地元要望反映が必要 / 高橋氏 東北への医学部新設
日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は3日の東日本大震災復興特別委員会で、東北地方の医学部の新設問題について質問しました。医学部の新設は、1979年の琉球大学以来となります。
高橋氏は、東北地方に医学部を新設する意義について問い、根本匠復興相は「震災からの復興、東北地方の医師不足、原子力事故からの再生という要請を踏まえたもの」と答えました。
高橋氏は、来年4月の開校と医学部新設のスケジュールが報じられ、最低でも専任教員130人、600床の付属病院が基準とされていることから、医師や看護師が不足している現場から人材が奪われると関係者が懸念していることを紹介。「来年4月のスケジュールはあまりにも拙速ではないか」とただしました。
吉田大輔文科省高等教育局長は「スケジュールは確定したものではない。(病床の基準も)個別の事情に応じて弾力的に扱いたい」と答弁しました。
高橋氏は、卒業生に東北に残ってもらうため、医学生の経済的負担が少ない公立医学部を要望する声が強いことを示し、「公立大や自治医科大学の東北版といった大学が必要」と指摘。「17年までとなっている医学部定員増の措置は延長すべきだ」と主張しました。
西川京子文科副大臣は「公立大学も排除していない」「定員増については、地域の医師数の確保の状況などを踏まえ弾力的に対応したい」とのべました。
(しんぶん赤旗 2014年4月8日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、東北地方における医学部新設問題について伺います。
医学部の新設は、一九七九年の琉球大学を最後に、大臣告示によって凍結されてきました。東北地方の医師不足は、これまでも大変深刻でありましたが、東日本大震災を契機に、東北に医学部新設をと、私立大学二校や病院が名乗りを上げてきたところであります。
資料の一枚目にありますように、復興庁、文部科学省、厚生労働省の三省の連名で、昨年十二月十七日、東北地方における医学部設置認可に関する基本方針についてを発表いたしました。アンダーラインを引いておきましたけれども、「目的 震災からの復興、今後の超高齢化と東北地方における医師不足、原子力事故からの再生といった要請を踏まえつつ、」云々ということで、震災からの復興と原発事故からの再生というのが明記をされていました。
だからこそ、ほかではなく東北であり、また一校だけなんだということを言っているんだと思うんです。だからこそ、見るべき成果を上げる必要があると思うんですけれども、まず根本大臣に、東北に医学部を新設することの意義について、認識を伺いたいと思います。
○根本国務大臣 委員おっしゃられたとおり、東北地方への医学部の新設、これについてはいいというお話がありました。あの震災からの復興、東北地方の医師不足、原子力事故からの再生という要請を踏まえて、特例として、東北地方に一校に限り医学部新設を可能とするため、関係省庁と連携して基本方針を定めたところであります。
これから今後、文部科学省の審査において、基本方針が掲げるように、教員などの確保に際し地域医療に支障を来さないような方策や、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じることなどの条件に留意して、被災地のニーズを踏まえた適切な構想が選択されるように対応していきたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
そこで、報道では、文部科学省が五月までに、ことしの話ですね、新設構想を受け付けて、有識者の意見を踏まえ、六月に一校を絞り込むとしているわけです。
資料の二枚目に、スケジュールを書いていたんですけれども、これは、ひと月で採択をする、そして十月には認可、来年四月には開学というスケジュールを書いているわけですが、余りにも拙速ではないか。
やはり今大臣がおっしゃってくださったように、地域医療に影響がないようにということで、実際、関係者の反対の声も大きいわけですよね。でも、やはりそういう人たちに本当に協力してもらって、東北のためなんだということで進まなければ、ただ、手を挙げた大きな大学がありますよ、条件をかなえていますよというふうにはいかないだろうと思っているんです。そういう意味でも一定の時間が必要だと思っています。
日程は決まったものではないということを確認させてください。
○吉田(大)政府参考人 御指摘のスケジュールは、昨年十二月に復興庁、文部科学省、厚生労働省で連携して定めました、東北地方における医学部設置認可に関する基本方針におきまして、既存の大学に医学部を設置し、平成二十七年四月に開学を行う、こういう仮定を置いた場合の最短のスケジュールの例として示したものでございます。
この基本方針におきましては、同時に、認可申請及び開学時期等につきましては、大学、自治体等の準備状況を踏まえて弾力的に対応するということも付記をしておりまして、このスケジュールが確定しているということではございません。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。確認できました。
仮定を置いた場合での四月の場合はどうなのかというお話だったかと思います。これがどうしてもひとり歩きをしていまして、しかも、新聞報道にもちゃんとそういうふうに書いているものですから、もう決まっちゃったんだろう、今さらあれなんだろうというふうな意見なんかも関係機関から出てくるんですね。そうではないということを確認させていただきました。
そこで、今の資料の下のところなんですけれども、設置基準があるわけです。四十年ぶりにこれを使うということになるわけですけれども、医学部をつくるためには附属病院が必要であります。一番小さい単位でも、三百六十人収容する場合、入学定員は六十人まで、専任教員が百三十人、そして病床数六百床というふうにあるわけであります。
これは、全体の病床規制というのも今ある中で、どのように対応するのか。附属病院の体制や指導体制のために、ただでさえ人手不足のところから人材が引き抜かれたり、あるいは、比較的医師が充足している都市部に新しい病院ができるだけでは意味ないじゃないか、そういう見方もできるわけですよね。どのように考えますか。
○吉田(大)政府参考人 今委員御指摘の既存の医学部における基準でございますけれども、医学部の新設に当たりましては、基本的には従来どおり、最低でも六百床程度の附属病院を置くことが、医学部におきます教育研究水準の確保ということからしますと必要ではないかというふうに考えております。
このたびの東北地方における医学部新設に当たりましては、医学部の新設によりまして地域医療に影響を及ぼす懸念があることを踏まえまして、基本方針におきましても、医学部の教員や附属病院の医師の確保に際して地域医療に支障を来さないような方策を講じることを条件の一つとしております。
具体的には、例えば、広く全国から公募を行うことですとか、あるいは、既存の大学や医療機関、地方公共団体等との連携により計画的な人材確保を行うこと、特に人材が不足している地域や診療科の医師の採用には十分配慮するというふうなことも定めているわけでございます。
私どもとしましては、今後、厚生労働省等の関係省庁とも密接に連携しながら、適切に対処してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 そうすると、六百床に関しては動かさないということですかね。
○吉田(大)政府参考人 基本的には六百床というところを維持したいと考えておりますけれども、ただ、復興という目的や附属病院設置の際の地域医療への影響等に鑑み、必要がある場合には、医学教育上必要な代替措置を講ずることを条件といたしまして弾力的な取り扱いを行う、これも個別の事情に応じましてこれから検討してまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 弾力的なということでありました。
やはり最初にお話ししたように、いわゆる仙台のような高度な病院が集中しているところにまたということではなくて、それだったら被災地の真ん中にというふうな意見もあるわけです。十分な議論、要するに、必要な病床数というのはやはり教育のためには一定欠かせない、しかし、そのために、どこに、あるいはどんなという形が非常に重要だということで考えていただきたいなと思っています。
それで、卒業生が東北地方に残り、かつ、地域医療に貢献するということが期待されているわけです。具体的にどういう体制をとるのかということなんですが、国立大学医学部の学費が六年間で三百五十万円に対し、私立大学では三千三百万円と十倍の格差があるわけで、これが卒業生の流出が避けられない根本原因になっていると思います。
大学側は、大学側はというのは今手を挙げている大学ですね、宮城県に対して、財政援助が絶対必要だということでお願いをしたというのが三月三十一日の河北新報に載っておりました。それで、宮城県の関係課が東北の岩手とか福島とか各県に呼びかけたんですけれども、でも、どういう大学になるのかということで、そう軽々には、じゃやりましょう、協力しますとはならないですよね、当然。そういうニュアンスのことが書いてありました。
そこで、宮城県の坂総合病院の院長だった村口医師らによる東北地方医療・福祉総合研究所が、新設するなら、やはり東北に貢献できるように公立大学であるべきだと主張しています。実際に、千人の医師らに行ったアンケートがこのほどまとまったわけですけれども、実は、医学部新設には反対が五四・九%で、賛成を上回っているんですね。しかし、その理由は、やはり被災地や東北地方の医師対策にならないためというものでありました。人材の引き抜きと、あげく資源の流出を懸念するのは当たり前のことなんですね。でも、一方で、その反対の人たちも含めて、建てるなら公立でという先生方の意見に対しては私立の倍の賛同者があった。これはすごく重要だと思うんですね。
ですから、やはり東北全体に貢献する公立大学、自治医科大学の東北版のような、そういう位置づけを考えるべきだと思いますが、副大臣に伺いたいと思います。
○西川副大臣 高橋先生の御質問にお答えさせていただきます。
本当に、今回の東北振興の一つの大きな目玉として、これは各自治体からの御要望で、東北に新設医学部をということでございますので、それに対応してこれからどうやって具体化するかということでございますけれども、今、もちろん、医師不足、医師の偏在とか、こういうことが一番全国的な課題である中で、新たに医学部をつくるということは、大変厳しい現実はあると思いますね。そういうことで、私たちも十分に細心に、その辺のところはしっかり役目を果たしていきたいと思います。
先ほどの、地域に定着していくことが一番大事だろうということの一つの答えとしては、今回の東北に医学部を設置する基本方針の中で、具体的には、医師不足を解消することに寄与する方策も一つですが、実際にその地域にどれだけの人が残るかという具体的な方策をまず考えるということが第一条件でございます。まず、それをしっかりと、その制度をつくった上で大学の医学部の新設はしたいということの、その条件の一つとなっております。
それともう一つ、先ほど先生がおっしゃいました、国立で、公立でというお話でございますけれども、今回のこれは、別に私立大学の皆様にお願いしていることではなくて、全部に手を広げておりますので、もちろん、地方自治体からも手挙げしていただいていいですし、いわゆる公立の大学も全く排除していることではございませんので、ぜひ、その辺のところも踏まえて、多くのところから手を挙げていただきたいなと思っております。
そういう意味で、宮城県の方で、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、各県にまず奨学金の基金を設置するということを検討しておりまして、今、それぞれの県に呼びかけております。まず、その基金をしっかりつくった上で、経済的な一つの学生の負担を減らす、そういうことも考えながら、地域定着率、大学の地域枠の入試とか、そういうところをしっかりと踏まえた上で、連携して、地域医療に貢献する医学部の新設に頑張ってまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
今、副大臣は、次の質問も踏まえて、あわせて答弁いただけたのかなと思っています。
医師増を抑制してきた閣議決定を撤回といいますか、転じたのが二〇〇八年で、それ以降、全国の医学部定員は千二百九十八人ふえたわけです。東北でいうと、国立の東北大学が二十人、公立の福島医大が三十人、私立の岩手医大が四十五人とふやしてきました。それプラス学費の高い、この格差を埋める役割を果たしたのが地域枠でありまして、全国で今六十七大学、資料をつけておきましたけれども、千百七十一人と伸びております。
これは、定着率を見ますと、私立の岩手医大でいうと、地域枠の卒業生はほぼ一〇〇%、県内に定着しております。そして、それ以外は四割から五割ということでいうと、やはり違いが歴然とするのではないかということで、さっき副大臣がおっしゃった、基金を積むというふうな地域枠の取り組み、これは非常に大事だと思っているんです。
今、答えを含んでいたので、次の質問をお伺いしたいと思うんですが、それで、せっかく定員増をやってきて、ことしですよね、お医者さんが初めて世に出るのが。これからなんですよ、実がつくのは。そういう意味では、この医学部の新設に定員枠がとられてしまうと、それは納得いかないよというのが各県の、私の地元の弘前大学も含めて、意見なわけです。
だから、この医学部定員増、今せっかく頑張ってふやしてきた、ここは、今、二〇一七年までの期限になっておりますけれども、当面延長すべきと思いますが、ぜひお願いしたいと思います。
○西川副大臣 今先生の御指摘のとおり、平成二十年度以降の増員を行った定員の一部には、平成二十九年度または平成三十一年度までを期限とする臨時定員、これが含まれております。せっかく既存の大学医学部の方で定員をしっかり増員したのにということのそごが起きないように、期限が到来した時点で、医師養成数の将来見通しや地域の事情、その辺をしっかりと勘案しまして判断してまいりたい、そういうふうに思っております。
確かに、卒業生、これから卒業していくわけでございますので、地域の医師数の確保その他、現状を踏まえて、弾力的にしっかりと対応してまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 今の答弁の中に、多分、意を含んでくださっていたんだと思います。ばっさり切らないんだよということを発信していただければなと。
私も、地元の先生方と話し合って、最初はとにかく新設反対だとおっしゃっていた、でも、やはりそうやって頑張ってきたところに国が手を引くということではないんだよということで、きょうお答えをいただきましたので、しっかりと支えていければいいなというふうに思っております。
それで、資料の最後につけたのは、国家戦略特区においても実は医学部新設が検討されております。成田市、国際医療福祉大学が名乗りを上げて、ここらを軸に検討しているということであります。これは、国家戦略特区の諮問会議に文科省が出したペーパーであります。
これは、今、拙速ではないようにとか、反対の声もあるけれども貢献するようにと一生懸命に話をしているそばから、何か、いやいや、特区だったらもうできちゃうのかという話になったら、これは大変なことだという思いがするわけですね。東北の構想にも大きな影響が及ぶというふうに考えますが、どのようにされるのか伺います、副大臣に。
○西川副大臣 国家戦略特区、ここでさまざまなことが議論されているわけでございますけれども、その中で、いわば医療ということも非常に広く考えて、海外展開とか、いろいろな大きな枠組みの中での一つの議論なんだろうというふうに解釈しておりますが、その中において、大きなそういう新しい国家戦略特区の方での医学部の新設という話、議論が進んでいることは十分承知しております。
その中で、やはり東北の医学部新設というのは本当に東北振興の大きな目玉の一つでございますので、まずこれをしっかりときちんと、先行すると言うとちょっとあれかもしれませんが、まず東北の医学部新設をしっかりとした形で、ほかの全国的な医師不足に配慮しながら、そういうそごが起きないような形でしっかりとこの計画を達成していく、それがまず先だと、文科省としてはそう思っておりますので、この国際戦略特区の病院、医学部新設と、変な影響が出ないように、東北の医学部新設をしっかりとやってまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
中身を詳しくやる時間がないので、アンダーラインを引いておきました。
これは、目指すものはかなり違うと思うんですね。まさに国際展開であり、あるいは逆に外国からも呼び込んでくる。しかし、その過程の中で、養成する課程はやはり基本を踏まえなければならないわけですから、影響が出ないはずがないわけであります。
それで、根本大臣にも一言伺いたいと思うんですが、国際医療福祉大学は、昨年九月の戦略特区ワーキンググループで、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを踏まえて、国際基準に即したレベルの高い六百ベッドの医療機関をつくりたい、このように述べているんですね。そうすると、ここでもオリンピックが出てきたかと思って、被災地の皆さんは、本当に今、復興事業の人材や資材もオリンピックにとられちゃうんじゃないか、そういう気持ちでいる。今度は医療をやっと定着させようというときに、またそっちかという気持ちにもなりかねないんです。
やはり、今、副大臣もおっしゃってくださいましたが、東北の地域医療再建、ここで頑張っていただきたいということで、復興大臣の決意を一言お願いします。
○秋葉委員長 根本大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○根本国務大臣 東京オリンピックを成功させるためにも復興をなし遂げる、これが必要だと思います。要は、東京オリンピックの成功と被災地の復興、これを明確な国家目標として進める、これが大事だと思いますので、医療についても、今、文科副大臣からお話がありました。私もしっかり、この東北の医学部の新設に取り組んでいきたいと思います。
○高橋(千)委員 終わります。ありがとうございました。
――資料――
【資料2】医学部設置最短スケジュール、現在の医学部設置基準及び過去の規定に定めのあるもの