労働者の不利益回避を / 高橋議員 心理負担検査義務化で
衆院厚生労働委員会は18日、労働者の心理的な負担を把握する「ストレスチェック」を事業所に義務付ける労働安全衛生法改正案を全会一致で可決しました。日本共産党の高橋ちづ子議員は法案に賛成した上で、会社側が受診を強要し懲戒処分の口実とするなど労働者の不利益とならないよう求めました。
高橋氏は採決に先立つ質疑で、「会社側がチェック結果の通知や受診を強要した場合はどうなるか」と質問。就業規則に「受診命令」などの規定を設ければ「産業医の受診に応じない労働者の解雇を視野に入れた場合に有用」とする東京経営者協会の「Q&A」を紹介しました。
厚労省の中野雅之労働基準局長は「法令は受診義務を課していないので、これを就業規則に書くのは法令違反だ」と答弁しました。
高橋氏は、労働者がチェック結果の通知に同意しなかったことなどを理由に、会社側が労災の安全配慮義務違反を免れないように要求。田村憲久厚労相は「免れるわけにはならない」と答えました。
また高橋氏は、安倍内閣の日本再興戦略改訂について、いま見直しが進められている裁量労働制でも労働時間の管理が健康確保措置のカギになっていると指摘。労働時間でなく成果で評価する「残業代ゼロ」制度になれば、成果を出すために長時間労働にならざるをえないと批判しました。
(しんぶん赤旗 2014年6月20日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
今回の労働安全衛生法改正のきっかけは、民主党、長妻大臣のときに、当時は年間三万人を超えていた自殺者対策の一環である、メンタル不調者のスクリーニングをするという表現で提唱したことがきっかけでありました。本法案における問題意識は同じなのか、大臣に伺いたいと思います。
それで、労働者の義務化については強く反対があり、今回これを外したことはよかったと思っているんですけれども、逆に、事業場がその実態を知らないということでは職場環境の改善につながらない、これだけでは意味がないわけですので、どのようにストレスチェックを職場環境の改善につなげるのか。二つ、お願いいたします。
○田村国務大臣 今もおっしゃられましたとおり、今般のストレスチェック制度は、御本人がまず自発的に受けていただく。もちろん、その機会は事業者が提供しなきゃなりません。ですから、機会はあるわけでありますが、それを受けるか受けないかは御本人の御判断ということであります。それにおいて、自分の言うなればどれくらいストレスがあるかということに気づいていただくことが重要であるわけでありますし、そのストレスチェックをした後に面接相談等々していくかに関しましても、御本人の判断になるわけであります。
そういう意味では、よく言います一次予防というようなことが対象になってまいりますので、二次予防等々も結果的にはあろうと思いますが、主眼は一次予防に置いておるということでございます。
しからば、それでは困るではないかという話でございますが、ストレスチェックをしてストレスを気づくことがいかに重要であるか、こういうことを労働者の方々に事業者としてしっかりと御説明していただくことは重要であろうというふうに考えておりますし、あわせて、ストレスチェックをやられた後に面接指導をやはりやっていただくということに関しては、積極的にやっていただいた方がいいですよというような勧奨といいますか、それはやっていく必要があろうというふうに思います。
それぞれ面接指導等々行う中において、会社側として何を行うべきかということも必要に応じて対応いただくわけでありますし、先ほど来話が出ておりますけれども、本人が特定できないような集団的な分析、その評価結果等々を用いて職場環境の改善につなげていただければというふうに考えておるわけでございます。それぞれ御本人の御判断というところはありますが、そこは、効果等々を説明する中において積極的に受けていただければありがたい、このように考えておるわけであります。
○高橋(千)委員 あえて私は、質問は二つと言いました。だから、最初の問いは、まず問題意識なんです。要するに、簡単に言えば、何のためにやるのかということなんですよ。つまり、スクリーニングをするという表現だけが歩き出しますと、やはりそれは単なるあぶり出しだ、メンタルな人をよけてしまえということになっては困るわけで、過労死やうつ病によって自殺するような方が減っていくために職場環境を変えていくんだ、そっちに軸足があるのかということを最初に聞きました。
○田村国務大臣 ですから、一次予防が主眼でございますので、そういう意味では、ストレスを気づいていただくということ。今委員が言われました、うつ病を見つけたりだとかそういうことが主眼でスクリーニングをするのではなくて、あくまでもストレスに気づいていただく一次予防というのが主眼であるということであります。
○高橋(千)委員 とても大事なことでありますので。
そこで、第六十六条の健康診断。第一項に、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」となっています。これが現行法です。
当初の案では、ここのところに、健康診断、括弧でいわゆるストレスチェックを除くという形で、完全に健康診断とストレスチェックを別建てにされた、そういう案文になっておりました。
これに対して、産業衛生学会などは、心と体の健康を分離して健康診断を行うということはやはり実行不可能だ、ここは除くというところを削除せよというふうに意見を述べていたと思いますが、これについてはどのように整理されたか、お答えください。
○半田政府参考人 今回のストレスチェック制度は、ストレスの程度を評価するための検査でございます。健康診断と重複し得る概念であるために、事業者に対する義務づけが重複しないようにということで、法技術的な観点から、六十六条一項に規定する健康診断から、新たに創設するストレスチェックを除いているものでございます。この規定の趣旨は、二十三年に国会に提出した法案においても同じでございます。
ただ、前回提出した法案におきましては、御指摘のとおり、健康診断から精神的健康の状況に係るものを除くという条文の規定としておりましたが、これは、委員の御指摘のとおり、心身の健康を分離しているものとの誤解を生ずる表現であったと考えます。今回の法案では、そういった点を踏まえまして、より趣旨を明確にするために、六十六条の十第一項に規定する検査を除くという規定に変更したものでございます。
○高橋(千)委員 確認をさせていただきました。
やはり心と体は一体だと。この間も参考人質疑の中で産業衛生学会の圓藤先生に伺ったわけですけれども、例えば顔色とか表情とか、声の力とか睡眠不足とか、そういういろいろなことを、問診の中で体の不調にも気づいていく、そういうことがやられていたことを完全に離すということになっては困るという趣旨だったと思っております。確認をさせていただきました。
そこで、ストレスチェックの当初言われていた九項目、これは大変不評でありました。「ひどく疲れた」とか「へとへとだ」とか「だるい」とか、全部同じ意味じゃないかと私は思うんですが、「不安だ」とか「落ち着かない」とか、これはほとんど、下手すれば全部丸がついちゃうんじゃないか、誰もが丸がついちゃうんじゃないかと思うような中身であって、根拠も不明瞭であるとして、大変厳しい批判がされたと思います。この点についてどう考えるかということであります。
同時に、この委員会の中でも、五十七項目というもともとの、既に実績もあるからこれを使うというか、それをもとにして検討していくというふうなことをおっしゃっていたと思うんです。
だけれども、やはり簡易検査ですから、あくまでセルフチェックの糸口である。ですから、逆に言うと、現場では、メンタル不調を自覚した労働者が、万が一、その後の処遇、つまり、あなたは働けないよねというふうなことになっては困るので正しく申告しないとか、逆もありだと。そういうふうな形で、本当に適正なものになるのかということについては、非常に疑問符が出ているわけなんです。つまり、項目がどうなったとしてもです。
そういう意味で、モデル事業ですとか、やはり一定の検証を重ねた上で実践に入っていく方が望ましいと思いますが、いかがでしょうか。
○半田政府参考人 私どもとしましては、先ほど何度か御説明してございますが、先生も御指摘のございました五十七項目の職業性ストレス簡易調査票は、繰り返しになりますけれども、一万二千人を対象とした試験的調査により、信頼性、妥当性が統計学的に確認されていると考えてございます。これをそのままやるというわけではございませんが、こういったものもベースにしながら、今後、専門家の皆さんの御意見を伺いながら、慎重に定めてまいりたいと思っているわけでございます。
それから、さらにそれに加えまして、これも先ほどの御答弁の中で申し上げたところでございますが、ストレスチェックの結果を踏まえまして基本的には面接指導をやっていただく、その中でよくお話をしていく中で的確に把握していくことができるようになると考えてございまして、そういった指針をきちんと定めていくというようなことで対応していきたいと考えておるところでございます。
○高橋(千)委員 ちょっとここは残念なんですね。信頼性、妥当性と言い切っちゃっていいのだろうか。やはり現場からそういう声が出ているのに対して、決めてしまっていいのだろうか。
逆に言うと、さっきの健康診断の考え方をやりとりしたことにも近いんですけれども、ストレスチェックをやったから、それでもう義務を果たしたんだということになっても困るわけですね。あるいは、そういう気づくチャンスがあったんだから、それで、後のことは労働者の自己責任よとなっても困るわけですね。やはりそういうことをきちんと確認していかなければならないなと思うんです。
例えば、面接指導を希望したことによる不利益については禁止規定があります。でも、その逆はないんですね。会社は結果を知りたい、つまり本人が教えなければ会社には教えないことになっていますけれども、でも結果を知りたい、どうなったのと聞きたい、あるいは、不調のようだからあなたは受診しなさい、そういった場合、どうなるでしょうか。就業規則に受診命令や休職命令などの規定を設けておけば、労働者が会社の指示に従わなかったとして懲戒の理由にされることがあるでしょうか。
これは資料の一につけておいたんですけれども、実は、このことを私は十六日の参考人質疑で三柴参考人に質問いたしました。
三柴先生は、安全衛生分科会の公益代表委員であって、立法にかかわりましたと御自身がおっしゃっているわけであります。その御自身が書いた「知っておくべきメンタルヘルスの法律知識」ということで、「就業規則に根拠規定があれば会社が産業医面談や産業医への受診を強制できることもある」というふうに書いていて、例えば復職に関する受診命令のときにはこのような根拠規定があり得ますよということで、右側にも書いてある。こういうふうなことがあり得ますかということに、先生自身が書いていますから、そうしたら、就業規則が鍵になりますという言葉を述べたわけでありますね。どのように考えるでしょうか。
○中野政府参考人 まず、ストレスチェック制度についてでございますが、この制度は、労働者の極めて機微性の高いものを取り扱うことになるために、希望しない労働者に受診を義務づけることは適当でないことから、受診義務の規定を設けないこととしております。
こうした制度の趣旨に鑑みますと、御指摘のケース、ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しなかったこととか、あるいはストレスチェックを受けなかったことを理由として不利益取り扱いを行うことは適当でないものと考えております。
厚生労働省といたしましては、正当な理由なく労働者に不利益な取り扱いがなされることを防止するために、今後、関係者の意見を聞きつつ検討を行いまして、不適当と考えられる事例を指針等で示すとともに、そのような取り扱いがなされることがないよう、事業者に対して必要な指導を行ってまいりたいと考えております。
また、御指摘にございました、資料でお配りになっております三柴先生が書かれた事例とストレスチェック制度は、必ずしもこういう場合を想定したものではないとは思いますが、こちらの方は、先生がこういうふうに書かれているということでございます。
我々といたしましては、懲戒につきましては、労働契約法十五条におきまして、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効とするということになっておりまして、具体的には、個々の事案に応じて、最終的には司法判断されるものであると考えております。
○高橋(千)委員 受診命令を就業規則に書くこと自体は、先生がおっしゃっているように、ありだということなんですか。
○中野政府参考人 まず、ストレスチェックについては、受診義務を課しておりませんので、それを就業規則に書くというのは法令に反することになろうかと考えております。
また、一般に、産業医の面接の御指摘かと思いますが、これにつきましては、ここの三柴先生のお答えでも、回答のところに、一般的には受診を強制することはできないとまず書かれております。これが原則であろうと思っております。その上で、いろいろと例外的なケースを恐らく書かれているのであろうと思います。
○高橋(千)委員 もちろん、そうなんです。三柴先生がそれをできるできると書いているわけではない、原則はそうだというふうに書いているのを踏まえた上で質問しました。
なぜかというと、東京経営者協会が、二〇一一年に「メンタルヘルス不全社員の退職・解雇について」、こういうQアンドAを出しているんですね。その中で、「就業規則に受診を命じる旨の規定があれば業務命令として医師の受診を命じることができる。」。だから、例えばストレスチェック、あなたはどうだった、不調であれば受診しなさいということは十分あり得るんですよ。
その上で、ポツの二つ目に、「解雇するにあたっては、治療の機会を与えたのか否かがチェックされる。」。だから、争いになったとしても、あらかじめ受診命令を書いておいたら、そこは、会社としては義務を果たしたんだよということになって、争いがしやすいよねということをるる書いているわけなんですよ。
そういうことではないんだということで、趣旨を徹底していただくということを確認させていただきました。ここはちょっと時間がないので、次の質問をしたいと思います。
それで、もう一つの争いというのは、労災の場合ですね。労災の争いになったときに、さっき言っているように、労働者が知らせたくないということになったら、会社には知らされません。そうすると、安全配慮義務が問われないことになっては困るわけですね。その点についてはどうお考えですか。
○田村国務大臣 先ほど来話がありますとおり、これは非常に機微性の高いといいますかセンシティブな情報でございますので、ストレスチェックした内容等々、情報が事業者に行く場合は、本人の同意を得なければならないわけであります。
もちろん、面接指導も御本人の御判断ということになってくるわけでありますが、言うならば、ストレスチェックだけでメンタルヘルス対策が完結しているわけではなくて、やはり企業にしてみれば、ちゃんと管理者等々が、例えば相談対応するでありますとか、それから職場環境というものを把握した上で、改善が必要な場合は改善もしていかなきゃならないわけでございまして、そのようなちゃんとした対応というものはメンタルヘルス対策という形でやっていただきたいということであります。
今、安全配慮義務の話がございました。
安全配慮義務違反に関しましては、個々の事例によって違いますので、最終的には裁判所が判断をされることになってこようと思いますが、そもそもストレスチェック自体が今はまだ義務化もされていないわけでありまして、その場合でも安全配慮義務というものはちゃんとかかっているわけでありますので、今言いましたような、本人の同意で情報が行かない、もしくは面接を受けない、相談を受けないということで安全配慮義務を免れることにはならないわけでございますので、そこはそのように御理解をいただければありがたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 相談を受けないということで安全配慮義務が免れることにはならないと答弁をされたことは、とても大事なことではないかと思います。やはり裁判もいろいろありまして、労働時間の場合は、後から問題にしても、労働時間というきちっとした、残業を八十時間も百時間もやったじゃないかという証拠が残っているわけだけれども、メンタルというのは、当然、パワハラですとかさまざまあるわけですね。そのことが、機会があったのにできなかったじゃないかということで、結局、本人の責任だよねということになっては困るという意味で質問させていただきました。
私は、セルフチェックという形で一次予防に結びついていくのはすごくいいことだと思っているんですけれども、ただ、それが結局、メンタルも自己責任よとなっては困るということで、重ねて指摘をさせていただきました。
時間がもったいないので、次のテーマに行きたいと思います。
日本再興戦略の改訂版素案が十六日に出されました。資料の最後にその抜粋を載せております。
実は、再興戦略の中で、「働き方改革の実現」ということで、雇用に関する問題は非常に多いわけですね。残業代ゼロばかりではないんですね。隣の限定正社員なども随分議論してきたことで、一つ一つ聞きたいところでありますが、きょうは、やはり労働安全衛生法に極めて関係のある問題で、時間の改革について質問したい。
これで見ていただくとわかるように、2のところ、「時間ではなく成果で評価される制度への改革」、これがいわゆる我々が言っている残業代ゼロ制度でございます。まだ呼び名が決まっておりませんので、このように、いわゆるということで呼ばせていただく。
三つ目に、「裁量労働制の新たな枠組みの構築」。つまり、ゼロ制度になろうがなるまいが、裁量労働制の見直しというのは今準備をしているわけですね。その改正のポイントについて、簡潔にお願いします。
○中野政府参考人 成長戦略改訂版素案におきまして、企業の中核部門、研究開発部門等で裁量的に働く労働者に対しまして、「生産性向上と仕事と生活の調和、健康確保の視点に立って、対象範囲や手続きを見直し、「裁量労働制の新たな枠組み」を構築する」旨が明記されているところでございます。
この点につきまして、裁量労働制は、業務遂行のための標準的な労働時間を労使で設定することによりまして、生産性を上げ、結果としてワーク・ライフ・バランスにも資するような働き方を実現できる仕組みでございまして、対象労働者の満足度も高いものでございます。
一方で、対象業務の範囲や手続について活用しにくいという指摘もございますことから、労使の意見も十分伺いながら、労働政策審議会で見直しに向けた議論を進めていきたい、こういう趣旨でございます。
○高橋(千)委員 資料の二枚目に、「労働時間制度の概況」というのをつけておきました。
これは、変形労働時間制とかフレックスタイム制とか、要するに弾力的な労働時間制度がさまざまあるわけですけれども、通常の労働時間と比べると、五割強の労働者が実際に労働時間が弾力的な制度をもう既に使っているということであります。
それで、確認をいたしますが、今回見直しをするというのは、一番下の企画業務型裁量労働制、今、〇・三%の労働者だと言われておりますけれども、これを広げるつもりであるのかというのが一つ。
それから、二つ目に、「企画業務型裁量労働制の趣旨」ということで資料の三につけております、ちっちゃい字なので読みませんけれども。
今おっしゃったような、どういうものが企画業務型裁量労働制に当たるのかということで、これは流れがあるんですね。流れの中に、労使委員会を設置するというのがあります。これは専門業務型にはないわけですね。今の一覧表でいうと、専門業務型は単なる届け出であります、労使協定で定めた時間を労働したものとみなすとなっていますが、企画業務型の場合は、労使委員会で決議をしなければならないということで、手続が違います。ですから、手続を見直すというのは、これをとっちゃうという意味なんでしょうか。
○中野政府参考人 まず一点目でございますが、今回、この素案で念頭に置いておりますのは、企画業務型裁量制についてでございます。
それから、対象範囲や手続が検討の対象になると先ほど御答弁申し上げましたが、手続につきましては全般が議論の対象になると考えておりますが、具体的な中身については、今後、労使の入った審議会で御議論いただくこととなろうかと思います。
○高橋(千)委員 これから決めるということですが、対象範囲と手続ということなので、当然、ここが面倒だなということで狙われているのではないかと指摘をしなくちゃいけないと思うんですね。
その上で、これもみなし労働時間ということになっていて、大臣が最近言うようになったいわゆる残業代込みになっているわけですけれども、これだってやはり医師の面接指導のスキームというのはあるわけですね。そうすると、どのような形で労働時間を把握して健康確保義務を果たしているのでしょうか。
○中野政府参考人 裁量労働制で働く方につきましても、御指摘の趣旨は、安全衛生法に規定されている、長時間にわたる時間外労働を行った場合の医師による面接指導の件だと思いますが、この点につきましては、裁量労働制の対象者そのものについて、労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を労使で定めて実施することが労基法上求められております。
具体的には、例えばタイムカードやICカード、パソコンのログイン、ログアウト時間によりまして在社時間を把握する等、事業場の実態に応じて適切な方法により裁量労働制適用労働者の勤務状況の把握を行うこととされておりまして、それに基づきまして、安全衛生法上の医師の面接指導の場合や、あるいは労基法で求めております健康・福祉確保措置を講ずることが必要となるものでございます。
○高橋(千)委員 今お答えにもあったように、みなし労働時間を初めから決めていて残業代込みなんだけれども、しかし、労働時間の状況ということで届け出もしなくちゃいけませんし、長時間働いているのではないか、あるいは健康確保措置がとられているかどうかということでは、労使委員会で絶えず見ていくわけですよね。私は、そういう意味で、大事な意味があると思うんです。結局、それをどう把握するのかというと、タイムカードであったりPCのログインであったりして、健康確保措置といったときに、時間というのがやはり大きな鍵なんですね。だから、時間制というのはやはりこだわらなければならないということがあったんだと思っております。
そこで、経団連の榊原会長は、今回のいわゆる残業代ゼロ制度に対して、少なくとも一千万円以上という限定について、余り限定せず、対象職種を広げる形で制度化を期待したいともう既におっしゃっています。やる前からおっしゃっております。
そういう中で、いわゆる残業代ゼロ制度というのは、今るる議論してきた裁量労働制とも違うと言っているわけですね。そうすると、今言った最低限の縛りさえもやはりとってしまう、そういうことなんでしょうか。
○中野政府参考人 裁量労働制は、あくまで、業務遂行のための標準的な労働時間を労使でみなして協定した上で行われるものでございまして、時間で評価する働き方を弾力化した制度でございます。
この素案に書かれております新たな労働時間制度は、時間ではなく成果で評価される働き方へのニーズに対応して、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した制度でございます。
こういう意味で、制度はそれぞれ基本的考え方が違いますので、新たな労働時間制度については、今後、審議会においてその制度設計について議論がなされていきますので、そういう意味では、またそこにおいては新たな枠組みがつくられようかと思いますが、新たな労働時間制度におきましても、健康確保とワーク・ライフ・バランスに配慮しつつ検討するという趣旨が素案にも書かれておりますので、そのような観点も含めて御議論がなされていくものと考えております。
○高橋(千)委員 今、要するに、標準的なみなし労働時間をあらかじめ決めない、時間に縛られないんだし、時間で評価ができない人を対象にするんだからとこれまでも言ってきた、そういう意味で裁量労働制とは違いますよという説明だったと思うんですね。
でも、これは突き詰めれば、今までどんな変形的な労働時間制であったとしても、やはり時間にこだわって健康確保義務というのをやってきたわけですよね。そこを今回は取っ払うということですから、要するに時間を残業代ゼロという形で取っ払うわけですから、突き詰めれば、一定の、一千万もお金をもらっている人であれば残業代は払わなくたっていいだろう、そういう考え方であって、ニーズでも何でもないわけですね。
成果が時間では評価できないと大臣は言いますけれども、もしも、そういうのを望む、働きたいという人がいるのであれば、むしろ、時間に縛られなくても短時間でも成果が出せる人だと思うんです。でも、それは裁量労働制の中で十分やっていけるわけなんですよ。それをあえて裁量労働制ではなくやるんだということは、はみ出す人を念頭に置いている。
労働の量や期限などは、やはり個人で決められない場合が圧倒的に多いです。成果を出すために長時間労働にならざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。大臣に伺います。
○田村国務大臣 少なくとも一千万というような言い方をいたしておりますが、少なくとも一千万以上の方々が全部なるわけではないわけであります。(発言する者あり)いや、違います。そういう話じゃありません。話の質が違います。
どういうことかというと、職務の範囲が明確で、職業能力の高い、そういう能力を持っている労働者ということでありますが、つまり、そういうような職種といいますか、逆に言うと、時間ではかれない。みなし労働時間というものは、業務量があって、それを時間ではかるわけですね。そういうような働き方じゃない、場合によってといいますか、極端な話、自分の一番構想力、発想力が湧くときに働く、そういうことによって成果が出る。つまり、長く働けば成果が出るというような、そんなものではないと……(発言する者あり)ちょっと黙っていてください。そういうものではないということで申し上げておるわけでありまして、そもそも比べる対象が違うというふうに御理解をいただければありがたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 時間なので一言で終わりますけれども、実は、大臣がそうやって説明している働き方は、今回見直しをする企画ではない、専門業務型に非常に似ているんですよ。縛られない、上からも指導されない、そういう形で今裁量労働制をやっている人たちは、現実に成果を出すために過労しているし、過労死の遺族も、そういう方たちが圧倒的に多いんです。私が先日会った電機関係の裁量労働制をとっている方は、実は月七十時間働いている、だけれども二十時間しか評価をされていないんです、最初からみなしなので。
そういうことが現実に起こっている中で、幾ら交渉力があるからとか、そういう議論ではないのだということを重ねて指摘して、終わりたいと思います。
――資料――
【資料1】就業規則に根拠規定があれば会社が産業医面談や産業医への受信を強制できることもある
【資料2】労働時間制度の概要⇒5割強の労働者が弾力的労働時間制度の対象
【資料4】「『日本再興戦略』の改定について(素案)」(時間ではなく成果で評価される制度への改革、裁量労働制の新たな枠組みの構築)