国の責任は免れない
トヨタ認証不正 高橋氏が追及
衆院国交委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=19日、衆院国交委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は19日の衆院国土交通委員会で、トヨタなど自動車5社の型式認証不正を追及し、繰り返されるメーカーの不正を防げなかった国の責任も免れないと批判しました。
高橋氏は、基準より厳しい開発試験のデータを採用しており問題ないとのメーカーの見解への認識を質問。国交省の鶴田浩久物流・自動車局長は「多岐にわたる項目を組み合わせて試験条件を設定しており、一部の違いだけを見ても全体としてより厳しいかはわからない」と答弁しました。
高橋氏は、2016年の三菱自動車燃費不正を受け、有識者検討会がまとめた「最終とりまとめ」にある試験への抜き打ちの立ち会いの頻度を質問。鶴田氏は「1社当たり約10件」と答えました。
高橋氏は「これがどの程度の効果を生むかが問われる」と指摘し、5月27日の有識者検討会でメーカーにヒアリングを行いながら、どこが参加したかも公表していないと批判し、国交省のメーカーに対する関係性に疑問を投げかけました。
その上で、ダイハツの第三者委員会調査報告書が「短期開発というプレッシャーの中で追い込まれて従業員は不正に及んだ」「責められるべきは経営幹部」だと指摘しているとして、余裕のある開発期間の確保や認証部門の体制強化に全メーカーに取り組ませるよう国交省に求めました。
(「しんぶん赤旗」2024年6月24日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
ダイハツ工業などで相次いだ自動車の認証不正問題を受け、国交省が指示した自動車メーカーへの調査について、現時点で、トヨタを始め自動車メーカー五社、三十八車種で不正があったと報告がありました。約五百万台に上ると言われております。二〇一六年には三菱自動車やスズキの燃費不正事件もあり、なぜ同じようなことが繰り返されるのでしょうか。極めて重大であり、許し難いと言わなければなりません。
世界のトヨタを始め、裾野の広い自動車産業を支える多くの業界、労働者、ユーザーに対する信頼を傷つけるだけではなく、何度も問題があったにもかかわらず、不正事案を防げなかった監督官庁としての国交省の責任も免れないと考えますが、大臣の認識を伺います。
○斉藤(鉄)国務大臣 型式指定申請における不正は、自動車ユーザーの信頼を損ない、かつ、自動車認証制度の根幹を揺るがす、あってはならない行為であり、極めて遺憾でございます。
国土交通省では、現在、不正の報告があった各社に立入検査を実施し、不正行為の事実関係等について確認を行っているところでございます。その結果を踏まえ、道路運送車両法に基づいて厳正に対処してまいります。
また、過去の不正事案を受け、これまでもその対策を強化してきたところでございますが、近年相次いで不正行為が確認されていることを踏まえ、不正行為を根本から防止するための更なる対策を講じることが必要と認識しております。
このため、本年四月に外部有識者も招いて検討会を設置し、不正事案の抑止、早期発見のための手法について幅広く検討を行っているところでございます。その結果を踏まえた対策をしっかりと講ずることにより、監督官庁としての責任を果たしてまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 責任を免れないと思いますがという質問に対して、果たしていきたいと。それは当然だと思うんです。責任を果たしていきたい。だけれども、これまでのことに関しての責任はあるということでよろしいですか。
○斉藤(鉄)国務大臣 二度とこういうことが起きないように、しっかりと体制を整えることによりまして、監督官庁としての責任を果たしていきたいと思います。
○高橋(千)委員 ちょっと微妙な言い回しでありますが、なかなか言いにくいということなのかなと。しかし、それはやはり何度も繰り返しているわけですから、ここはしっかりと、大臣、受け止めて発言していただきたいな、こう思うんです。
豊田会長が、ブルータス、おまえもかと言ったのは、自分で自分のことを言うかというので、本当にあきれてしまいました。国交省も同じ立場になってはいけないわけです。会長は、私も含め認証に関わる業務の全体像を把握している人は自動車業界に一人もいないと思うと開き直りました。私は、これはやはり、事実かもしれないけれども、言っちゃいけないと思うわけです。
型式指定制度は、大量生産を可能とする仕組みなわけですから、基準への適合性と品質管理体制をチェックすることになるわけですが、現在、国連基準として、世界六十一の国と一地域が参加する百七十の規則、乗用車においては四十三、これを日本も基準としているわけです。一部には、基準より厳しい開発試験のデータを採用しているのだから問題ないじゃないかという意見もあります。しかし、これは違うんだということをはっきりとお答えください。
○鶴田政府参考人 我が国の型式指定制度は、国連の自動車認証制度の枠組みと調和したものでありまして、試験方法につきましても国連基準の規定に沿った取扱いとなっております。
この国連基準におきましては、試験条件が厳密に決められておりますので、認証に当たっては定められた試験条件をしっかり守っていただくことが前提となります。
また、一般論としまして、一つ一つの試験において、多岐にわたる項目を組み合わせて試験条件を設定しており、例えば試験台車の重量など一部の項目の違いだけを見ても、試験全体として、より厳しい条件となっているかどうかというのは分からないものでございます。
これらの観点から、今般、基準の定めと異なる条件で試験を行ったことについて、申請者から説明がなかったことについても問題があるというふうに認識しております。
国交省としましては、現在、不正行為の報告があった各社に立入検査を実施しております。今申し上げた様々な点を含めまして、不正行為の事実関係等について確認を行ってまいります。
○高橋(千)委員 確かに、いろいろな工程を組み合わせて審査をするにもかかわらず、一部のものが厳しい基準でやったんだからいいんだ、これは勝手な自分の解釈なわけですよね。それはやはり排除されなきゃいけない、あってはならないということだと思います。
それで、厳しい条件でやったのだから問題ないという議論は決して主流ではない、主流だというふうには言い切れないと思うんですね。業界紙などを見ても、きちっと書いているところもある。また、そういう案件ばかりでもない、ほかにもあるというふうに思うんです。
それで、資料の二枚目に、トヨタが、まだ調査中ではあるけれども、今分かっている六つの不正について発表しています。例えば、クラウンとシエンタについて、これは既に生産は終了しているわけですけれども、台車重量の問題が、規定と異なるということで書かれておりますよね。これは報道でもあるように、千百キロで済むところを千八百キロ、北米基準でやったというふうにあるわけです。
トヨタの会長は、仕向け先にもよると説明している。つまり、海外での取引が多いからと言いたいんだと思うんですね。とりわけ北米では、今、レクサスなどが増産を図っているということもあって、重量のある車両が主流になっていて、基準が日本よりも、より重いというのは分かるんです。だけれども、なぜ日本で販売するための型式指定なのに、わざわざ北米基準を使うんですかと、素朴な疑問なわけですよね。だから、逆に言うと、北米のデータを日本のデータとして使っているのかしら、テストでやったものを、とさえ思ってしまう。そんなことはないと言えるんでしょうか。
改めて伺いたいんですね。日本で販売するのに、北米基準を使った理由は何でしょうか。
○鶴田政府参考人 今御質問のありました、クラウンとシエンタの後面衝突試験でございますが、トヨタ自動車からは、試験は国内の試験場で実施したものであるというふうに報告を受けております。
いずれにしましても、先ほど申し上げました立入検査の中で、この点も含めまして、不正行為の事実関係について確認を行ってまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 ここはやはり、なぜかということをはっきりとさせていただきたい。立入検査を今やっている最中だという答えですから、その理由が大事だと思っているんです。多分、テストを二回やりたくないですとか、様々なことがこれまでも言われてきたということがあると思います。
例えば、レクサスの六つ目の、レクサスは一番下で、項目とすると六つ目になるわけですが、エンジン出力について、トヨタの宮本カスタマーサポート推進本部長は、狙った出力が得られませんでしたと認めており、狙った出力が得られるようにコンピューター制御を調整し、再度のテストでのデータを使用したと説明しています。
これは結果に数値を合わせた改ざんであると、確認したいと思います。
○鶴田政府参考人 トヨタ自動車からの報告では、エンジン出力試験において、予定していた出力値が得られるようにエンジンの制御ソフトを書き換える不正行為があった、これが確認されたというふうに報告を受けております。
この不正行為につきましては、試験車両を不正に加工して、量産予定の仕様とは異なる仕様にする行為であったというふうに認識をしております。
○高橋(千)委員 さらに、エアバッグをタイマーでと、これは一番最初のところに、クラウンの最初のところと、それからアイシスのところにもあるわけですが、これが私すごい疑問なのは、マツダでも同じように、タイマーで着火というのが報告書に出ております。それから、昨年のダイハツの不正でも同様のものがありました。
ですから、なぜ、このエアバッグという同様のものが各社でやられているのかというのも謎なわけです。これは、厳しい基準でやったからでは説明がつかない不正そのものだと思いますが、どうでしょうか。
○鶴田政府参考人 トヨタ自動車とマツダからの報告では、衝突試験におきまして、本来は加速度センサーによって衝突を検知してエアバッグが作動するわけでございますが、これをタイマーで作動するように加工する、こういう不正行為があったというふうに報告を受けております。
この不正行為につきましては、先ほどと同様に、試験車両を不正に加工して、量産予定の仕様とは異なる仕様にするということで、御指摘ありましたように、より厳しい基準で試験を実施したという事例ではなくて、また違う種類の不正だというふうに考えております。
○高橋(千)委員 不正だということはお認めになったと思うんです。しかも、より厳しいという話ではないと。
問題は、なぜそういうことが社を超えてやられているのかということを、やはり、そこも背景があるんだろうということをしっかりと示していただきたいということを、重ねて要望したいと思うんですね。
三菱自動車は、二〇〇〇年及び二〇〇四年にリコール隠しがありました。また、二〇〇八年から二〇一二年にかけて、リコールの実施が大幅に遅れるなど、度重なる不正がありました。にもかかわらず、二〇一六年の燃費不正、虚偽報告の問題があったわけです。
当時の国会の答弁を見ますと、繰り返し国交省は、自動車メーカーとの信頼関係を前提に、自動車メーカーが提出するデータについては特段のチェックを行わず使用してきたと答えているわけです。
私は、それを議事録で読んでいるから、ちょっとびっくりして、どういうあれで答えているのかなって思ったわけですが、そこで資料の一を見ていただきたいんですが、それを受けて検討会が行われ、自動車の型式指定審査におけるメーカーの不正行為を防止するためのタスクフォース最終取りまとめが出されたわけです。ここでは審査の厳格化をしたと思うんですが、特段のチェックを行わずということの反省から変えたことがあると思うんですが、具体的に示してください。
○鶴田政府参考人 国土交通省では、今資料でお示しいただきましたタスクフォースを平成二十八年、二〇一六年に設置をして、最終取りまとめをしたところでございます。
その中では、今御指摘の点につきましては、自動車メーカーが提出するデータの測定時に独立行政法人自動車技術総合機構の職員が抜き打ちで立ち会うなどによってチェックを行う。また、不正が発覚したときは、当該申請の却下、法令上の不利益処分、罰則の適用など厳しい制裁措置を取るとともに、不正を行ったメーカーに対しまして、一定期間、自動車技術総合機構の職員が立ち会う審査を増やすなど、以後の型式指定審査を厳格化する。またさらに、国が行う監査におきまして、型式指定後も不正の有無や法令遵守に対する体制、制度が機能しているかなどを確認する。こういった対策を講じているところでございます。
○高橋(千)委員 例えば、一番にある、「一定の頻度で抜き打ちでの試験への立ち会い等によるチェック」とありますが、どのぐらいやられていたのでしょうか。
○鶴田政府参考人 抜き打ちで立会いを行った頻度は、令和五年度の実績で申しますと、一社当たり約十件程度となっております。
○高橋(千)委員 一社当たり十件程度って、初めて今この数字を出していただきました。これがどれだけの効果を生むかということが問われると思うんです。
それで、ダイハツ事案を受けて、今年四月から始まった、自動車の型式指定に係る不正行為の防止に向けた検討会、これは議事要旨しかないわけですが、五月二十七日の第二回会議では、自動車メーカー複数社からヒアリングを行っています。
今回不正事案を発表したメーカーのうち、どこが参加をしていたでしょうか。それから、国交省は、この自動車メーカーに対して、元々五月末までに調査報告を求めておりました。その直前の二十七日なわけですよね。当然、聞く方も聞かれる方も、頭の中には、これはもう少しで出すよという報告書の中身があったと思うんです。何か聞いたでしょうか。
○鶴田政府参考人 国土交通省におきましては、先ほど御指摘ありました五月二十七日の第二回検討会におきまして、自動車メーカー等における不正防止の取組状況や課題を把握するために、自動車メーカー等複数社に対するヒアリングを実施しました。
この検討会につきましては、平成十一年の閣議決定や情報公開法の規定に鑑みまして、ヒアリングを行った具体的な企業名について非公開としておりまして、この御回答は差し控えさせていただきたいと思います。
なお、今申し上げましたとおり、このヒアリングは、自動車メーカー等における不正防止の取組状況や課題を把握するために行ったものでございますので、今回の不正行為の有無に関する調査報告に対する各社の調査状況については聴取をしていないところでございます。その内容につきましては、今国が行っている立入検査の中で明らかにしてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 これはおかしいと思うんですよね。全部のメーカーに対して調査報告を求めているわけですよね。部品などの末端のメーカーに対しても出しているわけですし、今回公表されているわけです。だけれども、その途中のヒアリングでは、それをどこが参加したかも言えないって、それはやはり違うんじゃないかと思うんです。
やはり、こういうときにメーカーと国交省との関係性が問われると思うんです。本来なら、命を預かる乗り物として一台一台をチェックすべきところを、物理的にそれはできないよということで、量産の保障としてやっている型式指定なんです。ここを厳密に行うことは、ユーザーの命、安全に直結する、その自覚が足りないんじゃないでしょうか。だからこそ、国交省との緊張感が絶対に必要だと思っております。
残念ながら時間が来てしまったんですが、一言、要望だけで終わります。
昨年の十二月に発表されたダイハツの第三者委員会の調査報告書では、やはり短期開発の副作用という表現をしているわけですね。やむにやまれぬ強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んだんだけれども、責められるのはダイハツの経営幹部であるということを認めて、それで、二月に公表された再発防止策では、認証部門の人員を七倍に増やすこと、それから、開発に要する期間を四割増やしたと。これは、本当に言ったことをやるというんだったら大きな意味があると思うし、それを全メーカーにやはりやらせなきゃいけないと思うんですね。その点でのやはり国交省との関係性、遠慮してメーカーの名前も言えないよではなくて、きちっとそこを明らかにしていただきたい。そのことを重ねて要望して、残念ながら、終わります。