生活保護法 省令案に文書提出義務付け / 高橋議員、逆戻りと批判
日本共産党の高橋ちづ子議員は7日の衆院厚生労働委員会で、昨年末に成立した改悪生活保護法の運用指針となる省令の案文が、保護申請を文書でなく口頭でも認めるとする政府答弁に反し、文書提出を義務づける過去の政府案に逆戻りしていると批判しました。
省令案は今月28日まで意見公募(パブリックコメント)が行われており、田村憲久厚労相は「パブコメの意見を踏まえて、心配のないように対応したい」と答えました。
高橋氏は、3日に開かれた厚労省の関係主幹課長会議で「(保護の申請権を)侵害していると疑われるような行為自体も厳に慎むべきであることについては、法改正後も何ら変わるものではない」と確認されていると強調しました。これに対し、田村厚労相は「書類で申請できない方が口頭で申請することは阻害されてはならない」と述べました。
高橋氏はまた、厚労省の「短期集中特別訓練事業」で、同省が独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に落札させるために入札参加用件を変えていた問題について質問。入札手続きは不正だが、そもそも業務内容は民間に委託する職業訓練の適正をみたり、相談を受けるものであり、公的なものだとして、「本来、国がやるべきではないか」と主張しました。
(しんぶん赤旗 2014年3月8日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは一般質疑ということで、二つテーマをやりたいと思います。
最初は、ちょっと順序を変えまして、今の質疑が続いておりますので、私は少し角度を変えて質問したいかなと思っております。
先ほど来、昨日の朝日新聞の記事、高齢・障害・求職者雇用支援機構、以降JEEDと言いますけれども、この問題について質疑が続いております。不正入札ではないかとか、天下り機関で身内に甘いのではないかとか、基金の使い方がどうなのかとか、さまざまな指摘がございます。それらは、それぞれ当たっているのではないかと思います。それは繰り返すつもりはありません。
なぜ、JEEDはそもそも全省庁統一資格を持っていなかったのか。それと、今回、JEEDが落札した業務の内容は何か。ここを簡単にお答えください。
○杉浦政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、独立行政法人の高齢・障害・求職者雇用支援機構は全省庁統一資格を持っておりませんでしたけれども、これは、これまで、そういった官庁の入札に応募するというような機会がなかったこともあり、申請の手続をそもそも行っていなかったということで、この全省庁統一参加資格を持っていなかったというのが事実のようでございます。
委託する業務の内容でございますけれども、これは、先ほど大臣の方からの答弁がございましたように、短期集中特別訓練を実施するに当たりまして、その訓練の内容を適切に評価して認定をする、あるいはその訓練を受ける業者の方々のサポートをするといったような、訓練の周辺部分の関連業務を請け負うというか、委託でやっていただくというのが事業の内容でございます。
○高橋(千)委員 要するに、訓練自体は民間企業に委託するわけですよね。その委託先が適正かどうかというのを、審査という表現は違うんですかね、見るということとサポートをするというわけですから、私は、これは非常に公的なものだと思うんです。そこはちゃんと区別をしないと、民間企業に門戸を閉ざしているわけではないわけですよね、だって、訓練は民間企業がやるわけですから。そこをちゃんと整理したいと思うんです。
では、何で統一資格を持っていなかったのかということで、統一資格とは何ぞやということで、きのういろいろ質問をしたわけですけれども、一口に入札と言っても、公共事業からパソコン業務から、さまざまあるわけですよね。それを、統一資格ということでいうと、よほど共通するものを求めているんだろう。その共通するものが何かといったときに、いわゆる資産ですとかいろいろ出してもらうんだということで、点数があって、AからDの四ランクに分かれているわけですね。
何で点数をつけるかといいますと、年間生産・販売高とか自己資本額の合計、あるいは流動比率、営業年数、設備の額。これは明らかに、いわゆる営利企業でなければ点数はなかなか上がりませんよね。
だって、機構が持っている仕事というのは、国から委託をされた訓練とか、そういう事業ばかりじゃないですか。収入だってそうなんですよ。逆に、機構が、利益が上がって自己資本比率がうんと高まったよって、それはおかしいでしょう。だって、利益があったら国に返すというのが、機構の本来の役割じゃないですか、本来の会計の姿なんですよね。
だから、そういうことを、入札資格が必要なんだということ自体が相入れないというか、そういうふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○杉浦政府参考人 この全省庁統一資格といいますのは、御案内のように、一般競争入札をするに当たって、そこの業者が一定の能力を持っておるかということの資格を認めるためのものでございまして、先ほど来話がございますように、企画競争入札等においては必ずしもそれが義務とか要件になっておるものではないわけでございます。
ですから、これまで、先ほど申しましたように、一般競争入札という形での参加の機会がなかったということもあって、高齢・障害・求職者雇用支援機構の方はその申請手続を行っていなかったということでございますけれども、もし仮に申請をするということで、今ある基準に当てはめて考えてみますと、これは、いろいろなランクが、AからDまであるということでございますけれども、それはどうも満たしておるようでございます。
ただ、これは実際に申請をしてみないと承認がおりるかどうかわかりませんけれども、そこはそういう状況であるというふうに承知しております。
○高橋(千)委員 満たしているという答弁だったのには、ちょっと正直驚いたなと思うんですけれども。機構がどうやって利益を出していくのかなと。だったら、そこはやはり問題じゃないのという、さっきの基金の議論になっていくのかなと思うんです。
やはり業務の内容が公的なものではないか、オール・ジャパンで、受け皿がなければならないんだという点での公的なものなのではないかということと、そこに入札資格というのを持ってきたことの矛盾ということを、私、二つお話ししました。
結局、これは本来、国が直接やるべき仕事ではないのかというのが、私が大臣に聞きたいことなんです。だって、国が政策として職業訓練をやって、支援をしようと言っているわけでしょう。そのときに、訓練を受ける企業がどうなんだということも言いたいですけれども、きょうはそこはおいておいて、それを認定する企業も民間企業なんだと。下手すれば、パソナが訓練して、人材派遣サービスがそれを審査、適性を見るみたいな、そんな形で本当にいいんですかということをやはり考えないといけないと思うんですね。
今回のJEEDだって、民主党政権時代に、関係のない、性格の違うものを無理やり一つの機構にしちゃったわけでしょう。名前が言っているとおりです。高齢・障害・求職者雇用、何でこんな関係ないものを一つにしたんですか。だから力が落ちているんですよ。本来の仕事ができないんです。
そういうこともちゃんと見直して、必要な訓練をするのであれば、公がもっと役割を果たすんだということを考えるべきではありませんか。
○田村国務大臣 高齢・障害・求職者雇用支援機構、これはおっしゃられるとおり、民主党のときに色合いの違うものを統合して一つにされて、その上で求職者支援制度等々、その前から基金事業も、能開機構のときから受けておったわけでありますけれども、そのような形で今運営されておられる、そういうところでございます。
もちろん、ここはノウハウを持っておりますので、そういう意味では、いろいろな役割を担っていただきたいという思いは我々はあります。ありますが、一方で、今言われたように、国が何もかもやるというのは、やはりある程度、行政もスリム化をしていかなきゃならないという流れの中において、民間にできることは民間にお願いをしていこうという流れでございます。
今般のこの事業は、公的性はあるとはいいながらも、しっかりノウハウを持っているところがあるのであれば、それは民間に参加をいただきながらその力を発揮いただこうということの中においての、今回の、随契とはいいながら、企画競争というような形での入札でございますので、もちろん、ちゃんとした訓練等々に対するノウハウ、サービスを提供いただかなければならないということが前提でありますけれども、民間に関しましても門戸を開けておるということであります。
○高橋(千)委員 門戸を開いていることを全否定していないことを前提で議論していますから、そこで、大臣がお認めになった公的性というところをどう担保するかという議論をしていきたいと思います。それは今後の、雇用保険法の議論もございますので、きょうはそこにとどめたいと思います。
次に、改正生活保護法、昨年の十二月六日に成立をいたしました。この省令について、現在、パブリックコメントを三月二十八日締め切りで行って、四月上旬公布を目指していると聞いております。
五日付の東京新聞では、水際作戦が助長されるとして批判され修正されたもともとの政府原案に近いものになっているのではないかという指摘をして、まず書面という形に逆戻りだとか、国会の議論酌み取らず、これがもし事実であれば重要な指摘でありますけれども、そのように指摘をしているんです。
実際どうなのかということを確認したいと思います。
資料に、問題となった二十四条部分の省令案を示しました。問題は、アンダーラインのところなんです。保護の開始の申請は、申請書を「提出して行うものとする。」という形で、政府原案は「提出してしなければならない。」というのがあったわけです。これに近いものになってしまったのではないか。
国会のその後の議論がまたもとに戻ったような気がいたしますが、なぜそうしたのか、大臣。
○田村国務大臣 もともと政府原案が、「申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない。」ということであったわけでありますけれども、成立したときには修正がありまして、「提出しなければならない。」というふうに修正された、今委員がおっしゃられたとおりであります。
今回の省令は、パブコメ案では、「提出して行うものとする。」というふうになっておりますから、その点に関して御心配をお持ちいただいておるんだというふうに思いますけれども、あくまでも申請書を提出する場合の手続について規定したわけでありまして、「申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は、この限りではない」というように、ただし書きで書かせていただいておるわけであります。これ自体がまたお気に召さないという御意見もあるわけでありますが。
いずれにいたしましても、そういう御心配もございますので、パブコメの御意見を踏まえて対応させていただきたい、このように考えております。
○高橋(千)委員 最後の結論をおっしゃって、パブコメを踏まえてということでありましたけれども、もう少し今のところを議論していきたいと思うんです。
なぜ、「して行う」にしたかということについては正確な答弁がなかったかなと思うんですけれども、昨年十二月四日の質疑のときに私は、五月に出されたときの与野党修正案、「特別の事情があるときは、この限りでない。」という修正案が政府案の本文に組み込まれたということで、もともと政府原案のときでも現行と変わらないと答弁していたわけですよね、運用は変わりませんと言っていたのに、わざわざ「特別の事情」と書いたおかげで、言ってみれば特別な事情が何かということになって、そうじゃなければ書類が原則よという、打ち消し効果というんですか、むしろ限定的になるのではないかということを指摘したわけです。
これが今回、省令案に、今読んだところの続きですけれども、「ただし、身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は、この限りではないこととする。」こういうふうに書いてしまって、これは「身体上の障害」ということで、かなり限定的だなというふうに受け取れるんですね。やはりこれは私の指摘したとおりなんじゃないか。
しかも、その下の段のアンダーラインで、「上記ただし書の場合において、申請者の口頭による陳述を当該職員に聴取させた上で、必要な措置を採ることによって、」「受理に代えることができる」。だから、口頭の場合はこうですよと、さらに、二重に限定がかかっていることになりませんか。
○田村国務大臣 これは法案審議のときにも御議論をさせていただいたところでありますけれども、基本的には書面を提出する、これは基本であることは基本であります。ただ、一方で、事情がある場合には口頭での申請も認められるということでございまして、決してここをもってして厳格化をしたわけではございません。
条文修正をいただいたわけでありまして、省令はこの規定を踏まえた上で必要があると考えているわけでありますが、いずれにいたしましても、これも先ほど来申し上げておりますとおり、パブリックコメントを今募集中でございまして、いろいろな御心配の声もあろうというふうに思いますので、それを踏まえた対応をさせていただきたいと考えております。
○高橋(千)委員 やはり、既に十二月に法律が通った以降、ホームページの書きぶりが変わっていないとか、逆に窓口は厳しくなったとか、さまざまなことが指摘をされているわけです。そして、実際に、保護の窓口がかなり人員的にも厳しい、一人が持つケースが非常に多いとかいうことは、これまでも指摘をされてきたわけですよね。
そういうときに、柔軟にやりなさいとか、これまでと変わりませんとか言って幾ら答弁をしても、やはり一番頼るところは、たくさん煩雑な業務の中で、あるいは引き継ぎをして、仕事になれていない中で、一番頼りになるのは書かれていることなんですよ、規則そのものなんですよ。
だから、この省令案をやはり本当にきちんと見なければ、いろいろ、心を読んでといったって、書いていたらそのとおりやるのが一番間違いない、指摘されずに済むだろうということになっちゃうんですよ。そこをちゃんと踏まえて、書くということはこういうことなんだということをあえて言いたいなと思っているんです。
それで、三月三日に関係主管課長会議が行われて、「現行の運用の取扱いをこの規定により変更するものではない。」ということを改めて強調されています。その次に、「保護の申請書類が整っていないことをもって申請を受け付けないということのないよう、法律上認められた保護の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為自体も厳に慎むべきであることについては、法改正後も何ら変わるものではないので、ご了知いただきたい。」ということをあえて言っているということは、非常に大事なことだと思うんです。
つまり、私、十二月の質疑のときも、申請権というのは七条に書いていて、それ自体は変えていませんよねと、そのことをあえて確認させていただいたんですよ。やはりそこが、この趣旨がちゃんと省令案ににじむものでなければ、読んでわかるものでなければだめなんだということで、もう一言願いたいと思います。
○田村国務大臣 何度も申し上げて恐縮でございますけれども、この省令案自体、いろいろな御意見をいただいておるわけであります。
言われるとおり、申請権が邪魔されてはいけないわけでありますし、言われるとおり、口頭で申請する、言うなれば、基本は確かに書面で申請でありますけれども、書面で申請できない方が口頭で申請すること自体、決してこれは阻害されてはならないわけでございます。
そのようなところも含めながら、今、省令案に対してパブリックコメントをいただいておる最中でございますので、いろいろな御心配の点もいただいておるわけでございますから、そのパブリックコメントのいただいた御意見、これにしっかりと対応をさせていただきたい、このように考えております。
○高橋(千)委員 大いに意見を出してもらえれば、大臣は尊重してくれるなということを今考えました。
もう一点確認をしたいと思うんですが、扶養義務者に対する通知の問題。
これは、通知とそれから報告の求めについても、同じような書きぶりになっております。つまり、当該通知を行うことが適当でない場合が何かということで、1、2、3というふうに書いているわけです。「保護の実施機関が、当該扶養義務者に対して法第七十七条第一項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合」と。
ですから、これまでの答弁は、極めて限定的なものだというふうな表現をしているんだけれども、高くないと認めた場合というと、何か、例外の方が多いというのは普通は考えにくい話ですよね。つまり、高くないといったときには、普通は例外という方が少ない、これは、こっちが、通知しない人の方が例外なわけですよね、この書きぶりは。それで、高くないというのはどういうことなんだろうか、逆に例外ではなく絞られてくるんじゃないかというふうに受け取れますが、そこだけ確認。
○田村国務大臣 逆に、高いと判断する場合というのは、御承知のとおり、交際状況が良好であるでありますとか、それから、扶養手当を企業から受け取っておったりでありますとか税法上の扶養控除等々を受けている場合、さらには十分に資力がある、このようなことが認められる場合でありまして、それじゃない場合がまさに蓋然性が高くない場合ということであります。
これは委員もおっしゃられましたとおり、二十四条の八項に「あらかじめ通知することが適当でない場合」というように書いてあるものでありますから、それに合った書きぶりをするとそのようにならざるを得ないということでありますが、これも御心配もありますので、いろいろな工夫を考えさせていただきたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 今後の取り組みをしっかり見ていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
――資料――