被災地の保育士増を / 高橋氏 原発事故後に仕事増
日本共産党の高橋ちづ子議員は18日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、被災地の保育・学童保育の現場で放射線量の測定や除染、安全な食材の確保など原発事故前になかった仕事が増えているとのデータ(「東日本大震災で被災地の福祉労働者が果たした役割に関する調査実行委員会」発表)を示し、正規職員の増員を求めました。
土屋品子厚労副大臣は、職員の業務量が増えているとの認識を示した上で「職員確保にあたっては、離職している保育士に働きかけをすることが重要」「被災地の状況に合った対応をしていきたい」と述べました。
高橋氏は、子ども被災者支援法の趣旨は、低線量被ばくの健康への影響が十分解明されていないもとでの不安や生活上の負担に対して支援するものだと指摘。福島県の「健康影響調査」(2次検査)での“90人が悪性(腫瘍)またはその疑いがある”との結果からも「『原発事故との因果関係がみられない』という結論は早すぎるのではないか」とただしました。
環境省の塚原太郎環境保健部長は、専門家の見解では「原発事故によるものとは考えにくいとされている」などと答弁。高橋氏は「福島県立医科大学に質問した際にも“当面のところ(因果関係は)考えにくい”という回答だった。現時点で断定すべきではない」と強く抗議しました。
(しんぶん赤旗 2014年6月26日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
二十分しかないので、早速質問させていただきます。
東日本大震災で被災地の福祉労働者が果たした役割に関する調査実行委員会がまとめたものがございます。
福島県の保育現場において、仕事がふえたという労働者が五割を超えています。放射線量の計測や安全な食材の確保、外遊びできないため室内遊びの工夫など、業務量も精神的負担も増しているということでありますが、厚労省はまず、こういう実態を認識しているでしょうか。
○土屋副大臣 東日本大震災に被災した福島県内の保育所では、通常の保育の業務に加えて、園庭の線量測定や散歩するコースの除染状況の確認、保護者からの日常生活における放射能についての相談等の業務に対応しているものと承知しております。
私も実は、東日本大震災の直後から一年間、放射能の線量計を持っていましたので、毎日はかりましたが、これは大変な仕事だと思います。そういう意味でも、職員の皆様が今までよりも業務量がふえているということを認識しております。
○高橋(千)委員 資料をお配りしています。一枚目を見てください。
これはふえた仕事の回答グラフなんですけれども、まさに、放射線量の測定九三・三%をトップに、除染、安全な食材の確保八二・五%など、いずれも、原発事故前にはなかった仕事がふえている。当たり前のことでありますけれども。
二枚目にその内訳、言葉で言っているものがあるので、後でぜひ読んでいただければなと思うんですが、最初は、本当に、保育所に機械なんかなくて、食材の線量をはかるために給食を学習センターに主任が運ぶという手間がふえた、その後、負担を軽減するために市から小さ目の機械を贈呈され、園内ではかることができるようになった、でも、一品はかるのに最低十分かかる、こういう声ですとか、毎朝、園庭と保育室を全部測定している、自分の時間を使い測定しているなどなど、声が上がっています。そして、下の方にあるのは、できなくなった保育実践、当たり前のようにできていた散歩コースに行けなくなった、こうしたことがあるわけでありますね。
ですから、単に線量をはかる、そういうことだけではなくて、本当に、外遊びを通して子供たちに遊びや学びを教えていたことの一つ一つができなくなって、また、それにかわるものとしてさまざまな苦労をされているという実態があるわけです。
被災地では、最低でも正規職員を一人ふやすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○石井政府参考人 被災地におきまして、子供たちに適切な保育を提供できるようにするためには、保育士が過重な負担を負わないようにすることが大変重要だと考えております。
現行の保育所の運営費におきましては、保育所が高齢者などを雇用して補助的な業務を行わせることによって、保育士が本来の保育業務に専念できるよう、入所児童処遇特別加算費制度を設けているところでございます。
この加算費というものを活用いたしまして、例えば放射線量の測定業務そして室内遊びの準備などを行っていただくことで、保育士の業務軽減を図ることは一定程度可能だと思っております。
また、今年度から、高齢者などに限らず、補助的な業務を行うための職員を雇い上げるための経費の補助も保育所の運営費とは別に行っているところでございまして、厚生労働省としては、まずはこうした取り組み等を進めていく、よく周知をして御活用いただくということで、被災地を含め、保育士の業務負担の軽減に努めていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 ちょっと一枚めくっていただいて、資料の四を見ていただきたいと思うんですが、今局長が答えていただいた入所児童処遇特別加算、この制度、きのう説明をいただきました。
そうすると、よくよく見ると、対象者は、六十歳以上六十五歳未満の高齢者、あるいは身体障害者、知的障害者、精神障害者、こういう人が対象なわけですね。やる内容は、話し相手とか身の回りの世話、爪切り、洗面、給食の後片づけ、こういうことができるということで、一体これはいつからある制度だと聞いたら、平成二年からだということで、全く今の話とは関係ない制度が、とりあえずあるからというので持ってきたんですね。
ですから、その程度なら今の高齢者対象の加算でもできるという、まさに今戦略会議の中で話題となっている子育て支援員と同じ発想だなということで、とてもじゃないがそんな問題ではないんだと。現場で言っているのは、同じ立場で、要するに、正職員同士できちんと責任を持って仕事をしている中で相談相手になってくれる、そういう人を求めているんだということを正面から受けとめていただきたいと思うんです。
聞き取り調査を見ていますと、やはり保護者たちは、福島に住むことを選択したことで、さまざまな動揺をしています。あるいはネット上で、さまざまな情報があったり、バッシングもされています。そして、保育者も、子供の親であり、同じ悩みを抱えているんですね。
だから、そういう上で、放射能の学習会を持ったり、外部被曝や内部被曝を避けるためのさまざまな努力をしてきました。でも、ある保育士さんは、三年目に入って少し苦しくなってきた、子供を守るためにやっていかなくちゃと思っている、でも、休みの日に話を聞きに行ったり、昼休みに勉強会をしたり、仕事がふえている、子供たちにこういう環境をと思うとそれだけ作業がふえますと言っているんですね。
つまり、子供たちのために、子供たちを守るためにと頑張っている保育者たちの本当に献身によって支えられているのが現場の実態だと言えるのではないでしょうか。せめて、研修への助成をやることや、高齢者に限定しないで、今いる、例えば臨時職員を正職員に引き上げることとか、そうしたことに使えるように思い切って手当てをしていただきたい、これは重ねて要望したいと思います。
そこで、学童保育は、もっともっと人的にも財政的にも大変であります。学校の校庭にあるんだけれども、校庭は除染するんだけれども学童保育の前でぴたっととまっちゃうとか、所管が違うからと言ってはそれまでなんですよ。そういう扱いを受ける中で、大変苦しい思いをしてきました。
その認識を持っているのか、また、被災地での正規職員増員についてどのように取り組むのか、伺います。
○土屋副大臣 福島県におけます放課後児童クラブについては、調査によりますと、被災した翌年度の平成二十三年度にはクラブ数及び登録児童数ともに減少しましたが、直近の平成二十五年度には、被災前の平成二十二年度の数を上回っている状況にあります。
県内の状況といたしましては、県全体で子供の数が減少しておりまして、職員確保が難しい状況にあるものではないというデータもありますが、一部の自治体では、ほかの自治体から避難者を受け入れていることによりまして登録児童数が増加しており、被災地であるがゆえの特有の業務、先ほど、線量をはかるとか運動がなかなかできないとか、いろいろな問題がありまして、大変な業務が発生しているということも理解しておりますが、国の補助要件に見合った職員確保が課題となっている自治体があると聞いております。
職員確保に当たっては、先生が今お話しした、離職している、今働いていない方等に働きかけをするということ、これは非常に重要だと思います。保育士を初めとする有資格者の確保が難しい中で、今のような働きかけをしていくということ以外にも、さまざまな、現在、保育士確保に向けて自治体に御紹介などをしているわけですけれども、さらにその活用を促していきたいと考えています。
こうした対応に加えまして、引き続き被災地の状況把握もさらに努めまして、被災地の状況に合った対応をしっかりしてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
今使った資料の前のページに、学童保育の職員の皆さんの声も紹介をしています。「増えた仕事、必要だが十分にできていない仕事」ということで、保育とも非常によく似てはいるんですけれども、やはり、条件が非常に厳しい中で、指導員自身のケアも本当に必要なんだよという呼びかけがありますので、しっかり受けとめていただきたい、このように思っております。
では次に、子ども・被災者支援法について根本大臣に伺いたいと思うんですが、成立して丸二年がたちましたけれども、まだまだ進んでいるという実感はありません。
平成二十四年六月十九日の本委員会で、私は、参議院の提出者、与野党の議員がいらっしゃいまして、質問をいたしました。そもそも、主務大臣は誰かというところから聞かなきゃいけない法の組み立てだったわけですね。各省庁にまたがる、逆にそれで責任が曖昧ではないかというときに、確認をしたことは、最終的な責任は、基本方針を取りまとめて、それがどうなっていくのかということをチェックしたり進言したりしなければならない、それは、復興庁をつくるときの法案がそうであったように、やはりそれは復興大臣であるということが確認をされたと思っております。その立場でぜひお答えをいただきたいと思うんです。
特に、第十三条、健康影響調査については、立法者の趣旨についてどのようにお考えか。また、現在福島県が主体となって行っている、しかも福島県民、当然、県が主体ですので県民に限定して行っているこの調査は、趣旨に照らしてふさわしいものだといえるでしょうか。
○根本国務大臣 本来であれば、条文ごとに主務大臣というのは書いてあるのが、立法というのは普通なんですね。だから私も、それぞれの条文ごとの主務大臣は何で書いていないんだろうと実は思いました、この基本方針の話があって。
だから、その意味では、基本方針については各省庁にまたがりますから復興庁で束ねましたが、やはり、それぞれの行政というのは分担関係にありますから、責任あるところがきっちりと対応してもらうというのが私は基本だと思います。
その上で、十三条ですが、原発事故に伴う健康への影響調査や医療の提供に関する施策、これは、担当省庁である環境省において、子ども・被災者支援法第十三条の趣旨も踏まえて、専門家により検討を行う会議、これを昨年十一月に設置して、被曝線量の調査などもやっています。
もう一度、全体的に言いますと、最初の十三条の趣旨でお答えしたいと思いますが、子ども・被災者支援法の第十三条、これは、原発事故により放出された放射線に関して、被曝状況の調査、健康への影響に関する調査、医療の提供というような施策について、国が必要な施策を講じるべき旨を定めたものと承知をしております。
現在、これらの施策に関する担当省庁である環境省において専門的、科学的検討を行った上で、この条文の趣旨も踏まえて、福島県が行う福島県民健康調査について、国として財政支援を行っているところであります。
○高橋(千)委員 今少しお話しされた専門家会議も、子ども・被災者支援法の議連でヒアリングの対象者を推薦したという経過もございました。ただ、あくまでもそれはヒアリングであって、一回やれば終わりよ、しかも全員ではないという形で、なかなか専門家会合に対しても十分私たちの意見が反映されているとは言えないということが経過としてはあるということを一言指摘しておきたいと思います。
それで、この法案ができるときに、健康調査につきましては、低線量の放射線が人の健康に与える影響が科学的に十分に解明されていないということから調査を行っていくんだ、不安に応えてやるんだということが質問の中でも確認をされてきたことだと思うんです。
ですから、地域をなるべく限定しないということが私たちの趣旨だったし、また、まず子供に対する不安に応えるけれども、大人も含んでいるんだという趣旨が確認をされたんだったなということを重ねて言っておきたいなと思います。
そこで、資料の5を見ていただきたいんですが、先ほど中島委員も取り上げましたけれども、福島県立医大から、先日の視察の際に出された資料であります。これによりますと、一番下のところに書いているんですが、二十三年から二十五年度の合計で、甲状腺検査の二次検査によって、悪性ないし悪性の疑いがある者が九十名、うち五十一名が既に手術をされている、こういうことが出されたわけであります。
私は、やはりこのデータを、このデータ自体に非常にショックを受けている方もいらっしゃるわけなんですが、今これを、原発事故との因果関係が見られないという結論を言うべきではない、早過ぎると思いますが、確認します。
○塚原政府参考人 お答えします。
福島県が実施をしております甲状腺検査におきまして、御指摘のとおり、がんの疑いがある方三十九名、それから、手術の結果、良性腫瘍と判断された人が一名を加え、九十名の方が報告になっているということでございます。
国内外の専門家の見解としましては、現在見つかっている甲状腺がんにつきましては、原発事故によるものとは考えにくいとされておりまして、その数については、今回のように、精度の高い検査を無症状の子供に実施した例がないこと、最新の機器を用いて、熟練した医師、技師により丁寧な検査が行われていることから、早期の小さながんが、これまで知られている発生率以上の割合で確認されている可能性があると聞いております。国際的な評価も同様でございます。
甲状腺検査を含め、福島県の調査は、長期にわたりまして実施していくことを予定しております。その結果につきましては、予断を持たずに、引き続き注視してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 県立医大にも、私、直接質問をしましたけれども、当面のところ考えにくいという答弁だったと思います。これは断定すべきではないというのが私の趣旨です。本当に、菊地学長もおっしゃいましたけれども、それが関係がないと言い切れるまでには、やはり長期にわたる調査が必要だという御指摘だったと思います。
先ほどの中島委員が、チェルノブイリのことも御紹介いただいたんですけれども、確かに精度が高くなったからということがありましたよね。でも、あのときだって、五年後に発症するなんということはあり得ないと、当時の経験則からそういうことを言われたわけです。
でも、今は、三年たって、もう既にこういうことが起こっている。しかも、赤ちゃんの正確な計測はできないわけでしょう。そういう中で、今結論を出すなということを言っている、それで、それを長期にちゃんと見ていけということを言っているんですから、そこは正確に答えていただきたい。
○塚原政府参考人 これまでの調査の結果に関する評価につきましては、内外を含めて、先ほど申し上げましたような評価があるということを申し上げておきたいと思いますが、その上で、放射線による影響については、長期にわたる健康調査を行うことを実施しておりますので、その結果につきましては、予断を持たずに、引き続き注目をしてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 ちょっと待ってください。それでは、あなたの責任で、関係がないと言い切るんですか。
○秋葉委員長 塚原部長。
持ち時間が経過していますので、簡潔にお答えください。
○塚原政府参考人 先ほど申し上げましたのは、内外の専門家の御見解というものを御披露したところでございまして、私の意見と申し上げたわけではございません。
○高橋(千)委員 思いがけない答弁だったので、時間になってしまいました。
最初にお話ししたように、県立医大も、当面のところ考えにくいと答えたんです。できないと断定したわけではありません。そんなことを国会で答弁したら大変なことになりますよ。
引き続いて、この問題はしっかりと議論をしていきたいと思います。問いをいっぱい残しましたので、継続して審議の機会をいただきますように委員長にお願いをして、これで終わります。
――資料――
【資料1】<保育>仕事内容ごとにみた「増えた」と回答した比率
【資料2】<保育>震災後に増えた業務、できなくなった保育実践と工夫について