が二%の場合、特例水準の解消〇・五%は残っております。マクロ経済スライドが初めて一%発動される。そうすると、実質〇・五%ふえるのかな、それって、基礎年金満額の場合で三百二十二円、そういう水準なんだろうということ。それから、下は賃金上昇率が物価に追いつかなかった場合、これは、マクロ経済スライドは足切りになりますので、結局、ことしと一円も変わらない。
こういう計算になるのかなと思いますが、いかがでしょうか。
○香取政府参考人 では、簡潔に。
マクロ経済スライドの年金額調整は、特例水準を解消した上で、物価、賃金の変動に対して行うということになります。
したがいまして、まず特例水準解消分の〇・五がございまして、それを引いた後の物価、賃金の上昇率に対してマクロスライドがかかるということになりますので、先生が置きましたような前提を置いて、マクロスライドの率が一%となりますと、このような結果になろうかというふうに思います。
実際の数字は、御案内のように、最終的には総務省のお示しになる数字で年末に確定されるということでございます。
○高橋(千)委員 実質はどうかと言っちゃうとまたあれなんですけれども、少なくとも下がらないであろうということが今想像されるんだけれども、結局そこは、マクロ経済スライドが給付抑制ではあるんだけれども、マイナスにはならないというところが歯どめにはなっている。
問題は、年金部会、きょう、たった今この時間やっておりますけれども、しかもそれを議題にしておりますけれども、デフレ下でもマクロ経済スライドを発動して調整を行うべきだという議論があるわけです。これが将来の年金水準を確保すると言うけれども、本当にそうなんだろうかということを聞きたいと思うんですね。
それで、今の資料の四枚目を見ていただきたいんですけれども、先日やった財政検証で、八個のケース、経済成長のケースがあって、五つのケースが上昇する、残り三つは上昇しない。上昇しなければ所得代替率五割確保するというのはないだろうということが言われているわけなんですけれども、ケースEというのが、ここで示したのが大分現実に近いのではないかということがよく言われているんです。
そこで、ここで比較をしたいんですけれども、比例年金の夫と基礎年金の妻という形のモデル世帯の所得代替率がどうなるかというものなんですけれども、ここは、平成三十一年、二〇一九年では、厚生年金の調整終了、つまりマクロ経済スライドが終了して、その後は代替率がずっと同じになる。だけれども、基礎年金は、その後ずっとおくれて、二十年以上おくれて、平成五十五年度、二〇四三年まで調整がかかっていくんですね。
これは、終了年度がこんなに大きく違うのはなぜでしょうか。
○香取政府参考人 御指摘のように、マクロスライドの周期が厚生年金と国民年金で違っているということでございます。
この原因はということでございますが、実はこれは、デフレの間、御案内のように年金はマイナス改定になるところを、特例的に年金改定を行わないということで、いわば年金水準が高どまりをするという状態が続きました。
これがいわゆる特例水準でございますが、実は、この特例水準を置いたことによりまして、基礎年金は定額で給付をしておりますので、いわば国民年金の方が高どまりをずっとしたことによって、国民年金財政に非常に大きな負担がかかったということで、いわばこの分を最終的に調整するために、国民年金の方がより長くマクロスライドの期間がかかるということになったということでございます。
その意味では、これは、この間、高い給付を、本来物価に応じた水準で行わないで、特例水準をずっと維持したということのいわば影響が将来の給付に出たということだというふうに御理解いただきたいと思います。
○高橋(千)委員 満額でも六万四千円という水準の国民年金に対して、高い給付だったという言葉は本当に当事者にとって冷たいせりふではないかなということを指摘したいなと思うんです。
それで、基礎年金が減ることによって、それは当然比例年金の方も、厚生年金の方もそこに引きずられて下がっていくわけですね。
それで、実際にどうなるかということで、5の資料を見ていただきたいんですけれども、仮に財政検証のとおりに、見込みのとおりに動いたとしても、所得代替率の五割確保できているというのは、それはあくまでも年金裁定時の水準なわけですね。
この資料の見方ですけれども、例えば真ん中の人を見ていただくと、一九六四年度生まれで五十歳の方は、年金をもらう六十五歳と仮定すると五六・八%。これを横にずっと延ばしていくんですね。そうすると、八十歳で四三・一%、九十歳で四〇・四%ということで、どなたも五〇%というのは最初だけで、がっと減っていく。つまり、長生きすればするほど年金は減っていく、こういう仕掛けになっている。
いかがですか。
○香取政府参考人 所得代替率は、法律上、年金を新しく受け取り始めたとき、いわゆる新規裁定年金について、現役世代の賃金との比較で比率をお示しする。この年金額が五〇%を下回らないこと、下回る場合には必要な制度改正を行うというのが法律上の要請でございます。
この考え方は、これは法律制定時にも御説明していますが、高齢期の生活というのは現役生活の延長であるということで、高齢期となって新たに年金を受け取り始めているときに、その時点での現役世代との賃金のバランスということで考えるということでございます。
基本的には、その後の年金については、購買力維持ということで、物価あるいは賃金の上昇による改定ということで行い、かつ現役との負担のバランス、負担と給付のバランスということで、先ほどからお話のあるマクロスライドというものが入っているということになります。
したがいまして、ある意味、裁定の後、物価、賃金の動向あるいはマクロスライドによって少しずつ下がっていくというのは、いわば十六年改正で想定された基本的な制度の仕組みそのものだということでございます。
○高橋(千)委員 世代間格差とか現役世代とのツケ回しをしないということが、ですからバランスをとる必要があるんだと何度も言ってきたんだけれども、しかし、その中でも、五割、五割と言ってきたことでさえも、それは最初だけの話だったのねという状態の中で、本当にそれでいいのかということを考えなくちゃいけないんですよ。
結局それは、世代内でいったときに、高齢者の貧困ががばっとふえるわけですね。そのままでいいのかということをちゃんと言わないと、考えないといけないわけです。
資料の六枚目に、これはどのくらい減るかというのを書いたわけですけれども、基礎年金は最終スライドを終わったときには三割減るわけですね、三割。
今、政府のモデル世帯はいつも夫婦で、片っ方は厚生年金でと。いつまでもそのパターンではないわけですね。当然ひとり暮らしの高齢者がふえます。今の若い人たちの状態からいっても、当然そういうことは予想されます。そして、今もらっている人たちもこれだけ減るんだということを、本当にどう見るのか。
少なくとも私は、マクロ経済スライドはやめるべきだと思っています。少なくとも基礎年金にマクロ経済スライドをかけるべきではない、これは年金部会でさえも複数意見が出ていますね。大臣、そのことを御存じでしょうか。そして、そういうことを本当に考えなきゃいけないんじゃないでしょうか。どうですか。
○塩崎国務大臣 基礎年金の目減りについてのお話をされているんだろうと思いますが、基礎年金の水準については、昭和六十年の基礎年金導入当時においても、もともと老後生活の基礎的な部分を保障するという考え方から設定された経緯がございまして、こうした経緯からも明らかなように、基礎年金は、現役時代に構築した生活基盤や老後の備えと合わせて一定の水準の生活を可能とするものであって、必ずしも年金だけで老後生活を賄うという考え方で設計をしたものではないわけでございます。
また、平成十六年の制度改正において、将来の負担を過重にしないように厚生年金、国民年金の双方について保険料の上限を固定した以上、基礎年金についてもスライド調整をかけて給付と負担の均衡を図ることは、これは最大の目的であります年金の持続可能性を担保する上で必要な措置であるわけであります。
一方で、マクロ経済スライドによります基礎年金の調整期間が長く、そしてまた基礎年金の水準が低下するという問題については、今お示しをいただきましたけれども、認識をしておりまして、ことしの財政検証では、一定の制度見直しを仮定したオプション試算というのを実施しておりますけれども、短時間労働者の適用拡大などのオプションが、制度の持続可能性を高めて、基礎年金も含めて給付水準を確保する上でプラスの効果があることが、今回、オプションを初めて示して、確認ができたところでございます。
それぞれのオプションというのは、もちろん、一定の痛み、そしてまた国民負担の増というものを伴うものでありますから、今回の結果を材料に、今後、国民の理解を得つつ、関係者との間で十分に議論して、制度見直しの検討を進めていきたいと思います。
○高橋(千)委員 そのオプションこそが、まさに制度の破綻を認めたものだと言わなければなりません。
続きはまたやります。
終わります。
――資料――
【資料1】厚生年金・国民年金の積立金運用について
【資料2】年金財政上求められる運用利回りとの比較(年金積立金管理運用独立行政法人「平成25年度業務概況書」)
【資料3】2015年4月の基礎年金額のイメージ
【資料4】平成26年度財政検証の結果について
【資料5】生年度別に見た年金受給後の厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人の基礎年金含む)の見通し
【資料6】所得代替率の将来見通しと年金減額率
【資料7】貧困高齢者比率の将来見通し
【資料8】高齢者の等価所得分布の将来見通し