国会質問

質問日:2014年 4月 3日 第186国会 内閣委員会・厚生労働委員会 連合審査会

独立行政法人「日本医療研究開発機構」(日本版NIH)

難病研究 予算確保を / 高橋議員 日本版NIHで要求

 日本共産党の高橋ちづ子議員は、先進的な医療技術の実用化研究の司令塔となるの独立行政法人「日本医療研究開発機構」(日本版NIH、来年4月設置予定)について、4日の衆院厚生労働委員会と、3日の衆院内閣厚労連合審査で質問し、同機構への予算配分が安倍内閣の国家戦略に基づきトップダウンで決められることを批判しました。
 3日の質疑で高橋氏は、「難病患者が研究に寄せる期待は大きい」とし、研究拠点の同機構への移行後も難病治療研究の予算を最大限確保するよう要求。田村憲久厚労相は今年度予算に難病対策で93億円を確保したと述べ、「しっかり進める」と答弁しました。
 高橋氏は、難病患者が期待する研究などで保険医療をめざし国民の負担を減らすのか、それとも国家戦略特区と一体で外国から患者を呼び込む「医療ツーリズム」などの先端医療を軸足にするのかとただし、「研究成果を誰に還元するのか」と質問。菅義偉官房長官は「国民に還元する」と答えました。
 高橋氏は4日の質疑で、新機構設立にともなう国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所との統合法案について「単なる数あわせ。やるべきではない」と批判。戦後1945年から始めた国民健康栄養調査の役割を強調し「確実に引き継がれるのか」とただしました。土屋品子厚労副大臣は「健康政策の基本データとなるなど大変重要。統合後も確実に実施できる」と答えました。
(しんぶん赤旗 2014年4月6日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 早速質問します。
 日本版NIHの創設は、昨年六月十四日の日本再興戦略の中に、医療分野の研究開発の司令塔機能として位置づけられました。
 とはいえ、職員一万八千人、三兆円を超える国家予算と自前の国立研究所を傘下に持つ米国NIHとは違い過ぎる、日本版NIHと呼ぶべきではない、そういう議論がされてきたと思います。
 ただ、米国だって、最初は、自由の女神がある島に、ヨーロッパからの移民や一般大衆を対象にした海軍病院と医師一人、顕微鏡一台の検疫所が前身だったというわけですから、規模で比較する問題では本当はないんだろう、私はこのように思っています。
 そこで、中身でいうところのアメリカのNIHとの違いは何でしょうか、今回の構想と。

○菅国務大臣 私どもも、規模だけということはなくて、やはり日本とアメリカの歴史、そうしたものが違うというふうに思いますし、日本の中で一番効率的、実用的な形をとらせていただいたということであります。
 アメリカのNIHというのは、研究領域ごとに分権された二十七の研究施設があります。各研究所で研究開発を実施するとともに、研究費の配分も全ての研究所の中で完結できるような仕組みになっておりまして、その二十七の独立した上に全体があるというようなのがアメリカだというふうに私どもは認識をいたしております。
 一方、我が国の体制でありますけれども、今日までの研究開発推進体制を考えるに当たって、我が国の実情というものも十分に勘案しながら、今回、この機構を設計させていただいたということであります。医療の研究、医療機関の連携を十分に図ることで一体的な組織にしたい、また、自前の研究所を持たずに、研究費の配分、研究管理・支援等に特化した法人としたものであります。
 こうした形にしたというのは、我が国においては、これまで大学や研究所等において医療分野のすぐれた研究が行われてきたという実績があります。また、そうした中にあって、これらの既存機関の能力及び機能を最大限活用して、機構が一体的に研究管理・支援などを実施することが最も効率的で効果的な方法だろうという中で、このような制度設計をさせていただいたものであります。

○高橋(千)委員 米国NIHが自前の研究所を持っていると同時に、八割が基礎研究であることやボトムアップ型の研究であるということと、日本の場合は、トップダウンの、戦略を持っての研究の配分ということが一番の違いなのかな。また同時に、政治や官僚からの独立ということも一つ大きな課題なのかなと思っています。ちょっと時間の関係でその議論はできないんですけれども。
 そこで、次に進むんですけれども、初年度は、各省が持っている予算千二百十五億円を集めてスタートをするわけであります。四分野、九つの領域を健康・医療戦略推進本部のもとで行うということになるわけですけれども、これらは、あらかじめ決められた答えを導き出すのに五年で結果を出せというイメージなのか。
 それから、インハウス、国の研究機関は七百五十億円、ボトムアップ型の基礎研究と呼ぶ科研費の部分は六百五十億円、このバランスが今後どうなっていくのか。重点がトップダウン型にいずれは集中していくということなんでしょうか。伺います。

○菱山政府参考人 まず、九つの連携プロジェクトの件でございます。
 健康・医療戦略推進本部は、医療分野の研究開発の基本方針として、おおむね五カ年計画であります医療分野研究開発推進計画を作成いたします。
 この計画は、中長期的な展望を踏まえた上で、今後五年程度の期間中に集中的かつ計画的に実施すべき研究開発を定めるというものでございます。大体、連携プロジェクトの取りまとめなどによる予算の重点化というのはこの計画に基づいて行うもので、したがって、中長期的な展望の中での今後五年程度の期間を想定したものでございます。
 したがいまして、必ずしも五年といった期間中に結果を求めるようなものではありませんが、ただ、適切に進捗状況を評価するという観点から、一定期間ごとにマイルストーンを設定して、適時適切にその到達度について評価をしたいというふうに考えております。
 それから、もう一つの御質問である、ボトムアップの基礎研究、機構におけるトップダウン型のプロジェクト研究、それからインハウス研究のバランスと、その予算の拡大についてはどうかという御質問でございます。
 先ほど申し上げました医療分野研究開発推進計画に基づきまして、この推進本部は、医療分野の研究開発の司令塔といたしまして、実用化を見据えたトップダウン型のプロジェクト研究と、それから、運営費交付金等の財源措置によって運営されています独立行政法人がみずから行う、いわゆるインハウス研究に関しまして、総合的な予算要求配分調整を行うということでございます。
 この本部の調整におきましては、国の戦略を実施に移す上で、適切なバランスを保ちつつ、必要な予算を確保していこうということが重要であるというふうに認識しております。
 それから、ここで今申し上げました点とは別に、将来における学術的な新知見やイノベーションの芽を絶え間なく育んでいくために、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ型研究の基礎研究も非常に重要なものだというふうに認識しております。
 この観点から、文科省の科学研究費助成事業につきまして、機構への集約の対象とはせずに、引き続き日本学術振興会等を通じて配分するということになっております。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 五年が一つの区切りなわけですけれども、結局、結果を急ぐことが、今回の理研の問題のようにさまざまな問題を起こすわけですから、そうではないということを確認したいなと思うのと、バランスがすごく大事でして、トップダウンに集中していくとやはり違うだろうということを確認したかったわけであります。
 そこで、難病患者が研究に寄せる期待というのは非常に大きいわけであります。
 昨年八月八日の毎日新聞で坂口元厚労大臣が発言をされておりましたけれども、難病治療研究振興財団を設立された、その中で、確実で成功が見込まれる既存医薬品の適応拡大を提唱されています。莫大なコストと時間のかかる創薬だけが道ではないということを指摘されて、非常に重要だなと思っているわけです。
 これまでも、関係団体や患者団体などからの要望を受けて適応外薬の承認に取り組んできたと思いますが、どの程度の疾患が承認に結びついているのか、簡潔にお願いします。

○今別府政府参考人 御指摘の適応外、それから、外国で承認をされて日本では承認をされていない未承認薬、この二つにつきましては、二十一年の六月から二カ月間にわたりまして、患者団体や学会からの要望を取りまとめをいたしました。
 それを受けまして、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議におきまして評価を行った上で、製薬企業への開発要請あるいは開発企業の公募を行って、結果といたしまして、百四の御要望について医薬品の承認までこぎつけたところでございます。それから、二十三年の八月から、また同じようなことをいたしまして、これで結果的に十三品目の承認が追加をされたということでございます。
 また、昨年の八月からは、従来二カ月に限って募集をしておりましたけれども、そういう期限を設けずに通年で募集をするということにいたしました。
 難病患者の方々の御期待に沿えるように、引き続き努力をしてまいります。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 やはり革新的創薬だけが道ではないんだということで、患者の皆さんは、例えばアメリカの成果ですとか、本当にいろいろ研究をされて、こういう道もあるんじゃないかということをさまざま提案されている。そういうこともしっかりと取り上げていただきたいというふうに思って、今確認をさせていただきました。
 今、難病の問題、これから新法ができるわけですけれども、希少性という要件ではじかれるとか、診断基準を満たさないために、いまだに病名もつかない、そういう疾患がたくさんあります。こうした方たちの一縷の希望が研究班の調査研究であります。新機構への移行で研究費確保が困難になるのではないかと大変心配をされているわけですが、むしろしっかりと予算を確保していくべきと考えますが、厚労大臣に伺います。

○田村国務大臣 今委員から新法のお話がありました。この新法において、難病の発症の機構でありますとか、それから診断、さらには治療、こういうことに国としても力を入れるというふうに書いておるわけであります。
 この新独法ができますと、総合調整をするという中において、この難病も入ってくるわけでありますが、そこは九つのプロジェクトということでございまして、この中に難病克服プロジェクトというのもあるわけでございますから、ここはしっかりやっていくわけでありますが、二十六年度も九十三億円予算を確保しております。あわせて、先ほどの診断でありますとか、また発病の機構等々を含めて、厚生労働省の中にも十八億円ほど予算を確保いたしております。
 いずれにいたしましても、難病対策は大変大きな課題でございますので、これからも新独法と協力しながらしっかりと進めさせていただきたい、このように思っております。

○高橋(千)委員 しっかりとということをお答えいただいたと思うんです。
 最後に、官房長官にもう一度質問したいと思うんですが、健康・医療推進法案の目的が、世界最高水準の医療の提供に資する研究開発等により、健康長寿社会の形成に資する、こういうふうにあるわけですけれども、そこに、新たな産業活動の創出、活性化と一体で重点化を図ると書いているわけですよね。
 そうすると、研究の成果を誰に還元するかという問題があると思うんです。今お話ししてきたように、やはり難病患者の皆さんが本当に待ち望んでいて、そこに還元をされていくというように、やはり最後は保険に収載されることで国民の負担を軽減して広く喜ばれる道を目指すべきだと私は思っているわけですけれども、高度な先進医療がどんどんどんどん進んで、医療ツーリズムですとか、そっちに重点が行くというのでは困るわけですが、そこのすみ分けというんですか、どこに還元するべきかということで、官房長官に伺いたいと思います。

○菅国務大臣 どこに還元するかということであれば、それは国民に還元するという形に尽きるわけであります。

○高橋(千)委員 予想以上にシンプルな答えでありましたけれども、国民に還元する、これは簡単なことですけれども、実はなかなか実態はそうなっていないということがあって、指摘をいたしました。
 もう質問はしませんが、米国のNIHが、だって、実際は米国は皆保険ではないわけですから、一番これで助かっているのは製薬会社なわけですよね。製薬会社が世界で活躍をしている基礎研究の部分を、一番お金がかかる部分をNIHが支えている、そこに学んじゃ困るんだよということが言いたかったわけでありますので、続きは厚労委員会でやりたいと思います。
 終わります。

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