失業給付の拡充必要 / 衆院厚労委 高橋議員が要求 / 雇用保険法改正案可決
衆院厚生労働委員会は14日、雇用保険法改正案を賛成多数で可決しました。日本共産党の高橋ちづ子議員は採決に先立つ討論で、育休給付の引き上げや個別延長給付の暫定措置の延長などを評価して法案に賛成するとのべ、政府が今回の法案に盛り込むのを見送った失業給付の拡充が必要だと求めました。
質疑で高橋氏は、雇用保険の国庫負担を本則の4分の1に戻すべきだと要求。田村憲久厚労相は「引き続き本則復帰に向けて対応したい」と答えました。
高橋氏は、安倍政権が「失業なき労働移動」にシフトするとして、雇用維持のための雇用調整助成金の削減を狙っていると追及。岡崎淳一職業安定局長は「雇調金は経済情勢悪化のときは重要だ。支給実績や雇用情勢を見て予算計上する」と述べました。
高橋氏は、雇用流動化や人材育成コスト削減の「財布」として雇用保険を使うものだと指摘。解雇する労働者の再就職支援企業への「労働移動支援助成金」について、「支援会社に委託しただけで(企業に)10万円。派遣会社(支援会社)をもうけさせるだけだ」と示し、大企業のリストラにお墨付きを与えると批判しました。
ハローワークの窓口相談員は6割が非正規労働者だとして、職員の正規化と増員を求めました。
(しんぶん赤旗 2014年3月15日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
時間に協力します。
雇用保険法第十五条には、「雇用保険の国庫負担については、引き続き検討を行い、できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で附則第十三条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するもの」とあります。
しかし一方、昨年十一月二十九日の財政審、二十六年度予算の編成に関する建議においては、「国庫負担の引下げも含め、そのあり方を見直すべきである。」と指摘をしています。そのせいか、今回は国庫負担は全くさわっていないわけですが、大臣の考えを伺いたいと思います。
○田村国務大臣 平成二十三年の雇用保険法改正で盛り込みました国庫負担の本則復帰に向けた検討規定、これがあるわけでありますが、二十六年度予算編成過程におきまして、やはり財政状況が非常に厳しいということもございまして、この暫定措置を継続するということに至ったわけであります。
しかしながら、引き続き、本則復帰に向かって、検討規定を踏まえて対応してまいりたい、こう考えております。
○高橋(千)委員 本則復帰に向けてということで確認をさせていただきたいと思います。
局長でいいんですけれども、イエスかノーかだけでいいんです。
二十一年、〇九年の改正の際に、民主党政権でしたけれども、二〇一一年度には法律上も本則に復帰できるように努めるということで、そのために必要な予算ということで三千五百億円、これは十五カ月分ということで繰り入れをしております。
これは、基金財政が逼迫しているとかそういうことではなくて、しかも本則に戻したわけでもないのに予算がついたわけであります。かなり批判もされた。しかし、結局、その後本則に戻っていない。つまり、何の手だてもされていないので、三千五百億円は今約六兆円とも言われる基金財政の中に溶け込んだだけである。イエスかノーか。
○岡崎政府参考人 あの時点では、本則に戻すかわりに三千億余りを入れました。それは、そういう形で積立金の中に入っているということでございます。
○高橋(千)委員 非常に残念な話なんですよね。やはりあのときにも、本当に戻すということで頑張っていくのかということが確認をされたわけですが、結果として三千五百億円が溶け込んでしまっている。それだけのお金があれば、もっといろいろなことができたのにねということが指摘される。また同時に、基金が、結局潤沢じゃないかということで、標的になってしまうんですよね。
そういうことにも問題があると思うんですね。結局、やるべきことをやっていなくて、基金だけが集まっているということになってしまう。なので、本来の仕事である基本手当の拡充が必要だということは、重ねて指摘をしたいと思います。
そこで、この国庫負担については、十二日の本委員会で大西委員からも質問がありました。そのときに佐藤副大臣が次のように答弁していることが私はポイントだと思うんですね。
それは、今回の改正のそもそもの狙いが、日本再興戦略あるいは社会保障制度国民会議などで示された政府の方針に従いまして、失業なき労働移動の実現のための給付の充実を図る、これが第一だということで、要するに、これまでは、派遣切りだとか雇用失業情勢の悪化に応じて、労働者を何とか救済しなくちゃということで見直しを図ってきたんだけれども、今回はそうではなくて、官邸の意向である、使用者側の要請であるということなんですよね。
世界で一番活動しやすい国のために、雇用は流動的に、人材育成などのコストはできるだけ削減する、そして、その財布が雇用保険である。これが、今回の雇用保険の構図ではないかということを指摘したいと思います。
そこで、質問を続けますが、法律事項ではないんですけれども、資料の一、これはパッケージになっているので関係がございます。労働移動支援助成金、これは、来年度予算三百一億円を計上しております。
日本再興戦略では、雇用調整助成金から労働移動支援助成金に大胆にシフトさせることにより、二〇一五年度までに予算規模を逆転させるとあります。これは、雇用調整助成金は、今、来年度予算で千百七十五億円から五百四十五億円に縮小されたわけですね。だけれども、逆転ということは、一桁くらいになって、今の三百一億円が一千億近くになる、そういう意味なんでしょうか。
○岡崎政府参考人 日本再興戦略におきましてはそういう目標が示されておりますが、私どもとしましては、雇用調整助成金そのものについては、経済情勢の悪化等のときには非常に重要だというふうに考えております。
しかしながら、リーマン・ショックの後に大幅拡充したものにつきましては、平常時の体制に戻すということで、逐次、要件を見直してまいりました。そういう中で、その要件に応じてどのくらい必要かということで予算計上しておりますし、来年度以降も、そういう形の中で、支給実績や雇用情勢を見ながら必要な予算を計上していくということにしていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 今のお答えは、多分、極端に本当の逆転ではないという意味だと思うんですね。やはりいろいろあっても、雇用の維持のための雇調金と、労働移動ですから結局は失業と同じことなんですから、それは全く趣旨が違うわけですので、雇調金の存在自体はやはり大事だということが確認できたかなと思っております。
そこで、委託先、このポンチ絵を見ていただきたいと思うんですけれども、送り出し企業が再就職支援会社に委託をすることになっています。しかし、この矢印はさらに下に延びておりまして、再就職支援の実施ということで、要するに再委託を認める構図になっているわけですね。これは人材ビジネス会社なんだから、それだけでいいじゃないかと思うんだけれども、再委託までしてしまう。
しかも、資料の二枚目を見ていただきたいと思うんですが、これは、中小企業から大企業に対象が拡大されただけではなくて、支援委託時に十万円、これまでなかったものが入っています。つまり、委託しただけで十万円、結果が出なくてもということなんですよね。
ちょっとこれはやり過ぎではないかということで、再委託までして、しかも委託しただけで十万円。これでは、幾ら何でも派遣会社をただもうけさせるだけになっちゃいませんか、大臣。
○田村国務大臣 職業紹介事業所ですね、今言われているのは。
この制度は、いろいろな業務の縮小等々があってどうしても離職を余儀なくされる、そういう方々に対して、企業側が、今言われました民間の職業紹介事業所、こういうところを通じて新たな職を探すということであります。
今まで持っているスキル、能力、資格、こういうものを通じて次の働き場所が探せれば、それはそれでいいわけでありますけれども、当然、そこでは十分な能力また求められる能力がないという場合には、これは訓練をしなければならぬわけであります。すると、いきなり企業が、つまり離職を余儀なくする企業がどこか探すなんということはできないわけでございますから、そういう意味で、やはり、訓練がある場合もない場合もありますけれども、こういう職業紹介事業所をかます、それが間に入ることによって円滑に次のステップへと進むというわけであります。
委託するだけで十万円というのは多過ぎるんじゃないかというような御意見もありますが、このような事業の中において、事業主側もやはり、まずは、要するに何もなしに職業紹介事業所に受けてもらうというのも難しいわけでございますから、何かの手付を打つというふうな場合もあるわけでございますので、そのような意味で、こういうようなお金を初めお出しをする中において、それを次の職場に向かってのステップ、そういうものにつなげていただくための対応をいただくという形の中で十万円を出す。
ただし、もちろん、この後、大半はちゃんと成功しないことには出ないわけでございますから、ちゃんと成功して初めて職業紹介事業所の方も利益が出てくるという、そのようなモデルをつくらせていただいたということであります。
○高橋(千)委員 ここは、次の質問もしたいので、意見にとどめます。
今回、派遣法改正で、許可制に統一するということがあるわけですよね。派遣会社の再編、淘汰は進むだろう。しかし、それは、大手の人材ビジネス業界にとっては、逆に、違法派遣を繰り返すようなところは淘汰されても、むしろいいと思っているかもしれませんね。その上で、再就職支援という形で今のような手付料も入る、あるいは民間職業紹介の業務拡大、つまりハローワークの職業紹介の資料を民間職業紹介におろすとか、そういうことも用意されているわけですよね。
だから、そこに、やはりモラルハザードになってはならないということで、歯どめは必要だと思っています。
また、今でも、大量雇用変動届、三十名以上のリストラを発表した企業が、再就職援助計画を出すことになっています。ただ、これを出しただけで、実際効果があったかとか、あるいはちゃんと計画どおりやっているか、フォローする仕組みがないわけなんですよね。しかも、やっているというのも、まさに、今もう、再就職支援会社、結局派遣会社に委託しているのが実態なんですね。だから、お金を出さなくてもやっているんですよ。
なので、大量離職する会社の受け皿、あるいは、国の支援で再就職支援会社に委託したんだから、ちゃんとやっているんだよというふうなお墨つきを与えることになってはならない、これが私の意見ですので、しっかりと聞いていただきたいと思います。
そこで、次に進みたいと思います。
キャリアアップ助成金、これは三枚目の資料につけております。
これも予算措置で百五十九億円、来年度予算案で出ておりますけれども、この中で、ちょっと細かいんですけれども、どういう人に出すかという話ですね。有期の人が正規になった場合に四十万円、有期の人が無期になった場合二十万円。有期が無期とは何かといったら、短時間労働者を念頭に置いているということでありました。こうした形で助成をするという中身になっているんです。
私がきょう伺いたいのは、例えば、この右のところにちっちゃな字で書いてあります。派遣労働者を正規雇用で直接雇用する場合、これは派遣先ですよね、一人当たり十万円加算するということも言っています。
これは多分、予算委員会で私が派遣法の改正について質問したときに、菅官房長官も大臣も、キャリアアップ助成金がありますからということでおっしゃいました。ただ、それはあくまで別の話をしているんです、私は。法律の話と、助成金を出して、頑張ってねということとは別の話なんですよね。そこをちゃんと確認したいわけであります。
つまり、例えばパートでいいますと、先ほど答弁がありました均等待遇ですよね、同一視すべきパート労働者の場合、やはり均等待遇を図らなきゃいけない、これを拡充するというのが今回の改正案であります。あるいは、派遣社員のみなし雇用、違法派遣があった場合のみなし雇用、これも残っております。こういうような、当然法律上はやらなければならない状態であるのに対して、わざわざ助成金を出すということはないということを確認したいと思います。
○岡崎政府参考人 法律上の義務を果たしただけの事業所に対して助成金を支給するというのは、正しくないというふうに思います。
それぞれ法律の施行の時期に合わせまして、そこら辺の要件は明確にしていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 確認ができました。ありがとうございます。
それで、雇用保険法改正案の中で、今のものとちょうど裏表の関係になると思うんですが、学び直し、中長期的なキャリア形成支援措置について出されたものですけれども、雇用保険部会では、労働者側も使用者側も、双方から意見があったわけですよね、雇用保険制度のみならず、一般会計によっても支援すべきではないかと。
そもそも、雇用保険が失業のリスクに備えるという趣旨に対して、失業リスクのない高度な人材をさらに高度な人材に引き上げる目的もある事業が入っているじゃないかとか、学び直しというのは計画的なものだからリスクとは違うじゃないかとか、在職者に対しては、そもそも企業が負担して、必要な人材に対して行うものではないかという指摘があって、私はそれぞれそのとおりだと思うんですね。なのに、なぜこういう形になったんでしょうか。
○岡崎政府参考人 労使それぞれからでありますが、政策の趣旨自体はいいと。ただ、財源をどうするかということにつきまして、今先生から御指摘のような意見もございました。
ただ、従来から、教育訓練給付で、自発的な教育訓練給付についても一定の支援をしてきている。これは、将来の失業の予防というようなことから、そういう必要もあるだろうということでやってきたわけでありますが、非正規の方、不安定な雇用の方を安定的な仕事につける等々いろいろな政策目的を議論する中で、一般会計という議論もありましたけれども、審議会の中では最終的に労使の御理解を得て今回の提案になった、こういうことでございます。
○高橋(千)委員 これは教育訓練給付の関係なので、雇用保険部会と職業能力開発分科会でそれぞれ議論をしたわけですよね。
それで、職業能力開発分科会の報告書では、「現行の教育訓練給付と比較して高額かつ長期間の給付となることを踏まえ、原則として現行の教育訓練給付の対象となる講座のうち、厳格な基準を設定して上記の考え方に適合するものを対象に絞り込むことが適当」とあります。
ですから、例示は確かにされているんだけれども、どういうものにするかというのはきちっとこれから政令に落とすのだろうし、それが適当かどうかというのも見ていかなきゃならないんですよね。
今回、JEEDのことがえらい問題になっていますが、では、どういう形でそれをちゃんと見ていくのかということをまずお答えいただきます。
○岡崎政府参考人 訓練の指定については、どちらかというと能力開発分科会でございまして、その際に、今先生からお読みいただきましたような、労使から、財源等の問題を含めましてそこのところはしっかりやらなければ、やはり保険料負担者の視点からして問題であるという御指摘がありました。
したがいまして、これにつきましては、一定の考え方をお示ししておりますが、さらに具体的な指定に向かいまして、当該分科会におきまして、労使の意見を聞きながらしっかりやっていく、こういうことで御了解を得ているところでございます。
○高橋(千)委員 要するに、訓練がいろいろあって、本当にいいんだろうかということがすごく議論された中で、また新たなものが出てきた。しかも、これは日本再興戦略の中で位置づけられたからと。その中には労働の代表が入っていませんよね、そういう指摘もされる中で出てきたものなんですよね。
その中で、キャリアコンサルティングを義務づけて、そこでちゃんとやるんだということを言っているんですが、そもそも、そのキャリアコンサルタント自体が足りないから、今から施行までに養成しましょう、そういう話ですよね。
これは本当に、大丈夫ですかと言いたくなるわけですよ。本当に、ただ広げるだけでいいんだろうか、何度もきょう議論されているように、やはりもともとの役割のところでやるべきじゃないかなと重ねて指摘をしたいと思うんですが、一言、最後に。終わります。
○岡崎政府参考人 キャリアコンサルタントにつきましても、今、ハローワークその他必要なところにはおりますし、施行に向けて必要な対応はしていく。そういう中で、しっかりしたキャリアコンサルティングとそれから厳格な教育訓練講座の指定、それの中で役に立つような形で運用していきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 終わります。
――資料――