――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
十分ですので、最初に一問だけ大臣に伺いますが、簡潔にお願いをいたします。
医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムが、本法案の中心点であります。中学校区単位、おおむね歩いて三十分以内に必要なサービス、非常にいい絵が何度も描かれているわけですね。介護が必要となれば、あるいは病気になれば、そういう絵が描かれてはいるわけですけれども、現実はどうかということであります。
資料の一枚目を見ていただきたいんですけれども、介護サービス量と給付費の将来見通し。これは、現状投影シナリオでいいますと、二〇二五年度には利用者数は六百六十三万人になる、一・五倍だ、しかし、改革シナリオでは六百五十七万人になるというわけですね。その内訳の中に、入院の減少、介護への移行というものがあります。これで十四万人。下の方を見るとどこがふえているかが明らかであって、要するに、病院から在宅に重度の方も含めて行くということを意味しているんだと思いますが、その受け皿をどう考えていらっしゃるんですか。
○田村国務大臣 これは病床機能の分化、連携ということでありまして、当然、急性期から、ポストアキュートもあるでありましょうし、回復期もあると思います。さらには慢性期もあると思います。そういうものを、やはり整備をしっかりやっていくということが大前提でありまして、急性期以降、ちゃんと受け皿をつくる。
ただ、一方で、在宅というものもこれからは力を入れていくわけでございまして、在宅で対応ができない方々が在宅に行ったのでは大変でございますから。それも含めて、しっかりとした受け皿としての環境整備というものを進めていくということでございますから、委員がおっしゃったように、行くところがなくて在宅だというわけではないわけでありまして、しっかりと対応ができるような環境整備をすることを含めて、その急性期から一連の流れの中の対応というものも、しっかりと病床機能の連携、分化というものも進めてまいるということであります。
○高橋(千)委員 行くところがなくて在宅ではなくて、在宅に行けと言っているのがこの法案だとまず言わなければならないと思うんですね。
きょうは、総理にぜひ聞いていただきたいし、伺いたいと思うんですけれども、四月一日の本会議で、私は、やはり行き場のないお年寄りがふえるんじゃないかと指摘をいたしました。総理も大臣も、適切にというふうに答弁をするわけですね。私は、適切という言葉というのは何と都合のいい、具体的な中身は全然見えないわけですよね。それでも、何でもかんでも適切にと言っちゃう。
私は思うんですけれども、この間の議論で、起こり得るとか、おそれがあるとか言われましたけれども、現実に起こっているんです。現実に起こっていることがもっと大変になるのを見もしないでやろうとしている、そこを見なければならない。
今でも、急性期の病院でも、病棟でも、入院した途端に、次の病院はどこにしますかと言われる。大変な負担が押しつけられている。この現実をやはり見る必要があると思うんですね。
私は、地域包括ケアといったときに、一番距離感があって大変だろうなと思った北海道に春に行ってきたんですけれども、日高地方の浦河という町、人口が一万四千人いる。そこで、指摘をしたように、やはり退院を迫られる、要するに早く病院を出るという人たちがとてもふえている。なので、訪問看護の現場が大変負担がふえているし、専門的な知識が求められている、そういう訴えがありました。リハビリもなしで出されるわけですね。
ある高齢者は、人工肛門をつけて、抗がん剤投与でたった二泊入院しただけで、流しのはねる水が凍るような、そういう自宅に帰されました。本当に、ちっちゃい電気ストーブの前の座布団一つだけしか暖かくないんです。背中に回ると冷え切っている、それだけのスペースしか暖かくされない。まあ経済的な理由もあるんですよ。そういう事態に追い込まれているわけです。
だから、在宅に行っても、病室と同じような立派なベッドがあって、装備があって、そういう状況じゃないことが圧倒的に多いんだという現実もあるわけです。
北海道のように地理的、気候的な困難もある地方で、歩いて三十分圏内の地域包括ケアは成り立ちません。まして、医師、看護師不足が進み、医療そのものが崩壊している。総理は、こういう現状をどう認識されていますか。
○安倍内閣総理大臣 今回の法案は、地域によってまさに医療や介護についてはさまざまな課題があるわけでありまして、そうしたニーズに対応して、地域で医療や介護を安心して受けられるようにするために、救急医療などの急性期の医療から、リハビリといった回復期の医療を経て、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備していく、医師、介護従事者等の確保、養成を図ることとしているわけであります。
また、今回の法案では、国の策定する基本的な方針のもと、都道府県ごとに医療、介護に関する計画を定めるとともに、新たな財政支援制度を創設するわけであります。これらによって、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年を見据えて、地域の実情に応じた医療、介護の基盤整備を進めることができるものと考えております。
○高橋(千)委員 先ほどから、地域の独自性ですとかニーズとおっしゃいます。今もそうお答えになりました。もし本当に地域のニーズというのであれば、まず根幹の公的介護の部分を維持してほしい、それが地域の一番のニーズなんですよ。
その上で、独自のことをみんなやっていますよ。今の浦河だって、介護予防をやっています。レスパイトのような一時的な入居だってやっています。だから、重度化にならなくてむしろ喜ばれているんですよ。そこにはちゃんと支援をしてくれと言っている。だけれども、総合事業になったらとても支え手がいない、それが本当の現場のニーズなわけです。
介護保険は、介護の社会化を叫んでスタートしたはずです。でも、今は、介護離職十万人、認知症で行方不明者一万人など、むしろ事態は深刻化しているのではないでしょうか。
介護で全て見るのは不可能だという議論があります。そのとおりだと思います。医療と介護の連携、そのとおりだと思います。しかし、今やろうとしているのは、せっかく医療や介護に結びついた人たちを切り離す仕組みなんです。それでは違うということです。
要支援外しをやめて、むしろ介護でしっかりと見る、そして地域で、本当に独自の取り組みにはちゃんと別に支援をしていく、その方が一番コスト的にもよいことではないでしょうか。もう一度総理に伺います。
○安倍内閣総理大臣 今回の改正は、サービスを抑制しようというものではありません。要支援の方々に対するサービスのうち、訪問介護と通所介護について、全国一律の基準に基づくサービスから、地域の実情に応じて市町村が効果的かつ効率的に実施する事業へと見直すものであります。この中で、介護予防についても地域のさまざまな取り組みが行われるものと考えています。
この新しい事業は、従来と同様、介護保険の財源を用いるものでありますから、いわば介護保険そのものから出していくというものではありません。ケアマネジャーなどの専門職が、介護サービス事業者のサービスから元気な高齢者など地域のボランティアが担い手となるサービスまで、多様なものの中から、要支援の方々の心身の状態に応じて適切なサービスにつないでいく考えでありまして、したがって、重度化やコストの増大につながるとの見通しは持っていません。
今般の改革では、消費税の増収分を活用して、認知症施策の推進など高齢者が住みなれた地域で暮らしを継続できる体制を整備していくこととしておりまして、我々も、誤解を解いていく努力もしていきたいと思いますし、しっかりと丁寧に説明をしていきたい、このように考えております。
○高橋(千)委員 そもそも、伸び率に比べて、これを抑制するという全体の枠があるわけです。そんな中でやっているんだから、抑制ではないとか誤解ではないかというのは全くのでたらめであります。
社会保障国民会議の報告書の中に、個人の全ての要求に応えることは不可能であることを前提に制度を再編すべきと書いてあります。これがこの制度の思想なんですね。だから、憲法二十五条の破壊だと言われるのは当然のことだ、このことを指摘して、総理に対する質問は終わりたいと思います。